【高齢者むせ込みの対処方法と原因】誤嚥したら窒息の可能性を疑う

摂食・嚥下
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リハビリくん
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こんにちは! リハビリくんです!

こちらでは「高齢者むせ込みの対処方法と原因」をキーワードに記事を書いていきます!

    

高齢者の不慮の事故として、毎年「窒息事故」の件数が多く、年間数千人もの高齢者が窒息により亡くなっています。窒息は元気な人が突然命を失う恐ろしい病態になります。命が助かったとしても心肺停止の時間によっては重い障害が残ったり、意識が戻らないケースもあります。

   

窒息事故の場に居合わせた時は、速やかに状況を把握して適切な対応ができるかどうかが鍵になります。その対応次第で命が救われるかもしれません。

非常に重大な窒息対応ですが、なかなか経験できることではないため、いろいろとわからないこともあるかと思います。そんな人のために、こちらの記事をまとめました!

       

こちらの記事で窒息についての理解を深め、医療や介護におけるリスクマネジメントの一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
リハビリくん

【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級


   

ここ近年は新型コロナウイルスの影響もあり、外部の研修会などに参加する機会も減少していると思います。また、職場内での勉強会も規模が縮小している施設が多いのではないでしょうか?

このような状況ではありますが、医療職として知識のアップデートは必要不可欠ですよね。

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高齢者数の増加と窒息リスク

世界でも類をみない超高齢社会に突入している本邦では、2000 年に 2,204 万人だった高齢者( 65 歳以上)が 2022 年には、3,627 万人に増加したと総務省統計局より報告されています。

医療や介護の現場では、このような高齢者人口の増加に伴い、誤嚥・窒息事故が後を絶たない状況にあります。

更に今後の医療や介護について検討していくと、死亡者数については、2010 年に約 120 万人であったものが、2022 年は約 158 万に増加しています。2022 年の結果に新型コロナウイルスの影響も含まれているとは思いますが、現状の人口動態から今後も死者数については約 160 万前後で推移していくことが予想されます。

そうすると、これまでのように医療機関中心で見取りの対応をすることは難しくなると考えられます。それに対し国は、社会保障と税の一体改革を計画しており、その中には看取りを見越した在宅介護および在宅医療の充実に重点を置くという内容が盛り込まれております。

要するに、今後の在宅医療や施設入居では介護度が重度な要介護高齢者の増加が予想されます。それに伴い摂食嚥下機能が低下し、誤嚥・窒息のリスクの高い高齢者が介護現場に増加します。

また、認知機能の低下した要介護高齢者数についても間違いなく今後増えていくことになります。そのため、これからの介護現場で必要になるスキルは、摂食嚥下機能が低下し、かつ認知機能が低下した要介護高齢者の対応ということになります。

高齢者の不慮の事故

高齢者の不慮の事故として特に危険性が高いと考えられる 3 大事故は「窒息」「転倒・転落」「溺水」になります。これらの事故は前期高齢者から増え始め、後期高齢者になると加齢とともに急速に増加します。

令和 3 年度の 65 歳以上高齢者の不慮の事故についての人口動態調査(厚生労働省)によると「窒息」による死亡者数 7,246 人、「転倒・転落」による死亡者数 9,509 人、「溺水」による死亡事故 6,458 人と報告されています。

これらの不慮の事故については適切な対策を講じることができていれば、起こらなかった事故も数多くあると考えられ、本邦における喫緊の課題になります。

また近年、高齢者施設における窒息死亡事故によって施設側に賠償命令が下るようなニュースを耳にします。

つい最近の 2021 年にも名古屋市の特別養護老人ホームで、パーキンソン病を患っていた入所者の 80 代男性が食事中の誤嚥によって窒息死してしまい、名古屋地方裁判所が施設側に安全配慮義務違反があったとして、遺族に対し約 2500 万円の損害賠償を支払うよう命じたことが記憶に残っております。

窒息事故はご本人やご家族様、現場のスタッフ、関係する全ての人にとってショックが大きい事故になります。防げる事故であるからこそ、上述したような訴訟問題にもつながる可能性があります。

