嚥下訓練の記録例|SOAP・直接・間接・中止時の書き方

栄養・嚥下
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嚥下訓練の記録は「実施したこと」だけで終わらせない

嚥下訓練の記録では、「ゼリー摂取を実施」「口腔体操を実施」といった実施内容だけで終わると、次回の比較や多職種共有につながりにくくなります。大切なのは、どの条件で介入し、患者さんがどう反応し、その反応をどう判断して次回へつなげるかまで残すことです。

この記事では、PT・OT・STなど摂食嚥下リハに関わる医療従事者向けに、条件 → 介入 → 反応 → 判断 → 次回方針の順で記録を整理する方法をまとめます。SOAPへの落とし込み方、直接・間接嚥下訓練の記録例、中止・中断した日の書き方まで、日々の臨床記録に使いやすい形で整理しました。

結論:条件 → 介入 → 反応 → 判断 → 次回方針で残す

嚥下訓練の記録は、「何をしたか」だけでなく、「どの条件で何を行い、どう変化し、その変化をどう判断したか」が追える形にすると、再評価とチーム共有に使いやすくなります。

嚥下訓練の記録で残したい5項目
項目 残す内容 確認する問い
条件 姿勢、食形態、一口量、ペース、休息、介助、環境など どの条件で実施したか
介入 実施した訓練・調整内容、今回変えた条件 何を行い、何を変えたか
反応 咳・むせ、声、呼吸、疲労、口腔内変化など 実施前後・実施中に何が変わったか
判断 継続、条件調整、中断、終了、共有の必要性 その反応をどう解釈したか
次回方針 継続条件、次に変える条件、追加評価、共有事項 次回は何を確認するか

本記事では、この5項目を日々の臨床記録へ落とし込むための実務フレームとして使います。施設で使用している記録様式や医師の指示、院内手順を置き換えるものではありません。

嚥下訓練の記録を条件・介入・反応・判断・次回方針の5つの流れで整理した図
図:嚥下訓練の記録は「条件 → 介入 → 反応 → 判断 → 次回方針」の流れで整理すると、比較と再評価につながりやすくなります。

なお、「1回の訓練で必ず1項目しか変更してはいけない」という意味ではありません。条件変更の影響を比較したい場面では、同時に変える要素をできるだけ絞り、何を変えたかが追えるようにすることがポイントです。

嚥下訓練 記録・再評価シート A4 v2

記事内の記録フレームを、日々の臨床で使いやすいようA4縦1枚にまとめました。Excel版は院内運用に合わせた入力・複製に、PDF版は印刷して手書きで使用したい場合に利用できます。

嚥下訓練 記録・再評価シート A4 v2

条件 → 介入 → 反応・再評価 → 判断 → 次回方針 → 次回再評価を1枚で整理できます。


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※本シートは日々の臨床記録を整理するための補助様式です。診療報酬H004の公式様式・算定チェックリストではありません。患者さんごとの指示、院内手順、記録規定を優先してください。

記録する5項目|何をどこまで残すか

記録を長くすることより、次に読んだ人が「同じ条件を再現できる」「変化を比較できる」「次に何をするか分かる」ことを優先します。

1.条件:実施時の前提を残す

直接嚥下訓練では、食形態だけでなく、姿勢・支持、一口量、ペース、休息、介助方法、周囲の環境などによって反応が変わることがあります。間接嚥下訓練でも、覚醒状態、姿勢、負荷量、休息条件などが再評価に必要です。

すべてを毎回長文で書く必要はありません。前回と同じ条件は簡潔にし、今回比較したい条件や変更した条件を明確にすると読み返しやすくなります。

2.介入:何をしたかと変更点を分ける

「嚥下訓練を実施」だけでは、次回に同じ介入を再現できません。実施した訓練、回数・時間・負荷、姿勢調整、食形態、一口量など、テーマに応じた条件を残します。

特に前回から条件を変えた場合は、「実施内容」と「今回変えた条件」を分けておくと、その後の反応との関係を追いやすくなります。

3.反応:実施前・実施中・直後の変化を見る

反応は「良好」「問題なし」だけで終えず、観察した事実を残します。テーマに応じて、覚醒・反応、咳・むせ、声質や分泌物、呼吸状態、口腔内、疲労・全身状態などを確認します。

嚥下評価では、咳・むせ、湿性・含嗽様の声質変化、呼吸との協調、疲労、姿勢などが観察対象になります。一方で、咳やむせがないことだけで誤嚥がないとは判断できません。不顕性誤嚥もあるため、単一所見ではなく病態や全身状態を含めて解釈し、必要時はVE・VFなどの追加評価へつなげます。

4.判断:観察事実と解釈を分ける

観察した反応をもとに、継続できるのか、条件を調整するのか、一旦中断・終了するのか、医師・看護師・STなどへの共有が必要なのかを整理します。

ここでは「むせあり」という事実だけでなく、どの条件で生じ、条件変更後にどう変化し、その結果どう判断したかまでつなげます。

5.次回方針:次に確認することを具体化する

最後に、継続する条件、次回に比較する条件、追加評価、共有事項を残します。「経過観察」だけで終えるより、次に見る項目を1つ具体化すると再評価しやすくなります。

たとえば「同条件で継続」だけではなく、「同一姿勢・食形態で後半の疲労と声質変化を再確認」のように、次回の観察対象まで書くと記録が計画につながります。

SOAPへ落とし込む場合の書き方

SOAPを使用している施設では、上記の5項目をそのままSOAPへ分けると整理しやすくなります。SOAPそのものが嚥下訓練専用の公式記録様式という意味ではなく、主観・客観所見・解釈・次回計画を混在させないための整理方法として使います。

