GNRIのIBWはどっち?まず結論から整理する
GNRIのIBW(Ideal Body Weight:理想体重)について、まず押さえておきたい結論は、2005年に報告されたGNRI原著ではLorentz式が使用されているという点です。一方、日本の臨床研究などでは、BMI 22から求めた体重をIBWとしてGNRIを算出する方法も用いられています。
つまり、Lorentz式とBMI22法は「どちらを使ってもまったく同じGNRIになる2つの公式」ではありません。IBWが変われば体重/IBWが変わり、GNRI値やリスク区分が変わる可能性があります。原法との整合性を重視するならLorentz式、BMI22法を採用する場合は算出方式を明記し、異なる方式で計算した過去値と単純比較しないことが重要です。
この記事の結論
・GNRI原著のIBWはLorentz式
・BMI22法は後続研究などで使用される代替的な算出方法
・両方式ではGNRI値が変わるため、方式名を記録して経時比較の条件をそろえる
GNRI全体の計算式、リスク区分、GLIMなどの追加評価へのつなぎ方は、GNRIの使い方と運用手順で整理しています。本記事では「IBWをどう決めるか」に絞って解説します。
GNRI原著ではIBWにLorentz式を使用する
GNRIは、2005年にBouillanneらが高齢入院患者の栄養関連リスクを評価する指標として報告しました。原著では、IBWの算出に身長と性別を用いるLorentz式が採用されています。1
GNRIの基本式は次のとおりです。
GNRIの計算式
GNRI = 14.89 × Alb(g/dL)+ 41.7 ×(現在体重/IBW)
現在体重/IBWが1を超える場合は、原法では1を上限として計算します。したがって、IBWは単なる参考値ではなく、GNRIの数値を直接動かす構成要素です。
Lorentz式の計算方法
Lorentz式は男女で計算式が異なります。
| 性別 | IBWの計算式 |
|---|---|
| 男性 | 身長(cm)− 100 −[(身長 − 150)÷ 4] |
| 女性 | 身長(cm)− 100 −[(身長 − 150)÷ 2.5] |
原著のGNRIや、原著と同じ算出条件を再現したい場合は、Lorentz式を用いるのが基本になります。
Lorentz式とBMI22法は何が違う?
Lorentz式とBMI22法の大きな違いは、IBWの定義と算出方法が異なることです。BMI22法では、身長からBMI 22となる体重を求めます。
BMI22法
IBW = 22 × 身長(m)× 身長(m)
日本では、BMI 22付近が疾病合併率の低い体重として報告されてきた経緯があり、BMI 22から求めた体重を標準体重として扱う方法が広く知られています。3 そのため、日本のGNRI研究でもBMI22法を用いる報告があります。
ただし、BMI22法はGNRI原著で使用されたIBW算出法ではありません。「Lorentz式よりBMI22法の方が簡単だから置き換えてよい」と考えるのではなく、どの算出条件に基づくGNRIなのかを区別する必要があります。
スマートフォンでは表を横へスクロールできます。
| 比較項目 | Lorentz式 | BMI22法 |
|---|---|---|
| GNRI原著 | 使用されている | 使用されていない |
| 必要な情報 | 身長・性別 | 身長 |
| IBWの考え方 | Lorentz式による理想体重 | BMI 22となる体重 |
| 特徴 | 原法との整合性を保ちやすい | 計算が単純で運用しやすい |
| 実務上の注意 | 男女の式を取り違えない | 原法と異なる算出法であることを明記する |
| 経時比較 | 同じ方式でそろえ、途中変更した場合は単純比較しない | |

同じ患者でもIBW方式によってGNRI値は変わる
IBW方式の違いが重要なのは、同一患者でもGNRI値が変わるためです。図版と同じ「男性170cm、体重54kg、Alb 3.8g/dL」の症例で確認します。
まずLorentz式では、男性170cmのIBWは次のようになります。
Lorentz式
IBW = 170 − 100 −[(170 − 150)÷ 4]
= 65.0kg
体重/IBW = 54 ÷ 65.0 = 約0.83
GNRI = 14.89 × 3.8 + 41.7 × 0.83
= 約91.2
同じ患者をBMI22法で計算すると、IBWは次のようになります。
BMI22法
IBW = 22 × 1.70 × 1.70
= 63.6kg
体重/IBW = 54 ÷ 63.6 = 約0.85
GNRI = 14.89 × 3.8 + 41.7 × 0.85
= 約92.0
このように、身長・体重・Albがまったく同じでも、IBWの算出方式によってGNRI値は変わります。特にリスク区分の境界付近では、小さな差が判定表示に影響する可能性があります。
なお、上記の92.0は小数第1位へ丸めた表示です。計算途中で小数を丸めるか、最終値のみを丸めるかによって境界付近の表示が変わることがあります。経時比較ではIBW方式だけでなく、計算精度や丸め方も同じ条件にそろえると再現性を保ちやすくなります。
日本人ならBMI22法を使うべき?2024年研究から考える
「日本人ではBMI22法の方がよいのでは」と考える際に参考になるのが、Kitabayashiらが2024年に報告した日本人高齢患者の研究です。2
この研究では、日本の長期療養病院に入院していた65歳以上の262例を対象に、Lorentz式で算出したGNRI(GNRI-LF)と、BMI22法で算出したGNRI(GNRI-BMI)を比較しています。対象者の年齢中央値は86歳でした。
