- 表在感覚検査のやり方|触覚・痛覚・温度覚をどう評価するか
- 表在感覚は「説明→刺激→左右比較→記録」でそろえる
- 検査前の準備|説明・視覚遮蔽・刺激条件をそろえる
- 触覚の検査方法|軽く触れて左右差と部位差をみる
- 痛覚の検査方法|鋭い・鈍いを安全に弁別する
- 温度覚の検査方法|温・冷を区別できるか確認する
- 表在感覚の10点法と5回法|意味を分けて記録する
- 表在感覚の記録方法|点数だけでなく条件を残す
- よくある失敗|感覚障害と検査条件の問題を混同しない
- 認知症・失語・注意障害がある場合の考え方
- 異常があったら「どこに、何が」障害されているか確認する
- 表在感覚の結果をリハビリへどうつなげるか
- よくある質問
- 次に確認する感覚評価
- まとめ|表在感覚は検査条件と記録をそろえる
- 参考文献
- 著者情報
表在感覚検査のやり方|触覚・痛覚・温度覚をどう評価するか
表在感覚検査では、触覚・痛覚・温度覚について、検査部位を見せず、左右・部位を比較しながら、刺激を感じるか、種類を区別できるかを確認します。大切なのは「刺激したか」だけではなく、どこで、どの刺激が、どの程度分かりにくいのかを同じ条件で記録することです。
本記事では、理学療法評価で表在感覚を確認したいPT・OTなどに向けて、検査前の準備、触覚・痛覚・温度覚の手順、10点法・5回法の考え方、記録方法までを整理します。感覚検査全体の進め方は感覚検査の評価方法|表在感覚・深部感覚・複合感覚の進め方で確認できます。
表在感覚は「説明→刺激→左右比較→記録」でそろえる
表在感覚検査で最初にそろえたいのは、刺激回数そのものより検査条件です。説明、視覚条件、刺激する部位、刺激方法、回答方法をできるだけ一定にすると、左右差や再評価時の変化を追いやすくなります。

| 確認項目 | 基本 | 記録で残すこと |
|---|---|---|
| 説明 | 短く説明し、理解できる部位で練習する | 回答方法、理解状況 |
| 視覚 | 検査部位を見せずに実施する | 閉眼などの実施条件 |
| 刺激 | 左右でできるだけ同じ条件にする | 部位、刺激方法 |
| 判定 | 左右差・部位差・再現性を確認する | 正常、低下、消失、過敏、誤認など |
回答が不安定な場合は、すぐに「感覚障害」と決めず、説明の理解、注意、失語、疲労などが影響していないかも確認します。それでも判定が難しい場合は、無理に正常・異常へ分類せず、検査結果の信頼性も記録します。
検査前の準備|説明・視覚遮蔽・刺激条件をそろえる
検査前には、安定した体位をとり、検査部位の皮膚損傷や強い疼痛がないかを確認します。まず刺激を理解できる部位で練習し、「触れたら教えてください」「鋭いか鈍いか答えてください」など、何を答える検査なのかを患者さんと共有します。
本試行では検査部位が見えない条件にし、左右や近位・遠位を比較します。刺激する順番が予測できる一定のリズムにならないようにし、左右で刺激の強さや方法が大きく変わらないよう注意します。
反応の信頼性に疑問がある場合は、必要に応じて刺激しない試行を挟みます。刺激していないときにも繰り返し反応する場合は、感覚所見だけでなく、課題理解や注意の状態も含めて解釈します。
触覚の検査方法|軽く触れて左右差と部位差をみる
触覚は、綿球や柔らかい素材などで皮膚へ軽く触れ、刺激を感じたか、どこに触れられたかを確認します。左右を比較する場合は刺激する部位と条件をそろえ、強く押したり、こすったりして別の手がかりを増やさないことがポイントです。
患者さんには「触れたら『はい』と言ってください」「どこに触れたか教えてください」など、評価目的に応じて回答方法を決めます。口頭回答が難しい場合は、手を握る、指を動かすなど、患者さんが安定して行える反応方法へ変更します。
判定では、刺激を感じるかだけでなく、左右差、部位差、反応の遅れ、回答の一貫性を確認します。「正常/低下/消失」などの程度を記録する場合も、どの部位をどの方法で確認したかを併記すると再評価しやすくなります。
痛覚の検査方法|鋭い・鈍いを安全に弁別する
痛覚では、皮膚を損傷しない範囲で鋭い刺激と鈍い刺激を提示し、「鋭い」「鈍い」を区別できるか確認します。使い捨ての安全な器具などを用い、出血や皮膚損傷につながるような強い刺激は避けます。
最初に正常と思われる部位で鋭・鈍の違いを理解してもらい、その後に検査部位へ進みます。患者さんが回答を予測できないように順番を固定せず、反応が不安定な場合は同じ条件で再確認します。
