HADS の評価法|不安・抑うつの採点と判定基準

評価
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HADSとは?不安と抑うつを短時間で確認する評価です

HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)は、身体疾患を有する外来・入院患者における不安抑うつを、短時間で確認するためのスクリーニング尺度です。全14項目で構成され、不安7項目、抑うつ7項目に分かれます。

HADSは診断を確定する検査ではありません。役割は、不安・抑うつの可能性に早く気づき、面接・多職種共有・再評価につなげることです。身体症状の影響を受けにくい設計のため、病棟や外来で心理面の変化を把握したい場面で使いやすい評価です。

HADSの要点早見表

HADSは、不安と抑うつを別々に合計して判定します。各下位尺度は0〜21点で、点数が高いほど不安または抑うつの傾向が強いと考えます。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

HADSの構成と判定の目安
下位尺度 項目数 スコア範囲 判定の目安
A:不安 7項目 0〜21点 0〜7:正常8〜10:境界域11〜21:異常
D:抑うつ 7項目 0〜21点 0〜7:正常8〜10:境界域11〜21:異常

境界域や異常域の場合でも、HADSだけで診断を決めるのではなく、本人の訴え、睡眠、疼痛、呼吸困難、退院不安、生活背景などを合わせて解釈します。

HADSの判定と次の対応。0〜7点は経過観察、8〜10点は面接と再評価、11〜21点は共有と介入検討につなげる図
図:HADSは点数だけで終えず、判定に応じて面接・共有・再評価へつなげます。

HADSスコア・実務記録シートPDF

以下はHADSのスコアと実務メモを整理する記録シートです。著作権に配慮し、HADSの項目文は掲載していません。点数、判定、困りごと、リハへの影響、共有先、再評価予定を1枚で記録できます。

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HADSの採点方法

  1. 全14項目を確認し、各項目を0〜3点で採点します。
  2. 不安項目と抑うつ項目を分けて集計します。
  3. 逆転項目があるため、必ず公式の採点方法または換算表に沿って点数を確認します。
  4. A:不安、D:抑うつをそれぞれ0〜21点で合計します。
  5. 0〜7、8〜10、11〜21の目安で判定し、必要に応じて面接・共有・再評価につなげます。

注意:HADSはスクリーニング尺度です。高得点でも診断確定ではありません。記録では「HADS高値」だけで終えず、何に困っているか、リハにどう影響しているか、誰に共有したかまで残すと臨床で使いやすくなります。

HADSの運用フロー

HADSを臨床で使うときは、採点だけで終わらせず、評価条件の確認、判定、面接、多職種共有、再評価までをセットで考えると運用しやすくなります。

HADSの運用フロー。準備と条件固定、実施、採点、判定、面接と共有、再評価の流れを整理した図
図:HADSは「準備→実施→採点→判定→共有→再評価」の流れで運用すると、点数を次の対応につなげやすくなります。

カットオフと判定の考え方

一般的には、A・Dそれぞれについて0〜7点を正常、8〜10点を境界域、11〜21点を異常の目安として扱います。ただし、対象者の状態や評価場面によって解釈は変わります。

特にリハビリ場面では、点数だけで判断するよりも、以下を合わせて確認すると実践につながります。

  • 不安や抑うつが、離床・歩行・ADL練習に影響しているか
  • 睡眠、疼痛、呼吸困難、疲労などで回答が揺れていないか
  • 退院、予後、家族、仕事、経済面などの不安が背景にないか
  • 再評価の時期を決めているか
  • 看護師、医師、心理職などへ共有する必要があるか

採点例と記録例

例:A=12点、D=6点の場合

60代、内科病棟。HADSの結果はA=12点、D=6点でした。この場合、Aは異常域、Dは正常域の目安です。

この結果からは、抑うつよりも不安が強い可能性を考えます。ただし、HADSだけで診断はできません。面接で、不安の内容、誘因、リハ参加への影響を確認します。

記録例

HADS:A12点、D6点。Aは異常域。本人より「息切れが出ると歩くのが怖い」と発言あり。疼痛なし、睡眠やや不良。歩行練習前に呼吸状態と不安場面を確認し、看護師へ共有。1週間後に再評価予定。