医療や介護に携わる人に留まらず、患者本人やご家族様への啓発活動も含めて、国民みんなで窒息に対する理解を深めて、窒息事故の対応能力を高めていく必要性があります。

窒息について

窒息はすべての年齢層に発生する可能性があり、低酸素血症による意識消失、呼吸停止から心停止に至る緊急度の極めて高い病態になります。

窒息により低酸素脳症および無酸素脳症をきたし、心肺蘇生に成功したとしても、その後の生存率や社会復帰率は心配蘇生させるまでの時間に大きく左右されます。そのため、窒息の原因に対して迅速かつ適切に対応ができることが必要になります。

異物による気道閉塞はすべての年齢層に発生しますが、特に小児や要介護者高齢者の発生頻度が高 く、予防可能な死亡事故の一つとなります。異物による気道閉塞は食事中に発生することが多いと報告されています。

諸外国と比較しても、本邦は窒息の多い国といぇす。10 万人当たりの窒息死亡者数は日本が最も多いことが過去の研究により報告されています。

日本人に窒息が多い背景は完全には解明されておりませんが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者は多いことや、頭蓋骨の解剖学的な特徴から、日本人が人種として気道がふさがりやすい構造になってることが一説として挙げられております。

窒息の評価方法

窒息症状の見分け方のポイントは、部分的な気道閉塞であるのか、完全な気道閉塞を起こしているのか、どちらになるのかというところになります。

窒息の最初の症状は咳やむせ込みであり、完全に気道が閉塞すると声が出なくなります。

意識(反応)がある場合の窒息患者はユニバーサル・チョーキング・サインを示すことがあり、このサインは完全な気道閉塞を起こした窒息と判断します。

下記のような症候が認められたときには、完全な気道閉塞を起こしていると判断し、直ちに気道の異物を除去する必要があります。

  • 話すことができない(頷くことができたとしても、問いかけても話すことができない)
  • 弱くて効果のない咳
  • 吸気時の甲高い音、または音が出ない
  • 進行する呼吸困難
  • チアノーゼ

窒息事故の発生時には、突然の呼吸困難や意識消失をきたした人に対し、近くにいる人が異物による気道閉塞であると速やかに見分けることができるかどうかが重要になります。

部分的な気道閉塞の場合に考えるべきことは、傷病者は換気する力があるのか、換気する力が不十分になりつつあるのか、どちらになるのかというところになります。

換気する能力がある場合、咳と咳の間に傷病者は喘鳴を認めますが、咳によって強制的に肺から空気を排出し、換気させることができます。

換気できていれば、ひとまず生命には問題ありませんので、この場合は傷病者自身が自分で気道異物を取り除こうとする行為を邪魔しないように見守ります。

ただし、この行為中に呼吸が弱くなったり、咳が効果的にできなくなったり、吸気と呼気のピッチが速くなり頻呼吸になってきた場合には、換気が不十分になってきた証拠であるため、完全な気道閉塞と同様の状態になりつつあると判断し、気道異物除去を実践します。

窒息後の経時的変化

窒息に伴う身体変化

低酸素状態に陥った後、中枢神経の機能維持可能とされる時間は 8 分間と考えられております。1 秒でも早く気道を確保し呼吸を再開させる必要があります。

高齢者むせ込みの対処方法

異物(食物、吐物等)で気道閉塞が強く疑われる場合における成人の異物除去の方法には、ハイムリック法(腹部突き上げ法)、背部叩打法、胸部突き上げ法、フィンガースイープ法(指掻き出し法)などの方法が挙げられます。

日本医師会のホームページでも推奨されているハイムリック法(腹部突き上げ法)と背部叩打法について紹介します。

ハイムリック法(腹部突き上げ法)

ハイムリック法は、意識のある傷病者に行う方法になります。完全な気道閉塞による窒息により、意識消失(心停止)に至った場合には、ハイムリック法ではなく、心肺蘇生法(CPR)の適応になります。

ハイムリック法は、横隔膜の挙上と気道内圧が上昇することで人工的な咳となり、異物が気道から排出できる可能性があります。

しかし、ハイムリック法は救命のために行うことから、強い外力が人体に加わります。そのため、骨折、腹部や胸部臓器の破裂や裂創、内臓損傷などの合併症をきたす可能性があることを理解する必要があります。

