SCP とは?プッシャー症候群の評価と判定

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SCP( Scale for Contraversive Pushing )とは?|プッシャー評価を「条件固定」で回す

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SCP( Scale for Contraversive Pushing )は、脳卒中後のプッシャー行動( pusher behavior )を「座位・立位」で観察し、A / B / C の 3 要素で “ 陽性か否か ” を判定する臨床尺度です。コツは合計点よりも「各セクションが 0 より大きいか(各 > 0)」で裁定することです。

現場でブレやすいのは、座面高さ・足底接地・介助量などの条件差が、そのままスコア差に見えてしまう点です。この記事では、SCP を “ 再現できる型 ” に落とし込み、誤判定を減らす観察ポイントと記録の残し方まで整理します。

この記事の位置づけ(ハブ → 親 → 小)

本記事は「小記事(単体スケール)」として、SCP の実施と裁定を最短で回すことに特化します。比較や全体設計は上位の親記事でまとめ、必要なときに戻れる導線にします。

配置は、ハブ:/hub-evaluation/ → 親記事:/evaluation-motor-function-hub/ → 小記事:本ページ( SCP )が基本です。経過(変化)の追跡が目的なら、BLS も併用すると迷いが減ります(関連:BLS( Burke Lateropulsion Scale )の評価法)。

5 分でできる SCP 実施フロー(条件固定 → 観察 → 裁定)

SCP は「観察の順番」と「条件固定」を先に決めるほど、チーム内で所見が揃います。まずは介入(鏡や外的フィードバック)を入れずに観察と記録を終え、介入はその後に回すのが安全です。

以下は、病棟や訓練室で再現しやすい “ 5 分フロー ” です。評価ごとに環境が変わる部署ほど、この順番を固定しておくとブレが減ります。

  1. 安全確保:転倒対策(介助者 1〜2 名、ベッド・椅子・歩行器など)を準備し、疼痛・血圧・疲労を確認します。
  2. 条件固定:座面高さ(股・膝 90° 目安)、足底接地、麻痺側下肢の支持、手の置き場所(支持の有無)を決めて記録します。
  3. 座位で A / B / C を観察:自然姿勢(何も指示しない)→ 姿勢保持課題 → 受動修正の順で見ます。
  4. 立位で A / B / C を観察:可能な範囲で同条件を再現し、体幹・骨盤の偏位と抵抗を見ます。
  5. スコアリング:A(傾斜)、B(健側で押す)、C(矯正抵抗)を各場面で採点します。
  6. 裁定:臨床スクリーニングは「A / B / C がすべて 各 > 0」で陽性とします。
  7. 再評価:急性期は 48–72 時間、回復期は週 1 回以上を目安に “ 同条件 ” で追跡します。

SCP の採点( A / B / C )を “ 観察の言葉 ” に落とす

SCP は 3 要素( A / B / C )を、座位・立位で観察して採点します。得点そのものより、どの要素が強いか(傾斜 / 押し / 抵抗)を分解できると、介助量と練習設計が決めやすくなります。

ここでは、設問文の丸写しではなく、臨床で迷いやすい点を「見え方」と「記録の残し方」で整理します。

A:自発姿勢(傾斜の出方)

A は、自然な座り・立ちの中で “ 患側へ傾く癖 ” がどの程度あるかを見ます。恐怖・疼痛・めまいなどで一時的に傾くケースは、PB と混同しやすいので「別要因として併記」しておくと安全です。

観察は、胸骨〜臍のライン、肩峰ライン、ASIS 高低差、骨盤の回旋・側屈をセットで見て「傾きが持続しているか」を中心に記録します。

B:健側上下肢の外転・伸展( “ 押し ” の有無)

B は、健側の上肢・下肢を “ 支え ” として使い、身体を患側へ押し出すような出方があるかを見ます。単なる把持や防御(怖くて手をつく)と PB の押しは似て見えるため、体幹・骨盤の動きとセットで判断します。

「手で支持面を押して体幹が患側へ移る」「下肢の突っ張りが体幹側屈に連動する」など、全身の連鎖が見えるほど PB らしさが強い、と記録すると共有しやすいです。

C:受動矯正への抵抗(押し返し・拒否)

C は、検者が正中方向へ修正したときの抵抗の出方を見ます。ポイントは “ 触れ方 ” を一定にすることです(触れる・支える・引くが混ざると、抵抗が強く見えてしまいます)。

疼痛防御(痛いから嫌がる)や痙縮、過緊張による抵抗は PB と混同しやすいので、「痛みの訴え」「筋緊張所見」「表情・拒否反応」も同時に記録しておくのが実務的です。