臨床での使い方

HADSは、点数を出すだけではなく、リハビリの進め方を調整するための情報として使うと効果的です。

たとえば、不安が高い場合は、いきなり負荷量を上げるよりも、説明、見通しの共有、成功体験の設定が重要になります。抑うつが高い場合は、疲労感、意欲低下、睡眠、食欲、活動量低下などを合わせて確認し、必要に応じて多職種へ共有します。

再評価する場合は、評価条件をできるだけそろえます。時間帯、疼痛の有無、呼吸状態、服薬、睡眠、病状説明の前後などで点数が変動することがあります。

HADS運用で詰まりやすい点

HADSは短時間で実施しやすい一方で、現場では「点数を出したあとにどうするか」で迷いやすい評価です。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

HADS運用でつまずきやすい点と対処
詰まりどころ 起きやすい状況 現場での対処 記録のコツ
境界域を様子見で終える 忙しい病棟、退院前後 再評価日を決め、面接で困りごとを1つ確認する スコア+本人の言葉を1行で残す
身体症状で点数が揺れる 疼痛、呼吸困難、術後、疲労 症状が強い時間帯を避け、条件をそろえて再評価する 時間帯、体位、症状の有無を書く
回答の質が落ちる 高齢、注意低下、疲労、せん妄リスク 短時間で区切り、理解できているか確認する 自記式か口頭確認かを残す
高得点を診断のように扱う カンファレンス、申し送り スクリーニング結果として共有し、次の対応をセットにする 「結果」と「次アクション」を分けて記載する
共有しても介入につながらない 多職種連携が弱い 困りごと、誘因、リハへの影響を添えて共有する 共有先と合意した対応を書く

PHQ-9・GAD-7・SRQ-Dとの違い

HADSは、不安と抑うつを同時に確認できる点が特徴です。一方で、抑うつをより詳しく見たい場合はPHQ-9、不安をより詳しく見たい場合はGAD-7、身体症状を含めた抑うつ傾向を確認したい場合はSRQ-Dなど、目的に応じた使い分けが必要です。

評価を選ぶときは、「何を詳しく見たいのか」を先に決めると迷いにくくなります。

  • 不安と抑うつを同時に短時間で見たい:HADS
  • 抑うつ症状を詳しく確認したい:PHQ-9
  • 不安症状を詳しく確認したい:GAD-7
  • 抑うつ傾向のスクリーニングを行いたい:SRQ-D

PHQ-9・HADS・SRQ-Dの違いはこちら

よくある質問

Q1. HADSは診断に使えますか?

A. いいえ。HADSはスクリーニング尺度です。高得点でも診断確定ではありません。臨床面接、経過、他職種の評価と合わせて判断します。

Q2. カットオフは何点ですか?

A. 一般的な目安は、A・Dそれぞれ0〜7点が正常、8〜10点が境界域、11〜21点が異常です。ただし、対象者や評価場面により解釈には注意が必要です。

Q3. HADSはリハビリ職が使ってもよいですか?

A. リハビリ職が心理面の変化に気づき、多職種へ共有するためのスクリーニングとして活用できます。ただし、診断や治療方針の決定を単独で行うものではありません。

Q4. 欠測がある場合はどうしますか?

A. 原則は全項目への回答が必要です。未回答がある場合は、疲労、理解、疼痛、注意低下などの理由を確認し、可能であれば再実施します。

Q5. 高得点のとき最初に何を確認しますか?

A. まずは本人が困っていることを1つに絞って確認します。睡眠、疼痛、息苦しさ、退院不安、家族のことなど、具体的な誘因を整理し、多職種へ共有します。

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参考文献

  1. Zigmond AS, Snaith RP. The Hospital Anxiety and Depression Scale. Acta Psychiatr Scand. 1983;67(6):361–370. https://doi.org/10.1111/j.1600-0447.1983.tb09716.x
  2. Bjelland I, Dahl AA, Haug TT, Neckelmann D. The HADS: A systematic review of the scale’s properties. J Psychosom Res. 2002;52(2):69–77. https://doi.org/10.1016/S0022-3999(01)00296-3

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床で使いやすい評価・制度・リハビリ情報を発信しています。

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハ栄養、シーティング、摂食・嚥下

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