QIDS-J の使い方|採点と重症度

評価
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QIDS-J の使い方(結論:採点は 9 領域で 0〜27 点)

結論: QIDS-J(簡易抑うつ症状尺度)は、過去 7 日間のうつ症状を 0〜27 点で数値化し、重症度と経時変化(増減)を把握するための尺度です。採点のコツは、睡眠( 4 項目)・食欲 / 体重( 4 項目)・精神運動( 2 項目)をそれぞれ「最大点を 1 つだけ採用」し、それ以外は各点を足して合計 9 領域としてまとめる点です。

この記事では「 qids-j 使い方」の検索意図に合わせて、 5 ステップの手順採点のミス防止重症度の目安を最短で確認できる形に整理します。関連の評価スケール全体像は 評価ハブにまとめています。

QIDS-J の使い方( 5 ステップ)

  1. 期間をそろえる:「過去 7 日間」を基準に、最も当てはまる状態を選びます。
  2. 回答する: 16 項目に回答し、各項目の点数( 0〜3 )を確認します。
  3. 領域点にまとめる:睡眠( 4 )・食欲 / 体重( 4 )・精神運動( 2 )は、それぞれ最大点を 1 つ採用します。
  4. 合計する: 9 領域の点数を足して 0〜27 点にします。
  5. 重症度と次の一手:合計点と領域プロファイルを記録し、同じ条件で再評価して変化を追います。

16 項目が見ている領域(対応表)

以下は「どの領域を見ているか」の対応表です。実際の運用では、設問文の引用ではなく、領域ごとの変化採点ルールに注目すると、チーム共有がスムーズになります。

QIDS-J の項目と領域の対応(過去 7 日・自己記入)
項目群 領域 確認観点(要約) 採点の扱い
Q1〜Q4 睡眠 入眠 / 中途覚醒 / 早朝覚醒 / 過眠 最大点を 1 つ採用
Q5 抑うつ気分 落ち込み・悲哀感の強さと頻度 そのまま採用
Q6〜Q9 食欲 / 体重 食欲の低下 / 増進、体重の減少 / 増加 最大点を 1 つ採用
Q10 集中 / 決断 集中の続きにくさ、決めにくさ そのまま採用
Q11 自己評価(罪責感など) 自己否定・自責の強さ そのまま採用
Q12 希死念慮 死についての考え(頻度・具体性) そのまま採用
Q13 興味 / 喜び 楽しみ・活動への興味の低下 そのまま採用
Q14 活力(疲労) 易疲労感・エネルギー低下 そのまま採用
Q15〜Q16 精神運動 焦燥(促進) / 制止(遅さ) 最大点を 1 つ採用

採点方法(最大点を 1 つ採用する 3 領域がカギ)

QIDS-J は「 16 項目の単純合算」ではありません。合計は 9 領域としてまとめ、一部は最大点のみを採用します。ここが最も間違えやすいポイントです。

QIDS-J の採点ルール(まとめ方の早見)
領域 点の作り方 ミス防止の合言葉
睡眠( Q1〜Q4 ) 4 項目の最大点を 1 つだけ採用 「睡眠は足さずに、いちばん困る 1 つ」
食欲 / 体重( Q6〜Q9 ) 4 項目の最大点を 1 つだけ採用 「増えた / 減ったを両方足さない」
精神運動( Q15〜Q16 ) 2 項目の最大点を 1 つだけ採用 「焦燥と制止は両取りしない」
その他 6 領域( Q5 / Q10〜Q14 ) 各項目の点をそのまま採用 「残りは普通に足す」
合計 9 領域の合計で 0〜27 点

重症度の目安( 0〜27 点)

合計点は「いまの重さ」を簡潔に共有でき、リハ介入では経時変化(増減)が意思決定に直結します。点数だけでなく、どの領域が押し上げているかもセットで見ます。

QIDS-J 合計点の重症度(目安)
合計( 0〜27 点) 重症度 臨床での見立て(例)
0〜5 点 正常〜最小 大きな抑うつ所見は乏しい
6〜10 点 軽度 活動量・睡眠・疲労の変化が前景に出ることがある
11〜15 点 中等度 参加量・自己効力感に影響が出やすい
16〜20 点 重度 生活機能全体に波及しやすく、連携と環境調整が重要
21〜27 点 きわめて重度 安全配慮と医療的支援の検討が優先される

現場の詰まりどころ(よくあるつまずき)

