MWST/WST の実施手順・判定・中止基準

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栄養・嚥下
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MWST/WST の実施手順・判定・中止基準

摂食・嚥下障害のベッドサイド評価は スクリーニング精査 の二段構えです。本記事は「現場で安全に実施する」ことを目的に、改訂水飲みテスト(MWST:3 mL)水飲みテスト(WST:30 mL) の手順・判定・禁忌と中止基準、記録のコツを簡潔に整理します。むせが少ない方でも不顕性誤嚥が隠れることがあるため、臨床所見の総合判断と早期の VE/VF 連携を基本とします。

運用の原則は、RSST → MWST → WST の順で安全域を確認し、いずれかで異常または危険兆候があれば直ちに中止して精査へです。本文の表はすべて <caption>scope を付与し、用語は国内運用に合わせて統一しています(例:SpO2、とろみ分類は JSDR 2013 の要約)。

スクリーニングと精査の関係

  • RSST(30 秒の空嚥下回数)で嚥下反射の準備性を確認。
  • MWST(3 mL)で安全域を 1–5 点で段階判定。
  • WST(30 mL)は MWST で問題がない対象に限定。少しでも危険なら VE/VF に切り替え。

MWST と WST の違い・使い分け(比較表・アルゴリズム)はこちら

改訂水飲みテスト(MWST:3 mL)

MWST は 3 mL の冷水を口腔底へ注入し、むせ・湿性嗄声・呼吸状態・反復嚥下の可否を総合して 1〜5 点で判定します。少量で安全性が高く、病院・施設・在宅で広く用いられます。なお、不顕性誤嚥は単独では拾いにくいため、RSST・VE/VF との併用を前提に記録を残します。

実施手順(要点)

  1. 体位:基本は座位(困難ならギャッジアップ位)。
  2. シリンジで 3 mL の冷水を口腔底にゆっくり注入(舌背は避ける)。
  3. 「ごっくんと飲んでください」と指示し嚥下を確認。
  4. 必要に応じて反復嚥下を促し、30 秒以内に 2 回可能かを確認。
  5. 最大 2 回まで繰り返し、最も低い点を記録(体位・水温・性状も併記)。

判定基準(1〜5 点)

MWST:判定基準(1–5 点)
点数 内容
1 嚥下なし、むせ・呼吸切迫あり(強い誤嚥疑い)
2 嚥下あり、呼吸切迫あり(不顕性誤嚥を疑う)
3 嚥下あり、呼吸良好だが むせ または 湿性嗄声
4 嚥下あり、呼吸良好、むせ・嗄声なし
5 4 の条件に加え、30 秒以内に反復嚥下 2 回可能

運用のコツ・記録

  • 水条件:原則冷水。常温やとろみ水へ変更した場合は必ず記録
  • 記録:体位、回数、各回の点数、咳・湿性嗄声、被検者の訴え。
  • 限界:不顕性誤嚥を拾いにくい ⇒ RSST・VE/VF を併用。

とろみの分類(JSDR 2013:要約)

嚥下調整食 2013 とろみ(成人・臨床一般)
段階 特徴(要点)
薄いとろみ コップを傾けるとややゆっくり落ちる。細いストロー可。
中間のとろみ スプーンで混ぜると跡が少し残る。ストローにはやや力。
濃いとろみ まとまりがよく「食べる」動作が必要。ストロー不適。

水飲みテスト(WST:30 mL)

WST は 30 mL を一度に飲み、むせの有無・飲み方・所要時間を観察する古典的スクリーニングです。誤嚥リスクが相対的に高いため、MWST で 4–5 点 を確認した対象に限定し、少しでも危険兆候があれば中止して精査へ移行します。

実施・評価

  1. 準備:常温の水 30 mL、ストップウォッチ、座位。
  2. 「この水をいつものように飲んでください」。飲水開始で計時。
  3. むせ、口唇流出、過度の慎重さ、湿性嗄声などを併せて記録。
WST:プロフィール判定
プロフィール 内容
1 一度でむせず全量を飲める
2 2 回以上に分けるが、むせない
3 一度で飲めるが、むせる
4 2 回以上に分け、むせる
5 むせ頻発で全量困難

判定メモ:正常=プロフィール 1 かつ 5 秒以内/疑い=プロフィール 1 で 5 秒超 または プロフィール 2/異常=プロフィール 3–5。

禁忌・中止基準(安全第一)

  • JCS 1 以上・意識障害、重度の呼吸切迫、SpO2 低下(90 % 未満を目安)。
  • 座位保持困難、強い湿性嗄声、安静時の激しい咳、肺炎が疑われる発熱。
  • 明らかなむせ、チアノーゼ、吸気困難 → 直ちに中止・体勢確保・医師連絡・VE/VF へ。

嚥下の臨床整理と並行して、転職の3ステップを先に決めておくと迷いが減ります。

RSST・MWST・WST の使い分け(要点比較)

スクリーニング 3 法の要点比較(成人・臨床一般)
指標 RSST MWST WST
目的 嚥下反射の準備性 安全域の段階判定 飲水パターン+所要時間
方法 30 秒の空嚥下回数 冷水 3 mL(口腔底) 水 30 mL を一気飲み
カットオフ < 3 回 / 30 秒 で疑い 3 点未満で誤嚥疑い プロフィール × 5 秒で総合判定
注意 触診の熟練度に依存 不顕性誤嚥を拾いにくい 誤嚥リスクが相対的に高い

参考文献

  1. 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会:摂食嚥下障害の評価(2019)
  2. Kubota T, et al. 30 mL 水飲みテスト原法の概説資料(熊本大学耳鼻咽喉科)PDF
  3. 才藤栄一・戸原 玄:MWST の開発経緯・臨床的意義(解説)医書.jp
  4. 日本摂食・嚥下リハ学会:嚥下調整食学会分類 2013(とろみ)
  5. MWST の感度・特異度まとめ(レビュー)J-Stage
  6. Yagi N, et al. Bedside screening for aspiration risk(レビュー)PMC
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