摂食機能療法の記録は「型」を決めると迷いが減ります
摂食機能療法の記録が難しく感じるのは、文章力よりも「何を固定して、何を 1 つだけ変えたか」が残っていないことが原因になりがちです。記録が安定すると、次回の計画が自然に出て、チーム共有も速くなります。
この記事では、直接と間接で迷いにくい記録テンプレを整理し、さらに中止・中断した日の書き方までまとめます。特に「変更は 1 つだけ」に固定すると、比較と再評価がしやすくなります。
結論:目的 → 条件 → 反応 → 次回 1 手で回す
摂食機能療法の記録は、目的(今日の狙い)、条件(何を固定したか)、反応(何がどう変わったか)、次回 1 手(次に変える 1 点)の 4 つで固定すると、短くても運用しやすくなります。
特に重要なのは、食形態・姿勢・一口量・ペースなどを同時に変えすぎないことです。「変更は 1 つだけ」にすると、何が良かったのかが残りやすくなります。
| 項目 | 何を書くか | 例 |
|---|---|---|
| 目的 | 今日の狙い | 少量で安全条件を確認 |
| 条件 | 固定した前提 | 座位安定、休息あり |
| 反応 | 良い変化・悪い変化 | 後半で疲労増 |
| 次回 1 手 | 次に変える 1 点 | 休息間隔を延長 |
テンプレ ① 間接嚥下訓練(目的 → 所見 → メニュー)
間接嚥下訓練は、「体操をやった記録」だけになると評価につながりにくくなります。目的・所見・実施内容を 1 行でつなげると、チーム共有が速くなります。
| 目的 | 所見 | 記録例 |
|---|---|---|
| 呼吸・咳嗽 | 痰が多い | 随意咳を実施、痰は少し出しやすい |
| 姿勢調整 | 座位保持不安定 | 体幹支持で座位安定、後半は崩れやすい |
| 口腔機能 | 舌運動低下 | 舌左右運動を実施、代償少なく可能 |
コピペ用 1 行例
呼気と咳嗽改善を目的に随意咳を実施。痰は少し出しやすく、後半は疲労軽度で終了。
テンプレ ② 直接嚥下訓練(固定条件+変更点 1 つ)
直接嚥下訓練は、「固定条件」が見える記録にすると比較しやすくなります。まず成功条件を固定し、変更は 1 つだけにします。
| 項目 | 記録ポイント | 例 |
|---|---|---|
| 固定条件 | 姿勢・介助・環境 | 座位安定、注意分散少 |
| 食形態 | 変更理由も残す | ゼリー少量 |
| 反応 | むせ、湿性嗄声、疲労 | 後半で湿性嗄声増 |
| 変更点 | 今回変えた 1 点 | 休息間隔を延長 |
コピペ用:疲労が強い日の 1 行例
ゼリー少量で実施。座位とペースを固定し、休息を増やすとむせ減少。後半で疲労増強したため直接は終了。
テンプレ ③ 中止・中断した日の書き方
中止・中断は、「やめた」で終えると次回も同じ迷いが出ます。兆候 → 調整 → 再評価 → 判断を残すと、安全域の共有がしやすくなります。
| 項目 | 記録内容 | 例 |
|---|---|---|
| 兆候 | 何が起きたか | むせ増加、呼吸数上昇 |
| 調整 | 変えた 1 点 | 一口量を減量 |
| 再評価 | 変化したか | むせ減少 |
| 判断 | 継続/終了 | 当日は直接終了 |
現場の詰まりどころ:記録が崩れる 4 パターン
迷ったらここだけ確認(解決の三段)
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、書き方だけでなく、教育体制・共通フォーマット・相談環境などの影響を受けている可能性もあります。評価・記録・報告の「型」を整理したい方は、PT キャリアガイドも参考になります。
| NG | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 実施内容だけ書く | 目的が未設定 | 目的を 1 行で固定 |
| 変更点が多い | 同時調整 | 変更は 1 つだけ |
| 中止だけ残す | 再評価不足 | 兆候 → 調整 → 判断を残す |
| 間接が体操一覧になる | 所見と未接続 | 目的 → 所見 → 実施をつなぐ |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 記録が長くなって続きません
A. 「目的 → 条件 → 反応 → 次回 1 手」の 4 点だけに戻すと短くなります。
Q2. 直接で一番重要なのは何ですか?
A. 固定条件を残し、今回変えた 1 点だけを明確にすることです。
Q3. 中止した日はどう書けば良いですか?
A. 兆候 → 調整 → 再評価 → 判断の順で残すと、次回計画につながります。
Q4. 間接は何を書けば良いですか?
A. 目的と所見、実施内容が 1 行でつながっていると共有しやすくなります。
次の一手
参考文献
- American Speech-Language-Hearing Association. Adult Dysphagia (Practice Portal). ASHA
- Logemann JA. Approaches to management of disordered swallowing. Baillieres Clin Gastroenterol. 1991;5(2):269-280. doi:10.1016/0950-3528(91)90030-5. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


