McMurrayテストとは|内側は外旋、外側は内旋
McMurray(マックマレー)テストは、半月板損傷を疑うときに用いる代表的な徒手検査です。実施方向で迷いやすいポイントは、内側半月板では脛骨外旋、外側半月板では脛骨内旋を基本とすることです。ただし、McMurray単独で半月板損傷を確定したり、陰性だけで除外したりすることはできません。この記事では、実施方向、陽性所見、感度・特異度、他所見との組み合わせ、記録方法まで整理します。
| 確認する半月板 | 脛骨の回旋 | 確認する部位 |
|---|---|---|
| 内側半月板 | 外旋 | 内側関節裂隙 |
| 外側半月板 | 内旋 | 外側関節裂隙 |
「内側だから内旋」と覚えると逆になるため、内側=外旋、外側=内旋をセットで整理すると混乱しにくくなります。
McMurrayテストのやり方|屈曲・回旋・伸展で確認する
McMurrayテストでは、膝を十分に屈曲した状態から、確認したい半月板に応じて脛骨を回旋し、回旋を保ちながら膝をゆっくり伸展して症状やクリックを確認します。強い疼痛や可動域制限がある場合は無理に深屈曲させません。
- 開始前に確認する:疼痛部位、関節裂隙圧痛、膝関節可動域、腫脹、ロッキング・ひっかかりなどを確認する
- 膝を屈曲する:仰臥位で膝を十分に屈曲する。疼痛がある場合は許容範囲にとどめる
- 脛骨を回旋する:内側半月板を確認する場合は外旋、外側半月板では内旋する
- 膝をゆっくり伸展する:回旋を保ちながら伸展し、関節裂隙に一致する症状やクリック・ひっかかりを確認する
- 所見を記録する:左右、確認側、回旋方向、症状の部位・種類、普段の症状との一致、実施制限を残す

内側半月板を確認する場合
膝屈曲位で脛骨を外旋し、その回旋を保ちながら膝を伸展します。内側関節裂隙に一致するクリック、thud、症状再現などを確認します。
外側半月板を確認する場合
膝屈曲位で脛骨を内旋し、その回旋を保ちながら膝を伸展します。外側関節裂隙に一致するクリック、thud、症状再現などを確認します。
外反・内反ストレスは必須か
外反・内反ストレスをMcMurrayテストの必須要素として固定する必要はありません。McMurrayには複数の実施法・変法があり、外反・内反や軸圧を加える方法も報告されています。一方、原法を整理した文献では、内側をみるときの脛骨外旋、外側をみるときの脛骨内旋が中心で、外反・内反ストレスは加えていません。1
そのため、記録や申し送りでは単に「McMurray陽性」とするより、どの肢位・回旋方向で、どの症状が出たのかを残す方が再現性を高めやすくなります。
陽性所見|クリックだけでなく「何が再現されたか」を残す
McMurrayテストの陽性所見は、文献によって定義が完全には統一されていません。原法では検者が触知・聴取するthudやclickが重視されていますが、その後の研究では疼痛を陽性所見に含める方法も用いられています。1
したがって、臨床では「陽性・陰性」だけで終わらせず、どの関節裂隙で、何が、どの動きで再現されたかを分けて記録します。
| 所見 | 確認するポイント | 記録の考え方 |
|---|---|---|
| クリック・thud | 内側または外側の関節裂隙付近で触知・聴取されるか | 側・出現した動き・触知/聴取を残す |
| 疼痛・症状再現 | 関節裂隙に一致するか、普段の症状と一致するか | 部位と症状の種類を具体的に残す |
| ひっかかり感 | どの屈曲・伸展範囲で生じたか | 再現条件と可動域制限の有無を残す |
| 広範な疼痛 | 関節裂隙に限局せず広く痛むか | 半月板由来と即断せず、他所見と合わせる |
特に、変形性膝関節症など他の疼痛要因が考えられる場合は、回旋・屈伸による疼痛をそのまま半月板損傷の陽性所見と断定しないことが重要です。
McMurrayテストの感度・特異度|陰性でも半月板損傷は除外できない
McMurrayテストは、陰性だから半月板損傷を否定できる検査ではありません。2015年のシステマティックレビュー・メタ解析では、McMurrayテストの統合感度は61%、特異度は84%でした。ただし、対象となった研究の方法論的質は全体として低く、研究間のばらつきもあるため、数値を絶対的な診断基準として扱うべきではありません。2
| 指標 | 統合値 | 臨床での読み方 |
|---|---|---|
| 感度 | 61%(95%CI 45–74%) | 陰性だけでは半月板損傷を除外しにくい |
| 特異度 | 84%(95%CI 69–92%) | 陽性所見は疑いを高める材料になるが、単独確定には用いない |
2009年のシステマティックレビューでも、McMurrayテストは全般に感度が低く、特異度が比較的高い傾向が報告されています。また、研究によって手技や陽性定義が異なることも、診断精度のばらつきにつながっています。1
つまり、「McMurray陰性=半月板損傷なし」とせず、病歴、関節裂隙圧痛、他の身体診察、必要時の画像所見まで含めて判断します。
関節裂隙圧痛・Thessalyとどう組み合わせるか
2024年のAmerican Academy of Orthopaedic Surgeons(AAOS)ガイドラインでは、急性孤立性半月板損傷の身体診察として、関節裂隙圧痛、McMurrayテスト、Thessalyテストが挙げられ、複数の身体所見を組み合わせることで診断精度が高まる可能性が示されています。3
実際の評価では、McMurrayだけを先に行うのではなく、次のように情報を統合します。
- 病歴:捻転などの受傷機転、荷重時痛、腫脹、ロッキング・ひっかかりの有無を確認する
