QIDS-Jの採点と臨床活用【早見表】

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この記事の内容
  1. QIDS-J(簡易抑うつ症状尺度)は、過去 7 日間の症状を16 項目で自己記入し、9 ドメインを 0 – 27 点で評価する重症度指標です。
  2. 本記事では、最高点ルールを含む採点手順と重症度の目安、再評価のタイミング(2 – 4 週)、自殺念慮項目への一次対応までを、理学療法の文脈で実務的に解説します。
  3. SPPB・6MWT・歩行速度など機能指標との並行管理のコツや、院内連携に使える早見表・コピペ用ブロックも掲載しました。
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リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 9 月時点:188 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリ等)
  4. 講師活動(脳卒中、褥瘡等をテーマに複数回講演)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級
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QIDS-Jとは

QIDS-J は、過去 7 日間の抑うつ症状を 16 項目で自己記入し、DSM に基づく 9 ドメインの重症度を合計 0 ~ 27 点で定量化する尺度です。

原版 QIDS は IDS から簡略化された信頼性の高い指標で、自己記入版(QIDS-SR)と医師評価版(QIDS-C)が整備されています。

日本語版は慶應大のグループにより作成され、国内でも広く用いられています。診断テストではなく、症状の重症度の把握と経時変化の追跡に適します。 

深掘りリンク:HADSの読み方と臨床での使い分け

採点方法と重症度

採点は 9 ドメイン(睡眠・食欲 / 体重・精神運動・抑うつ気分・興味低下・全身倦怠・罪責感/無価値感・注意集中困難・自殺念慮)を集計します。

睡眠(1 ~ 4)、食欲 / 体重(6 ~ 9)、精神運動(15 ~ 16)は該当群の最高点を採用するのがルールです。

合計点の重症度目安は 0 ~ 5 無/正常、6 ~ 10 軽症、11 ~ 15 中等症、16 ~ 20 重症、21 ~ 27 最重症。判定は診療・リハ計画と併せて解釈し、2 ~ 4 週ごとの再評価で変化を追います。 

カットオフ値と9ドメインの整理

重症度の目安(カットオフ)

QIDS-J は過去 7 日間の抑うつ症状を 0–27 点で評価する重症度指標です。 診断用の単一カットオフは規定されていませんが、臨床では下表を目安にし、2–4 週ごとの再評価で経時変化を追跡します。

合計点解釈
0–5正常/寛解の目安
6–10軽症
11–15中等症
16–20重症
21–27最重症

QIDS-J 合計点と重症度の目安

  • ベースラインから5 点以上、または≥50%の低下は臨床的改善の目安です。
  • 睡眠・食欲/体重・精神運動は最高点ルール(群内で最も高い得点のみ採用)。詳しくは 9 ドメインの整理 を参照。
  • 自殺念慮が高得点の場合は、院内ルールに従い即時の安全確認と上位連携(→ 一次対応フロー)。
研究で用いられる「便宜的な閾値」の例(参考)

母集団や目的により、スクリーニングの最適閾値として 13–14 点、一次診療で 9 点 などの報告があります。 いずれも研究依存であり、公式な診断基準ではありません

9ドメインの整理(実務メモ)

QIDS-J は 9 ドメインで集計します。「睡眠」「食欲・体重」「精神運動」の 3 群は、それぞれ群内の 最高点のみ採用(最高点ルール)です。

ドメイン代表項目の例
睡眠入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・過眠(群内最高点を採用)
食欲・体重食欲低下/増加・体重減少/増加(群内最高点を採用)
精神運動精神運動制止・精神運動焦燥(群内最高点を採用)
抑うつ気分悲哀感・落ち込み
興味・喜びの低下活動への関心低下・楽しみの喪失
全身倦怠(易疲労)活力低下・疲れやすさ
罪責感・無価値感過度な自責・価値のなさの感覚
注意・集中困難思考のまとまりにくさ・決断困難
自殺念慮死についての考え・希死念慮

QIDS-J の 9 ドメインと代表項目

判定値と再評価タイミング

入院/外来/通所いずれでも、初回評価→ 2 ~ 4 週後→以後 4 ~ 8 週ごとを目安に定点観測します。5 点以上の変化は臨床的に意味がある可能性が高く、介入の見直しや主治医への情報共有の契機にします。自殺念慮(該当項目の高得点)は即時リスク評価と上位連携を優先します。 

評価用紙

簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)の評価表(質問紙)が必要な方はこちらからどうぞ☺

リハビリでの活用ポイント

抑うつ症状は運動実施率、ADL / QOL、痛み、歩行耐容能に影響します。QIDS-J で情動面を定量化し、SPPB / 6MWT / 歩行速度など機能指標と並行管理すると、運動療法や行動活性化の効果検証が明確になります。

軽 ~ 中等症(6 ~ 15 点)では有酸素+レジスタンス運動、睡眠衛生・日中活動性の改善を教育し、中等症以上は主治医・精神科と連携して治療方針を統合します。院内では看護・公認心理師・MSWと情報共有の導線を固定化しましょう。 PMC秘書庁

関連記事:歩行・バランス指標の実務ハブ(SPPB・6MWT等)

初期評価〜フォローの導線(例)

  1. 初回:QIDS-J、HADS / GDS-15、機能指標を同日取得
  2. 2 ~ 4 週:QIDS-J再評価→運動処方/セルフケア更新
  3. 8 ~ 12 週:機能指標と併せて反応性を判定→継続/転帰調整(関連尺度の使い分けは下段「実施上の注意」を参照)