嚥下訓練の記録をSOAPへ整理する例
SOAP 主に書く内容 記録例
S 本人の訴え・自覚 「後半になると飲み込みにくい」と発言
O 条件、介入、観察した反応 体幹支持下の座位で少量ずつ実施。前半は明らかなむせなし。後半に疲労と声質変化を認めた
A 所見の解釈、継続・調整の判断 後半の疲労に伴い嚥下条件が不安定になる可能性があり、連続実施より休息を挟んだ条件での再確認が必要
P 次回条件、追加評価、共有 休息を挟み同一条件で再評価。声質・呼吸・疲労の変化を確認し、変化が続く場合はチームへ共有

記録のポイント:Oに観察事実、Aにその解釈を書くと、「何が起きたのか」と「なぜ次の方針にしたのか」を分けて共有できます。

直接・間接嚥下訓練の記録例

直接・間接の違いを詳しく説明するのではなく、ここでは同じ記録フレームへどう落とし込むかに絞って示します。

直接嚥下訓練の記録例

直接嚥下訓練を5項目で整理した例
項目 記録例
条件 体幹支持下の座位。ゼリー少量。一定のペースで休息を挟み実施
介入 直接嚥下訓練を実施。後半は休息間隔を延長
反応 前半は大きな変化なし。後半に疲労増加。休息後は反応が改善
判断 連続実施より休息を挟む条件で経過を比較する
次回方針 姿勢・食形態をそろえ、休息条件を維持して後半の反応を再評価

直接訓練では、食形態だけでなく、姿勢、一口量、ペース、介助、休息などの条件を一緒に残しておくと、前回との比較がしやすくなります。

間接嚥下訓練の記録例

間接嚥下訓練を5項目で整理した例
項目 記録例
条件 覚醒良好。体幹支持下で座位保持
介入 呼吸・咳嗽に対する練習を実施
反応 前半は指示に合わせて実施可能。後半は疲労により反復回数が低下
判断 負荷量を増やすより、現在の負荷で反応を再確認する
次回方針 同一姿勢・負荷で再実施し、後半の疲労と咳嗽の変化を確認

間接嚥下訓練では、「○○体操を実施」というメニュー一覧だけにせず、どの所見に対して選び、実施後に何を再評価するのかまでつなげます。

中止・中断した日は「兆候 → 対応 → 再評価 → 判断」を残す

途中で中止・中断した場合は、「むせたため終了」だけでは次回の安全条件を再現しにくくなります。何が起き、どう対応し、その後どう変化し、最終的にどう判断したかを残します。

中止・中断時に残したい記録
段階 残す内容 記録例
兆候 何が変化したか 後半にむせと声質変化が増加
対応 その場で何をしたか 直接訓練を中断し休息
再評価 対応後にどう変わったか 休息後に呼吸状態は落ち着いたが疲労が残存
判断 継続・調整・終了・共有 当日の直接訓練は終了し、状態をチームへ共有
次回 次に確認する条件 全身状態を再確認し、実施可否と開始条件を再検討

中止基準そのものは、患者さんの病態、医師の指示、施設手順、評価結果によって判断する必要があります。具体的な中止・中断の考え方は、記事末の「次の一手」から中止基準の記事で確認してください。

H004の算定記録とは分けて考える

本記事と配布シートは、嚥下訓練の日々の臨床記録を整理することが目的です。診療報酬の「摂食機能療法(H004)」を算定する場合は、これとは別に制度上必要となる記録・摘要欄などを確認します。

そのため、このページではH004の算定要件や摘要欄記載の詳細は広げず、制度上の確認は摂食機能療法(H004)の算定要点|対象・時間・記録へ役割分担しています。

整理:このページは「臨床で何を観察し、どう次回へつなげるか」、H004の記事は「算定上、何を確認・記録するか」を担当します。

嚥下訓練の記録で起きやすい5つの詰まり

記録が次回につながりにくいパターンと修正方法
詰まり 問題 修正方法
実施内容だけを書く 介入理由と反応が分からない 目的・反応・判断を追加する
条件が残っていない 前回と同じ状況を再現できない 姿勢・食形態・量・ペースなど必要な条件を残す
複数条件を同時に変える 何によって反応が変化したか追いにくい 比較したい場面では変更条件をできるだけ絞る
「むせなし=安全」とする 単一所見だけで安全性を判断してしまう 声・呼吸・疲労・病態など他の情報と合わせて解釈する
中止だけを記録する 次回の開始条件が分からない 兆候・対応・再評価・判断・次回条件まで残す

次の一手

参考文献

  1. American Speech-Language-Hearing Association. Adult Dysphagia. Practice Portal. ASHA.
  2. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会. 医療検討委員会作成マニュアル:摂食嚥下障害の評価、訓練法等. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会.
  3. 厚生労働省. 診療報酬請求書等の記載要領等について:H004 摂食機能療法. 厚生労働省.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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