スマートフォンでは表を横へスクロールできます。
| 項目 | GNRI-LF | GNRI-BMI |
|---|---|---|
| IBW算出法 | Lorentz式 | BMI 22 |
| GNRI中央値 | 80.2 | 83.4 |
| 原法区分:高度リスク | 57% | 44% |
| 原法区分:中等度リスク | 43% | 36% |
| 原法区分:低リスク | 0% | 14% |
| 原法区分:リスクなし | 0% | 7% |
この結果からも、IBW方式を変えるとGNRIの分布やリスク区分が変化することが分かります。研究では、GNRI-BMIを四分位で分類した場合に死亡との有意な関連が示され、対象集団ではGNRI-BMIが予後評価に有用である可能性が示されました。2
ただし、この結果だけから「日本人では全員BMI22法を使うべき」と結論づけることはできません。この研究は単施設の長期療養病院を対象とした後ろ向き研究で、対象者も高齢かつ医療・介護依存度の高い集団です。研究者らも、GNRIの算出法と適切なカットオフは患者背景を考慮して検討する必要があるとしています。
ポイント:2024年研究は「BMI22法がすべての日本人で標準」という根拠ではありません。原著との整合性、対象集団、使用する研究やカットオフ、過去データとの比較条件を合わせて判断します。
結局、GNRIのIBWはどちらを使えばよい?
実務では、単純に「計算しやすい方」を選ぶのではなく、何と整合させたいGNRIなのかを基準に判断すると整理しやすくなります。
| 状況 | 考え方 | 実務上の対応 |
|---|---|---|
| GNRI原法を再現したい | Lorentz式を使用する | 原著と同じIBW方式で算出する |
| 原著のリスク区分との整合性を重視する | 原法の算出条件を優先する | Lorentz式を使用し、同じ条件で判定する |
| 研究でBMI22法が指定されている | 研究の算出条件に合わせる | 「GNRI-BMI22」など方式を明記する |
| 施設ですでにBMI22法を継続使用している | 経時比較の一貫性を確認する | 方式名を記録し、算出条件を固定する |
| 過去値のIBW方式が不明 | 同条件か確認できない | 単純な増減比較を避け、可能なら元データから再計算する |
| 途中で方式を変更する | 変更前後でGNRIの意味がずれる可能性がある | 切替日・旧方式・新方式・変更理由を記録する |
したがって、迷った場合の基本は「原法との整合性が必要ならLorentz式」です。一方、BMI22法を用いた特定研究との比較や、すでにBMI22法で統一された院内運用を継続する場合には、BMI22法を使用する合理性があります。
IBWの計算方法と計算例
実際の計算では、式そのものよりも単位や性別の取り違えに注意します。ここでは、Lorentz式とBMI22法をそれぞれ1例ずつ確認します。
BMI22法:身長154cmの場合
身長154cmは1.54mです。
IBW = 22 × 1.54 × 1.54
= 52.1752kg
= 約52.2kg
BMI22法では男女で式を分けません。ただし、身長をcmのまま代入せず、mへ換算してから計算します。
Lorentz式:女性・身長150cmの場合
IBW = 150 − 100 −[(150 − 150)÷ 2.5]
= 50 − 0
= 50.0kg
Lorentz式では男女で除数が異なります。Excelや電子カルテの計算式を使用している場合も、男性式と女性式が正しく設定されているか確認してください。
体重/IBWが1を超える場合は1として計算する
GNRIでは、現在体重がIBWを上回って体重/IBWが1を超える場合、比率は1として扱います。1
例えば、現在体重70kg、IBW60kgの場合、70÷60=約1.17ですが、GNRIへ代入する値は1です。
70kg ÷ 60kg = 1.17
GNRI計算時の体重/IBW = 1
この上限処理を忘れると、現在体重がIBWを上回る患者でGNRIを高く算出してしまいます。また、浮腫や体液貯留がある患者では、体重そのものが栄養状態だけを反映しているとは限りません。数値だけで判断せず、体重測定条件や身体所見を併せて確認してください。
経時比較ではIBW方式・身長・測定条件を記録する
GNRIを経時的に使用する場合は、数値だけを「GNRI 91」などと残すのではなく、次回も同じ条件で再計算できる情報を記録します。
| 記録項目 | 確認する内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| IBW方式 | Lorentz式かBMI22法か | IBW:Lorentz式 |
| 採用身長 | 数値と測定・推定方法 | 身長154cm、入院時実測 |
| IBW | 算出した理想体重 | IBW 52.2kg |
| 現在体重 | 測定日と条件 | 体重48.0kg、9月11日測定 |
| 体重/IBW | 比率と1上限処理 | 0.92 |
| Alb | 値・単位・採血日 | Alb 3.4g/dL、9月10日 |
| 方式変更 | 変更した場合の日時と理由 | 9月11日よりBMI22法へ変更、院内方式統一のため |
特に担当者が変わる病棟や長期経過を追う患者では、IBW方式の記録がないと、GNRIの変化が患者の変化なのか計算条件の変化なのか区別できなくなります。GNRI全体の記録と再評価については、GNRIの使い方と運用手順も併せて確認してください。
