運動器PROMの選び方|NDI・DASH・腰痛尺度を使い分け
運動器のPROM(患者報告アウトカム)は、部位だけで決めるのではなく、まず「何を測りたいのか」を決めてから選びます。頸部痛による生活障害、上肢機能、下肢の活動制限、膝・股関節の症状、腰痛による障害、患者本人が困っている活動では、適する尺度が異なります。
このハブでは、NDI、DASH / QuickDASH、LEFS、KOOS、HOOS、WOMAC、RDQ、ODI、PSFSを、測る内容 → 対象 → 候補PROM → 正式版・利用条件 → 再評価の順に整理します。各尺度を選んだあとの採点、欠損対応、解釈、記録方法は、それぞれの子記事で確認できます。
PROMを選ぶ5ステップ|部位より先に「何を測るか」を決める
PROM選択では、最初に尺度名を決めるのではなく、患者の何を経時的に追いたいのかを明確にします。痛みの強さ、生活障害、活動制限、QOL、患者固有の困りごとは、同じアウトカムではありません。
- 何を測るか決める:生活障害、上肢・下肢機能、症状、QOL、患者固有の活動など、今回追いたい内容を明確にします。
- 対象を絞る:頸部、上肢、下肢、膝、股関節、腰部などの部位に加え、疾患や術前後など対象集団も確認します。
- 候補PROMを比較する:測りたい内容を捉えられる尺度から、妥当性・信頼性・反応性、回答負担などを踏まえて選びます。
- 正式版と利用条件を確認する:日本語版、回答方法、想起期間、採点・欠損ルール、著作権や利用許諾を確認します。
- 再評価を計画する:次に結果を使って判断したい時点を決め、できる限り同じ版・同じ条件で比較します。
COSMINでも、適切な測定尺度を選ぶ前提として、まず何を測定するのかというアウトカム・構成概念を明確にすることが重視されています。部位だけで「このPROM」と決めるのではなく、測りたい内容と対象に合っているかを確認することが出発点です。
主となるPROMを決めたあと、別の臨床判断に必要な情報がある場合は補助評価を追加します。たとえば患者固有の活動を詳しく追うならPSFS、身体能力を確認するなら歩行速度やTUGなど、主PROMとは別の問いに答える評価を組み合わせます。
部位・目的別PROM一覧|測りたい内容から候補を絞る
下の表は「この部位なら必ずこの尺度」という対応表ではありません。何を測りたいかと対象が合うPROMを絞るための入口として使い、実際に使用するときは対象集団、正式版、実施・採点方法、利用条件まで確認してください。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 主に測りたいこと | 対象の例 | 候補PROM | 使い分けの要点 |
|---|---|---|---|
| 頸部症状による生活障害 | 頸部痛・頸椎関連症状 | NDI | 頸部症状が日常生活へ与える影響を経時的に追う候補です。 |
| 上肢の機能・症状 | 肩・肘・前腕・手など | DASH / QuickDASH | 回答負担を抑えたい場合はQuickDASH、個人の経過をより高い精度で追いたい場合はフルDASHを検討します。 |
| 下肢全体の活動制限 | 股・膝・足関節などの筋骨格系障害 | LEFS | 特定の1関節だけに限定せず、下肢の活動制限を追いたい場面の候補です。 |
| 膝の症状・ADL・スポーツ・QOL | 膝外傷・膝OAなど | KOOS | 膝の状態を複数の下位尺度から把握したい場合に使います。各下位尺度を分けて解釈します。 |
| 股関節の症状・ADL・スポーツ・QOL | 股関節障害・股OAなど | HOOS | 股関節関連の疼痛・症状・ADL・Sport / Rec・QOLを下位尺度ごとに追います。 |
| OAの疼痛・こわばり・身体機能 | 膝OA・股OA | WOMAC | 膝・股OAにおける患者報告アウトカムを追う疾患特異的PROMです。使用する版やスコア表記を固定します。 |
| 腰痛による生活障害 | 腰痛 | RDQ / ODI | 腰痛による生活障害を標準化して追う候補です。どちらを使うかは測定目的と運用条件から決めます。 |
| 患者本人が重要と考える活動 | 個別の活動制限を追いたい症例 | PSFS | 固定された質問項目では拾いにくい、患者固有の活動制限を経時的に追いたい場合の候補です。 |
腰痛でRDQ・ODI・PSFSのどれを使うか迷う場合は、腰痛PROMの選び方で3尺度の役割を比較してから、主となる尺度を決めてください。
正式版・利用条件を確認する|自己流に変えて使わない
PROMは、尺度名が同じでも版、言語、回答形式、採点方法、利用条件が異なることがあります。候補を決めたら、実施前に正式な質問票と提供元の条件を確認することが重要です。
- 正式な版:原版・短縮版・改訂版を混同しない
- 日本語版:検証された日本語版や提供元が示す翻訳版があるか確認する
- 回答方法:自己記入、電子版、読み上げなど、使用する尺度で認められている方法を確認する
- 想起期間:独自に期間を設定せず、尺度が指定する回答条件に従う
