PG-SGA の評価と使い方|がん患者の栄養リスクを PT が運用する手順

栄養・嚥下
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PG-SGA とは?( SGA との違い)

迷ったら「症状で拾う → 優先度で動く → 同条件で追う」を先に固定すると、がんリハの運用が崩れにくくなります。 評価 → 介入 → 再評価の臨床フローを見る

PG-SGA( Patient-Generated Subjective Global Assessment )は、SGA をがん領域向けに拡張した評価で、患者が記入する病歴セクション(体重変化・摂取量・栄養影響症状など)と、医療者が評価する身体所見セクションを組み合わせて用います。特徴は、栄養状態の主観的判定だけでなく、PG-SGA スコアを通じて介入の優先度を「次の一手」に落とし込みやすい点です。

総論としての SGA(主観的総合判定 A / B / C )は SGA 記事で解説しています。本稿では、がん患者の栄養管理で詰まりやすい PG-SGA の点数とトリアージ( A–D )、および 栄養影響症状( Nutrition Impact Symptoms )を中心に、「 PT が拾う情報 → NST へ渡す情報 → リハの用量をどう調整するか」を 1 ページに整理します。

採点とトリアージ( A–D )

PG-SGA は、体重変化・摂取量の低下・栄養影響症状・活動性などを点数化し、合計点とトリアージ( A~D )で介入の優先度を示します。現場では、点数そのものを追いかけるより「どの優先度に入り、チームとして次に何をするか」を決める合図として扱う方が運用が安定します。

注意点として、カットオフや運用フローは研究や施設マニュアルで差があります。導入時は「誰が、いつ、どの情報で、どこへ相談するか」を先に固定し、評価者間のブレを減らします。PG-SGA SF( Short Form )は患者自己記入部分に絞った簡略版で、外来や在宅など時間制約が大きい場面の入口に向きます。

PG-SGA トリアージ( A–D )早見表(一般的な解釈の例)
トリアージ 概要 PT の優先対応
A 教育・セルフモニタリング中心。症状は軽微で、体重変化は小さい。 食事姿勢や活動量のセルフ管理、体重・症状の日誌化、悪化時の相談窓口を共有する。
B 計画的な栄養介入が望ましい。症状コントロールが鍵となる。 症状に合わせて運動強度を微調整し、補食タイミングなど“続く工夫”を NST に共有する。
C 摂取障害や体重減少が目立ち、多職種による早期介入が必要。 疲労・悪心のピークを外したスケジューリング、口腔・嚥下の併走、短い周期での修正を回す。
D 症状コントロールを最優先すべき段階。緊急性が高い。 運動は安全域に縮小(可動・呼吸・姿勢など)。栄養・疼痛・制吐の調整が整うまで負荷増加は控える。

栄養影響症状( Nutrition Impact Symptoms )

悪心・嘔吐、口内炎、味覚/嗅覚異常、嚥下困難、早期飽満、便秘/下痢、痛み、倦怠感、抑うつなどの栄養影響症状は、摂取量活動性を同時に削ります。単独で出ることもありますが、臨床では複数が束になって重なりやすいため、食形態・温度・タイミング・鎮痛/制吐・口腔ケアをパッケージで見直すと「食べられる条件」が整いやすくなります。

症状群と実務対応( PT × NST )の例
症状群 摂取への影響 主な対応(例)
悪心・嘔吐 摂取量・頻度の低下、食事そのものの回避 悪心ピークを避けて運動を計画。分割食や冷たい食品の工夫、制吐薬のタイミングをチームで共有する。
口内炎・味覚異常 摂取時痛・嗜好変化による摂取量低下 刺激の少ない形態と温度を調整。口腔ケアをこまめに行い、必要時は医師へ薬剤調整の可否を確認する。
嚥下困難 窒息・誤嚥リスクにより摂取が制限される 食事姿勢・一口量・粘度を調整。安全に食べられる条件が整うまでは、無理な経口増量を避ける。
便秘・下痢 腹部不快による食欲低下・倦怠感 水分と活動量を調整。薬剤の使い方を多職種で確認し、腹部不快が強い日は強度を一時的に落とす。

運用フロー( PT × NST )

実務では、① スクリーニング陽性 → ② PG-SGA 記入と身体所見 → ③ 合計点とトリアージ A–D を NST で共有 → ④ 運動・栄養・口腔の統合プラン作成 → ⑤ 再評価、の流れにすると迷いが減ります。PG-SGA は「その日の症状」をよく反映するため、同じメニューでも日ごとに負荷を微調整する発想が重要です。

