理学療法士の退職金は「相場」より先に“自分の規程”で読む
この記事は、「理学療法士の退職金はいくらなのか」を全国一律の相場ではなく、自分の職場の規程で見積もる方法に絞って整理するページです。医療・福祉の現場では、同じ職種・同じ勤続年数でも、制度の有無、算定基礎、自己都合係数、共済や企業年金の上乗せで差が出ます。
結論は、① 制度類型を切り分ける → ② 規程の 6 か所を読む → ③ 税金と手続きを先に確認する の順です。後半には、規程確認の抜け漏れを減らす退職金確認シート PDFも付けています。
退職金の仕組みは大きく 3 パターンで考える
退職金は「退職時にまとまって出るお金」とひとまとめにされがちですが、実務では制度が複数に分かれます。まずは、あなたの職場がどの型に当たるかを切り分けてください。そもそも退職金制度がない職場もあるため、最初の確認は「ある前提」で進めないことが大切です。
特に医療法人や福祉法人では、退職金規程に加えて、共済や企業年金( DB / DC )が上乗せされていることがあります。制度が複数ある場合は、窓口も必要書類も別になるため、支給元を先に分けておくと後で混乱しにくくなります。
| パターン | お金の出どころ | よくある書類・名称 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 退職金規程(就業規則)型 | 事業所(法人) | 退職金規程/就業規則/賃金規程 | 支給要件・算定基礎・係数・申請手順 |
| 共済(退職金共済)型 | 共済制度 | 共済加入証/掛金明細/加入者番号 | 加入期間・通算の可否 |
| 企業年金( DB / DC )型 | 制度口座(年金) | DB 規約/ DC 規約/残高通知 | 一時金/年金の受け取り方・移換期限・手数料 |
「いくら?」に最短で近づく 5 分フロー
退職金は「相場」を見ても、あなたの見込み額にはそのまま使いにくいことが多いです。最短で近づくには、先に制度と規程の部品をそろえてから概算するほうがブレません。
次の 5 ステップで見れば、金額そのものだけでなく、「出るのか」「減るのか」「いつ動くべきか」まで一気に整理できます。
| 手順 | 確認すること | 見る書類 | ここで決まること |
|---|---|---|---|
| 1 | 制度類型を切り分ける | 就業規則、共済資料、年金通知 | 支給元が 1 つか複数か |
| 2 | 支給要件を確認する | 退職金規程、別表 | そもそも対象かどうか |
| 3 | 算定基礎を確認する | 賃金規程、給与明細 | 何をベースに掛けるか |
| 4 | 月数・係数・区切りを見る | 支給表、勤続年数表 | 概算額の骨格 |
| 5 | 税金と提出書類を確認する | 申告書、案内文、窓口情報 | 手取りと期限 |
退職金規程で必ず見る 6 か所(チェックリスト)
退職金で最も詰まりやすいのは、「規程のどこを見ればいいか分からない」ことです。まずは下の 6 か所だけで十分です。ここを押さえるだけで、支給の有無と計算の骨格が見えてきます。
規程が手元にない場合は、総務・人事に「退職金規程(または就業規則の退職金章)の閲覧方法」を確認してください。口頭だけで終わらせず、必ず書面や PDF で確認しておくと後でズレにくくなります。
| 見る場所 | キーワード例 | ここで分かること | 記録メモ(例) |
|---|---|---|---|
| 支給要件 | 支給対象/勤続年数/在籍期間 | そもそも出るか(最低勤続年数など) | 勤続 ○ 年以上で対象 |
| 不支給・減額 | 懲戒/自己都合/重大な規律違反 | “出ない/減る”条件 | 自己都合は係数 ○○ |
| 算定基礎 | 基礎賃金/基本給/職能給 | 何をベースに計算するか | 基本給のみを採用 |
| 算定月数 | 支給月数/勤続係数 | 勤続年数で月数がどう増えるか | ○ 年で ○ か月 |
| 係数・等級 | 支給率/職位係数/等級 | 役職・等級で増減するか | 主任以上で係数上乗せ |
| 手続き | 申請/提出書類/支給日 | いつ何を出せばよいか | 退職後 ○ 日以内に申請 |
退職金確認シート(PDF)
規程確認の抜け漏れを減らしたい方は、以下の確認シートを使って、制度の有無、支給条件、計算要素、手続きを 1 枚で整理してください。退職前にメモを作っておくと、総務・人事への確認や、転職時の条件整理がしやすくなります。
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計算の考え方:基礎賃金 × 支給月数 × 係数(が基本形)
退職金の計算は、名称が違っても「掛け算の部品」に分解すると読みやすくなります。典型は、基礎賃金(ベース)に支給月数や係数を掛ける形です。規程に「別表(支給表)」があるなら、そこが最重要です。
ただし、すべての職場が同じ式ではありません。基本給連動型のほかに、ポイント制、別テーブル制、共済の掛金納付月数ベースなどもあります。式が見えないときは、「何を基礎に」「何で増減するか」に分解して読むと整理しやすくなります。
- 例)退職金(概算)= 基礎賃金(例:基本給) × 支給月数(勤続年数別) × 係数(自己都合/会社都合・職位など)
計算結果は概算でも十分です。転職前に 1 回数字を出しておくと、「あと数か月在籍したほうが良いのか」「今動いたほうが総合条件で得か」の判断がしやすくなります。
税金の基本:退職所得控除と申告書を先に確認する
退職金は給与とは税の扱いが違います。ここで重要なのは、退職所得控除と、退職所得の受給に関する申告書です。税金の仕組みを知らないまま「思ったより引かれた」と感じるケースは少なくありません。
特に、申告書を出すかどうかで手取りの見え方が変わります。支給元が複数あるときは、規程型、共済、企業年金で必要書類が分かれることがあるため、「どこから、どの名目で受け取るか」を先に分けておくのが安全です。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 | 確認メモ |