自殺念慮項目への対応フロー

陽性(高得点)→即時の安全確認→主治医へ連絡→家族/同居人へ情報共有(同意の範囲)→院内リスクマニュアルに従う。※ブログ内にも緊急時フローチャートの図解を掲載推奨。 秘書庁

日本語版の信頼性・妥当性

日本語版自己記入式 QIDS(QIDS-SR-J)は、原版に準拠した文化適応を経て開発され、国内研究で内的一貫性や収束的妥当性が報告されています。

近年の国内臨床研究・疫学研究でも QIDS-J の使用が広がり、うつ病外来や医師労働環境研究などで標準的に用いられています。尺度としての簡便性・反応性が強みです。 CiNiiサイエンスダイレクトPMC

実施上の注意

QIDS は診断ツールではなく重症度指標です。PHQ-9 や HADS、GDS-15 等と目的別に併用し、せん妄・認知症・パーキンソン病・高度身体疾患では項目解釈に注意します。

睡眠や食欲の項目は薬剤・身体疾患の影響を受けやすく、医師評価(QIDS-C)や面接所見と統合して判断します。自殺念慮の陽性時はスクリーニングの域を超えるため、ただちに専門評価へエスカレーションします。 PMC+1

深掘りリンク:SOAPの書き方|心理・情動所見の記録

ダウンロードとライセンス

実施票・採点法は IDS-QIDS 公式サイト(Administration & Scoring)で確認できます。日本語版は、厚労省資料で採点ルール(最高点の採用等)が和文で整理されています。

研究や配布、二次利用の可否は著作権・ライセンス(Rushら/財団・ePROVIDE)を必ず確認してください。院内配布は原本の出典明記を推奨します。 ids-qids.org厚生労働省ePROVIDE – Mapi Research Trust

まとめ

QIDS-J は診断テストではなく、抑うつ症状の重症度と経時変化を捉えるための簡便な尺度です。9 ドメインの最高点ルールで 0 – 27 点を集計し、機能指標(SPPB・6MWT・歩行速度等)と併せて反応性を評価しましょう。

軽〜中等症では運動療法・睡眠衛生・行動活性化を組み合わせ、重症例や自殺念慮の高得点時は速やかに主治医・精神科と連携を。再評価は 2 – 4 週ごとを基本に、記録と共有体制を標準化することが重要です。

関連記事

参考文献

  1. 臼田謙太郎.臨床研究で使用する自己記入式抑うつ評価尺度の特徴.武蔵野大学心理臨床センター紀要.第13号,2013年,p55-65.
  2. 伊藤絵梨子,田髙悦子.高齢者のうつ.日本地域看護学会誌.Vol.21,No.2,2018,p75-78.
  3. Rush AJ, Trivedi MH, Ibrahim HM, Carmody TJ, Arnow B, Klein DN, et al. The 16-Item Quick Inventory of Depressive Symptomatology (QIDS), clinician rating (QIDS-C) and self-report (QIDS-SR): A psychometric evaluation in patients with chronic major depression. Biol Psychiatry. 2003;54(5):573–583. doi:10.1016/S0006-3223(02)01866-8 / PubMed
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  5. Trivedi MH, Rush AJ, Ibrahim HM, Carmody TJ, Biggs MM, Suppes T, et al. The IDS-C, IDS-SR and the QIDS-C, QIDS-SR in public sector patients with mood disorders: A psychometric evaluation. Psychol Med. 2004;34(1):73–82. doi:10.1017/S0033291703001107 / PubMed
  6. Carmody TJ, Rush AJ, Bernstein IH, Brannan S, Husain MM, Trivedi MH. Making clinicians’ lives easier: Guidance on use of the QIDS self-report in place of the MADRS. J Affect Disord. 2006;95(1–3):115–118. doi:10.1016/j.jad.2006.03.024 / PubMed
  7. Yeung A, Feldman G, Pedrelli P, Hails K, Fava M, Reyes T, Mundt JC. The Quick Inventory of Depressive Symptomatology, Clinician Rated and Self-report: A psychometric assessment in Chinese Americans with major depressive disorder. J Nerv Ment Dis. 2012;200(8):712–715. doi:10.1097/NMD.0b013e318261413d / PubMed
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  9. Surís A, Holder N, Holliday R, Clem M. Psychometric Validation of the 16-Item Quick Inventory of Depressive Symptomatology (QIDS-SR16) in Military Veterans with PTSD. J Affect Disord. 2016;201:187–191. doi:10.1016/j.jad.2016.05.021 / PubMed
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  11. Liu R, Zhang A, Wang J, et al. Reliability and Validity of the QIDS-SR in Depressed Older Adults. Front Psychiatry. 2021;12:686711. doi:10.3389/fpsyt.2021.686711
  12. Wada K, Sasaki T, Nakatani Y, et al. National survey of the association of depressive symptoms with off-duty/on-call and sleep hours among physicians working in Japanese hospitals: a cross-sectional study. Ind Health. 2010;48(6):865–873. PubMed / PMC
  13. Rush AJ, Trivedi MH, Ibrahim HM, et al. The 16-Item QIDS… Biol Psychiatry. 2003;54(5):573–583. PMC
  14. Rush AJ, Bernstein IH, Trivedi MH, et al. QIDSとHAMDの比較(STAR*D). Biol Psychiatry. 2005;59(6):493–501.
  15. Trivedi MH, Rush AJ, Ibrahim HM, et al. IDS/QIDSの精神測定学評価. Psychol Med. 2004;34(1):73–82.
  16. Yeung A, Feldman G, Pedrelli P, et al. QIDS重症度区分の記述. J Nerv Ment Dis. 2012;200(8):712–715. PMC要旨内
    IDS-QIDS Official Site(Administration / Scoring / Interpretation): https://ids-qids.org/
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