生活範囲・社会参加評価ハブ|LSA・FAIなど5尺度の選び方

評価
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生活範囲・社会参加の評価は「何を知りたいか」から選ぶ

ADLが自立していても、退院後に外出が減ったり、家事や余暇が戻らなかったり、人とのつながりが乏しくなったりすることがあります。このような生活上のズレを整理するときは、尺度を順番にすべて行うのではなく、何を知りたいかに合わせて最初の尺度を選ぶことが重要です。

このページでは、LSA=生活空間、FAI=実際の活動、TMIG-IC=手段的自立・知的能動性・社会的役割、JST-IC=より現代的な高次生活機能、LSNS-6=社会的ネットワークとして役割を整理します。最初の評価だけで判断材料が不足するときに、別の尺度や個別評価を追加する考え方まで確認できます。

想定読者:退院支援・在宅・通所で、外出や生活活動、社会とのつながりを評価したいPT・OT・ST

この記事で分かること:LSA・FAI・TMIG-IC・JST-IC・LSNS-6の違い、最初に選ぶ尺度、追加評価の考え方

評価全体から探す:評価ハブを確認する

使い分け|知りたいことに最も近い尺度を選ぶ

最初に尺度名を決める必要はありません。「どこまで行っているか」「何をしているか」「高次生活機能はどうか」「頼れる人とのつながりはどうか」のどれを知りたいのかを先に決めると、尺度を選びやすくなります。

生活範囲・社会参加評価でLSA・FAI・TMIG-IC・JST-IC・LSNS-6を何を知りたいかから選ぶ使い分けマップ
図:生活範囲・社会参加周辺の評価は、何を知りたいかから候補を選びます。各尺度の正式な構成・採点方法は個別記事で確認してください。
LSA・FAI・TMIG-IC・JST-IC・LSNS-6の使い分け
知りたいこと 主な候補 主に捉えるもの 選択場面の例
実際にどこまで移動しているか LSA 生活空間・頻度・自立度 歩行能力はあるのに外出が少ない、支援の有無で生活範囲が変わる
生活の中で何をしているか FAI 家事・屋外活動・余暇などの実施状況や頻度 能力はあるが家事・外出・余暇が再開していない
高次生活機能を確認したい TMIG-IC 手段的自立・知的能動性・社会的役割 基本的ADLより高い水準の生活機能を3領域で整理したい
より現代的な高次生活機能まで見たい JST-IC 新機器利用・情報収集・生活マネジメント・社会参加 情報機器や情報活用なども含めた高水準の生活機能を確認したい
頼れる家族・友人とのつながりを知りたい LSNS-6 家族・友人との社会的ネットワーク 独居、交流減少、頼れる相手の少なさ、社会的孤立リスクが気になる

5尺度は、同じ「社会参加」を測る尺度ではありません。LSAは生活空間、FAIは実際の活動、TMIG-ICとJST-ICは高次生活機能、LSNS-6は社会的ネットワークというように、主に捉えるものが異なります。

最初の1尺度を決め、不足する情報だけ追加する

尺度を増やすこと自体が目的ではありません。まず現在の意思決定に必要な情報を決め、それを最も直接的に捉える尺度を候補にします。

以下は各尺度に定められた公式の実施順ではなく、評価を増やしすぎないための実務上の整理です。

  1. 生活上の問題を具体化する:外出が減った、家事が戻らない、生活管理が不安、頼れる人が少ないなど、現在知りたいことを明確にします。
  2. 最も近い尺度を選ぶ:生活空間ならLSA、実際の活動ならFAI、高次生活機能ならTMIG-ICまたはJST-IC、社会的ネットワークならLSNS-6を候補にします。
  3. 結果の背景を確認する:身体機能、環境、移動手段、支援者、役割、機会など、得点だけでは分からない要因を聴取・評価します。
  4. 別の問いが残る場合だけ追加する:異なる構成概念の情報が必要になったときに、2つ目の尺度や個別評価を追加します。

たとえば「歩行は自立したのに退院後ほとんど外出していない」なら、生活空間を確認するLSAが候補になります。一方、「外出はしているが、家事や余暇が以前ほど行えていない」なら、実際の活動を捉えるFAIの方が目的に合いやすくなります。

TMIG-ICとJST-IC|高次生活機能でも測る範囲が違う

TMIG-ICとJST-ICは、いずれも基本的ADLより高い水準の生活機能を扱いますが、構成は同じではありません。どちらが上位・下位という単純な関係ではなく、何を確認したいかで選びます。

TMIG-ICとJST-ICの違い
尺度 主な構成 選ぶときの考え方
TMIG-IC 手段的自立・知的能動性・社会的役割 地域生活に必要な高次生活機能を3領域から整理したい
JST-IC 新機器利用・情報収集・生活マネジメント・社会参加 現代の生活環境に対応した、より高水準の生活機能まで確認したい

TMIG-ICは13項目からなり、手段的自立、知的能動性、社会的役割という3領域で高次生活機能を捉えます。JST-ICは16項目・4領域で構成され、新機器利用、情報収集、生活マネジメント、社会参加を扱います。

そのため、TMIG-ICで大きな低下がみられなくても、情報機器の利用や情報収集、生活管理、社会参加といった領域まで確認したい場合には、JST-ICが候補になります。

生活空間・活動・社会参加・社会的ネットワークを混同しない

「外出が少ない」「活動が少ない」「社会参加が少ない」「頼れる人が少ない」は似ていますが、同じ状態ではありません。この違いを分けることが、支援につなげるうえで重要です。

