0〜4+ の意味と“組み合わせ解釈”
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反射スコアは 0(消失)〜4+(著明亢進)で記録しますが、単独の数値だけで診断を決めるのは危険です。臨床では、左右差・再現性・誘発条件( Jendrassik 操作など)の 3 点と組み合わせて解釈し、さらに筋緊張や随意運動、病的反射の有無と併置して総合判断します。
本稿では「判定の基準 → 記録ルール → SOAP テンプレ → Excel テンプレ」の流れでまとめ、院内でそのまま標準化しやすい形に整理しました。腱反射スコア全体の位置づけや UMN / LMN 鑑別は、総論記事の 反射検査 完全ガイド もあわせて参照してください。
判定基準(0〜4+)と左右差
| スコア | 所見 | 臨床的意味 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 0 | 反応なし | LMN 障害や末梢神経・筋疾患を示唆。体位・打鍵条件を再確認 | KJ 0/4、AJ 0/4 |
| 1+ | 減弱 | 正常範囲の個人差〜軽度低下。左右差と再現性で評価 | Biceps 1+/4 |
| 2+ | 正常 | 最も頻度が高い。左右差が小さく、同条件で再現性あり | BR 2+/4 |
| 3+ | 亢進 | UMN 徴候を示唆。病的反射や痙縮の有無と併置して解釈 | KJ 3+/4 |
| 4+ | 著明亢進( clonus ) | 強い UMN 徴候の可能性。持続・左右差・機能影響を確認 | AJ 4+/4( clonus ) |
左右差は 1 段階以上で臨床的意味を持ちやすく、同じ体位・同じ刺激条件での再現性確認が必須です。スコアだけでなく、筋緊張や随意運動、歩行・ ADL の変化と合わせて解釈します。
記録ルールと略記(統一運用)
記録ルールは、チーム内での読み違いを防ぐ「共通言語」として統一しておきます。基本方針は 3 点です。1)通常条件 → 誘発条件の順で記録(例:KJ 1+/4 → 2+/4( JM+ ))。2)部位略記の統一:Biceps/BR(腕橈骨)/Triceps/KJ(膝蓋腱)/AJ(アキレス腱)。3)病的反射は + / ± / − で整理し、左右を並記します。
疼痛の有無や動画記録、補助課題(注意分散・呼吸など)も、必要に応じて同じフォーマットで併記すると再評価がしやすくなります。略語は、UMN=上位運動ニューロン、LMN=下位運動ニューロン、DTR=深部腱反射、JM= Jendrassik maneuver(ジェンドラシック操作)など、院内共通の凡例を最初に決めておくと安全です。
SOAP 記録テンプレ(例)
S)DTR 検査への不安を訴えるが、目的と方法の説明後は同意。
O)Biceps 2+/4(左右差なし)、BR 2+/4、Triceps R1+/L2+。KJ R1+→2+( JM+ )、AJ 2+/4。Babinski −/−。検査前後で自覚症状の変化なし。
A)下肢 DTR は軽度亢進傾向。病的反射は現時点で陰性。筋緊張・感覚・歩行と併置し、 UMN 徴候の有無を経時的に確認する必要あり。
P)転倒リスク評価と痙縮評価を追加実施。 1 週間後に同条件で再評価し、必要に応じて主治医へフィードバック。
具体的な文例をテンプレとして共有しておくと、新人でも同じフォーマットで記録しやすくなり、カンファレンスでの情報共有もスムーズになります。
無料ダウンロード:Excel 記録テンプレ
テンプレートは 記録テンプレ/凡例/使い方 の 3 シート構成です。スコア( 0・1+・2+・3+・4+ )と病的反射( + / ± / − )、体位、誘発条件( JM・注意分散・呼吸など)、疼痛の有無をプルダウンで選択できるようにしておくと、入力者が変わっても記録の揺れを最小限にできます。
院内用に必要な欄(例:検者名・再評価日・コメント欄など)は、施設のルールに合わせて自由に追記してください。病的反射それ自体の具体的な手順や判定基準は、別途まとめた運用マニュアルに整理しておくと現場で迷いにくくなります。
禁忌・注意
反射検査は簡便ですが、刺激部位や体位によってはリスクも伴います。皮膚損傷・術創・感染部位では直接打鍵を避け、抗凝固療法中は皮下出血に注意が必要です。深部静脈血栓症( DVT )が疑われる下肢では、腓腹筋の強い把握や連続したタッピングを行わないなど、既往やリスク因子を事前に確認します。
検査中はプライバシーと体位の安定を優先し、必要時のみ同意を得たうえで動画記録を行います。教育目的で記録したデータは、個人情報保護のルールに沿って管理し、閲覧範囲も明確にしておきましょう。
