はじめに|2026 年に「 3 学会合同呼吸療法認定士 」を目指す理由
呼吸リハ×キャリアの全体像を確認する(PT キャリアガイド)
「 3 学会合同呼吸療法認定士」は、呼吸管理に関わる医療職が共通の知識と技術を身につけるための学会認定資格です。急性期 ICU・HCU だけでなく、回復期や地域包括ケア、在宅でも「呼吸が苦しい人」に関わる機会は確実に増えており、今後もニーズは高まると予想されます。
一方で、受験資格の確認やポイント 12.5 点の集め方、申込〜講習会〜試験までの流れは、公式要領だけではイメージしづらい部分も多いです。本記事では、2026 年に受験を目指す PT・OT・ST 向けに、「いつ・何をするか」を年間スケジュールと手順に分けて整理します。具体的な日程や申込方法は、必ず最新の公式情報で最終確認してください。
資格の概要とメリット
3 学会合同呼吸療法認定士は、日本胸部外科学会・日本呼吸器学会・日本麻酔科学会の 3 学会が共同で認定する資格です。対象職種は、臨床工学技士・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士などで、いずれも一定年以上の実務経験が求められます。資格そのものは診療報酬に直結しませんが、呼吸器疾患や人工呼吸管理に関わる場面での標準的な知識・安全管理の裏付けになります。
PT・OT・ST にとってのメリットは、単に「肩書きが増える」だけではありません。急性期であれば人工呼吸器装着中の早期離床や抜管後リハ、回復期であれば慢性呼吸不全+サルコペニア、在宅や訪問では在宅酸素療法や NPPV 利用者の生活支援など、実際のケースで呼吸リハの知識を生かせる場面が増えます。チーム内での信頼や役割の広がり、将来的な転職・管理職候補としてのアピールにもつながりやすい資格です。
2026 年受験までの全体スケジュール
まずは 2026 年受験をイメージした年間の流れをざっくり押さえておきます。実際の申込期間や試験日は年度によって前後するため、ここでは「目安」として読み進めてください。
おおまかなパターンは、①申請書類提出日から過去 5 年以内にポイント 12.5 点以上を確保する、②申込期間中にオンライン登録と書類提出を完了する、③夏〜秋頃に認定講習会(会場+ e ラーニングまたは e ラーニングのみ)を受講する、④その後に認定試験を受ける、という 4 ステップです。2026 年受験を念頭に置くなら、2025 年中から「ポイント集め」と「勤務形態・経験年数の確認」を進めておくと余裕を持って準備しやすくなります。
手順 1 :受験資格の確認とポイント 12.5 点
受講・受験資格は「職種ごとの実務経験年数」と「過去 5 年以内に認定委員会が認める学会・講習会への出席 12.5 点以上」の 2 つを満たすことが条件です。理学療法士・作業療法士の場合は、免許登録日から申請書類提出日までに 2 年以上の常勤経験が必要で、パート・アルバイト期間は実務経験年数に含まれない点に注意が必要です。
ポイント 12.5 点は、認定委員会が認める学会や講習会への出席で付与されます。目安として、半日程度の講習会で 12.5 点、1 日の講習会で 25 点といった区分が用いられています。すでに呼吸関連学会へ参加している方は、参加証や修了証の保管状況を確認し、足りない場合は 2025 年中に対象となる学会・講習会を 1 つ以上押さえておくと、2026 年の申請がスムーズです。
手順 2 :申込〜認定講習会受講まで
受講申込は、医療機器センターの専用ページからのオンライン登録が基本です。まずメールアドレスを登録し、マイページ上で申請書類の作成・ダウンロードを行う流れが一般的になっています。申込期間は例年、年明け〜春頃に設定されることが多く、締め切り日・時刻が明確に決まっているため、夜勤明けや連休前後にうっかり忘れるケースが起こりやすいポイントです。
