JSS(脳卒中重症度)評価|計算例と使い分け

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JSS(脳卒中重症度スケール)の評価【計算の流れと使い分け】

JSS は急性期の神経症候を重み付きで数値化するスケールで、値が大きいほど重症です。各項目の A/B/C に付く「加重値」を合計し、定数 CONSTANT -14.71 を加算して算出します。この記事では、公式票の転載を避けつつ、評価の流れ・使い分け・各項目の趣旨と観察のコツ・閾値の運用目安まで一気に把握できるよう整理しました。一次情報は日本脳卒中学会の配布票(JSS/JSS-M/JSS-H)をご確認ください(最新版を参照)。

臨床で迷わない評価の進め方(最短フローを見る)

評価の流れ(5 ステップ)

①意識・バイタルの安定化 → ②JSS 初回スコア → ③併用尺度(NIHSS/JSS-M/JSS-H) → ④画像・嚥下・転倒リスク等と統合 → ⑤日次で再評価。加重値は各設問の右に印字されています。計算式は 合計(各項目の加重値)+ CONSTANT(-14.71)。同一検者・同一条件で実施し、初回値と経時変化を追います。

本文インライン導線:評価全体の設計は 脳卒中ハブ評価ハブ に集約し、手順の見直しは 臨床フロー を参照できます。

JSS の計算例(数式なしの手順説明)

例)各項目で A/B/C を 1 つずつ選択 → 右に印字された加重値をメモ → 全項目の加重値を合計 → -14.71 を加えて総合スコアを得ます。「数値が大きいほど重症」です。JSS-M(運動)は CONSTANT +14.60、JSS-H(高次脳)は CONSTANT +14.00 と別定数で計算します(各公式票に明記)。

使い分け早見表(JSS/NIHSS/JSS-M/JSS-H)

JSS と関連スケールの使い分け(成人・急性期中心/2025年版)
尺度 主目的 項目の傾向 強み 注意点 一次情報
JSS 急性期の重症度を重み付きで総合評価 意識・言語・無視・眼球運動・瞳孔・感覚・運動など 連続値で経時変化を追いやすい 公式票の加重値に基づく計算が必須 JSS PDF
NIHSS 神経学的欠落症状の標準化評価 15項目(意識、視野、顔面、上肢・下肢、失語/失行 など) tPA 検討や転帰予測で広く普及 ノーコーチング原則(誘導は禁止) NIHSS Manual
JSS-M 運動機能障害の重症度 座位・立位・歩行・上下肢機能など 動作レベルでフォローしやすい 定数 +14.60 に注意 JSS-M PDF
JSS-H 高次脳機能の広がりの評価 注意・行動/意欲・課題遂行など HDS-R と異なる側面を捕捉 定数 +14.00 に注意 JSS-H PDF

項目の趣旨・判定基準・観察ポイント(JSS)

以下は項目本文の転載なしで、臨床で迷いやすい点を要約しています。数値・選択肢・加重値は必ず公式票で確認してください。

  • 意識(LOC)|趣旨:全体重症度の土台。判定:GCS/JCS を整合的に用い、最初の反応を尊重。観察:疼痛刺激は最小限、呼名→強刺激の順で。メモ:NIHSS は「コーチング禁止」。
  • 言語|趣旨:理解・表出・復唱の破綻を簡便に拾う。判定:命令理解・呼称・復唱の3局面を区別。観察:聴力/構音/失行の影響を切り分け、最初の反応で評価。
  • 半側空間無視|趣旨:注意の左右偏倚。判定:線分二等分や描画での偏倚・探索エラー。観察:眼球運動障害や視野欠損との鑑別をセットで。
  • 視野|趣旨:同名半盲の有無。判定:対座で対面法(両眼→片眼)。観察:注意障害があると偽陰性に。提示位置を変えて確認。
  • 眼球運動|趣旨:共同偏視・側方視の制限。判定:追視と随意側方視を区別。観察:前庭性眼振・注視眼振と混同しない。
  • 瞳孔|趣旨:中脳圧迫などの兆候。判定:左右差と対光反射。観察:散瞳・不同瞳はレッドフラッグ。
  • 顔面麻痺|趣旨:錐体路徴候。判定:安静時下垂/鼻唇溝の浅さ。観察:「歯を見せる」「眉を上げる」で上下の差をみる。
  • 足底反射|趣旨:錐体路障害の反射。判定:Babinski/Chaddock の陽性は一回でも陽性。観察:拘縮や痛覚低下があると解釈困難。
  • 感覚|趣旨:体性感覚の左右差。判定:触圧/痛覚を対称に。観察:末梢神経障害の併存で過大評価に注意。
  • 運動(手・腕・脚)|趣旨:麻痺重症度。判定:寝位の指示運動(握る・挙上・SLR など)を基準化。観察:失行・疼痛・固定具の影響を除外。

閾値と解釈(運用の目安)

JSS は連続量のため、公的な統一カットオフはありません。研究例では急性期ベースラインの JSS 合計 <9 / 10–19 / ≥20 で群分けした報告があります(あくまで例示)。実務では①初回値と経時変化 ②他尺度・画像・嚥下/ADL 所見との統合 ③レッドフラッグの即時エスカレーション、を指針にします。

カルテ記載テンプレ(観察→評価→解釈→対応)

【JSS】 本日 10:30、同一条件で再評価。JSS=(加重値合計)-14.71。LOC=〇、言語=〇、無視=〇、視野=〇、眼球=〇、瞳孔=〇、顔面=〇、足底反射=〇、感覚=〇、運動(手/腕/脚)=〇。前回比 Δ=〇。
【統合】 NIHSS=〇、JSS-M=〇、JSS-H=〇、画像=〇、嚥下/ADL=〇。
【解釈】 神経所見は〇を中心に進行/改善。急性期としては〇。
【対応】 監視強化/主治医エスカレーション/合併症スクリーニング(嚥下、VTE 等)/家族説明。

FAQ

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

JSS と NIHSS の違いは?

JSS は重み付き合算による連続値で経時変化の感度が高い設計、NIHSS は標準化 15 項目でノーコーチング原則。併用し、相補的に使うのがおすすめです。

JSS-M / JSS-H はいつ使う?

運動機能のフォローには JSS-M(定数 +14.60)、注意・行動/意欲や課題遂行には JSS-H(定数 +14.00)が有用です。公式票の算出法に従ってください。

項目本文は記事に載せないの?

著作権と更新管理の観点から本記事は趣旨と運用の要点に絞り、公式票へリンクします。実務では必ず最新版を参照してください。

参考・一次情報

  • 日本脳卒中学会:JSSJSS-MJSS-H
  • NINDS:NIHSS Manual
  • 層別の一例(研究):J Phys Ther Sci 2004;16(1):27–31.
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