学会抄録の例文集|背景・目的・症例・結果・結論の書き方

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学会抄録の例文は、投稿規定を確認してから使う

学会抄録は、背景・目的・症例・評価・介入・結果・考察・結論の例文を持っておくと書き始めやすくなります。ただし、文字数や見出し構成は学会ごとに異なるため、最初に投稿規定を確認することが前提です。本記事では、PT・OT・STの症例報告を中心に、各パートの例文と置き換え方、200〜400字など短い抄録へ削る方法を整理します。

例文をそのまま提出するのではなく、「この症例で何を伝えるか」に合わせて、評価所見・介入・結果を置き換えるための型として使ってください。

例文を選ぶ前に、投稿先の3点を確認します

  • 指定されている見出し・構造
  • 抄録本文と倫理項目の文字数
  • 倫理的配慮、説明と同意、利益相反などの記載方法

抄録全体の作り方から確認する

学会抄録を書く4ステップ。投稿規定を確認し、伝える1点を決め、各パートを書き、最後に字数を整える流れ
学会抄録は、投稿規定を確認してから主題を決め、各パートを書いたあとに字数を整えます。200〜400字・5文は、短い抄録を整理する方法の一例です。

まず「この症例で伝える1点」を決める

例文へ当てはめる前に、この症例で最も伝えたいことを1文で説明できる状態にします。ここが曖昧なまま書き始めると、評価項目や介入内容が増え、目的・結果・結論のつながりが弱くなります。

症例報告では、投稿先の規定に合わせて、主題に必要な背景、重要な症例情報、評価所見、介入・経過、アウトカム、そこから考えられる示唆を残します。CAREガイドラインでも、症例報告の抄録には症例の重要な所見、介入、アウトカム、主要な学びを含めることが示されています。

症例報告の抄録で整理したい情報
パート 答えること 書くときの焦点
背景・はじめに なぜこの症例を報告するのか 今回の主題につながる課題を示す
目的 何を報告・検討するのか 伝えたいことを絞る
症例・評価 どのような問題があったのか 介入と結果につながる情報を優先する
介入・経過 何を、なぜ、どの程度行ったのか 介入内容・量・変更点を整理する
結果 何がどう変化したのか 条件と数値・所見を具体化する
考察・結論 結果から何が考えられるのか 症例から言える範囲を超えない

学会によっては、「背景および目的」「方法または症例」「結果」「考察および結論」のように項目が統合されています。この記事の見出しへ合わせるのではなく、投稿先で指定された構造へ例文を組み替えてください。

背景・はじめにの例文|症例を報告する理由へつなげる

背景では疾患の一般論を長く説明するより、今回扱う問題がなぜ重要なのかが分かる情報を優先します。今回の目的につながらない病態説明は、文字数を圧迫する原因になります。

学会抄録の背景・はじめにで使える例文
使う場面 例文 置き換える部分
臨床上の課題を示す (疾患・病態)では(問題)が生じ、(活動・生活場面)を制限することがある。 疾患/問題/生活への影響
介入判断の難しさを示す (問題)に対しては(対応)が行われるが、(条件)を有する症例では対応に難渋することがある。 問題/対応/今回の特徴
今回の症例へつなぐ 今回、(特徴的な問題)を呈した(疾患・病態)の一例を経験した。 今回報告する特徴

「これまで報告がない」「報告は少ない」「有用性が明らかになっていない」と書く場合は、文献検索でその根拠を確認します。確認していない状態で「報告は限られる」と置くのではなく、今回の症例で問題となった臨床課題から目的へつなぐ方法もあります。

目的の例文|何を報告するのかを1文で示す

目的は抄録全体の軸です。評価名や介入名を並べるのではなく、今回の症例報告を通して何を示したいのかが分かる文にします。

学会抄録の目的で使える例文
使う場面 例文 置き換える部分
介入経過を報告する 本報告の目的は、(問題)を呈した症例に対する(介入)の経過を報告することである。 問題/介入
評価と介入をつなぐ 本症例では、(評価所見)を基に(介入)を行い、(アウトカム)の経時的変化を検討した。 評価所見/介入/アウトカム
臨床判断を主題にする 本症例における(臨床上の問題)への評価および介入過程について報告する。 判断に迷った問題