認定講習会は、会場講習+ e ラーニング、あるいは e ラーニングのみなど、年度ごとに用意される選択肢から申し込みます。会場枠は定員超過時に抽選となる場合もあり、勤務の都合でどうしても会場日程が合わない場合は、最初から e ラーニングのみを選んだ方が安全なこともあります。シフト作成担当者や上司に早めに「この時期に講習会が入る可能性がある」と共有しておき、代行・休日取得の目処をつけておくことが大切です。
手順 3 :試験勉強の進め方(仕事と両立するには)
勉強のスタート時期は、「認定講習会の申込が通った時点」か「テキストが手元に届いた時点」を 1 つの目安にすると取り組みやすくなります。講習会で扱われる内容は呼吸生理・ガス交換・人工呼吸器・酸素療法・在宅呼吸管理など広範囲に及ぶため、テキストを一周するだけでも一定の時間が必要です。通勤時間や夜の 30 分を「毎日のインプット」にあて、休日にまとまった時間でセルフテストを行うなど、生活リズムに合わせたルールを決めておきましょう。
勉強法としては、①テキストをざっと通読して全体像をつかむ、②頻出しやすい基礎分野(呼吸生理・酸素療法の基本・人工呼吸のモードなど)を重点的に復習する、③問題集や過去問解説を使ってアウトプットする、という流れが取り組みやすいです。仕事と両立する場合、「平日 30〜60 分 × 3〜4 日+週末 2〜3 時間」を 3 か月程度続けるイメージを持っておくと、無理なく積み上げやすくなります。
手順 4 :試験当日〜合格後・更新まで
試験当日は、時間に余裕を持って会場入りできるよう、会場までのアクセスと所要時間を事前に確認しておきます。受験票・身分証明書・筆記用具などの必須物品だけでなく、普段と同じリズムで食事や水分摂取ができるように調整しておくと安心です。マークシート形式では、解答欄のずれや塗り間違いが失点につながりやすいため、科目単位・ページ単位で「マーク確認タイム」を設けるなど、時間配分を意識しておきましょう。
合格後は、所定の手続きに従い認定登録を行い、認定証の交付を受けます。認定有効期間は 5 年で、その間に学会や講習会出席などで所定の更新点数を集める必要があります。更新点数をまとめて取得できる更新講習会もありますが、直前に慌てないよう、認定後も年 1 回程度は呼吸関連の学会や講習会に参加し、少しずつ点数を貯めておくと安全です。資格取得はゴールではなく、呼吸リハの専門性を磨き続けるスタートラインとして位置づけておくと良いでしょう。
PT・OT・ST は現場でどう活かすか
急性期病院では、人工呼吸器装着中の鎮静管理・離床タイミング・体位変換やポジショニングなどで、呼吸療法の知識が直接的に役立ちます。抜管直後の誤嚥リスクや呼吸筋疲労を踏まえた負荷設定、 ICU から一般病棟への転棟前後での評価など、チーム内で「この患者さんはどこまで攻めてよいか」を議論するときに、認定士としての視点が生きてきます。
回復期や在宅では、慢性呼吸不全や心不全、サルコペニア・栄養障害を合併したケースが増えています。息切れ評価や呼吸リハビリテーションの指導、在宅酸素療法や NPPV 利用者の生活支援などで、呼吸療法認定士としての知識を、日々のリハ介入や家族指導に落とし込むことが重要です。資格取得後も、呼吸リハに関するカンファレンスや勉強会を自ら企画し、チーム全体の底上げにつなげていくと、職場でのポジションづくりにもつながります。
現場の詰まりどころ
よくあるつまずきのひとつは、「受験資格を満たしているかどうかがよく分からない」まま準備が後ろ倒しになるケースです。とくに、非常勤や夜勤専従など勤務形態が変則的な場合、「常勤として何年カウントされるのか」「異動や産休・育休期間はどう扱われるのか」などが不安材料になりやすいです。まずは自分の免許登録日と現職歴を整理し、不明点は早めに事務局や所属長に確認しておくと安心です。