GNRIのIBWで起こりやすいミス
IBWに関するミスは、計算式そのものよりも異なる条件を混在させたまま比較する場面で起こりやすくなります。
| ミス | 問題 | 対策 |
|---|---|---|
| Lorentz式とBMI22法を区別しない | 同じ患者でもGNRI値が変わる | IBW方式を必ず記録する |
| 原著のIBWがBMI22だと思い込む | 原法と異なる条件になる | 原著はLorentz式と理解して使う |
| Lorentz式の男女を取り違える | IBWが誤って算出される | 式をテンプレート化して確認する |
| BMI22法でcmをそのまま代入する | IBWが大きく誤る | 身長をmへ換算する |
| 体重/IBWの1上限を忘れる | GNRIを過大算出する | 1を超えた場合は1として代入する |
| 途中でIBW方式を変えてそのまま比較する | 患者変化と計算条件の変化を区別できない | 切替日を記録し、必要なら元データから再計算する |
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本人のGNRIではBMI22法を使うのが正解ですか?
A. 一律にBMI22法が正解とはいえません。GNRI原著ではLorentz式が使われています。2024年の日本人高齢入院患者研究ではBMI22法を用いたGNRIの有用性が示されていますが、単施設の特定集団を対象とした研究です。原法との整合性、対象患者、使用する研究やカットオフに合わせて判断します。
Q2. BMI22法で計算したGNRIに原著のカットオフをそのまま使えますか?
A. 注意が必要です。原著のリスク区分はLorentz式を用いたGNRIから作られています。BMI22法ではGNRI値やリスク区分の分布が変わる可能性があるため、原著と同一条件と考えず、使用する研究や施設ルールを確認してください。
Q3. 途中からLorentz式とBMI22法を変更してもよいですか?
A. 必要に応じて変更することはありますが、変更前後のGNRIを単純比較しないことが重要です。切替日、旧方式、新方式、変更理由を残し、身長・体重・Albの元データがあれば同じ方式で再計算すると比較しやすくなります。
Q4. 身長を実測できない患者ではどうしますか?
A. 推定身長や過去の実測身長を使用する場合は、どの値を採用したかと根拠を記録してください。再評価のたびに採用身長が変わるとIBWも変わるため、経時比較では同じ条件を維持することが重要です。
まとめ:原法はLorentz式、BMI22法は算出条件を明記する
GNRIのIBWで迷ったときは、まず「原著ではLorentz式が使用されている」ことを基準に整理すると分かりやすくなります。BMI22法は日本の後続研究などで用いられる方法ですが、原法とまったく同じ算出条件ではありません。
同じ患者でもIBW方式によってGNRI値は変わります。したがって、臨床で大切なのは「どちらでもよいから固定する」ことではなく、何を根拠にその方式を選んだのかを明確にし、IBW方式・採用身長・体重測定条件を残したうえで同じ条件で比較することです。
参考文献
- Bouillanne O, Morineau G, Dupont C, Coulombel I, Vincent JP, Nicolis I, et al. Geriatric Nutritional Risk Index: a new index for evaluating at-risk elderly medical patients. Am J Clin Nutr. 2005;82(4):777-783. DOI: 10.1093/ajcn/82.4.777
- Kitabayashi K, Yamamoto S, Narita I. Appropriate Anthropometric Indices for Geriatric Nutritional Risk Index in Predicting Mortality in Older Japanese Patients: A Comparison of the Lorentz Formula and Body Mass Index. Tohoku J Exp Med. 2024;262(4):221-228. DOI: 10.1620/tjem.2024.J001
- Tokunaga K, Matsuzawa Y, Kotani K, Keno Y, Kobatake T, Fujioka S, et al. Ideal body weight estimated from the body mass index with the lowest morbidity. Int J Obes. 1991;15(1):1-5. PubMed: 2010254
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関・介護福祉施設・訪問リハの現場経験をもとに、理学療法士を中心とした医療従事者が臨床で判断しやすい評価方法・記録・プロトコルを発信しています。
記事作成では、ガイドライン、原著論文、公的資料などの一次情報を優先し、「数値を覚える」だけでなく、対象患者への使い方、結果の解釈、再評価へつなげられる構成を重視しています。
保有資格
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養・リハ栄養、シーティング、摂食・嚥下