目的が複数あると、どの評価・結果を残すべきか決めにくくなります。まず「この発表で最も伝えたいことは何か」を基準に整理します。

症例紹介の例文|主題に必要な情報を残す

症例紹介では、患者情報をすべて並べるのではなく、今回の主題を理解するために必要な情報を残します。個人が推定できる情報は必要最小限とし、所属施設と投稿先の規定に従ってください。

学会抄録の症例紹介で使える例文
内容 例文 確認ポイント
基本情報 症例は(年代)の(性別)で、(疾患・病態)により(主な問題)を認めた。 主題に不要な情報を増やさない
発症・経過 (発症・受傷)後、(経過)を経て(評価・介入時期)に至った。 介入時期の理解に必要な経過を残す
生活上の問題 (機能・能力)の低下により、(具体的な生活場面)に制限を認めた。 今回の主題と関係する活動に絞る

評価の例文|介入判断につながった所見を書く

評価では、実施した検査をすべて列挙するのではなく、介入を選んだ理由や結果を理解するために必要な所見を優先します。

学会抄録の評価で使える例文
内容 例文 確認ポイント
代表所見 初期評価では(評価・所見)を認め、特に(条件)で(問題)が顕著であった。 介入理由につながる所見か
数値を示す 初期評価時の(評価尺度・測定項目)は(値)であった。 必要に応じて測定条件も示す
活動と結び付ける (評価所見)を認め、(活動)には(介助・環境条件)を要した。 機能所見と生活上の問題がつながるか
介入理由へつなぐ これらの所見から、(問題)を優先課題と判断した。 判断根拠が前文から読み取れるか

「評価を何個まで書く」という共通ルールはありません。字数が限られる場合は、結果や考察で使わない評価が残っていないかを基準に整理すると、目的から結論までの流れを保ちやすくなります。

介入・経過の例文|何をしたかだけでなく条件を書く

介入では名称だけで終わらず、文字数が許す範囲で選択理由、期間、頻度、負荷など、介入内容を理解するために必要な条件を残します。

学会抄録の介入・経過で使える例文
使う場面 例文 置き換える部分
基本形 (期間)、(介入)を(頻度・時間・強度)で実施した。 期間/内容/介入量
評価から介入へつなぐ (評価所見)を踏まえ、(優先課題)に対して(介入)を実施した。 判断根拠/課題/介入
段階的に変更した (所見・反応)の変化に応じて、(介入A)から(介入B)へ段階的に変更した。 変更の契機/変更内容
条件を調整した (症状・反応)を確認しながら、(負荷・環境・介助条件)を調整した。 確認した反応/調整項目

毎日の実施内容を順番に並べると経過日誌になりやすいため、結果の解釈に必要な介入と、介入内容を変更した転換点を優先します。

結果の例文|「改善した」より、何がどう変化したかを書く

結果では解釈を先に書かず、観察・測定できた変化を具体的に示すことを優先します。「改善した」だけでは、読み手が変化量や臨床的な意味を判断できません。

学会抄録の結果で使える例文
内容 例文 確認ポイント
数値の変化 (評価項目)は(初期値)から(最終値)へ変化した。 前後の値が比較可能か
条件を含める (条件)における(評価項目)は、(初期)から(最終)へ変化した。 測定・実施条件が重要なら明記する
介助量の変化 (活動)は(初期の介助・条件)から(最終時の介助・条件)となった。 抽象的な「改善」で終わらせない
生活上の変化を加える (評価A)は(前)から(後)へ変化し、(生活場面)では(具体的な変化)を認めた。 評価結果と実生活の変化を区別する

初回と最終評価で測定条件が異なる場合は、その違いが結果の解釈へ影響しないか確認します。また、尺度の変化を「臨床的に意味のある改善」と表現する場合は、その尺度・対象者に適用できる基準があるか確認してください。