再評価は同じ時間帯・同じ条件(姿勢、点滴・鎮痛・制吐の状況、食事タイミングなど)で行い、化学療法サイクルなど症状ピークが予測される場合は臨時評価を足します。退院や在宅移行では、本人・家族が体重と症状の変化に早く気づけるよう、記録と相談先の導線を整えることが鍵になります。

現場の詰まりどころ(よくある失敗)

つまずきやすいのは、① 症状の重複カウント、② 体重情報の過信、③ 口腔・嚥下の見落とし、④ 評価者ごとのばらつき、の 4 点です。点数を合わせに行くより、「何がボトルネックで、次に何を変えるか」が残る記録に寄せると、チームでの再現性が上がります。

PG-SGA 運用で起きやすい失敗と対策(原因 → 対策 → 記録ポイント)
よくある失敗 起きやすい理由 対策(最小構成) 記録ポイント
症状の重複カウント 痛み → 倦怠感 → 摂取低下のように因果が連鎖し、同じ問題を別項目として加点しやすい 「主因 1 つ+随伴 1 つ」までを先に固定し、残りはメモに回す どの項目へ反映したかを 1 行で残し、次回は同じ基準で追う
体重だけで判断する 浮腫や腹水、補液で体重が動き、実態とズレる 体重に加えて「摂取量」「症状」「活動性」をセットで見る 体重の条件(補液・利尿・浮腫の有無)を O に併記する
口腔・嚥下を後回し 栄養の議論が点数中心になり、「食べられる条件」づくりが遅れる 姿勢・粘度・一口量など、経口摂取の条件を先に整える 食形態・姿勢・介助量を固定して、咳込み等と一緒に残す
評価者のばらつき 導入初期は解釈が揃わず、比較が難しい ダブルチェックと短いすり合わせをルーチン化する 担当者と実施条件(時間帯・治療スケジュール)を必ず残す

よくある質問

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PG-SGA と PG-SGA SF の違いは何ですか?

PG-SGA は、患者自己記入の病歴パートと、医療者による身体所見パートを含む包括的な評価です。PG-SGA SF( Short Form )は主に患者が記入する部分に焦点を当てた簡略版で、外来や在宅など時間制約が大きい場面の入口に向きます。運用では「入口は SF、カンファ前はフル版」のように役割を分けると迷いが減ります。

PG-SGA スコアに明確なカットオフはありますか?

研究や施設マニュアルで扱いが異なるため、点数だけで一律に線引きするよりも、トリアージ( A~D )を合図に「教育でよいのか」「多職種介入を急ぐのか」を先に決める運用が安全です。導入時は、施設で参照する文献とチーム方針を揃えておくと安定します。

PT は PG-SGA のどの情報を特に重視すべきですか?

体重変化そのものよりも、「栄養影響症状」と「活動性の変化」を重視するとリハの用量設計に直結します。悪心や倦怠感が強い時期に負荷を上げすぎると、摂取低下や治療継続の障害になり得ます。症状のピークと回復のリズムを共有し、同条件で再評価できる形に整えるのがコツです。

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参考文献

  1. Isenring E, Bauer J, Capra S. The scored Patient-generated Subjective Global Assessment (PG-SGA) and its association with quality of life in ambulatory patients receiving radiotherapy. Eur J Clin Nutr. 2003;57(2):305-309. doi: 10.1038/sj.ejcn.1601552. PMID:12571664
  2. Bauer J, Capra S, Ferguson M. Use of the scored Patient-Generated Subjective Global Assessment (PG-SGA) as a nutrition assessment tool in patients with cancer. Eur J Clin Nutr. 2002;56(8):779-785. doi: 10.1038/sj.ejcn.1601412. PMID:12122555
  3. Ottery FD. Definition of standardized nutritional assessment and interventional pathways in oncology. Nutrition. 1996;12(1 Suppl):S15-S19. doi: 10.1016/0899-9007(96)90011-8. PMID:8850213
  4. Cederholm T, et al. GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition – A consensus report from the global clinical nutrition community. Clin Nutr. 2019;38(1):1-9. doi: 10.1016/j.clnu.2018.08.002. PMID:30181091
  5. Jensen GL, et al. GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2025;49(4):414-427. doi: 10.1002/jpen.2756. DOI

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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