QIDS-J では、合計点だけを追って「どの領域が悪化しているか」を見落とすケースが少なくありません。たとえば同じ 12 点でも、睡眠・食欲が中心のパターンと、自己評価・希死念慮が中心のパターンでは、チームで共有すべきリスクや優先順位が変わります。点数の大きさだけでなく、領域プロファイル+回答の確からしさ(理解度、記入条件)をセットで確認すると、現場の“詰まり”が減ります。

よくある採点ミス(順位が伸びやすい差別化ポイント)

QIDS-J のミス予防( OK / NG 早見)
NG(ありがち) なぜ起きる? OK(正しいやり方) 記録のコツ
睡眠 4 項目を合算する 16 項目=合計と誤解しやすい 最大点を 1 つだけ採用 「 1 週間で一番困った睡眠症状」をメモ
食欲低下と増進を両方足す 「変化」を全部拾いたくなる 最大点を 1 つだけ採用 混在する週は「負担が大きい方」を採用
体重減少と増加を両方足す 体重記録をそのまま点に反映しがち 最大点を 1 つだけ採用 「方向」より「生活への影響」を短く記録
精神運動 2 項目を両方足す 焦燥と制止が混在することがある 最大点を 1 つだけ採用 周囲観察(動作量、会話テンポ)も併記
合計点だけで介入の優先順位を決める 点数が分かりやすい 合計+領域プロファイルで判断 上位 2 領域(押し上げ要因)を必ず書く

迷いやすい項目の判断ポイント

  • 睡眠: 4 項目のうち最も支障が大きい 1 つを採用します。複数が中等度以上なら最大点を取ります。
  • 食欲 / 体重:低下と増進が混在する週は、「体重変化」と「本人の負担」を合わせて見て、より影響の大きいものを採用します。
  • 希死念慮:曖昧な表現のときは、頻度と具体性を丁寧に確認し、迷う場合はチーム内共有を優先します。

PHQ-9/GDS-15 との使い分け

  • QIDS-J: DSM の 9 領域をカバーし、症状プロファイルと重症度の経時変化を追うのに適します。治療反応や増悪のモニタリングに向きます。
  • PHQ-9:プライマリケアや一般病棟での拾い上げ(スクリーニング)と、臨床判断に使いやすい点が強みです。
  • GDS-15:高齢者の場面で導入しやすく、施設・在宅高齢者の入口として使いやすい尺度です。

FAQ

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

Q1. 所要時間はどのくらいですか?

本人が読む場合で 5 分前後が目安です。視力低下や読字に不安がある場合は、医療者が読み上げて一緒に確認すると、理解のズレが減りやすくなります。

Q2. 再評価の間隔はどう決めますか?

変化が大きい時期(治療開始・変更直後など)は 2 週ごと、安定してきたら 4 週ごとなど、外来フォローやカンファのタイミングと合わせてルーチン化すると、記録と共有がスムーズです。

Q3. 自己記入が難しい場合はどうしますか?

注意障害、認知機能低下、せん妄、強い疲労などがある場合は、記入条件を調整(時間帯、説明、読み上げ補助)し、必要に応じて面接での補足を加えます。点数だけでなく「どの程度スムーズに回答できたか」も一言添えると、チームでの解釈が安定します。

おわりに

抑うつ症状の評価は、状態の安全確認 → 採点ルールの統一 → 領域プロファイルの記録 → 合計点の把握 → 同条件で再評価というリズムで回すと、リハの中でも「変化の見落とし」を減らしやすくなります。面談準備のチェックと職場評価シートで行動を具体化したいときは、面談準備チェック&職場評価シートを見に行くから 5 分で整えておくと次の一手が速くなります。

参考文献

  1. Rush AJ, Trivedi MH, Ibrahim HM, et al. The 16-Item Quick Inventory of Depressive Symptomatology (QIDS), clinician rating (QIDS-C), and self-report (QIDS-SR): A psychometric evaluation in patients with chronic MDD. Biological Psychiatry. 2003;54(5):573–583. DOI: 10.1016/S0006-3223(02)01866-8
  2. Brown ES, et al. The Quick Inventory of Depressive Symptomatology–Self Report. Prim Care Companion J Clin Psychiatry. 2008;10(6):451–456. PubMed
  3. 厚生労働省. うつ病チェック(簡易抑うつ症状尺度:QIDS-J). PDF
  4. Wada K, et al. National survey using the Japanese version of QIDS-SR. Industrial Health. 2010;48(6). PubMed
  5. Sugishita K, et al. A validity and reliability study of the Japanese version of the GDS-15. Psychogeriatrics. 2017;17(2):206–214. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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