理学療法士は“オワコン”か?結論とこの記事で得られること
結論から言うと、理学療法士は“オワコン”ではありません。需要は構造的に残る一方で、賃金や働き方の課題は確かに存在します。本記事では、データで将来性を確認しつつ「きつい・辞めたい」時の具体的な打ち手(年収・配属・転職判断・働き方の再設計)まで、実務の粒度で整理します。
上位記事は煽りや抽象論に寄りがちです。本記事は“明日から何を変えるか”に焦点を当てます。最後に「辞める/異動/残る」を選ぶ判断表と、よくある疑問に答える FAQ も用意しました。
将来性の“事実”を確認:需要は消えないが、戦い方は変わる
日本は世界でも突出した超高齢社会で、要介護・フレイル・ロコモ対策の需要は長期にわたり続きます。術後早期離床、在宅復帰、生活期の転倒・栄養・嚥下支援など、理学療法の適用領域は病期横断的に拡大しています。一方で、地域・施設間の供給偏在や賃金の伸び悩みといった構造課題が、現場の“きつさ”体感につながりやすいのも事実です。
AI・機器化は評価・教育・モニタリングを支援しますが、目標設定・関係調整・安全管理・生活文脈の統合など熟達が要る部分は代替困難です。したがって、「なくなる/残る」ではなく“どこでどう価値を出すか”の設計が勝負になります。参考:内閣府 高齢社会白書
「きつい・辞めたい」と感じる主因と対処の方向性
現場の声を整理すると、①人員体制と生産性プレッシャー ②配属ミスマッチ(急性期/回復期/生活期の適性差)③年収と昇給テーブルの鈍さ ④人間関係・教育体制 ⑤身体的負担(腰痛・夜勤など) ⑥成果の見えにくさ ⑦将来像の不明瞭——の 7 つが多い印象です。対処は「環境を変える」「仕事の設計を変える」「収入の作り方を変える」の三方向で考えると解像度が上がります。
迷いが強いときは、“迷ったらこの手順”から始め、現職でテコ入れするか、配属移動や転職で環境を変えるかを切り分けましょう。
“明日から実行できる”待遇・満足度の上げ方(5 アクション)
①配属の再設計:自分の強み(急性期の合併症管理/回復期の目標達成設計/生活期の ADL・IADL・栄養嚥下・福祉用具)と合う病期へ。
②訪問・外来の歩合活用:稼働率 × 単価 × キャンセル率を指標管理。
③役割の二刀流化:リハ栄養・摂食嚥下・シーティング・転倒予防など横断専門役を担い、希少性を可視化。
④評価の“可視成果”運用:施設 KPI(在院日数、FIM 利得、退院先構成)と自分の関与を記録・提示。
⑤交渉の型:実績 → 要望 → 代替案 → 期限の順で、上司と四半期ゴールを握る。
上記のうち ①③④ は現職のままでも効きます。②⑤ は文化の影響が大きいので、難しければ環境スイッチ(部署移動・転職)を検討しましょう。
辞める/異動/残る:状況別の推奨ルート
| あなたの状況 | 推奨アクション | 理由・見込み |
|---|---|---|
| 配属ミスマッチが強い/学びが頭打ち | まず部署異動を打診(期限 2〜3 か月) | 環境適合で満足度と生産性が改善しやすい。転職よりコストが低い。 |
| 評価・待遇の改善交渉が通らない | 訪問・外来・回復期など“指標が握れる職場”へ転職 | 成果と報酬を連動させやすい。歩合・役割加算の余地が大きい。 |
| 人間関係・ハラスメントで消耗 | 退避を優先し転職(同時に記録を保存) | 健康侵害のリスクが高い。制度より文化を重視して選ぶ。 |
| 体力負担・腰痛が臨界 | 夜勤回避・機器活用・ケース配分を交渉/難しければ職場変更 | 配置とツールで負担は大きく変わる。無理は禁物。 |
| 将来像が曖昧 | 3 年スパンの専門軸を 1 つ決め、横断業務で“役割”を作る | 希少性が生まれ、次の選択肢(昇格/異動/独立)が広がる。 |
すぐ使える 3 行テンプレ
- 記録冒頭:目的=〇〇の改善/読者=医師・看護/要点=本日◯◯達成、◯◯未達。次回は◯◯。
- カンファ要約:結論=◯◯が必要。根拠=△△の所見。依頼=□□(期限:◯/◯)。
- 交渉フレーズ:「◯週で××を目標。未達時は配置の再検討をお願いします。」
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ミニ FAQ
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
教育体制に不安があるとき、転職はいつ検討すべき?
原則は期限を切った改善計画です。まず 2〜4 週で合意し、3 ヵ月で改善が乏しければ配置転換や転職も検討しましょう。赤信号チェックは こちら。
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参考:超高齢社会に関する統計(内閣府 高齢社会白書 ほか)。外部リンクは新規タブで開きます。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


