
こんにちは!リハビリくんです!
こちらでは「不安や抑うつを評価する質問票のHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)」をキーワードに記事を書いていきます!
痛みの原因は多岐にわたりますが、そのうちの原因のひとつが精神・心理面になります。そのため、ときには痛みの解決のために精神・心理面の評価が必要になるわけです。
- HADSって何?
- 評価方法やカットオフ値が知りたい
- 評価用紙が欲しい
- 評価項目と採点方法は?
HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)について様々な疑問を抱えることがあると思います!そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)とは
HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)は、1983 年に Zigmond と Snaith によって英国で開発された、不安と抑うつの評価を目的とした質問票です。本来は一般外来に身体症状を訴えて受診する患者に対して使用され、心身の相互作用を捉えるツールとして広く普及しました。
身体疾患に伴う抑うつや不安を検出するために設計されている点が特徴であり、身体症状そのものに影響されにくい項目構成となっています。
現在では世界 16 か国以上で翻訳され、日本語版の信頼性・妥当性も報告されています。
心や精神の痛みとは
国際疼痛学会(IASP)は痛みを「実際の組織損傷、またはそのように表現される不快な感覚的・情動的体験」と定義しています。
つまり、痛みは単なる身体的な感覚だけでなく、心や精神の状態とも密接に関わっています。特に慢性痛では、もはや「身体の警告信号」としての役割は薄れ、むしろ精神的苦痛や生活の質(QOL)の低下として患者を苦しめる側面が強くなります。
HADSで捉える心理的側面
HADS は、身体疾患を抱える患者の「不安」と「抑うつ」を簡便に評価できる質問票です。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が HADS を用いることで、痛みの背景にある心理的要因を抽出できます。
たとえば、慢性腰痛や脳卒中後の肩手症候群では、身体的な要因だけでなく「不安や抑うつ」が疼痛体験を増幅させ、リハビリ意欲や運動習慣に影響を与えることが知られています。
痛みの多面的評価の必要性
痛みは侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心理社会的疼痛の 3 つの因子が様々な割合で混在して成立します。特に慢性痛では、薬物療法だけでは十分に対応できず、心理社会的因子の評価と介入が極めて重要になります。
そのため、VAS や NRS といった「痛みの強さ」を測る尺度だけでなく、HADS のように心理的側面を可視化できるツールを併用することが推奨されます。
これにより、痛みを「感覚」「情動」「認知」「行動」という多面的な構造として把握でき、リハビリ計画に深みを持たせることが可能になります。
評価項目と構成

HADSは 14項目 から構成され、不安と抑うつの 2 つの下位尺度に分けられます。
- 不安(Anxiety):7 項目
- 抑うつ(Depression):7項目
各項目は 4 件法(0 ~ 3 点)で評価され、「不安」と「抑うつ」の項目に分けて評価し、得点範囲は 0 ~ 21 点となります。得点が高いほど不安または抑うつの傾向が強いと解釈され、一般的には 8 点以上で臨床的に意味のある水準とされています。
臨床での活用
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとって、HADS は身体機能評価に加え、心理的側面を考慮したリハビリテーション計画の立案に有用です。
たとえば、脳卒中後うつ(post-stroke depression)や慢性疼痛患者の心理状態を把握することで、訓練参加意欲や生活意欲を左右する因子を早期に抽出できます。HADS は短時間で実施できるため、リハビリ初期のスクリーニングツールとして適しています。
信頼性と有効性
HADS は多数の研究で妥当性と信頼性が検証されており、身体疾患を抱える患者に対しても有効に心理状態を捉えられることが示されています。
特に「身体症状を直接問わない」という特徴は、疼痛や疲労といった身体的因子に影響されにくい評価を可能にし、純粋な心理的側面を抽出する点で臨床的意義があります。
評価方法
過去 1 週間の様子について質問します。
【質問を受ける方への説明】
次に挙げてある 14 の設問を読み、それぞれについて 4 つの答えのうち、あなたのこの 1 週間の御様子に最も近いものに○をつけて下さい。それぞれの設問に長く時間をかけて考える必要はありません。パッと頭に浮かんだ選択肢で答えてみてください。