判定基準(カットオフ)|臨床は「各 > 0」を基本にする

SCP は合計点だけで PB の有無を決めるよりも、「A / B / C がすべて 0 より大きいか(各 > 0)」で判定するほうが、臨床診断との一致が良いと報告されています。まずはスクリーニングとして見落としを減らす設計が現実的です。

一方で、研究や厳密な抽出をしたい場面では、より厳格な基準を採用する考え方もあります。現場では “ 陽性かグレーか ” を決めたら、条件固定の再評価で確かめるのが安全です。

SCP の裁定(成人・脳卒中):よく使われる基準の考え方
基準(例) 定義(考え方) 実務での位置づけ 注意点
推奨:各 > 0 A / B / C の各サブスコアが 0 より大きい 見落としを抑えるスクリーニング向き 条件差があると “ あり ” に寄るため、環境・介助を固定する
厳格基準(例) より高い閾値で “ 明確例 ” を抽出する 研究・介入効果検証などで検討 軽症例を拾いにくく、偽陰性に注意
合計点のみで裁定 総得点が一定以上など 推奨しにくい 一致度が下がりやすく、臨床説明が難しい

SCP / BLS / 4PPS の使い分け(早見表)

結論として、SCP は「陽性か否か」と “ どの要素が強いか( A / B / C )” を固めるのに向きます。一方で、立位・歩行を含む軽症例の追跡や、変化の拾い上げでは別スケールが有利なことがあります。

迷ったら「初回は SCP で裁定 → 経過は BLS や 4PPS で追う」の役割分担にすると、チーム内の会話が揃いやすいです。

プッシャー( lateropulsion )の評価スケール:目的別の使い分け
指標 主な目的 主な場面 強み 注意点
SCP PB の有無(裁定)と要素分解( A / B / C ) 座位・立位 短時間で “ 診断の芯 ” を作りやすい 条件差(座面・足底・介助)で点が動く
BLS 重症度と変化の追跡(経過) 寝返り・座位・立位・移乗・歩行 立位・歩行の軽い lateropulsion を拾いやすい 場面が多いぶん、評価条件の標準化が必要
4PPS lateropulsion を簡便に定量(回復期で使いやすい) 主に立位・移乗など 短時間で反応性良く “ 変化 ” を追いやすい 施設内で手順統一しないと解釈が割れる

現場の詰まりどころ(よくある失敗)|“ 押し ” に見えるものを分ける

SCP が難しくなるのは、A / B / C が同時に見えない症例と、恐怖・疼痛・不安定回避が “ 押し ” に見える場面です。まずは「条件固定 → 所見の分解 → 閾値で裁定」の順に戻ると、判断が安定します。

以下は、臨床で特に起こりやすい “ 誤判定パターン ” をまとめた早見です。チーム内で共有すると、所見の言語が揃いやすくなります。

SCP の誤判定を減らす:よくあるパターンと切り分け
迷いやすい状況 PB に見える所見 別要因のヒント 対策(条件固定) 記録例
怖くて手をつく B(健側支持)が “ 押し ” に見える 体幹・骨盤が患側へ “ 移動しない ” /表情・発言が恐怖優位 支持面を統一、保持課題の定義を固定 「把持で安定化。体幹側屈の連鎖は乏しい」
疼痛が強い C(矯正抵抗)が強く見える 痛みの訴え、筋緊張所見、特定方向で拒否 触れ方・介助量を一定化、疼痛評価を併記 「修正で疼痛訴え。抵抗は疼痛防御の可能性」
座面が高すぎる / 足が浮く A(傾斜)が増えたように見える 足底接地なし、支持基底面が不安定 座面高さと足底接地を固定(写真も有効) 「座面高で足底不十分。再評価は条件修正後」
介助者が変わる C の評価が割れる 触れ方(支える / 引く)が違う 触れる部位と方向を統一、手順を短文化 「矯正は胸郭から正中へ。手の置き方統一」

スコアの読み取りとリハへの落とし込み(介助量・練習設計)

SCP は “ 点数を上げる ” というより、「安全管理」と「練習の入口」を決めるための共通言語として使うと強いです。特に A(傾斜)× C(抵抗)が強いほど、介助量を厚めにし、転倒リスクを優先して設計します。