記録では、単に「痛覚低下」とするだけでなく、刺激そのものを感じにくいのか、刺激は感じるが鋭鈍を誤るのか、刺激に対して過度な痛みを感じるのかを区別します。強い疼痛やアロディニア、痛覚過敏がみられる場合は、刺激を繰り返すことを優先せず、必要に応じて疼痛評価へ切り替えます。
温度覚の検査方法|温・冷を区別できるか確認する
温度覚は、温刺激と冷刺激を安全な範囲で提示し、「温かい」「冷たい」を区別できるか確認します。熱傷や低温障害を避けることが最優先で、極端な温度を使用する必要はありません。
同じ種類の刺激ばかりを繰り返すと、患者さんが順番から回答を予測する可能性があります。温・冷の順番を固定しすぎず、触覚や痛覚と同様に検査部位を見せない状態で実施します。
所見では、単なる正誤だけでなく、「冷刺激を温と答える」「両側とも温冷を弁別できるが左側では分かりにくい」など、誤認の方向や左右差も残します。皮膚温や末梢循環など検査結果へ影響しそうな条件がある場合は、備考として記録します。
表在感覚の10点法と5回法|意味を分けて記録する
10点法と5回法は、同じ方法を刺激回数だけ変えたものではありません。臨床で「10点法」と呼ばれる記録では、正常側・非麻痺側など基準となる感覚を10として、検査側でどの程度感じるかを数値化する運用がみられます。一方、5回法では、設定した刺激を複数回提示し、正答数を「○/5」のように記録する運用があります。
| 方法 | 主に表すもの | 記録例 | 確認ポイント |
|---|---|---|---|
| 10点法 | 基準側と比較した感覚の程度 | 右10/10、左6/10 | 何を10としたか残す |
| 5回法 | 設定した試行に対する正答数 | 右5/5、左3/5 | 刺激条件と回答方法をそろえる |
ただし、10点法や5回法は、それ自体がすべての疾患・施設で統一された単一の国際標準尺度というわけではありません。院内で決められた評価方法がある場合はその方法を優先し、再評価時に同じ条件で比較できるようにします。
また、脊髄損傷のISNCSCIなど、疾患・目的によってはlight touchやpin prickについて固有の標準化された採点方法があります。別の評価尺度を使用している場合は、その公式手順と10点法・5回法を混在させないことが重要です。
10点法と5回法の使い分けを詳しく確認したい場合は、表在感覚10点法と5回法の違いで整理しています。
表在感覚の記録方法|点数だけでなく条件を残す
表在感覚は、「何を・どこで・どの条件で検査して、どう反応したか」まで残すと再評価しやすくなります。「感覚低下あり」だけでは、次の検者が同じ条件で評価できません。
| 項目 | 左 | 右 | 追加所見 | 条件 |
|---|---|---|---|---|
| 触覚 | 正常/低下/消失 | 正常/低下/消失 | 遅延、誤認、過敏など | 部位・刺激方法 |
| 痛覚 | 正常/低下/消失 | 正常/低下/消失 | 鋭鈍誤認、過敏など | 部位・使用器具 |
| 温度覚 | 弁別可/困難 | 弁別可/困難 | 温冷誤認、左右差など | 部位・皮膚状態 |
例えば10点法を用いた場合は「左足背触覚6/10(右同部位を10として比較)」のように、何を基準にしたかまで残します。点数を用いない場合も、「左母趾周囲の触覚低下、右は明らかな低下なし。左は回答遅延あり」のように、部位と反応を具体的に記録できます。
再評価では、刺激方法、検査部位、回答方法などをできるだけそろえます。数値が変化していても検査条件が異なれば単純比較できないため、点数よりも再現できる記録を優先します。
よくある失敗|感覚障害と検査条件の問題を混同しない
表在感覚検査で避けたいのは、患者さんが予測できる刺激、誘導する質問、左右で異なる刺激条件です。回答が合わないときほど刺激を強くするのではなく、説明や反応方法を含めて検査条件を確認します。
| 場面 | OK | NG | 理由 |
|---|---|---|---|
| 説明 | 短く説明し、練習してから開始 | 理解を確認せず開始する | 課題理解による誤答を減らす |
| 刺激 | 左右で条件をそろえる | 片側だけ強く刺激する | 左右比較が難しくなる |
| 順番 | 予測しにくい順番にする | 一定のリズムで繰り返す | 推測による回答を減らす |
| 質問 | 「触れたら教えてください」 | 「今触ったよね?」 | 誘導を避ける |
| 記録 | 部位・条件・結果を残す | 「感覚低下」の一言だけ | 再評価できる情報を残す |
認知症・失語・注意障害がある場合の考え方
回答できないことと、感覚がないことは同じではありません。認知症、失語、注意障害、覚醒低下などがあると、刺激を感じていても口頭で正しく答えられない場合があります。