不安(HADS-A)および抑うつ(HADS-D)のそれぞれ 7 項目の設問を 0 ~ 3 点で採点し合計がそれぞれ 0 ~ 21 点となります。合計点が高いほど不安と抑うつが強いことを示します。
不眠・食欲不振・性的関心の低下などの身体疾患に左右される項目は含まれていないため、身体疾患やその他の理由で身体的影響が認められる場合に、この尺度は有効となります。
また、設問に反転項目(通常は数字が大きいほど重症度が高いが、設問によってはそれが逆になっている)も配置されており、回答者が悪いほうに回答してしまうことを避ける工夫がなされています。
評価用紙

HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)の評価表をダウンロードできるようにしておきました!評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺
HADS 採点方法
4件法により回答してもらいます。不安(HADS-A)および抑うつ(HADS-D)のそれぞれ7項目の設問を0〜3点で採点します。
合計点がそれぞれ0〜21点となり、高いほど不安と抑うつが強いことを示します。回答に必要な所要時間は2~5分とされ、短時間で行えるため、患者への負担は少ないとされています。
カットオフ値
HADS では、不安と抑うつをそれぞれ独立して判定します。一般的なカットオフ値は以下の通りです。
- 0 ~ 7点 :「不安、抑うつなし」
- 8 ~ 10 点 :「疑いあり」
- 11 点以上:「不安、抑うつあり」
この区分は多数の国際的研究で用いられており、日本語版においても同様の基準が報告されています。ただし、対象疾患や文化的背景により感度・特異度が異なるため、臨床ではスクリーニングとして活用しつつ、診断の補助として用いることが望ましいとされています。
リハビリテーションにおける活用
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとって、HADS のカットオフ値は心理的リスクを早期に把握する指標となります。
- 脳卒中リハビリでは、抑うつ傾向が高い患者は運動訓練への参加意欲が低下しやすく、ADL 回復にも影響を及ぼすことが知られています。
- 慢性疼痛患者では、不安や抑うつの存在が痛みの慢性化や治療抵抗性と関連するため、HADS によるスクリーニングは重要です。
- 高齢者や神経疾患患者では、抑うつの見落としが生活機能低下や社会的孤立を招くため、早期の抽出と対応が求められます。
注意点と限界
HADS のカットオフ値は有効な目安ですが、診断ツールではなくスクリーニング指標です。
点数が 8 点以上であっても、必ずしも臨床的に抑うつや不安が存在するとは限らず、心理士や精神科医による精査が推奨されます。また、文化差や疾患特性による解釈の違いにも留意する必要があります。
不安・抑うつの評価について
うつ病は有病率が高く、また状態像としての抑うつも臨床現場で多くみられ、だれにも身近な存在であると言えます。そのため多くの研究が行われ、測定方法も多岐にわたります。
これまで臨床心理学領域でも精神医学領域でも、構造化面接や自記式の質問紙などが数多く開発されてきました。本邦における疫学研究によると、気分障害・不安障害・物質障害のいずれかの障害の生涯有病率は約25%となっております。
中でも特に頻度が高い大うつ病性障害では、生涯有病率が6.2%に上ることが明らかにされています。この調査では日本の複数の地域住民に対してCIDIという構造化面接を用いて行われています。
同じくCIDIを用いた米国の統計では、精神疾患の生涯有病率は46.6%、うつ病の生涯有病率は16.2%であり、かなりの頻度で罹患することが明らかにされています。
高齢者のうつ病を評価することに優れた尺度として、GDS15という評価尺度がございます。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【高齢者用うつ病評価尺度:GDS15についての記事はこちらから】
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)は、身体疾患を有する患者の不安や抑うつを簡便に評価できる信頼性の高いスクリーニングツールです。
身体症状に依存しない設計のため、慢性疼痛や脳卒中後など多様な臨床場面で有効に活用できます。カットオフ値を基準に心理的リスクを早期に把握し、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士はリハビリ計画に心理面を反映させることが可能です。包括的介入に不可欠な評価法といえます。
参考文献
- 松永美佳子,柴田政彦,中尾和久,真下節.Hospital Anxiety and Depression Scale(HAD尺度)は慢性疼痛に対する認知行動療法の効果判定に有用である.日本ペインクリニック学会誌.Vol.11,No.2,2004,p100-106.
- 臼田謙太郎.臨床研究で使用する自己記入式抑うつ評価尺度の特徴.武蔵野大学心理臨床センター紀要.第13号,2013,p55-65.