新人 PT の勉強法は「優先順位」と「型」で迷いが消えます
新人期の勉強は、知識を闇雲に増やすよりも「評価の型」→「解釈の型」→「記録の型」を固定して、毎日同じ流れで回す方が伸びが速いです。本記事は「何から?」「時間がない」「臨床推論がつながらない」を、現場で使える答えにまとめます。
結論として、勉強の順番は「安全管理 → 評価の再現性 → 記録の短縮 → 解釈の言語化 → 介入の引き出し」で OK です。迷ったら、今日の患者 1 人だけで回せる “ 最小セット ” から始めましょう。
このページの使い方(最短)
急ぎなら、まず 現場の詰まりどころ で「最初の一手」を決めます。次に Q&A から “ いちばん困っている 1 問 ” を開きます。最後に 今日やること 3 点 を決めて、明日も同じ型で回します。
現場の詰まりどころ(新人がハマる 7 パターン)
解決の三段(読ませるゾーン)
・ページ内:よくある失敗(あるある)へ
・ページ内:回避の手順(チェック)へ
・関連(同ジャンル):記録が遅い/SOAP が長い時の対処(Q&A)
| 詰まり | 起きやすい理由 | 最初の一手( 10 分) | 記録に残す一文 |
|---|---|---|---|
| 何から勉強? | 範囲が広すぎて選べない | 「よく診る 2 疾患」を決める | 今週は ○○ と ○○ に集中する |
| 評価が多すぎる | 目的(意思決定)が曖昧 | 評価を「 5 個」に絞る | 退院先判断に必要な 5 指標を固定 |
| 解釈がつながらない | 所見が羅列になっている | 所見→仮説を 1 行で書く | ○○ のため、△△ が制限と推定 |
| 介入がワンパターン | 狙い(何を変えるか)が曖昧 | 狙いを 1 つに固定する | 今日の狙いは「立脚の安定」 |
| 記録が遅い | 文章で全部説明しようとする | 定型文+数値+変化で書く | 介入→反応→次回の一手を 3 行 |
| 質問が怖い | 聞く目的が曖昧で緊張する | 「確認したい 1 点」を決める | ○○ の妥当性を確認したい |
| ついていけない | 比較対象が “ 理想の先輩 ” | 昨日の自分と比べる指標を作る | 評価の再現性が上がったかを見る |
よくある失敗(あるある)
新人期の失敗は「知識不足」より「順番が逆」「成果物が残らない」「フィードバックが取れない」で起きやすいです。先に “ やらないこと ” を決めると、学習は一気に前に進みます。
| あるある(NG) | なぜ起きる? | 修正(OK) | 今日の 10 分 |
|---|---|---|---|
| 全部覚えてから臨床へ | 終わりが見えず継続できない | 評価で “ 必要になった分だけ ” 戻る | 迷った用語を 3 つだけ定義する |
| 評価が増えて時間切れ | 意思決定の目的が未固定 | 評価は 5 個に固定(目的別) | 今週の 5 指標を紙 1 枚に書く |
| 所見を並べて満足 | 仮説が 1 行で言えない | 所見→仮説→確認観察を 1 セットに | 仮説 1 行+確認観察 1 つ |
| 質問が抽象的で詰まる | 目的が曖昧で緊張する | 確認したい 1 点に絞る | 「○○ の妥当性」を 1 文で作る |
回避の手順(チェック)
回避のコツは「最小セット」「成果物」「週次レビュー」です。ここだけ固定すると、勉強は “ 続く仕組み ” になります。
| フェーズ | やること | 基準(OK) | 残すもの |
|---|---|---|---|
| 安全 | 中止基準/バイタル/リスクを先に確認 | 介入の “ できる/できない ” を説明できる | 注意点を 1 行 |
| 評価 | 目的別に評価 5 個を固定 | 同じ手順で再現できる | 数値 1 つ+観察 1 つ |
| 解釈 | 所見→仮説を 1 行で言う | 介入の “ 狙い ” が 1 つ | 仮説 1 行 |
| 介入 | 狙いを 1 つに固定し反応を見る | 次回の確認観察が決まる | 反応→次回 1 行 |
| フィードバック | 質問は “ 確認 1 点 ” で短く聞く | 答えが Yes / No で返る | 聞いた 1 文 |
| 週次レビュー | うまくいった 1 点/詰まった 1 点を棚卸し | 来週の “ 直す 1 手 ” が決まる | 修正 1 つ |
新人 PT の勉強法 Q&A 20 選
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
A. 何から勉強する?優先順位( 5 問)
Q1. 新人 PT はまず何から勉強すべき?