現場の詰まりどころ(よくある悩みと対策)
| よくある詰まりどころ | 起きやすい場面 | 対策のヒント |
|---|---|---|
| 打鍵の強さ・位置が毎回バラバラ | 新人が「強く叩く=良い」と誤解している | ランドマーク確認(腱を指でなぞる)→軽い試し打ち→本番 1〜2 回の流れを統一する |
| 2+ と 3+ の境目が分からない | 軽度亢進か正常範囲かで迷うとき | 「左右差 1 段階以上」「誘発なしでも明らかに大きいか」を基準にし、迷うときは 2+ として経過で確認する |
| スコアだけがカルテに残り、“条件” が分からない | 記録欄が狭く、略記ばかりになっている | 体位・誘発条件・疼痛の有無だけはテンプレで必ず残すようにし、フリーテキスト欄を 1 行でも確保する |
| JM をやる人とやらない人で評価がぶれる | 担当者によって誘発の有無がまちまち | 「通常 → JM あり」の順でルール化し、JM 実施時は必ず( JM+ )と記録する運用にそろえる |
| クローヌスの扱いに迷う | 数拍で止まる場合と持続する場合がある | 「拍数」「持続」「患者の自覚症状(つっぱり・痛み)」をセットで記録し、4+ とするかコメント欄で補足する |
詰まりやすいポイントは、個人スキルの問題というより「ルールやテンプレの不足」であることが多いです。打鍵手順・スコア基準・記録フォーマットをこの記事の内容でそろえ、まずはチーム内で同じ土台からスタートできるようにしておくと、指導や振り返りがぐっと楽になります。
参考文献
- Rodriguez-Beato FY, Urribarri O. Physiology, Deep Tendon Reflexes. In: StatPearls [Internet]. 2025–. PubMed
- Zimmerman B, Menon RS. Deep Tendon Reflexes. In: StatPearls [Internet]. 2025–. PubMed
- Walker HK. Tendon Reflexes and Reflex Testing. In: Clinical Methods. 3rd ed. 1990. NCBI Bookshelf
- Ertuglu LA, Karacan I, Yilmaz G, Türker KS. Standardization of the Jendrassik maneuver in Achilles tendon tap reflex. Clin Neurophysiol Pract. 2017;3:1–5. DOI
- Passmore SR, Bruno PA. Anatomically remote muscle contraction facilitates patellar tendon reflex reinforcement while mental activity does not. Chiropr Man Therap. 2012;20:29. DOI
おわりに
腱反射のスコアリングは、「安全の確保 → 標準化された手順 → 0〜4+ の記録 → 結果の再評価」というリズムで回すことで、単なる “確認作業” から “臨床判断の武器” に変わります。数値だけでなく、左右差・再現性・誘発条件・機能とのつながりをセットで押さえることが、 UMN / LMN 鑑別や転倒リスク評価の質を高める近道です。
本記事の SOAP 例や Excel テンプレをベースに、まずは自部署のフォーマットを 1 つにそろえてみてください。新人教育やカンファレンスでの共有がスムーズになり、「誰が評価しても同じように読める腱反射スコア」を目指す一歩になります。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
テンプレの記録ルールは?
通常条件 → 誘発条件の順で、例:KJ 1+/4 → 2+/4( JM+ )のように記録します。左右差・再現性・疼痛の有無、補助手段(注意分散・呼吸・ JM など)も同じフォーマットで併記しておくと、再評価やカンファレンスでの解釈がそろいやすくなります。略語凡例(UMN・LMN・DTR など)は、シート内に一覧で示しておくと新人にも親切です。
院内用に改変して良い?
はい、院内標準に合わせて自由に改変して構いません。項目の追加・削除、コメント欄の増設、並び替えなどを行っても問題ありませんが、バージョン名や更新日をシート内に明記し、チーム全体で最新版を共有しておくことをおすすめします。
最終更新:2025-10-03