考察の例文|結果と解釈を分けて書く

考察では結果を繰り返すのではなく、なぜその変化が生じた可能性があるのかを評価所見、介入経過、関連文献と結び付けます。

学会抄録の考察で使える例文
使う場面 例文
結果を解釈する (結果)には、(評価所見)を踏まえて(対応)したことが関連した可能性が考えられた。
複数要因を考える (結果)には(介入)に加え、(自然経過・環境・他の介入など)が影響した可能性がある。
臨床判断を整理する (問題)に対しては、(評価ポイント)を確認しながら(介入条件)を調整する必要があると考えた。
限界を示す 一方、本症例では(限界・交絡要因)があり、(介入)単独の影響を明確にすることはできない。

症例報告では、介入後に変化がみられても、それだけで介入との因果関係を証明したことにはなりません。観察された事実と、そこから考えた解釈を分けて記載します。

結論の例文|症例から言える範囲で締める

結論では、新しい情報を追加するのではなく、目的に対して今回の症例から何を学べたかを簡潔に示します。

学会抄録の結論で使える例文
使う場面 例文
評価の重要性を示す 本症例では、(問題)に対して(評価ポイント)を確認することの重要性が示唆された。
介入調整を示す 本症例では、(条件)を確認しながら(介入)を調整することが、(アウトカム)の変化に関連した可能性がある。
臨床判断をまとめる (問題)を呈する症例では、(所見)を踏まえて(対応)を検討する必要性が示唆された。

「有効である」「原因である」「証明した」といった表現は、今回の研究デザインと得られた結果から、その強さの主張が可能かを確認します。

200〜400字の短い抄録では、5文を整理の補助に使う

200〜400字や5文構成は、すべての学会に共通する規定ではありません。投稿先で短い文字数が指定されている場合に、必要情報を圧縮するための整理方法として利用できます。

短い抄録では、背景を広げるより、目的・症例の重要所見・介入・結果を優先します。指定された構造がある場合は、以下の5文例より投稿規定を優先してください。

短い症例報告を整理するときの5文例
文 役割 例文
1 背景・主題 今回、(特徴的な問題)を呈した(疾患・病態)の一例を経験した。
2 目的 本症例に対する(評価・介入)の経過を報告する。
3 症例・評価 初期評価では(重要所見)を認め、(活動)に(制限・介助)を要した。
4 介入・結果 (介入)を実施し、(アウトカム)は(前)から(後)へ変化した。
5 考察・結論 本症例では、(評価・介入上のポイント)が(結果)に関連した可能性が考えられた。

短い抄録の完成イメージ

以下は文章構造を示すための架空症例であり、実在する症例や特定の介入効果を示すものではありません。

脳卒中後に歩行時の下肢支持性低下を呈した一例を経験した。本症例の歩行能力に対する評価と介入経過を報告する。初期評価では立脚期の支持性低下を認め、歩行に介助を要した。身体機能と歩行時の反応を確認しながら介入条件を調整したところ、最終評価では歩行時の介助量と歩行能力に変化を認めた。本症例では、歩行中の問題を継続的に評価しながら介入条件を調整する重要性が示唆された。

実際の抄録では、「歩行能力」「介助量」といった抽象語だけでなく、主題を説明するために必要な評価尺度、数値、距離、期間、頻度などへ置き換えます。

字数を超えたときは、結果を削る前に不要情報を圧縮する

投稿規定の文字数を超えた場合は、重要な結果から機械的に削るのではなく、目的から結論までの論理に必要かで優先順位を付けます。

  1. 背景の一般論:疾患の定義や広い病態説明を圧縮する
  2. 主題と関係しない評価:結果・考察で使わない所見を削る
  3. 細かな経過:介入の転換点に関係しない時系列を圧縮する
  4. 重複表現:結果を考察・結論でそのまま繰り返さない
  5. 冗長な言い回し:意味を保てる範囲で短くする
学会抄録を短くするときの言い換え例
長い表現 短い表現例
〜することを目的とした 〜を目的とした
〜を実施したところ 〜を実施し
〜であることが考えられた 〜と考えられた
〜という結果が得られた 〜を認めた

神奈川県理学療法士会の学会発表ナビでも、最初から文字数だけにとらわれず、いったん書いた後に重要度の低い部分を削る方法が示されています。短文化では、主題を支える結果や介入条件まで失わないことが重要です。