練習は「正中保持をいきなり狙う」より、押し行動が出にくい条件で成功体験を作り、座位 → 立位 → 移乗へ一般化するほうが破綻しにくいです。

  • A が強い:環境(座面・支持面)とアライメントを整え、まず “ 楽に保てる正中 ” を作る
  • B が強い:健側の “ 押し ” を置換(手の置き換え、下肢突っ張りの抑制、課題の分割)
  • C が強い:矯正刺激を小さくし、恐怖・疼痛・緊張の寄与を切り分ける

ミニケース:SCP が揺れたときの考え方

症例:右半球病変の脳卒中。端座位は保持できるが、移乗で左へ押すように見える。介助者が変わると “ 押し ” の印象が割れる。

整理:まず座面高さと足底接地を固定し、自然姿勢で A(傾斜)を確認。次に「把持なのか押しなのか」を体幹・骨盤の連鎖で判断し、C は触れ方(胸郭から正中へ)を統一して再評価します。裁定は合計点ではなく、A / B / C がすべて 各 > 0 かで決めます。

記録を崩さないコツ(条件メモの残し方)

SCP は “ 条件固定 ” が信頼性を左右します。再評価でズレると、改善なのか条件差なのか分からなくなるため、最初の 1 回目で条件メモを作っておくのが近道です。

最低限、座面高さ、足底接地、介助量(触れる / 支える)、手の置き場所、評価場所(ベッドサイド / 訓練室)をセットで残し、次回は同条件で回せる形にします。

  • 座位:椅子の高さ(クッション有無)、足底接地、麻痺側支持、上肢支持の有無
  • 立位:補装具・靴、支持物(手すり等)、介助者位置、修正の触れ方
  • 裁定:A / B / C の “ どれが出たか ” と、迷った所見(恐怖 / 疼痛など)

よくある質問(FAQ)

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Q1. SCP と BLS、どちらを優先すべきですか?

A. 初回は SCP で「陽性か否か」と A / B / C のどこが強いかを固めるのが実務的です。経過(小さな変化)を追う段階では、立位・歩行も含む BLS を併用すると変化が拾いやすくなります。

Q2. 閾値は「各 > 0」で固定してよいですか?

A. 臨床のスクリーニングでは「各 > 0」が基本です。症状が薄く揺れるときは、閾値の議論よりも “ 条件固定の再評価 ” で確かめるほうが、転倒リスク管理とチーム共有の観点で安全です。

Q3. 再評価の頻度はどれくらいが目安ですか?

A. 急性期は 48–72 時間ごと、回復期は週 1 回以上を目安に、同条件で定点観測します。評価条件がズレると改善の解釈が割れるため、まずは条件メモを固定するのがおすすめです。

Q4. “ 押し ” と恐怖による把持が区別できません

A. 体幹・骨盤が患側へ “ 移動する連鎖 ” が見えるかを軸にすると整理しやすいです。把持だけで体幹移動が乏しい場合は、PB 以外(恐怖・不安定回避)の寄与が大きい可能性があります。

参考文献

  1. Karnath HO, Brötz D. Instructions for the Clinical Scale for Contraversive Pushing (SCP). Neurorehabil Neural Repair. 2007;21(4):370–371. doi: 10.1177/1545968307300702 / PubMed
  2. Baccini M, Paci M, Rinaldi LA. The Scale for Contraversive Pushing: A reliability and validity study. Neurorehabil Neural Repair. 2006;20(4):468–472. doi: 10.1177/1545968306291849 / PubMed
  3. Baccini M, Paci M, Nannetti L, Biricolti C, Rinaldi LA. Scale for Contraversive Pushing: Cutoff Scores for Diagnosing “Pusher Behavior” and Construct Validity. Phys Ther. 2008;88(8):947–955. doi: 10.2522/ptj.20070179 / PubMed
  4. Bergmann J, Krewer C, Rieß K, et al. Inconsistent classification of pusher behaviour in stroke patients: a direct comparison of the Scale for Contraversive Pushing and the Burke Lateropulsion Scale. Clin Rehabil. 2014;28(7):696–703. doi: 10.1177/0269215513517726 / PubMed
  5. Chow E, et al. Reliability and Validity of the Four-Point Pusher Score. Physiother Can. 2019;71(1):34–42. PMC / PubMed
  6. Nolan J, et al. Clinical practice recommendations for management of lateropulsion after stroke determined by a Delphi expert panel. Clin Rehabil. 2023. doi: 10.1177/02692155231172012 / PubMed

おわりに

プッシャーの評価は「安全の確保 → 条件固定 → A / B / C の分解観察 → 閾値で裁定 → 同条件で再評価」というリズムで回すほど、チーム内の判断が揃っていきます。

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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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