この場合は、質問を短くする、回答を「はい/いいえ」にする、触れたら手を握るなど、反応方法を単純化します。患者さんが理解できる健常と思われる部位で練習し、その反応方法が安定して使えるか確認してから検査部位へ進みます。
それでも回答の信頼性を確保できない場合は、無理に「正常」「低下」「消失」と分類せず、「判定困難」「回答の一貫性に乏しい」「課題理解の影響あり」など、検査の限界そのものを記録することが重要です。
異常があったら「どこに、何が」障害されているか確認する
表在感覚の異常がみつかったら、1か所の結果だけで病変部位を決めず、どの範囲に、どの感覚モダリティの異常があるかを確認します。左右差、遠位・近位の分布、末梢神経や神経根に沿うのか、脊髄・中枢神経系の所見と整合するのかを、他の神経学的評価と組み合わせて判断します。
また、触覚と痛覚が同じように低下するとは限りません。light touchとpin prickは脊髄損傷の標準的な神経学的評価でも別々の感覚モダリティとして評価されます。表在感覚だけで結論を出さず、必要に応じて深部感覚、筋力、腱反射、協調性、疼痛などへ評価を広げます。
表在感覚の結果をリハビリへどうつなげるか
表在感覚の結果は、点数を付けて終えるのではなく、その感覚低下が動作や安全性へどう影響しているかまで確認します。例えば、感覚低下がある部位では皮膚トラブルや外傷に気づきにくい可能性があるため、皮膚状態や日常生活でのリスクをあわせて確認します。
立位や歩行で不安定さがある場合も、「感覚が悪いから」と単純に結びつけず、筋力、深部感覚、視覚情報、バランス能力などを組み合わせて評価します。表在感覚の所見は、次の評価を選ぶための情報として活用することが重要です。
よくある質問
感覚検査の10点法は、10回刺激する方法ですか?
臨床で10点法と呼ばれる方法では、正常側・非麻痺側などの感覚を10として、検査側の感覚を相対的に数値化する運用がみられます。「10回刺激したうち何回正答したか」をそのまま0〜10点にする方法とは分けて考えた方が分かりやすくなります。院内で定められた方法がある場合は、その定義を優先してください。
5回法では、何を5回行えばよいですか?
まず、何の感覚をどの刺激・回答方法で確認するかを決めます。その条件で複数回試行し、5回中の正答数を記録する方法として使用できます。大切なのは「5回」という数字だけではなく、再評価時にも刺激条件や回答方法をそろえることです。
患者さんの回答が毎回変わる場合はどうしますか?
すぐに感覚障害と判定せず、説明の理解、注意、疲労、失語、覚醒状態、刺激条件などを確認します。同じ条件で再確認しても一貫しない場合は、結果だけでなく「回答の一貫性が低い」「判定困難」など、検査結果の信頼性も記録します。
次に確認する感覚評価
表在感覚の検査で左右差や部位差を確認したら、必要に応じて深部感覚や他の神経学的所見へ評価を広げます。特に、立位や歩行の不安定さと感覚所見を結びつけたい場合は、位置覚・運動覚・振動覚などもあわせて確認します。
まとめ|表在感覚は検査条件と記録をそろえる
表在感覚検査では、触覚・痛覚・温度覚をただ一通り確認するのではなく、説明、視覚条件、刺激方法、回答方法をそろえ、左右差・部位差・回答の一貫性まで確認することが重要です。
10点法や5回法を用いる場合も、数字だけを残すのではなく、何を基準にしたか、どの部位をどの方法で検査したかを記録します。回答が不安定な場合には無理に正常・異常へ分類せず、課題理解や注意などの影響も含めて記録し、必要な追加評価へつなげましょう。
参考文献
- Rupp R, Biering-Sørensen F, Burns SP, et al. International Standards for Neurological Classification of Spinal Cord Injury: Revised 2019. Top Spinal Cord Inj Rehabil. 2021;27(2):1-22. doi:10.46292/sci2702-1.
- Hasvik E, Haugen AJ, Gjerstad J, Grøvle L. Pinprick and light touch are adequate to establish sensory dysfunction in patients with lumbar radicular pain. Clin Orthop Relat Res. 2021;479(3):617-629.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