結論:最初は「安全管理 → 評価の型 → 記録の型」の順で OK です。
今日やること:よく診る患者 1 人で「評価 5 個」を固定し、所見→仮説→次の一手を 1 枚にまとめます。
Q2. 解剖・運動学・評価・介入はどの順番?
結論:「評価で必要になった分だけ、解剖・運動学を戻って確認」が最短です。
今日やること:評価で迷った用語を 3 つだけ書き出し、定義と臨床での見方を 1 行で整理します。
Q3. 疾患別の勉強はいつから始める?
結論:受け持ちに出た時点で OK です。まずは「頻出 2 疾患」を短期で “ 使える形 ” にします。
今日やること:今週の受け持ちから 2 疾患を決め、評価 5 個と注意点 1 行を作ります。
Q4. 評価項目が多すぎて選べない…
結論:「意思決定(何を決めるか)」を先に固定し、評価を 5 個に絞ります。
今日やること:退院先・介助量・転倒・耐久性のうち “ いま決めたい 1 つ ” を選び、必要な指標を 5 個に固定します。
Q5. セミナーや勉強会はいつから行くべき?
結論:「今週の患者で検証できるテーマ」が決まったら行って OK です。
今日やること:参加目的を 1 行で書きます(例:○○ の評価手順を再現できるようにする)。
B. 時間がない問題( 4 問)
Q6. 勉強する時間が取れません
結論:「 10 分 × 高頻度 + 成果物 1 枚」が一番続きます。
今日やること:通勤・昼休み・帰宅後のどこかに “ 10 分枠 ” を 1 つだけ固定します。
Q7. 家に帰ると疲れて何もできない
結論:帰宅後は “ やらない ” 前提で、出勤前か勤務内の 10 分に寄せます。
今日やること:翌日の患者 1 人について、仮説 1 行だけ書いて寝ます。
Q8. 勉強しても身についた感じがしない
結論:覚えるより先に「言語化( 30 秒口述 )」を挟むと定着が上がります。
今日やること:評価手順を 30 秒で言えるか試し、詰まった語を 3 つだけメモします。
Q9. 何を捨てればいいか分かりません
結論:「今週の患者に関係ない学習」を先に捨てます。
今日やること:今週 “ やらないこと ” を 1 つ決めてメモします。
C. 臨床推論の型(評価→解釈→介入)( 6 問)
Q10. 所見が並ぶだけで、解釈につながりません
結論:所見→仮説を 1 行にし、確認観察を 1 つだけ決めます。
今日やること:「○○ のため △△ が制限」の 1 文を作り、確認観察を 1 つ書きます。
Q11. 介入がワンパターンです
結論:狙い(何を変えるか)を 1 つに固定します。
今日やること:「今日の狙い」を 1 行で書き、反応を 1 つだけ記録します。
Q12. 評価→介入→再評価がつながりません
結論:評価は “ 変えたい 1 点 ” を測るために選びます。
今日やること:再評価で見る指標を 1 つ決め、介入の狙いを合わせます。
Q13. 動作分析が難しいです
結論:最初は “ 1 局面 1 仮説 ” で十分です。
今日やること:立脚期か遊脚期のどちらか 1 つに絞り、仮説 1 行を書きます。
Q14. 記録に解釈を書けません
結論:「数値 1 つ+観察 1 つ」から解釈に入ると書きやすいです。
今日やること:数値 1 つと観察 1 つを並べ、最後に “ 〜のため ” を 1 回だけ使って 1 文にします。
Q15. エビデンス(論文)をどう使えばいい?