  1. 救助者は傷病者の後ろに回り、立ったままか片膝をついて、両方の手をウエスト付近に手を回す
  2. 一方の手で臍の位置を確認する
  3. もう一方の手で握りこぶしを作って親指側を傷病者の臍のすぐ上の正中線上に置く(剣状突起上を圧迫しない)
  4. 臍を確認した手でその握りこぶしを上から握り、素早く下から手前上方に向かって突き上げるように押し上げる
  5. 異物が排出されるか意識がなくなるまで突き上げを続ける

ハイムリック法による合併症を少なくするためにも、胸骨剣状突起や胸郭下縁を圧迫しないようにします。また、乳児の肝臓は肋骨により保護されておらず、ハイムリック法による腹部外傷が報告されています。乳児に対しては背部叩打法が望ましいと考えられます。

背部叩打法

傷病者の後ろから、手のひらの基部で、左右の肩甲骨の中間当たりを力強く何度も叩きます。

窒息の予防について

窒息リスクの高い症例の多くは摂食嚥下障害を呈しております。そのため、窒息を予防するためには摂食嚥下障害への対応が重要となります。

具体的には、姿勢の調節、口腔内訓練(喉のアイスマッサージ)、嚥下訓練、食形態の調整を行うことで窒息の予防に繋がると考えられます。

姿勢の調節

基本となる目標の姿勢は、食物が通過しやすいように、頸と脊柱が垂直になるよう正中位をとれるように調節します。頭頸部は伸展しないように頸部を前屈させるようにします。

ベット上で食事をするのか、車椅子で食事をするのか、リクライニング位で食事をするのか、90 度の座位姿勢で食事をするのかについては、対象者の状態に左右されると考えられます。

リクライニング位の場合、「食物が気道に入りにくい」「食物が咽頭をゆっくり通過する」「姿勢を安定させやすく疲労しにくい」「重力を用いて、口腔内の送り込みができる」などのメリットが挙げられますし、90 度座位姿勢であれば「喉頭、舌骨がスムーズに動く」「食膳が見渡すことができる」「自力摂取がしやすい」などのメリットが挙げられます。

その一方、どちらにもそれぞれデメリットも挙げられます。このように、それぞれ善し悪しがあるため、対象者の機能に合わせて適切な方法を選択することが重要になります。

口腔内訓練(喉のアイスマッサージ)

口腔内訓練(喉のアイスマッサージ)は、口腔内や咽頭内の嚥下反射が起こる直前の感覚入力を増強する方法になります。

口腔内を刺激し、唾液の分泌を促進することで、食事前の準備運動に適すると考えられております。

方法としては、口蓋舌弓のアイスマッサージや味覚刺激法や炭酸飲料等による刺激法などが挙げられます。

嚥下訓練

嚥下訓練については運動の可動域の改善や嚥下のタイミングのコントロールの訓練、嚥下関連筋群を訓練で賦活し、障害されている摂食嚥下動作そのものを改善する方法になります。

様々な訓練方法がありますが、一例としてメンデルソン手技や頭部挙上訓練などが挙げられます。

嚥下訓練の有用性は多数報告されており、摂食嚥下障害に対する嚥下訓練の有用性は既に認められています。

嚥下訓練の実施にあたって嚥下機能の評価も同時に必要となります。このテーマについては、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらもご覧になって頂けると幸いです☺️ 【摂食嚥下障害のスクリーニング検査についての記事はこちらから

食形態の調整

食形態の調整とは、咀嚼や嚥下状況に応じて、きざみ食やミキサー食といった嚥下調整食への変更や、増粘剤(とろみ剤)を用いて食物の粘性を調整することになります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「高齢者むせ込みの対処方法と原因」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事が窒息についての理解力向上をもたらし、医療や介護におけるリスクマネジメントに少しでもお力添えになれば幸いです!

参考文献

  1. 鈴木隆雄.高齢者の事故予防.日本セーフティプロモーション学会誌.Vol.11(2),2018,p13-19.
  2. 塚谷才明,小林沙織,平岡恵子,田中妙子,金原 寛子,南田菜穂,山本美穂,酒井尚美.急性期病院での食事による窒息事例の検討.日摂食嚥下リハ会誌.21(2),p99–105,2017.
  3. 木下浩作.救急医療の現状と気道異物による窒息への対応.耳展.57:2,2014,p60-66.
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