聖隷式嚥下質問紙の判定|スコア化・Swallow-10/5

栄養・嚥下
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聖隷式嚥下質問紙は「Aが1項目以上」が原法の判定です

聖隷式嚥下質問紙は、摂食嚥下障害の疑いを拾い上げる15項目のスクリーニング質問紙です。原法では、各項目をA・B・Cの3段階で回答し、Aが1項目以上あれば「摂食嚥下障害の疑いあり」と判定します。

その後、A=4点・B=1点・C=0点として合計8点以上を疑いありとするスコア化法、他者評価しやすい10項目のSwallow-10、5項目へ簡略化したSwallow-5が報告されています。これらは同じ判定法ではないため、どの方法を使ったのかを区別して解釈・記録することが重要です。

聖隷式嚥下質問紙の原法・スコア化法・Swallow-10・Swallow-5の判定方法を整理した図
聖隷式嚥下質問紙の判定方法。原法・スコア化法・Swallow-10・Swallow-5では、項目数やカットオフが異なります。

原法は15項目のうちAが1項目以上で「疑いあり」と判定します

2002年に報告された聖隷式嚥下質問紙は、15項目から構成され、回答をA:重い症状、B:軽い症状、C:症状なしの3段階で整理します。原法の判定は合計点ではなく、いずれか1項目でもAがあるかで判断します。

原法の判定

Aが1項目以上 → 摂食嚥下障害の疑いあり

開発研究では、嚥下障害がある脳血管障害患者50名、嚥下障害のない脳血管障害患者145名、健常者170名を対象に検討されました。「Aの回答あり」を疑いありとした場合、感度92.0%、特異度90.1%と報告されています。

ここで注意したいのは、Bが複数あるから原法でも陽性になるわけではないことです。原法ではAの有無が判定基準です。Bも含めて定量的に扱う方法として、後にスコア化法が検討されました。

スコア化法はA=4点・B=1点・C=0点、8点以上がカットオフです

2020年には、15項目をそのまま使用しながら、回答を点数化する評価法が報告されました。最も適していた方法は、A=4点、B=1点、C=0点として合計し、8点以上を摂食嚥下障害の疑いありとする方法です。

聖隷式嚥下質問紙のスコア化法
回答 配点
A:重い症状 4点
B:軽い症状 1点
C:症状なし 0点
判定 合計8点以上で疑いあり

この方法では感度90.0%、特異度89.8%と報告され、原法に近いスクリーニング精度が示されています。

原法とスコア化法は、単に「施設で好きな方を選ぶ運用ルール」ではありません。それぞれ研究で検討された判定方法です。記録では「聖隷式陽性」とだけ書くより、原法なのか、スコア化法なのかを明記すると、再評価時や多職種間で結果を追いやすくなります。

Swallow-10とSwallow-5は項目数と判定基準が異なります

聖隷式嚥下質問紙からは、認知機能低下例でも他者が評価しやすい項目を選んだSwallow-10と、さらに項目数を絞った簡易版のSwallow-5も開発されています。

Swallow-10は他者評価しやすい10項目で構成されます

Swallow-10は、認知機能が低下した人では本人が回答しにくい項目があることを背景に、聖隷式嚥下質問紙の15項目から他者による評価が可能な10項目を選択して構成されています。

判定はA=4点、B=1点、C=0点で、5点が最適カットオフと報告されています。研究では感度90.0%、特異度88.5%でした。

「認知機能低下があれば、本人への聴取をやめて必ずSwallow-10に変更する」という意味ではありません。本人から得られる情報、家族・介護者からの情報、実際の食事場面などを含め、どの方法なら信頼できる情報を得られるかを考えます。

Swallow-5は5項目に絞った簡易版です

Swallow-5は、聖隷式嚥下質問紙15項目から5項目を選択した簡易版として2025年に報告されました。A=4点、B=1点、C=0点で評価し、合計3点以上を摂食嚥下障害の疑いありと判定します。

開発研究では感度88.0%、特異度87.3%、AUC 0.92と報告されています。項目数が少ないため、短時間でスクリーニングしたい場面で使いやすい選択肢です。

陽性は「嚥下障害の確定」ではなく、次の評価へ進む合図です

聖隷式嚥下質問紙、スコア化法、Swallow-10、Swallow-5はいずれもスクリーニングです。陽性だから誤嚥が確定した、陰性だから嚥下障害がない、と判断する検査ではありません。

陽性の場合は、質問紙のどの領域で問題が示唆されたかを確認したうえで、全身状態、覚醒、呼吸状態、口腔内、姿勢、声、咳嗽、食事場面などの情報を追加します。その結果に応じて、より詳細な臨床評価や、必要時には嚥下内視鏡検査(VE)・嚥下造影検査(VF)などへつなげます。

スクリーニング後に確認したい情報
確認 主なポイント 次に考えること
全身・覚醒 意識、疲労、発熱、全身状態 評価を安全に実施できるか
呼吸・気道防御 呼吸状態、咳、声の変化 誤嚥・気道防御低下を疑う所見がないか
口腔・姿勢 口腔内、座位、頭頸部の条件 嚥下へ影響する修正可能な要因がないか
食事場面 食形態、一口量、むせ、湿性嗄声、残留、疲労 どの条件で問題が生じるか
追加評価 臨床的嚥下評価、必要時VE・VF 病態と介入条件をさらに明確にする

