Lachmanテストとは|やり方と陽性所見を先に確認
Lachmanテストは、前十字靱帯(ACL)損傷を疑うときに、脛骨の前方移動と終末感を確認する代表的な徒手検査です。代表的な方法では、背臥位で膝を約20〜30°屈曲し、大腿遠位部を固定したまま脛骨近位部を前方へ移動させます。
判定では、単に「脛骨が動いたか」ではなく、健側より前方移動が増えているか、firmな終末感が失われてsoft/不明瞭になっているかを同じ条件で比較します。この記事では、Lachmanテストのやり方、陽性所見、診断精度、判定しにくい条件、記録方法までを整理します。
Lachmanテストで最初に確認する4点
- 膝屈曲は代表的には約20〜30°
- 大腿遠位部を固定し、脛骨近位部を前方へ移動させる
- 健側との前方移動の左右差を確認する
- 移動量だけでなく、firm/softなどの終末感を確認する
Lachmanテストのやり方|大腿を固定して脛骨近位部を前方へ移動する
Lachmanテストは、大腿骨と脛骨が一緒に動かない条件を作ることが重要です。患者が力んでいる状態では前方移動や終末感を読み取りにくいため、まず背臥位で膝周囲をできるだけリラックスできるようにします。
- 背臥位にする:検査する下肢をリラックスできる位置にします。
- 膝を約20〜30°屈曲する:代表的なLachmanテストではこの範囲が用いられます。文献によって角度の記載には幅があるため、再評価では実施角度を記録しておくことが重要です。
- 大腿遠位部を固定する:一方の手で大腿遠位部を保持し、脛骨を動かしたときに大腿が一緒に移動しないようにします。
- 脛骨近位部を把持する:もう一方の手で脛骨近位部を保持します。
- 脛骨を前方へ移動させる:大腿を固定したまま脛骨近位部へ前方への力を加え、前方移動量と停止感を確認します。
- 健側と比較する:可能であれば健側も同じ角度・把持・下腿回旋位で確認し、左右差を比較します。
下腿の回旋位が変わると所見の感じ方も変わるため、過度な内旋・外旋を混ぜず、左右で条件をそろえます。軽度外旋位を用いる手技も報告されていますが、重要なのは「何度・どの肢位で実施したか」が再現できることです。

陽性所見|前方移動の左右差とsoft end feelを組み合わせて見る
Lachmanテストでは、健側より脛骨前方移動が増大し、明瞭なfirm endpointが得られない場合にACL損傷を疑う所見が強くなります。前方移動量だけ、終末感だけの一項目で判断するのではなく、両者を組み合わせて解釈します。
| 確認項目 | 確認する内容 | 解釈のポイント |
|---|---|---|
| 前方移動 | 健側より脛骨前方移動が増えているか | 明らかな左右差はACL損傷を疑う所見の一つ |
| 終末感 | 前方移動の最後にfirmな停止感があるか | soft/不明瞭なendpointはACL損傷を疑う所見 |
| 左右差 | 角度・把持・回旋位をそろえて比較できているか | もともとの関節弛緩性による差と区別するために重要 |
| 疼痛・防御収縮 | 痛みやハムストリングスの力みがあるか | 前方移動が抑えられ、判定が難しくなる場合がある |
firm endpointとsoft endpointの違い
firm endpointは、脛骨を前方へ移動させたときに、最後で比較的明瞭な停止感を触知できる状態です。一方、soft endpointでは明瞭な停止感が乏しく、脛骨が前方へ移動していく感覚が残ります。
ただし、endpointの表現は検者の触診に依存します。したがって「softだった」という結果だけではなく、健側との差、前方移動の増大、疼痛や防御収縮の有無まで記録しておく方が、他者との共有や再評価に適しています。
左右差が小さければACL損傷を否定できるとは限らない
健側との比較は重要ですが、左右差が小さいことだけでACL損傷を否定することはできません。もともとの関節弛緩性、部分損傷、疼痛、腫脹、防御収縮などによって、徒手的な左右差が分かりにくい場合があります。
反対に、関節弛緩性が大きい人では健側にも前方移動を感じる場合があります。そのため、絶対的な移動量だけではなく、本人の健側を基準にした左右差と終末感を優先して確認します。
感度・特異度|Lachmanテスト単独でACL損傷を確定しない
LachmanテストはACL損傷の評価に有用ですが、陽性なら必ずACL損傷、陰性なら必ずACL正常という検査ではありません。診断精度は、対象者、急性期か慢性期か、部分損傷か完全損傷か、併存損傷、検者、基準検査などによって変わります。
| 報告 | 対象 | 感度 | 特異度 |
|---|---|---|---|
| Sokalら 2022 | ACL断裂に対する全体推定 | 81% | 85% |
| Tanakaら 2022 | 急性ACL損傷 | 79% | 91% |
2006年のメタ解析ではLachmanテストの感度85%、特異度94%と報告されましたが、2022年のSokalらは、従来の診断精度が過大評価されていた可能性を指摘しています。数値を一つの固定値として覚えるよりも、LachmanテストはACL損傷を考える重要な所見の一つであり、単独で確定・除外しないと理解しておく方が実務的です。
実際の判断では、受傷機転、膝崩れ、腫脹、疼痛、他の徒手検査、必要に応じた画像検査などと合わせて評価します。
判定しにくいとき|疼痛・腫脹・防御収縮を確認する
Lachmanテストの結果が曖昧なときは、強く引き直す前に検査条件が判定を妨げていないかを確認します。特に急性期では、疼痛、腫脹・関節血症、恐怖感、ハムストリングスの防御収縮によって前方移動が抑えられることがあります。
| 状況 | 起こりやすい問題 | 確認すること |
|---|---|---|
| 疼痛が強い | 力みが生じ、脛骨前方移動を確認しにくい | 疼痛部位と程度、検査継続が可能かを確認する |