- 欠損処理:未回答を自己判断で補完せず、尺度固有の採点ルールを確認する
- 利用条件:著作権、利用許可、改変、複製、電子化、商用利用などの条件を確認する
DASH / QuickDASHは公式サイトで日本語版と採点方法が公開されていますが、尺度の内容を変更しないことなど利用条件が定められています。したがって、質問文や選択肢を施設独自の表現へ変更して使用するのは避けます。
KOOS / HOOSは著作権で保護されており、公式情報では使用許可が必要とされています。また、KOOSは患者本人が回答する自己記入式の尺度で、インタビュー形式は検証されていないとされています。読み上げや代理回答を含め、回答方法を自己流で変更しないことが重要です。
WOMACについても、使用する版、言語、尺度形式、用途などを公式情報で確認してから使用します。このハブでは各尺度の設問全文を転載しません。実際の質問票は、その時点の公式配布元や正規の提供元から確認してください。
再評価できる条件をそろえる|同じ尺度を取るだけでは足りない
PROMで経時変化を比べるには、同じ尺度名を使うだけでなく、版・回答条件・採点条件の違いをできる限り減らす必要があります。何を固定するべきかは尺度によって異なるため、まず公式の実施・採点方法を優先してください。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 確認項目 | 避けたい運用 | 再評価へつなげる運用 |
|---|---|---|
| 版・言語 | 初回と再評価で異なる版を混在させる | 同じ正式版を継続して使用する |
| 回答指示 | 担当者ごとに独自の説明を追加する | 使用する尺度の正式な回答指示に従う |
| 回答方法 | 自己記入と読み上げを根拠なく切り替える | 認められた方法を確認し、条件変更があれば記録する |
| 欠損・採点 | 未回答を0点にするなど独自に補完する | 尺度固有の欠損・採点ルールに従う |
| 再評価時期 | すべてのPROMを一律の間隔で取り直す | 介入計画と次の臨床判断に合わせて時期を決める |
| 記録 | 「PROM 20点」のように点数だけを残す | 尺度名・版・得点・実施条件・患者の変化を残す |
すべての運動器PROMに共通する「外来なら○週、入院なら○週」という再評価間隔があるわけではありません。初回時点で、次にその結果を使って判断したい時点を決めておくと、評価を取るだけで終わりにくくなります。
記録は「得点+条件+実生活の変化」を残す
合計点だけを記録すると、次の担当者が「何を目的に使った尺度なのか」「前回と同じ条件なのか」を判断しにくくなります。最低限、尺度名と版、得点、実施条件、患者が困っている活動や変化をセットで残します。
記録例:QuickDASH ○点。公式日本語版を本人が自記。前回と同条件で実施。更衣時の疼痛は軽減したが、頭上作業の困難感は残存。次回も同尺度で経過を確認する。
この例は記録の構造を示すものであり、各尺度固有の実施・採点ルールを変更するものではありません。
よくある失敗と戻し方|選びすぎ・変えすぎ・点数だけを避ける
PROMが臨床で機能しにくいときは、新しい尺度を追加するより、「何を測るために、このPROMを選んだのか」へ戻る方が整理しやすくなります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 詰まり | よくある原因 | 戻し方 | 再評価で確認すること |
|---|---|---|---|
| PROMが増え続ける | 測りたいアウトカムを決めずに尺度を追加している | 今回の治療で追いたい内容を明確にする | 各尺度に別々の役割があるか |
| 同じ部位なのに尺度を決められない | 部位だけで選ぼうとしている | 生活障害、活動制限、症状、QOLなど測る内容から絞る | 選んだPROMが目的に合っているか |
| 前回と比較しにくい | 版・回答方法・採点条件が変わっている | 正式版と実施条件を確認し、変更点を記録する | 条件差が結果へ影響していないか |
| 点数はあるが介入につながらない | 患者が実際に困っている活動との対応が分からない | 得点と具体的な生活場面を一緒に確認する | 介入目標を具体的に説明できるか |
| 得点が変化したが意味を判断できない | 数字の差だけで改善・悪化を判断している | 尺度ごとの測定誤差や臨床的に意味のある変化、対象集団を確認する | 得点差と実生活の変化が一致しているか |
運動器PROMでよくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
PROMはいくつ使えばよいですか?
一律の正解はありません。まず今回追いたいアウトカムに合う主PROMを決め、別の臨床判断に必要な情報がある場合だけ評価を追加します。尺度数を増やすことより、目的に合う尺度を適切な条件で再評価できることを優先します。
DASHとQuickDASHはどう使い分けますか?
