筋力測定の使い分けと記録|MMT・HHD・10RM【PDF付】

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筋力測定は目的別にMMT・HHD・RM法を使い分けます

筋力測定は、方法を増やすより「何を判断したいか」に対して主役を1つ決めると整理しやすくなります。

評価ハブで全体像を確認する

全体を短時間で確認するならMMT、左右差や経時変化を数値で追うならHHD、運動種目の負荷を設定するなら1RM・10RMなどのRM法が候補です。ただし、すべての症例でMMT、HHD、10RMの順に実施する必要はありません。

この記事では、筋力測定をスクリーニング・定量的な再評価・トレーニング負荷設定の3目的に分け、選び方と記録条件を整理します。A4 1枚の筋力測定記録シートPDFも掲載しているため、姿勢・関節角度・固定方法・単位を揃えて再評価したいときに活用できます。

結論:何を知りたいかで測定法を選びます

筋力測定では、最初にスクリーニング、数値による比較、負荷設定のどれが目的かを決めます。目的が異なれば、適した測定法と記録すべき条件も変わります。

目的から選ぶ筋力測定。弱い筋や運動方向を広く確認する場合はMMT、左右差や経時変化を数値で追う場合はHHD、トレーニング負荷を決める場合は1RM・10RMなどを選ぶ図
筋力測定は、知りたいことに合わせてMMT・HHD・RM法を使い分けます。
目的から選ぶ筋力測定の基本形
知りたいこと 主な選択肢 向いている場面 記録の最小セット
筋力低下の部位を広く確認したい MMT 初回評価、全身のスクリーニング、運動方向ごとの確認 Grade、姿勢、代償、疼痛、関節可動域
左右差や経時変化を数値で追いたい HHD 重点筋の再評価、介入前後の比較 測定値、姿勢、関節角度、当て位置、固定、回数、単位
運動種目の負荷を決めたい 1RM・10RMなど レジスタンストレーニングの負荷設定 種目、重量、回数、可動域、テンポ、休憩、疼痛、フォーム

初回にMMTで重点筋を絞り、その筋をHHDで追う方法は実務上使いやすい組み合わせです。一方、測定目的が負荷設定であれば、MMTやHHDを必ず経由するのではなく、対象者の状態と実施種目に応じてRM法や反復回数、主観的運動強度などを選びます。

MMT・HHD・1RM/10RMの使い分け早見表

3つの方法は、同じ筋力を異なる精度で測るだけの関係ではありません。MMTとHHDは主に筋力評価、RM法は特定種目の負荷設定に強みがあります。

MMT・HHD・RM法の向いている場面と注意点
方法 主な目的 強み 注意点 選ぶ場面
MMT 筋力低下のスクリーニング 機器を使わず、複数の筋・運動方向を短時間で確認しやすい 抵抗の加え方や固定に検者差が入りやすく、特に強い筋力の細かな変化を表しにくい 弱点となる筋や運動方向を絞りたいとき
HHD 等尺性筋力の定量化 左右差や経時変化を数値で記録できる 姿勢、関節角度、当て位置、固定方法が変わると単純比較できない 重点筋を同一条件で繰り返し測定したいとき
1RM・10RM 特定種目の負荷設定 実施する運動に対応した重量を決めやすい 可動域、テンポ、フォーム、疼痛、疲労に左右され、筋単独の能力とは限らない レジスタンストレーニングの開始負荷や進行を検討するとき

選び方に迷う境界は「数値が必要か」で判断します

MMTとHHDのどちらを選ぶか迷ったときは、その結果を段階で共有できればよいのか、数値として比較する必要があるのかを確認します。

  • 筋力低下の有無や運動方向を広く確認したい:MMTを主役にする
  • MMTでは変化を表しにくい筋を追いたい:HHDを追加する
  • 左右差を数値で共有したい:同一条件のHHDを検討する
  • 実施する筋力トレーニングの重量を決めたい:RM法などを検討する
  • 疼痛や指示理解の問題で最大努力が難しい:最大筋力値だけに頼らず、別の評価方法と合わせる

MMTとHHDは置き換えではなく、役割分担ができます。MMTの具体的な肢位や判定は、MMTのやり方・記録方法で確認してください。

筋力測定が比較できなくなる3つの原因

再評価が成立しない主な原因は、測定条件の変化、固定不足、記録不足です。数値だけを残しても、前回と条件が違えば変化を正しく解釈できません。

筋力測定が比較できなくなる原因と修正方法
原因 起こる問題 修正方法 記録すること
測定条件が違う 姿勢や関節角度の差を、筋力変化と誤認する 施設または担当者内で測定手順を決める 姿勢、関節角度、当て位置、ウォームアップ
固定が不十分 検者の保持力や体格差が測定値へ影響する 適用可能な測定ではベルトや支持物による固定を検討する 固定方法、ベルト位置、支点
数値しか残していない 次回に同じ方法を再現できない 測定値と条件をセットで記載する 試行回数、採用方法、単位、疼痛、代償

