KOOS評価は「5尺度を別々に採点」が基本
KOOS(Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score)は、膝の痛み・症状・日常生活・スポーツ/レクリエーション・膝関連QOLを5つの下位尺度で評価するPROMです。採点では、100点ほど状態が良く、総合点は作らず、各下位尺度で50%以上回答があれば算出できることを最初に押さえます。この記事では、フル版KOOSについて、欠損確認から0–100点への変換、解釈、記録までを実務で迷わない順番に整理します。
KOOS以外の運動器PROMも含めて選びたい方へ:評価目的から尺度を選び直す場合は、運動器PROMハブで全体像を確認できます。
KOOSの採点方法|欠損50%ルールと0–100点の向き
KOOSは、各項目を0〜4で数値化し、5つの下位尺度をそれぞれ独立して0〜100点へ変換します。各項目では0が問題なし、4が最も問題が大きい回答ですが、下位尺度スコアへ変換すると向きが逆になり、100=問題なし、0=最も問題が大きい状態になります。
欠損がある場合は、まず各下位尺度で50%以上の項目に回答しているかを確認します。50%以上回答していれば回答済み項目の平均から算出でき、50%未満しか回答していない下位尺度は算出しません。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 下位尺度 | 全項目数 | 算出に必要な回答数 |
|---|---|---|
| Pain | 9 | 5項目以上 |
| Symptoms | 7 | 4項目以上 |
| ADL | 17 | 9項目以上 |
| Sport/Rec | 5 | 3項目以上 |
| QOL | 4 | 2項目以上 |
回答欄の処理にも公式ルールがあります。枠の外に印が付いた場合は最も近い選択肢を採用し、2つの選択肢に印が付いている場合は、より問題が大きい方を採用します。
採点は4ステップで確認する
- 各項目を0〜4で数値化する
- 下位尺度ごとに50%以上回答しているか確認する
- 回答済み項目の平均値を算出する
- 100 −(平均値 ÷ 4 × 100)で下位尺度スコアへ変換する
たとえば、ある下位尺度の回答済み項目の平均が1.0なら、100 −(1.0 ÷ 4 × 100)=75点です。平均値が低いほど、変換後のKOOSスコアは高くなります。

採点方法と欠損ルールの詳細は、公式資料で確認できます。
KOOSは5つの下位尺度を別々に解釈する
KOOSでは、Pain、Symptoms、ADL、Sport/Rec、QOLの5つを別々に算出してプロファイルとして読みます。公式User’s Guideでは、フル版KOOSの総合点は妥当性が検証されておらず、推奨されていません。
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| 下位尺度 | 主に確認する内容 | 解釈するときの視点 |
|---|---|---|
| Pain | 膝の痛み | 痛みの負担がどう変化したか |
| Symptoms | 腫脹、こわばりなどの膝症状 | Painとは異なる症状が残っていないか |
| ADL | 日常生活に関する機能 | 生活動作の制限がどう変化したか |
| Sport/Rec | スポーツ・レクリエーション機能 | より高い活動レベルで制限が残っていないか |
| QOL | 膝に関連したQOL | 膝への意識や生活への影響が残っていないか |
たとえばPainが改善していてもADLやQOLが低いままであれば、「痛みが軽くなった=膝に関する問題が解決した」とは限りません。どの尺度が改善し、どの尺度が残っているかを比較できることがフル版KOOSの特徴です。
Sport/Recが使いにくい時点はどうする?
KOOSの各下位尺度は独立して算出・報告できます。そのため、ある時点で特定の下位尺度を有効に解釈できない場合でも、他の有効な下位尺度まで算出できなくなるわけではありません。
KOOS Scoring 2012では、その例として、人工膝関節置換術後2週でSport/Recを有効な下位尺度とみなさない場合でも、他の下位尺度をその時点で報告できることが示されています。
重要なのは「術後早期なら必ずSport/Recを外す」という一律のルールにすることではありません。評価時点と患者の状態を確認し、今回どの下位尺度を報告したのかを記録として残すと、次回評価との比較がしやすくなります。
KOOSの解釈|総合点ではなく前回との差を見る
KOOSを解釈するときは、まず同一患者の下位尺度ごとの変化を確認します。次に、Painは改善しているがADLが残る、ADLは改善しているがQOLが低いなど、尺度間のズレを確認します。
公式User’s Guideでは、5下位尺度を0〜100点で並べたKOOS Profileとして可視化する方法も示されています。総合点にまとめるより、5尺度を並べる方が「何が改善し、何が残っているか」を把握しやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 順序 | 確認すること | 判断 |
|---|---|---|
| 1 | 各下位尺度のスコア | どの領域の問題が大きいか |
| 2 | 前回からの変化 | どの領域が改善・残存したか |
| 3 | 下位尺度間のズレ | 痛みだけでは説明できない制限がないか |
| 4 | 必要に応じてMIC・PASSなど | 対象集団や評価時点に合う研究か確認する |
MIC・PASSは対象集団を確認して使う
KOOS User’s Guide 2.0では、Minimal Important Change(MIC)について8〜10点が現在の目安として示されていますが、同時に患者集団、介入、フォローアップ時期によって変わるため、尺度全体に共通する1つのMICが存在するとは考えにくいとされています。
PASSについても、TKA後など特定集団で報告されています。したがって、特定の数値だけを全症例へ当てはめるのではなく、対象集団・介入・評価時点が自分の症例に合うかを確認して使用します。
日本語版KOOSは版・配布元・利用条件を固定する
KOOSは、直近1週間を想起期間として回答する尺度です。再評価では、毎回同じ版を使用し、同じ想起期間で回答してもらうことが比較の前提になります。