QuickDASHは11項目の短縮版で、回答負担を抑えやすいことが利点です。公式情報では、DASHとQuickDASHはいずれも妥当性・信頼性・反応性を備える一方、フルDASHは個人患者の経過を追う際に、より高い測定精度が期待できるとされています。目的と運用負担を踏まえて最初に選び、経時比較では原則として同じ尺度を継続します。
KOOS・HOOS・WOMACは自由にコピーして使えますか?
自由に複製・改変してよいとは限りません。KOOS・HOOSは著作権で保護され、公式情報では使用許可が必要です。WOMACも公式サイトで版・言語・用途などの利用情報が管理されています。質問票を使用、複製、電子化するときは、その時点の公式な利用条件を確認してください。
腰痛はRDQとODIのどちらを使えばよいですか?
どちらも腰痛による生活障害を捉える候補ですが、選択は測定目的や対象、運用条件によって変わります。患者固有の活動を追いたい場合はPSFSも候補になります。3尺度の役割を詳しく比較したい場合は、腰痛PROMの選び方の記事で確認してください。
PSFSは必ず他のPROMに追加する尺度ですか?
必ず追加する必要はありません。患者本人が選んだ重要な活動の変化を追うこと自体が主目的なら、PSFSが重要なアウトカムになります。一方、疾患特異的な生活障害や症状を標準化して追いたい場合は、他のPROMとの役割を分けます。
次の一手|尺度を決めたら実施・採点条件を確認する
このハブで候補を絞ったら、部位別インデックスから対象尺度の記事へ進み、正式版、実施方法、採点、欠損処理、解釈、記録方法を確認してください。PROMだけで評価を完結させず、身体機能や実際の活動所見と組み合わせて、介入と再評価へつなげます。
参考文献
- Mokkink LB, Prinsen CAC, Bouter LM, de Vet HCW, Terwee CB. The COnsensus-based Standards for the selection of health Measurement INstruments (COSMIN) and how to select an outcome measurement instrument. Braz J Phys Ther. 2016;20(2):105-113. DOI: 10.1590/bjpt-rbf.2014.0143. PMID: 26786084
- Vernon H, Mior S. The Neck Disability Index: a study of reliability and validity. J Manipulative Physiol Ther. 1991;14(7):409-415. PMID: 1834753
- Hudak PL, Amadio PC, Bombardier C, et al. Development of an upper extremity outcome measure: the DASH. Am J Ind Med. 1996;29(6):602-608. DOI: 10.1002/(SICI)1097-0274(199606)29:6<602::AID-AJIM4>3.0.CO;2-L
- Beaton DE, Wright JG, Katz JN, et al. Development of the QuickDASH: comparison of three item-reduction approaches. J Bone Joint Surg Am. 2005;87(5):1038-1046. DOI: 10.2106/JBJS.D.02060
- Binkley JM, Stratford PW, Lott SA, Riddle DL. The Lower Extremity Functional Scale: scale development, measurement properties, and clinical application. Phys Ther. 1999;79(4):371-383. DOI: 10.1093/ptj/79.4.371
- Roos EM, Roos HP, Lohmander LS, Ekdahl C, Beynnon BD. Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score—development of a self-administered outcome measure. J Orthop Sports Phys Ther. 1998;28(2):88-96. DOI: 10.2519/jospt.1998.28.2.88
- Nilsdotter AK, Lohmander LS, Klässbo M, Roos EM. Hip disability and osteoarthritis outcome score—validity and responsiveness in total hip replacement. BMC Musculoskelet Disord. 2003;4:10. DOI: 10.1186/1471-2474-4-10
- Bellamy N, Buchanan WW, Goldsmith CH, Campbell J, Stitt LW. Validation study of WOMAC: a health status instrument for measuring clinically important patient relevant outcomes to antirheumatic drug therapy in patients with osteoarthritis of the hip or knee. J Rheumatol. 1988;15(12):1833-1840. PMID: 3068365
- Roland M, Morris R. A study of the natural history of back pain. Part I: Development of a reliable and sensitive measure of disability in low-back pain. Spine. 1983;8(2):141-144. DOI: 10.1097/00007632-198303000-00004. PMID: 6222486
- Fairbank JCT, Pynsent PB. The Oswestry Disability Index. Spine. 2000;25(22):2940-2952. DOI: 10.1097/00007632-200011150-00017. PMID: 11074683
- Westaway MD, Stratford PW, Binkley JM. The Patient-Specific Functional Scale: validation of its use in persons with neck dysfunction. J Orthop Sports Phys Ther. 1998;27(5):331-338. DOI: 10.2519/jospt.1998.27.5.331
- Institute for Work & Health. DASH and QuickDASH: Conditions of Use and Translations [Internet]. [cited 2026 Aug 21]. Available from: DASH Outcome Measure
- KOOS. Frequently Asked Questions: administration, scoring and permission to use KOOS [Internet]. [cited 2026 Aug 21]. Available from: KOOS
- Bellamy N. WOMAC Osteoarthritis Index 3.1 [Internet]. [cited 2026 Aug 21]. Available from: WOMAC
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