MMTは弱点を絞るスクリーニングとして使います

MMTは、機器を用いずに複数の筋や運動方向を確認できることが強みです。ただし、結果はGradeだけでなく、どの条件でそのGradeになったのかと合わせて解釈します。

MMTでGradeと一緒に残す情報
項目 記録例 区別できること
測定肢位 座位、体幹支持あり 前回と同じ肢位で測ったか
代償 体幹側屈による代償あり 目的動作だけで遂行できたか
疼痛 疼痛3/10により抵抗を制限 筋力低下と疼痛による出力低下
関節可動域 自動運動は終末域まで到達せず 可動域制限を伴っているか
固定 肩甲帯を固定して実施 近位部の安定性が条件に含まれるか

Gradeの変化だけでは介入効果を十分に表せない場合は、対象筋を絞ってHHDを追加します。ただし、疼痛、疲労、理解力、痙縮、関節可動域などが測定へ影響していないかも確認が必要です。

HHDは測定条件を固定して経時変化を追います

HHDでは、表示された数値よりも先に姿勢、関節角度、当て位置、固定方法、試行回数、採用値、単位を揃えます。異なる条件で測定した値は、同じ筋名であっても単純には比較できません。

HHDの具体的な実施方法を決めるときは、HHD筋力測定の手順と固定方法も確認してください。

膝伸展筋力を測るときに固定する項目

膝伸展筋力では、座位やベルト固定が用いられることがあります。ただし、関節角度やセンサーの当て位置は、採用するプロトコルによって異なります。途中で別の測定条件へ変更せず、採用した方法を記録して再現することが重要です。

HHDによる膝伸展筋力測定で記録する条件
項目 確認内容 記録例
姿勢 座位、背もたれ、骨盤・体幹の支持 端座位、体幹支持あり
関節角度 股関節・膝関節の角度 膝関節屈曲90°
当て位置 センサーを当てる下腿上の位置 外果近位から○cm
固定方法 ベルト位置、支点、固定物 ベルト固定、支点はベッド脚
上肢位置 ベッドや椅子を把持するか 胸の前で組む

HHDの測定手順は施設内で統一します

収縮時間、試行回数、休憩時間、最大値と平均値のどちらを採用するかは、測定目的や使用機器、採用するプロトコルによって変わります。次の順序で手順を固定してください。

  1. 測定条件を説明する:姿勢、運動方向、力の入れ方を共有する
  2. 練習試行を行う:痛みや代償がなく、指示どおり力を発揮できるか確認する
  3. 決めた回数で本測定する:収縮時間と休憩時間を試行間で揃える
  4. 不適切な試行を記録する:疼痛、代償、固定のずれがあった試行を区別する
  5. 採用方法を明記する:最大値、平均値など、どの値を結果としたか残す

「2回測定して最大値を採用する方法」と「3回測定して平均値を採用する方法」を途中で混在させると、経時比較が難しくなります。施設内で採用する方法と、使用機器の説明書を確認して統一してください。

kgfとNは同じ単位に揃えて比較します

HHDは機種や設定によって表示単位が異なります。kgfとNをそのまま並べて比較せず、同じ単位へ統一してください。

kgfからNへの換算
換算
kgfからN N=kgf×9.80665 30kgf≒294N

対象者間の比較や研究値との比較では、必要に応じて体重で正規化した値やモーメントアームを考慮した値が使われることもあります。単純なkgfまたはNと、正規化された値を混同しないようにします。

1RM・10RMは運動種目の負荷設定に使います

1RMは1回だけ反復できる重量、10RMは原則として決めたフォームと可動域で10回反復できる重量を表します。「10回実施した重量」であっても、まだ余裕がある場合は10RMとは限りません。

RM法の結果は、測定した運動種目に固有です。レッグプレスの10RMを、そのまま膝伸展筋単独の最大筋力として扱うことはできません。

RM法を負荷設定に使うための確認項目
固定する条件 確認例 条件が変わった場合
運動種目 レッグプレス、膝伸展運動など 異なる種目のRM値として扱う
可動域 開始角度と終了角度 同じ重量でも運動負荷が変わる
テンポ 反動を使わず一定速度で実施 反復可能回数が変わる
フォーム 代償動作がない範囲 目標筋以外の寄与が増える
休憩 試行間の休憩時間 疲労の程度が変わる

最大努力の指示を理解しにくい場合、医学的リスクが高い場合、疼痛やフォーム崩れがある場合は、無理に1RMや10RMを測定しません。より軽い負荷での反復回数、運動中の症状、主観的運動強度、動作の質などを組み合わせて開始負荷を調整します。