結論:まずは “ 今週の患者で検証できる 1 行 ” に落とすのが先です。
今日やること:読んだ内容を「誰に/何を/どの条件で」に直して 1 行で残します。
D. 症例検討・フィードバック( 3 問)
Q16. 症例検討でうまく話せません
結論:「結論 → 根拠 → 依頼」の順に固定します。
今日やること:結論 1 行(今の見立て)と、根拠 2 個(数値 1+観察 1)を書きます。
Q17. 先輩に質問するのが怖いです
結論:質問は “ 確認したい 1 点 ” を先に書くと怖さが減ります。
今日やること:「○○ の妥当性を確認したい」を 1 文で作ってから聞きに行きます。
Q18. フィードバックをもらっても活かせません
結論:修正は “ 1 個だけ ” に絞ると回ります。
今日やること:もらった指摘から「明日直す 1 手」だけを書きます。
E. メンタル・キャリア( 2 問)
Q19. 同期と比べて落ち込みます
結論:比較対象は “ 昨日の自分 ” に固定します。
今日やること:評価の再現性(同じ手順でできたか)を 1 指標だけ作って記録します。
Q20. ついていけない…もう無理かも
結論:状態が重いときは “ 仕組みの再建 ” が先です。90 日で追いつく設計に切り替えます。
関連:ついていけない時の立て直し方( 90 日) に移動して、自己チェック→優先順位→週次タスクまで固定してください。
今日やること 3 点(迷ったらこれだけ)
- よく診る患者 1 人で「評価 5 個」を固定する
- 所見→仮説を 1 行にし、確認観察を 1 つ決める
- 先輩に聞く “ 確認 1 点 ” を 1 文で作る
新人期の “ 学びの型 ”(毎日同じ流れで回す)
毎日 10 分で回せるように「やること」と「成果物」を固定します。帰宅後に無理に足さず、出勤前と勤務内の短い枠で十分です。
| タイミング | やること | 時間 | 成果物 |
|---|---|---|---|
| 出勤前 | 今日の患者 1 人:狙い 1 行+注意点 1 行 | 10 分 | 仮説メモ 2 行 |
| 介入前 | 評価 5 個の手順を “ 声出し ” で確認 | 3 分 | 詰まった語 1〜 3 個 |
| 介入後 | 反応→次回の確認観察を 1 行で残す | 2 分 | 次回の一手 1 行 |
| 週 1 回 | うまくいった 1 点/詰まった 1 点の棚卸し | 15 分 | 修正 1 つ |
次の一手(行動)
- 運用を整える:前期研修の進め方(予定化→ログ化)
- 共有の型を作る:書類・カルテ記載 Q&A(短く書く型)
教育体制・人員・記録文化など “ 環境要因 ” を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Ericsson KA, Krampe RT, Tesch-Römer C. The role of deliberate practice in the acquisition of expert performance. Psychological Review. 1993;100(3):363-406. DOI: 10.1037/0033-295X.100.3.363
- Hattie J, Timperley H. The power of feedback. Review of Educational Research. 2007;77(1):81-112. DOI: 10.3102/003465430298487
- Cepeda NJ, Pashler H, Vul E, Wixted JT, Rohrer D. Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin. 2006;132(3):354-380. DOI: 10.1037/0033-2909.132.3.354
- Ericsson KA. Deliberate practice and acquisition of expert performance: A general overview. Academic Emergency Medicine. 2008;15(11):988-994. DOI: 10.1111/j.1553-2712.2008.00227.x
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