質問紙から嚥下評価全体へどう進むかは、記事末の「嚥下評価の実務フロー」でまとめています。

陰性でも症状や食事場面に問題があれば評価を止めません

スクリーニングのカットオフを下回っていても、食事中のむせ、湿性嗄声、摂取量低下、肺炎の反復、原因不明の体重減少など、臨床的に気になる所見があれば「陰性だから問題なし」とは判断しません。

特に、質問への回答が不確か、認知機能低下や失語などで情報収集が難しい、本人の訴えと食事場面が一致しない場合は、家族・介護者からの情報や直接観察を組み合わせます。

逆に陽性であっても、その結果だけで食止めや食形態変更を決定するものではありません。質問紙は次に何を詳しく確認するかを決める入口として扱うのが基本です。

感度・特異度は開発研究の対象を踏まえて解釈します

原法で報告された感度92.0%・特異度90.1%は、嚥下障害のある脳血管障害患者50名、嚥下障害のない脳血管障害患者145名、健常者170名を用いた開発研究の結果です。

2020年のスコア化法、2023年のSwallow-10、2025年のSwallow-5の検討でも、この開発時データが用いられています。そのため、これらの数値を、疾患や重症度、年齢、認知機能、療養環境が異なるすべての患者へそのまま当てはめることは避けます。

結果を見るときのポイント

カットオフだけで完結せず、誰に、どの方法で、どの情報をもとに回答したかを残しておくと、再評価時に結果を比較しやすくなります。

記録では「使用した判定法」まで残します

聖隷式嚥下質問紙には複数の判定方法・派生版があるため、記録では単に「聖隷式:陽性」とするより、方法まで分かる形にします。

たとえば原法であれば「聖隷式嚥下質問紙15項目、A回答あり」、スコア化法であれば「15項目スコア化法、○点/カットオフ8点」のように、方法・結果・回答者が分かる形で残します。

Swallow-10やSwallow-5を使用した場合も名称を省略せず、どの質問紙を使った結果なのかを明記します。本人以外から情報を得た場合は、家族・介護者など回答情報の出所も残しておくと再評価につながります。

質問項目は正規の資料で確認します

聖隷式嚥下質問紙は評価尺度であるため、本記事では質問項目全文や回答文を転載していません。実際に使用する際は、配布元・掲載元の資料で最新版と利用方法を確認してください。

スコア評価式やSwallow-5については、浜松市リハビリテーション病院 藤島一郎氏監修の日医工「摂食嚥下障害Q&A」でも公開情報を確認できます。

日医工|聖隷式嚥下質問紙 スコア評価式を確認する

よくある質問

Q1. Aが1項目でもあれば陽性でよいですか?

原法では、15項目のうちAの回答が1項目以上あれば「摂食嚥下障害の疑いあり」と判定します。これは施設独自の簡略化ではなく、2002年の開発研究で用いられた判定基準です。

Q2. AがなくてもBが多ければ陽性になりますか?

原法ではAの有無で判定するため、Aがなければ原法の陽性基準には該当しません。一方、スコア化法ではA=4点、B=1点、C=0点として合計するため、Bを含む合計点が8点以上なら疑いありと判定します。どちらの方法を使った結果かを混同しないことが重要です。

Q3. 認知機能が低下している場合はSwallow-10を使いますか?

Swallow-10は、認知機能低下例で本人が回答しにくいことを背景に、他者が評価可能な10項目を選択して開発されています。ただし、認知機能低下があれば必ずSwallow-10へ変更するという一律のルールではありません。本人回答の信頼性、家族・介護者から得られる情報、食事場面観察などを合わせて方法を選びます。

Q4. 陽性なら誤嚥があると判断できますか?

判断できません。聖隷式嚥下質問紙は摂食嚥下障害のスクリーニングであり、誤嚥を確定する検査ではありません。陽性後は臨床所見を確認し、必要に応じて専門的な嚥下評価やVE・VFへ進みます。

次の一手


参考文献

  1. 大熊るり, 藤島一郎, 小島千枝子, 他. 摂食・嚥下障害スクリーニングのための質問紙の開発. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌. 2002;6(1):3-8. doi: 10.32136/jsdr.6.1_3.
  2. 中野雅徳, 藤島一郎, 大熊るり, 他. スコア化による聖隷式嚥下質問紙評価法の検討. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌. 2020;24(3):240-246. doi: 10.32136/jsdr.24.3_240.
  3. Nakano M, Shinohara C, Nakae H, et al. A revised version of the Seirei Swallowing Questionnaire for people with cognitive decline (Swallow-10). J Med Invest. 2023;70(1-2):231-235. doi: 10.2152/jmi.70.231.
  4. 中野雅徳, 藤島一郎, 中江弘美, 他. 簡便に摂食嚥下障害をスクリーニングできる簡易版聖隷式嚥下質問紙の開発. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌. 2025;29(3):111-117. doi: 10.32136/jsdr.29.3_111.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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