|---|---|---|
| 20 年以下 | 40 万円 × 勤続年数( 80 万円未満は 80 万円 ) | 端数月の扱いを確認する |
| 20 年超 | 800 万円 + 70 万円 ×(勤続年数 − 20 年) | 長期勤続ほど控除額が大きくなる |
「退職所得の受給に関する申告書」を出していない場合は、源泉徴収のされ方が変わることがあります。税額計算は支給元や重複期間でも扱いが変わるため、概算だけで決めず、案内書類と窓口を退職前に確認しておくと安心です。
転職前にやるべき 3 ステップ(損しない準備)
退職金は「辞めた後」ではなく「辞める前」の準備で差がつきます。特に、勤続年数の区切り、自己都合係数、共済の通算、企業型 DC の移換は、気づくのが遅いほど取り戻しにくくなります。
まずは次の 3 ステップで整理してください。退職金だけでなく、基本給、賞与、昇給、休日まで含めて職場条件を見直すと、転職判断がブレにくくなります。
- 制度類型を特定する:規程型/共済/企業年金( DB / DC )の有無を確認する
- 規程の 6 か所をメモ化する:支給要件・不支給/減額・算定基礎・月数・係数・手続きを整理する
- 区切りと期限を確認する:勤続年数の閾値、申告書、共済通算、企業型 DC の移換期限を確認する
| 制度 | 退職前に確認すること | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 退職金規程型 | 支給要件、係数、支給日、申請書類 | 自己都合の減額条項、勤続年数の区切り |
| 共済型 | 加入者番号、加入期間、通算の可否 | 制度が別管理で、職場に聞かないと気づきにくい |
| DB / DC 型 | 一時金/年金の受け取り方、移換先、期限 | 退職後に放置して手数料や自動移換が発生する |
現場の詰まりどころ/よくある失敗(先回りで回避する)
退職金は、忙しい時期ほど「後で確認しよう」が起きやすい領域です。実際に詰まりやすいのは、どの書類を見るか分からない、誰に聞けばいいか分からない、期限を過ぎる の 3 つです。
先に戻り先を置いておくと整理しやすくなります。規程の 6 か所を先に確認する / 転職前の 3 ステップに戻る / PT の給料・年収ハブで全体像を見る
| よくある失敗 | なぜ起きる? | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 口頭回答だけで判断する | 規程が複雑で伝言ゲームになりやすい | 規程本文と別表を必ず確認する | 条文番号・別表名をメモする |
| 制度が複数あるのに片方だけ手続きする | 共済・年金の存在に気づきにくい | 「支給元」を先に洗い出す | 支給元/窓口/期限を一覧化する |
| 勤続年数の区切り直前で退職する | 月数・係数の変化を見落とす | 勤続年数別の支給表を確認する | ○ 年で月数が変わるか確認する |
| 提出期限を過ぎる | 退職後に連絡が取りづらい | 退職前に必要書類と期限を確定する | 提出期限をカレンダーに入れる |
| DC を放置する | 移換手続きの期限を知らない | 退職時点で移換先と締切を確認する | 通知書の到着日を記録する |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
自己都合退職だと退職金は必ず減りますか?
必ず減るとは限りません。規程によっては自己都合係数で調整する場合もあれば、会社都合と同じ扱いのこともあります。結論は、退職金規程の「不支給・減額」「係数」の条項と別表で決まります。
退職金規程が見当たりません。誰に聞けばいいですか?
まずは総務・人事に「退職金規程(または就業規則の退職金章)の閲覧方法」を確認します。概算だけの口頭回答ではなく、条文や別表を見せてもらうのが確実です。
退職所得の受給に関する申告書を出さないとどうなりますか?
税の扱いが変わることがあるため、支給元から案内があれば内容を必ず確認してください。退職金は給与と税の計算方法が違うため、「とりあえず未提出」で済ませると手取りの見込みがずれやすくなります。
企業型 DC は退職後いつまでに動けばいいですか?
退職後はできるだけ早く通知書と手続き案内を確認してください。移換は期限管理が重要で、放置すると不利になることがあります。DB や共済と違い、「あとでまとめて確認しよう」が起きやすい点に注意が必要です。
共済や企業年金( DB / DC )があるか分かりません。
給与明細、年末調整資料、掛金明細、残高通知などに手がかりがあることが多いです。分からない場合は、窓口に「退職時に受け取れる制度を一覧で教えてください」と確認すると整理しやすくなります。
次の一手
次に整理するなら、まずは給料・年収全体の中で退職金を位置づけ、そのうえで求人比較や動き方に進むと判断しやすくなります。
条件整理のあとに、求人の見方と動き方もまとめて確認しておきましょう
退職金だけでなく、基本給、賞与、昇給、休日、教育体制まで合わせて見ると、次の職場選びでブレにくくなります。
無料チェックシートを確認する参考文献
- 厚生労働省. モデル就業規則. 2025. PDF
- 国税庁. No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得). 国税庁
- 国税庁. A2-29 退職所得の受給に関する申告(退職所得申告). 国税庁
- 厚生労働省. 離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ). 厚生労働省
- 勤労者退職金共済機構. 通算制度. 中退共
- iDeCo 公式サイト. 転職・退職された方. iDeCo 公式
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