| 腫脹・関節血症 | 膝をリラックスしにくく、防御収縮が入りやすい | 腫脹の程度と検査時の筋緊張を記録する |
| ハムストリングスの防御収縮 | 脛骨前方移動が抑えられ、偽陰性につながる可能性がある | 声かけ、肢位、把持を見直し、無理に牽引しない |
| 大腿固定が不十分 | 大腿ごと動き、前方移動量とendpointが曖昧になる | 大腿遠位部が固定されているか確認する |
| 左右で条件が違う | 角度や回旋位の違いを左右差と誤認する | 膝屈曲角度・下腿回旋位・把持位置をそろえる |
条件を整えても判定できない場合は、無理に「陽性/陰性」を決めず、判定困難であった理由を記録し、他所見や再評価につなげることが重要です。
また、明らかな変形、骨折・脱臼が疑われる状況、神経血管障害を疑う所見などがある場合は、Lachmanテストの実施を優先せず、必要な医学的評価へつなげます。
記録方法|陽性・陰性だけで終わらせない
Lachmanテストは、結果だけでなくどの条件でその所見が得られたかを残すことで再評価しやすくなります。最低限、膝屈曲角度、前方移動の左右差、endpoint、疼痛、防御収縮を記録します。
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 体位・角度 | 背臥位、膝屈曲約20〜30°など |
| 前方移動 | 健側比で増大あり/明らかな左右差なし/判定困難 |
| 終末感 | firm/soft/不明瞭/判別困難 |
| 疼痛 | 有無、部位、検査への影響 |
| 防御収縮 | 有無、ハムストリングスの力みなど |
| 総合判断 | ACL損傷を疑う所見あり/明らかでない/条件不良のため判定困難 |
記録例
Lachman:右膝、背臥位・膝屈曲約20〜30°で実施。左比で脛骨前方移動増大あり、endpoint soft。検査時疼痛は軽度、防御収縮は明らかでない。ACL損傷を疑う所見として他所見と合わせて評価する。
再評価では、初回と同じ角度・把持・回旋位をできるだけ再現します。「Lachman陽性」の一言だけでは、前方移動が変化したのか、endpointが変化したのか、検査条件が違ったのかを追えません。
よくある質問(FAQ)
Lachmanテストと前方引き出しテストは何が違いますか?
Lachmanテストは膝を軽度屈曲位で評価し、前方引き出しテストは一般に膝90°屈曲位で評価します。膝屈曲角度や周囲組織の影響が異なるため、同じ「脛骨前方移動」を見る検査でも同一の検査ではありません。どちらか一つの結果だけでACL損傷を確定するのではなく、病歴や他所見と合わせて解釈します。
soft end feelならLachmanテスト陽性ですか?
soft/不明瞭なendpointはACL損傷を疑う重要な所見ですが、それだけで診断を確定しません。健側より前方移動が増えているか、検査条件が左右でそろっているか、疼痛や防御収縮が判定へ影響していないかも確認します。
急性期で痛みや腫れが強い場合もLachmanテストを行いますか?
急性期では疼痛、腫脹・関節血症、恐怖感、防御収縮によって判定が難しくなることがあります。無理に強い力を加えて陽性・陰性を決めるのではなく、安全性と患者の状態を確認し、判定困難であればその理由を記録して他所見や再評価につなげます。
次の一手|膝テスト全体の中でLachmanを位置づける
Lachmanテストは、ACL損傷を疑ったときに用いる評価の一つです。膝外傷では、症状と受傷機転から疑う組織を整理し、必要なテストを選ぶことが重要です。
参考文献
- Sokal PA, Norris R, Maddox TW, Oldershaw RA. The diagnostic accuracy of clinical tests for anterior cruciate ligament tears are comparable but the Lachman test has been previously overestimated: a systematic review and meta-analysis. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2022;30(10):3287-3303. doi:10.1007/s00167-022-06898-4. PubMed
- Tanaka S, Inoue Y, Masuda Y, Tian H, Jung H, Tanaka R. Diagnostic Accuracy of Physical Examination Tests for Suspected Acute Anterior Cruciate Ligament Injury: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int J Sports Phys Ther. 2022;17(5):742-752. doi:10.26603/001c.36434. PubMed
- Benjaminse A, Gokeler A, van der Schans CP. Clinical diagnosis of an anterior cruciate ligament rupture: a meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2006;36(5):267-288. doi:10.2519/jospt.2006.2011. PubMed
- Coffey R, Bordoni B. Lachman Test. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026. NCBI Bookshelf
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