もうひとつは、「ポイント 12.5 点」を直前になってから慌てて取りに行こうとして、シフト調整や参加費の捻出で苦労するパターンです。呼吸関連の学会や講習会は、年度ごとに日程や開催地が変わります。2026 年受験を考えているなら、2025 年のうちに参加候補の講習会をピックアップし、勤務表と照らし合わせて早めに上司へ相談することが重要です。また、受験にかかる費用(講習会受講料+受験料+交通費・宿泊費など)を事前にざっくり試算し、「いつ・どのくらい出費があるか」を家計・生活設計の中に組み込んでおくと心理的な負担が軽くなります。
おわりに
3 学会合同呼吸療法認定士は、「呼吸リハが好き」「人工呼吸器や在宅酸素の患者さんをもっと安全に診たい」という思いを形にしやすい資格です。一方で、受験資格の確認・ポイントの取得・申込・講習会・試験勉強と、やることが多く、忙しい臨床の中では先延ばしになりがちでもあります。本記事を、自分なりの年間スケジュールを描くためのたたき台として活用していただければ幸いです。
働き方を見直すときの抜け漏れ防止に。見学や情報収集の段階でも使える面談準備チェック( A4 ・ 5 分)と職場評価シート( A4 )を無料公開しています。印刷してそのまま使えますので、呼吸リハを活かせる職場環境を考えるときの参考にしてみてください。詳しくはマイナビ医療介護のお役立ち資料ページから確認できます。
なお、認定制度の詳細な条件や最新のスケジュールは、年度ごとに変更される可能性があります。受験を本格的に検討する段階では、必ず 3 学会合同呼吸療法認定士認定委員会の公式情報を確認し、職場の教育担当者や先輩認定士とも相談しながら、自分に無理のないペースで準備を進めていきましょう。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
教育体制に不安があるとき、転職はいつ検討すべきですか?
呼吸療法認定士に挑戦したいのに、呼吸器疾患の症例が極端に少ない、人工呼吸器の台数が少なすぎて経験を積めない、相談できる先輩がいないといった状況では、資格取得後の実務スキルが伸びにくいことがあります。まずは現在の職場で「呼吸リハに関わる機会を増やせないか」「関連部署との兼務やローテーションができないか」を相談してみるのが第一歩です。
それでも数年単位で状況が変わらない場合や、安全面に不安を感じる環境が続く場合は、教育体制やチーム構成を含めて職場を見直すタイミングかもしれません。その際は、呼吸リハや急性期・在宅に強い職場の見極め方をまとめたPT キャリアガイド(要注意サインのチェックリスト)も参考にしてみてください。
PT・OT・ST でも受験できますか?どのくらいの経験年数が必要ですか?
理学療法士・作業療法士は、免許登録日から申請書類提出日までに 2 年以上の実務経験(常勤)が必要とされています。非常勤やアルバイトのみの期間は経験年数に含まれないため、転職歴が多い方や短時間勤務からのステップアップをしている方は、とくに注意が必要です。詳細条件は年度の実施要領で必ず確認してください。
ポイント 12.5 点はどうやって集めるのが効率的ですか?
過去 5 年以内に、認定委員会が認める学会や講習会に出席して 12.5 点以上を取得する必要があります。半日の講習会で 12.5 点、1 日講習会で 25 点といった設定が多いため、「呼吸関連の講習会を 1 回しっかり受ける」だけでも条件を満たせるケースが多いです。勤務先の教育委員会や学会参加支援制度があれば、旅費や参加費の補助も含めて早めに相談しておくと良いでしょう。
いつから勉強を始めるのが現実的ですか?
仕事と両立する前提であれば、認定講習会の申込が通った時点、もしくはテキストが届いたタイミングから少しずつ始めるのがおすすめです。目安としては、「試験の 3 か月前から、平日 30〜60 分+週末 2〜3 時間」を確保できると、テキストの 2 周+問題演習まで到達しやすくなります。夜勤や子育てなど生活リズムに応じて、無理のないペースをあらかじめ決めておきましょう。
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