日本語版KOOSについては、異文化適応と妥当性の検証が報告されています。一方、尺度そのものを使用するときは、現在の公式配布元と利用条件を確認してください。KOOS User’s Guide 2.0では、使用にあたり許諾申請が必要とされ、利用者区分によって条件が異なることが案内されています。
この記事および下記の記録・再評価シートは、KOOSの設問文そのものを配布するものではありません。実際に評価するときは、正式に利用できる版を確認したうえで運用してください。
KOOS記録・再評価シート|Excel・PDF
KOOSは5つの下位尺度を別々に扱うため、スコアだけでなく、評価時点・回答数・欠損・今回報告した尺度・前回値・評価条件を同じ形式で残すと再評価しやすくなります。
下の記録・再評価シートは、KOOSの設問文を転載せず、5下位尺度の採点と再評価を1枚で整理するための実務用シートです。Excel版は回答数と生得点合計を入力して採点・前回比較を整理したい場合、PDF版は印刷して手書きで記録したい場合に使い分けてください。
Excel版の使い方:下位尺度ごとの回答数と生得点合計を入力し、算出可否と0〜100点のKOOSスコアを確認します。前回値を入力しておけば、今回値との差も同じシートで確認できます。回答数が50%未満の下位尺度は算出対象にしません。
PDF版の使い方:印刷して、評価時点、各下位尺度の回答数・スコア、今回報告する尺度、前回値、評価条件、一言解釈などを手書きで残します。再評価時も同じ書式を使うと、尺度ごとの変化を比較しやすくなります。
PDFプレビューを表示する
KOOSを記録するときは4点セットを残す
KOOSのスコアだけを記録すると、次回評価で条件差を確認しにくくなります。実務では、①評価時点、②報告した下位尺度、③評価条件、④一言解釈を同じ順番で残しておくと比較しやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 項目 | 残す内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 評価時点 | いつ評価したか | 外来初回、術後6週、3か月再評価 |
| 報告尺度 | 算出・報告した下位尺度 | Pain / Symptoms / ADL / QOL |
| 条件 | 前後比較に必要な情報 | 装具あり、杖使用、鎮痛薬変更あり |
| 一言解釈 | 変化と残存課題 | ADLは改善、QOLは低値が残存 |
Excel・PDFの記録シートにも同じ考え方を入れているため、記事で採点ルールを確認したあと、そのまま同じ型で記録と再評価へ進めます。
KOOSで迷いやすい5つのポイント
採点で迷ったときは、細かな数値計算より先に、「下位尺度を分けたか」「欠損条件を満たしたか」「0–100点の向きを間違えていないか」を確認します。
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| 迷いやすい点 | 確認すること |
|---|---|
| 5尺度を合計する | フル版KOOSは総合点を作らず、5下位尺度を別々に報告する |
| 100点を悪い状態と読む | 変換後は100=問題なし、0=最も問題が大きい |
| 欠損数を確認しない | 各下位尺度で50%以上回答しているか確認する |
| 全下位尺度がそろわないと報告しない | 各下位尺度は独立して算出・報告できる |
| 前回と異なる条件で比較する | 版、想起期間、評価時点、条件差を記録する |
KOOSの採点でよくある質問
Q1. KOOSは100点と0点のどちらが良いですか?
100点が問題なし、0点が最も問題の大きい状態です。各項目の0〜4点とは向きが逆になるため、変換後のスコアを読むときは注意してください。
Q2. KOOSに未回答があっても採点できますか?
各下位尺度で50%以上の項目に回答していれば算出できます。必要回答数はPain 5、Symptoms 4、ADL 9、Sport/Rec 3、QOL 2項目です。
Q3. フル版KOOSの5尺度を平均して総合点にしてもよいですか?
通常の臨床報告では推奨されません。KOOS User’s Guideでは総合点は妥当性が検証されていないため、5下位尺度を別々に報告する方法が基本です。
KOOS-JR・KOOS-12と迷ったら比較する
このページはフル版KOOSの採点・解釈に絞っています。評価時間を短くしたい場合や、KOOS-JR・KOOS-12を候補にしている場合は、短縮版との役割の違いを確認してから選びます。
参考文献
- Roos EM, Lohmander LS. The Knee injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS): from joint injury to osteoarthritis. Health Qual Life Outcomes. 2003;1:64. PubMed / DOI
- KOOS Scoring 2012. August 2012. PDF
- KOOS User’s Guide 2.0. Updated January 2025. PDF
- Nakamura N, Takeuchi R, Sawaguchi T, Ishikawa H, Saito T, Goldhahn S. Cross-cultural adaptation and validation of the Japanese Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS). J Orthop Sci. 2011;16(5):516-523. PubMed / DOI
- Connelly JW, Galea VP, Rojanasopondist P, Matuszak SJ, Ingelsrud LH, Nielsen CS, et al. Patient Acceptable Symptom State at 1 and 3 Years After Total Knee Arthroplasty: Thresholds for the Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score (KOOS). J Bone Joint Surg Am. 2019;101(11):995-1003. PubMed / DOI
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