疼痛や代償が出た試行は数値と分けて記録します

筋力測定では、最大値を得ることよりも安全かつ再現可能な条件で測ることを優先します。次のような場合は、試行の中止、条件変更、別の評価方法を検討します。

  • 測定中に新たな痛みや症状が出現した
  • 痛みが増強し、最大努力を継続できない
  • 代償動作を修正しても目的動作を維持できない
  • 固定が外れ、測定条件を保てない
  • 指示した運動方向や力の入れ方を理解できない
  • 全身状態から最大努力の実施が適切でない

中止した場合も、「測定不能」とだけ書かず、どの条件で、どの症状または代償により中止したかを記録すると、次回の評価方法を選びやすくなります。

筋力測定は値と再現条件をセットで記録します

次回も同じ方法で比較するために、数値だけでなく測定条件を残します。最低限、姿勢、関節角度、固定、試行回数、採用方法、単位を記録してください。

MMT・HHD・10RMの記録例
日付 部位・種目 方法 測定条件 結果 補足
____/__/__ 右膝伸展 HHD 端座位、膝90°、下腿遠位、ベルト固定、単位kgf、3試行 __/__/__kgf、最大値__kgf 疼痛__/10、代償なし
____/__/__ 左肩外転 MMT 座位、体幹支持あり Grade __ 体幹側屈あり、疼痛なし
____/__/__ レッグプレス 10RM 可動域__、テンポ__、休憩__分 __kgで10回 10回目で反復困難、フォーム維持

筋力測定記録シートPDF

A4 1枚で、患者情報、測定方法、測定条件、試行値、採用値、疼痛・代償、再評価メモを記録できるシートです。HHDの条件とMMTの補足所見を同じ用紙に残したい場面で利用できます。

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プレビューが表示されない場合は、筋力測定記録シートPDFを開いてご利用ください。

筋力測定のよくある質問

各項目名をタップまたはクリックすると回答が開きます。

Q1. MMT・HHD・10RMは、どの順番で実施しますか?

全例で決まった順番にする必要はありません。筋力低下の部位を広く確認するならMMT、重点筋の変化を数値で追うならHHD、運動種目の負荷を決めるならRM法を選びます。初回にMMTで重点筋を絞り、HHDを追加する方法は実務上使いやすい組み合わせです。

Q2. HHDは2回と3回のどちらがよいですか?

試行回数だけで一律には決められません。使用機器、対象筋、採用する測定プロトコルに合わせて回数、収縮時間、休憩、採用値を決めます。再評価では、前回と同じ方法を用いることが重要です。

Q3. HHDは最大値と平均値のどちらを記録しますか?

採用するプロトコルによって異なります。最大値を使う場合も平均値を使う場合も、試行回数と採用方法を明記してください。異なる採用方法で算出した値を、そのまま経時比較しないようにします。

Q4. MMTだけで経過を追ってもよいですか?

MMTで目的を満たせる場合は可能です。ただし、同じGrade内の変化や左右差を数値で示す必要がある場合は、条件を固定したHHDの追加を検討します。疼痛や可動域制限など、筋力以外の要因も併記してください。

Q5. 疼痛があるときも10RMを測定しますか?

痛みが増える場合やフォームを保てない場合は、無理に10RMを求めません。より軽い負荷での反復、症状、主観的運動強度、動作の質などを確認し、負荷を調整します。中止した理由と条件も記録してください。

次に確認する記事

この記事で測定法の役割を整理したら、次は実際に使う方法の手順と記録条件を固定します。

  • 全身の筋力を段階的に確認する場合は、MMTの各論で測定肢位と記録方法を確認する
  • 重点筋を数値で追う場合は、HHDの各論で当て位置と固定方法を確認する

参考文献

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  • Hirano M, Katoh M, Gomi M, Arai S. Validity and reliability of isometric knee extension muscle strength measurements using a belt-stabilized hand-held dynamometer: a comparison with the measurement using an isokinetic dynamometer in a sitting posture. J Phys Ther Sci. 2020;32(2):120-124. DOI / PubMed
  • Katoh M. Reliability of isometric knee extension muscle strength measurements made by a hand-held dynamometer and a belt: a comparison of two types of device. J Phys Ther Sci. 2015;27(3):851-854. DOI / PubMed
  • Baschung Pfister P, de Bruin ED, Sterkele I, Maurer B, de Bie RA, Knols RH. Manual muscle testing and hand-held dynamometry in people with inflammatory myopathy: an intra- and interrater reliability and validity study. PLoS One. 2018;13(3):e0194531. DOI / PubMed
  • American College of Sports Medicine. Progression models in resistance training for healthy adults. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(3):687-708. DOI / PubMed
  • Fragala MS, Cadore EL, Dorgo S, Izquierdo M, Kraemer WJ, Peterson MD, Ryan ED. Resistance training for older adults: position statement from the National Strength and Conditioning Association. J Strength Cond Res. 2019;33(8):2019-2052. DOI / PubMed

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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