言い換え例|結果から言える範囲を超えない

控えめな表現へ機械的に変更することが目的ではありません。得られた事実と、そこから推測できることの強さを合わせることが重要です。

症例報告で確認したい表現と言い換え例
確認したい表現 書き換え例 確認する理由
○○が改善した ○○は(前)から(後)へ変化した 結果を具体的に示せる
○○が有効であった 介入期間後に○○の変化を認めた 観察結果と介入効果を分ける
○○が原因である ○○が関連した可能性が考えられた 因果関係の断定を避ける
○○の有効性を証明した 本症例では○○が変化に関連した可能性が示唆された 1症例から一般的な有効性を証明しない

ただし、「可能性がある」「示唆された」を付ければよいわけではありません。その解釈につながる評価結果・経過・文献上の根拠があるかを確認してください。

提出前チェック|例文を自分の症例へ置き換えられているか確認する

提出前は文章表現だけでなく、投稿規定への適合と、目的から結論までの一貫性を確認します。採択を保証するチェックではなく、提出前に抜けや矛盾を見つけるための確認項目です。

学会抄録の提出前チェック
確認項目 確認すること
投稿規定 指定された見出し、文字数、キーワード、倫理項目などを満たしているか
主題 この症例で最も伝えたいことを1文で説明できるか
背景・目的 背景から今回の目的へ自然につながっているか
症例・評価 介入判断と結果の理解に必要な情報が残っているか
介入・経過 何を、なぜ、どの程度行ったのか読み取れるか
結果 具体的な変化を数値・所見・条件で説明できているか
考察・結論 結果から言える範囲を超えて一般化していないか
倫理・個人情報 投稿先と所属施設の規定を確認し、不要な識別情報を含めていないか
整合性 目的で示した主題が、評価・介入・結果・結論まで一貫しているか

学会抄録の例文でよくある質問

Q1.学会抄録の例文をそのまま使ってもよいですか?

例文は文章構造を決めるために使い、評価結果、介入内容、期間、頻度、アウトカム、考察は自分の症例へ置き換えてください。投稿先で見出しが指定されている場合は、その構造を優先します。

Q2.学会抄録は200字・400字・5文で書けばよいですか?

一律ではありません。理学療法関連学会でも、抄録本文の文字数や構造は投稿先によって異なります。200〜400字・5文は、短い抄録を整理するときの一例として使ってください。

Q3.背景に「報告は少ない」と書いてもよいですか?

文献検索によって確認できた場合に使用します。確認していない場合は「報告がない」「報告は限られる」と断定せず、今回の症例で問題となった臨床課題から目的へつなぐ方法があります。

Q4.症例報告の結論で「有効だった」と書いてはいけませんか?

研究デザインと得られた結果から、その表現を支持できるかを確認します。1症例の経過では、まず観察された変化を具体的に示し、その後に介入との関連を考察すると、結果と解釈を区別しやすくなります。

次の一手|抄録を書いたらタイトルとの一致を確認する

各パートを書き終えたら、背景・目的・症例・評価・介入・結果・考察・結論が同じ主題へ向かっているか確認します。そのうえで、抄録の中心内容がタイトルから読み取れるかも確認してください。

タイトルを決める段階へ進む場合:学会抄録タイトルの付け方で、何を残し、何を削るかを確認できます。


参考文献・参考資料

  1. Gagnier JJ, Kienle G, Altman DG, et al. The CARE guidelines: consensus-based clinical case reporting guideline development. Headache. 2013;53(10):1541-1547. doi:10.1111/head.12246.
  2. Riley DS, Barber MS, Kienle GS, et al. CARE guidelines for case reports: explanation and elaboration document. J Clin Epidemiol. 2017;89:218-235. doi:10.1016/j.jclinepi.2017.04.026.
  3. CARE Statement. CARE Checklist. CARE Case Report Guidelines.
  4. 第12回日本呼吸理学療法学会学術大会. 演題登録. 公式ページ.
  5. 日本理学療法管理学会. 抄録入力時の注意. 公式ページ.
  6. 公益社団法人神奈川県理学療法士会. 学会発表ナビ アドバイス STEPⅡ:抄録の書き方. 公式ページ.

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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