JSS(脳卒中重症度スケール)の評価と使い方

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JSS(脳卒中重症度スケール)の評価:計算手順と運用のコツ

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JSS(Japan Stroke Scale)は、急性期の神経症候を「重み付き(加重値)」で数値化し、重症度の共有と経時変化の追跡に使いやすい評価スケールです。各項目で A / B / C を選び、右欄の加重値を合計し、定数( CONSTANT )を加算してスコアを算出します(値が大きいほど重症)。

本稿では、公式票の文面をそのまま載せずに、評価の流れ・計算の注意点・観察のコツ・チーム共有の書き方を現場仕様で整理します。関連:脳卒中評価の使い分け|急性期〜生活期と 5 選

現場の詰まりどころ(ここでブレやすい)

JSS は「計算」よりも、前提条件(評価条件)を揃えることが難所です。点が合っていても、条件が揃っていないと解釈がブレます。

  • 意識・注意・失語:指示の通りやすさが変わると、同じ症候でも点が動きやすい(比較は同条件が前提)。
  • 視野欠損 vs 無視:探索エラーは両方で起こるため、観察の言語化(何が主因か)が重要。
  • 麻痺以外の制限:疼痛、装具・固定具、関節可動域制限、失行で運動評価が不安定になりやすい。
  • 数値だけが一人歩き:画像、嚥下、ADL、合併症リスクと統合して運用する。

評価の流れ( 5 ステップ )

  1. 安全確認:意識、呼吸循環、SpO2、疼痛、不整脈などを確認し、評価の可否を判断します。
  2. 初回値の取得:可能な限り早期に「初回値」を取り、以後の比較軸を作ります。
  3. 併用尺度の選択:症候の見取り図は NIHSS、運動中心なら JSS-M、高次脳機能中心なら JSS-H を検討します。
  4. 統合:画像、嚥下、ADL 所見と合わせて、リスク管理と介入優先順位を決めます。
  5. 再評価:日次(または状態変化時)に再評価し、初回からの変化( Δ )を記録します。

JSS の計算手順(取り違え防止)

JSS の計算は、手順を固定するとミスが減ります。まず各項目で A / B / C を 1 つ選び、対応する加重値をメモします。全項目の加重値を合計し、最後に定数( CONSTANT )を加算します(値が大きいほど重症)。

JSS 系スケールの算出式(成人・急性期中心)
尺度 計算の形 CONSTANT 注意点
JSS 加重値合計 + CONSTANT -14.71 定数の符号ミスが多い
JSS-M 加重値合計 + CONSTANT +14.60 運動中心。JSS と定数が異なる
JSS-H 加重値合計 + CONSTANT +14.00 高次脳機能中心。定数の取り違えに注意

運用のコツは「同じ条件で繰り返す」ことです。鎮静、疲労、疼痛、固定具、指示理解の変化など、条件が違うと点の差が症候の差なのか条件差なのか分かりにくくなります。

使い分け早見表( JSS / NIHSS / JSS-M / JSS-H )

スマホでは表が横スクロールできます。

JSS と関連スケールの使い分け(成人・急性期中心)
尺度 主目的 項目の傾向(概略) 強み 注意点 一次情報
JSS 急性期の重症度を重み付きで総合評価 意識、言語、無視、視野、眼球運動、瞳孔、感覚、運動 など 連続値で経時変化を追いやすい 計算(加重値+定数)が必須 日本脳卒中学会(配布ページ)
NIHSS 神経学的欠落症状の標準化評価 意識、視野、顔面、上下肢、失語、構音、消去 など 急性期評価の共通言語として普及 誘導(コーチング)で結果が変わりやすい NINDS(NIHSS)
JSS-M 運動機能障害の重症度 座位、立位、歩行、上下肢の動作レベル など 運動面のフォローに向く 定数( +14.60 )の取り違えに注意 日本脳卒中学会(配布ページ)
JSS-H 高次脳機能の広がりの把握 注意、行動・意欲、課題遂行の観察 など 「できない理由」の整理に向く 定数( +14.00 )の取り違えに注意 日本脳卒中学会(配布ページ)

項目の見方(観察ポイントの要点)

ここでは項目文や選択肢をそのまま載せず、観察がブレやすいポイントだけを要点化します。

意識( LOC )

評価の土台です。呼名→刺激の順で、最初の反応を尊重します。評価中に反応が変わる場合は、同一セッション内でも「状態変化」として別枠で記録します。

言語

理解と表出を分けて観察します。聴力低下、構音障害、失行が混ざると見かけが変わるため、「何が障害されているか」を短く言語化して残します。

半側空間無視・視野

探索の偏りは視野欠損でも起こります。視野の確認(提示位置や順序を変える)と探索課題(線分、描画、探索)をセットで観察し、「見えない」なのか「見ていない」なのかを切り分けます。

運動・感覚

麻痺だけでなく、疼痛、関節可動域制限、固定具、失行、注意低下の影響を先に切り分けると評価が安定します。感覚は左右差だけでなく再現性も確認します。

解釈(運用の目安)