  • LSAが捉える生活空間:実際にどの範囲まで、どの程度の頻度・自立度で移動しているかを確認します。
  • FAIが捉える活動:家事、屋外活動、余暇などを実際にどの程度行っているかを確認します。
  • TMIG-IC・JST-ICが捉える高次生活機能:基本的ADLより高い水準の生活機能を、それぞれの領域構成に沿って確認します。
  • LSNS-6が捉える社会的ネットワーク:家族・友人とのつながりから社会的孤立リスクをスクリーニングします。

たとえば、生活空間が狭くても家族・友人とのつながりが十分な人もいれば、外出範囲は広くても頼れる相手が少ない人もいます。1つの得点から「社会参加全体が低い」と決めず、どの側面に課題があるのかを分けて考えます。

追加評価|最初の尺度だけでは理由が分からないとき

追加評価は、最初の尺度で答えられなかった問いを補うために行います。点数が低かったから自動的に別の尺度を追加するのではなく、次に何を知る必要があるかを決めてから選びます。

最初の評価から追加評価へ進む考え方
最初に分かったこと 残った問い 追加候補
生活空間が狭い 家事・余暇などの実際の活動も減っているか FAI
生活空間が狭い 頼れる家族・友人の少なさが関係しているか LSNS-6+生活状況の聴取
活動頻度が低い 生活空間そのものも狭くなっているか LSA
高次生活機能に低下がある どの生活条件や環境が影響しているか 該当領域の個別評価・生活状況の聴取
TMIG-ICだけでは生活上の課題を捉えにくい 現代的な高次生活機能まで確認する必要があるか JST-IC
社会的ネットワークが乏しい 実際の外出や活動にも影響しているか 目的に応じてLSA・FAIなど

尺度を追加する前に、交通手段、住環境、同伴者、役割、代行の有無、本人の希望など、尺度だけでは捉えにくい生活条件を確認することも重要です。

比較記事|候補が2つまで絞れたら違いを確認する

評価目的から候補が絞れたあと、似た尺度のどちらを使うか迷う場合は、比較記事で測定対象の違いを確認してください。

よくある失敗|得点より先に「何を測ったか」を確認する

生活範囲・社会参加周辺の評価では、得点そのものより、異なる構成概念を同じものとして解釈することに注意が必要です。

生活範囲・社会参加周辺の評価で起こりやすい失敗
よくある失敗 問題点 戻し方
5尺度を一律に実施する 何を判断するための評価か曖昧になる 最初に知りたいことを決め、必要な尺度から選ぶ
低得点を身体機能低下だけで説明する 環境、機会、交通手段、役割、支援者などを見落とす 得点の背景を身体・環境・機会・支援に分けて確認する
LSNS-6を社会参加そのものの点数として扱う 社会的ネットワークと実際の参加状況が混同される 社会的孤立リスクをみるスクリーニングとして解釈する
TMIG-ICとJST-ICを同じ尺度として扱う それぞれが評価する高次生活機能の範囲が曖昧になる 確認したい生活領域に合わせて選ぶ
合計点だけを共有する 支援すべき生活課題が伝わりにくい 低下した側面・背景・次に確認することまで共有する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

退院前に1つだけ選ぶなら、どの評価がよいですか?

全員に共通する1尺度はありません。外出範囲を知りたいならLSA、実際の活動ならFAI、高次生活機能ならTMIG-ICまたはJST-IC、家族・友人との社会的ネットワークならLSNS-6というように、退院後に何を判断したいかから選びます。

LSAとFAIはどちらか1つで十分ですか?

目的によります。LSAは生活空間・頻度・自立度、FAIは家事や屋外活動、余暇などの実施状況・頻度を主に捉えます。最初の尺度だけで必要な判断材料が得られれば、必ず併用する必要はありません。別の問いが残る場合に追加します。

TMIG-ICとJST-ICはどう使い分けますか?

TMIG-ICは手段的自立・知的能動性・社会的役割、JST-ICは新機器利用・情報収集・生活マネジメント・社会参加を扱います。確認したい高次生活機能の範囲に合わせて選びます。

LSNS-6が低ければ、社会参加も低いと考えてよいですか?

同じ意味ではありません。LSNS-6は家族・友人との社会的ネットワークから社会的孤立リスクをスクリーニングする尺度です。実際の外出範囲や活動状況を知りたい場合は、生活状況を聴取し、目的に応じてLSAやFAIなどを検討します。

次の一手|尺度の得点を生活上の課題へ戻す

尺度を選んだあとは、合計点だけで支援を決めず、どの生活場面に課題があり、その背景に身体機能・環境・役割・機会・支援者のどれが関係しているかを確認します。

基本的ADLやIADLまで含めて評価領域を選び直したい場合はADL・IADLの評価まとめ、高齢者評価全体から整理したい場合は高齢者ハブを確認してください。


参考文献

  1. Baker PS, Bodner EV, Allman RM. Measuring life-space mobility in community-dwelling older adults. J Am Geriatr Soc. 2003;51(11):1610-1614. DOI: 10.1046/j.1532-5415.2003.51512.x / PubMed: 14687391
  2. Holbrook M, Skilbeck CE. An activities index for use with stroke patients. Age Ageing. 1983;12(2):166-170. DOI: 10.1093/ageing/12.2.166 / PubMed: 6869117
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  4. Iwasa H, Masui Y, Inagaki H, et al. Assessing competence at a higher level among older adults: development of the Japan Science and Technology Agency Index of Competence (JST-IC). Aging Clin Exp Res. 2018;30(4):383-393. DOI: 10.1007/s40520-017-0786-8 / PubMed: 28646250
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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