- 可動域:屈曲・伸展制限と疼痛が生じる範囲を確認する
- 触診:内側・外側関節裂隙の圧痛部位を確認する
- 徒手検査:症状と安全性に応じてMcMurrayやThessalyなどを選択する
- 統合:単一テストではなく、病歴・身体所見全体から半月板損傷の可能性を判断する
なお、AAOS 2024ガイドラインの対象は急性孤立性半月板損傷です。慢性・変性半月板断裂、再断裂、半月板ルート断裂、ACL損傷など他の膝関節損傷を伴うケースには、そのまま適用できません。3
強い痛み・ロッキングがあるときは反復より精査を優先する
McMurrayテストは、症状を強く誘発すること自体が目的ではありません。強い疼痛がある、深屈曲できない、明らかな可動域制限がある場合は、無理に最終域まで動かさず、得られた範囲の所見を記録します。
特に急性外傷後に膝が機械的に伸びない、一定の角度でロックされるなど明らかな可動域制限があり、転位した半月板断裂が疑われる場合は、McMurrayを何度も反復するより医師への相談・精査を優先します。AAOS 2024では、可動域を制限する転位または転位しうる急性半月板断裂は、早期の外科的介入が利益となる可能性があるとされています。3
また、骨折、靱帯損傷、強い腫脹など別の急性膝損傷が疑われる場合も、McMurray単独の結果で判断せず、受傷機転と他の評価を優先します。
McMurrayテストの記録例|陽性・陰性だけで終わらせない
McMurrayテストでは、「陽性」だけでは次回の再評価や他職種への共有に必要な情報が不足します。少なくとも、左右、確認した半月板、回旋方向、症状部位、症状の種類、普段の症状との一致、実施制限を残します。
| 記録項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 検査側 | 右/左 |
| 確認側 | 内側半月板/外側半月板 |
| 回旋 | 脛骨外旋/内旋 |
| 症状部位 | 内側・外側関節裂隙など |
| 所見 | 疼痛/クリック/thud/ひっかかり/症状なし |
| 症状との一致 | 普段の症状と一致/異なる/判断困難 |
| 実施制限 | 疼痛、可動域制限、筋防御など |
記載例:「右膝McMurray。内側評価:脛骨外旋位から伸展時に内側関節裂隙の普段と一致する疼痛を再現。明確なクリックは触知せず。外側評価:脛骨内旋位では症状再現なし。内側関節裂隙圧痛あり。McMurray単独では確定せず他所見と統合して判断。」
角度を記録する場合は、実際に測定・確認できた値を残します。固定された角度を「陽性基準」として一律に当てはめる必要はありません。
McMurrayテストのよくある質問
クリックがなければMcMurrayテストは陰性ですか?
原法では触知・聴取されるthudやclickが陽性所見として重視されていますが、後の研究では疼痛を陽性所見に含めた方法もあります。文献間で陽性定義が異なるため、クリックの有無だけで終わらせず、関節裂隙の症状再現や普段の症状との一致を具体的に記録します。
痛みだけでも半月板損傷と判断できますか?
判断できません。関節裂隙に一致する疼痛は半月板損傷を疑う材料になりますが、他の膝関節病変でも疼痛は生じます。病歴、関節裂隙圧痛、McMurray以外の身体所見、必要時の画像所見と統合します。
McMurrayテストが陰性なら半月板損傷を除外できますか?
除外できません。2015年のメタ解析では感度61%とされており、陰性結果だけでは半月板損傷を見逃す可能性があります。症状や他所見から疑いが残る場合は、McMurray陰性のみを根拠に評価を終了しないことが重要です。
内側半月板と外側半月板では回旋方向が逆ですか?
はい。基本は、内側半月板を確認するときは脛骨外旋、外側半月板では脛骨内旋です。外反・内反ストレスを加える変法もありますが、回旋方向と外反・内反を同じものとして覚えないようにします。
次の一手|膝の徒手検査全体から位置づける
McMurrayテストは、半月板損傷を疑う身体診察の1つです。ACL・側副靱帯・半月板などを含め、症状からどの膝テストを選ぶか整理したい場合は、膝の整形外科テスト一覧で全体像を確認してください。
参考文献
- Hing W, White S, Reid D, Marshall R. Validity of the McMurray’s test and modified versions of the test: a systematic literature review. J Man Manip Ther. 2009;17(1):22-35. doi:10.1179/106698109790818250. PubMed
- Smith BE, Thacker D, Crewesmith A, Hall M. Special tests for assessing meniscal tears within the knee: a systematic review and meta-analysis. Evid Based Med. 2015;20(3):88-97. PMID:25724195. PubMed
- American Academy of Orthopaedic Surgeons. Clinical Practice Guideline for the Management of Acute Isolated Meniscal Pathology. Published June 10, 2024. AAOS
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