JSS は連続量で、単一のカットオフに頼る運用は推奨されません。現場では、①初回値と経時変化( Δ )②内訳(何が足を引っ張っているか)③画像・嚥下・ADL 所見との統合、の 3 点で解釈するとブレにくくなります。

「数値の便利さ」よりも、比較可能性(再現性)を優先してください。条件が揃わない場合は、点数に加えて「評価条件(姿勢、装具、疼痛、指示理解など)」をログとして残すだけで、解釈の質が上がります。

カルテ記載テンプレ(観察→評価→解釈→対応)

下記は「そのまま貼って埋める」ための最小テンプレです(施設の書式に合わせて調整してください)。

〖JSS〗 10:30、同一条件で再評価。JSS=(加重値合計)+( -14.71 )。前回比 Δ=〇。
〖内訳〗 LOC=〇、言語=〇、無視=〇、視野=〇、眼球=〇、瞳孔=〇、感覚=〇、運動(上肢/下肢)=〇。疼痛/固定具/失行/注意低下の影響=〇。
〖統合〗 画像=〇、嚥下=〇、ADL=〇、合併症リスク(転倒/誤嚥/ VTE など)=〇。
〖解釈〗 主要な変化は〇。リスクは〇。介入優先順位は〇。
〖対応〗 監視強化/主治医共有/嚥下評価依頼/ポジショニング調整/家族説明。

よくあるミスと回避策(再現性を下げない)

「忙しくて毎回条件が揃わない」を前提に、ミスを標準化(固定化)で潰します。

JSS 運用で起こりやすいミス( NG )と回避策( OK )
つまずき NG(起こりがち) OK(こう直す) 記録ポイント
手順の揺れ 順序・姿勢・声かけが毎回変わる 「順序・姿勢条件・声かけ」を固定して短縮する 姿勢、支持の有無、介助量、声かけの種類
条件ログ不足 時間帯・鎮痛・装具条件が不明 同条件で再評価。難しければ条件をログ化して解釈に反映 時間帯、疼痛、装具、内服、疲労
視野/無視の混同 探索偏りを一括で「無視」と記載 視野確認+探索課題をセットにし、主因を言語化 視野所見、探索の偏り、課題条件
数値の単独解釈 点だけで重症度や方針を決める 画像・嚥下・ADL と統合して意思決定する 統合所見(嚥下、ADL、合併症リスク)

よくある質問(各項目名をタップすると回答が開きます)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

JSS と NIHSS の違いは何ですか?

JSS は「重み付き(加重値)合算+定数」による連続値で、経時変化の追跡に向いた設計です。NIHSS は神経所見を標準化して共有しやすく、急性期での共通言語として広く使われます。現場では「共有したい(連携)」「変化を追いたい(追跡)」のどちらが主目的かで使い分け、必要に応じて併用します。

JSS-M と JSS-H はいつ使うのが良いですか?

運動面のフォローを厚くしたいときは JSS-M、高次脳機能の広がりや「できない理由」を整理したいときは JSS-H が向きます。どちらも定数が異なるため( JSS-M は +14.60、JSS-H は +14.00 )、算出時の取り違えに注意してください。

「視野」と「無視」の切り分けが難しいです

視野欠損でも探索は偏ります。視野の確認(提示位置や順序を変える)と、探索課題(線分、描画、視覚探索など)をセットで観察し、「見えない」なのか「見ていない」なのかを言語化して記録すると、チーム共有がスムーズです。

JSS の点が動いたとき、何を優先して解釈すべきですか?

まず「評価条件が揃っているか」を確認し、揃っていれば ①内訳( LOC / 言語 / 無視 / 運動 など、どこが変化したか)②画像・嚥下・ADL の変化、の順で統合します。点の変化が小さくても、嚥下や意識の変化は安全管理の観点で優先度が高いので、数値より先に共有してください。

おわりに

JSS は「安全の確保 → 条件を揃えた観察 → 加重値の合算 → 定数の加算 → 経時変化( Δ )で再評価」というリズムで回すと、数値がチームの共通言語になります。続けて、面談準備チェックと職場評価シートで次の行動(相談・見学・環境調整)まで一気に進めたいときは、/mynavi-medical/#download も活用してください。

参考文献

  • Gotoh F, Terayama Y, Amano T, et al. Development of a novel, weighted, quantifiable stroke scale: Japan Stroke Scale. Stroke. 2001;32(8):1800-1807. doi:10.1161/01.STR.32.8.1800
  • Gotoh F, Terayama Y, Amano T, et al. Development of a novel, weighted, quantifiable stroke scale: Japan Stroke Scale. Stroke. 2001. PubMed:11486108
  • Amano T. Japan stroke scales and its application for stroke. 2002. PubMed:12784697
  • Brott T, Adams HP Jr, Olinger CP, et al. Measurements of acute cerebral infarction: a clinical examination scale. Stroke. 1989;20(7):864-870. doi:10.1161/01.STR.20.7.864
  • Ghandehari K. Challenging comparison of stroke scales. Int J Prev Med. 2013;4(8):878-885. PubMed Central:PMC3897078
  • 浜野 均. Japan Stroke Scale(JSS)による評価. medicina. 2000;37(7):1075-1078. doi:10.11477/mf.1402907529

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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