立位回旋移乗チェックリスト|実施前・実施中・実施後の確認ポイント

臨床手技・プロトコル
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立位回旋移乗チェックリスト|実施前・実施中・実施後の確認ポイント

立位回旋移乗( stand-pivot transfer )は、病棟・回復期・在宅で高頻度に行う一方、チェック漏れが事故に直結しやすい動作です。新人 PT が迷いやすいのは「どこを見ればいいか」が相ごとに固定されていないことです。

本記事は、実施前→実施中→実施後の 3 区分で確認項目を標準化し、4 相(準備→立ち上がり→回旋→着座)に沿って観察ポイントを整理します。動作分析の全体像は ベッド⇄車椅子移乗の動作分析 で確認してください。

この記事の範囲(チェックリストの対象)

対象は、ベッド端座位から立位へいったん上がり、小さく回旋して車椅子へ着座する立位回旋移乗です。リフトなどの機器移乗は対象外とし、徒手での安全確認・観察・申し送りに絞って解説します。

立位保持が不安定な症例では、立位回旋に固執せず、スクワットピボットや 2 人介助へ切り替える前提で運用します。

実施前チェック(環境・対象者・中止基準)

実施前で 7 割が決まります。環境条件と対象者条件を固定してから開始すると、介助量と転倒リスクのばらつきが減ります。

立位回旋移乗の実施前チェックリスト(開始前)
確認項目 OK の目安 NG サイン 対応
車椅子位置・角度 30–45° で近接 90° 配置・距離が遠い 角度を浅くし隙間を縮小
座面高 同高(または行き先少し低い) 行き先が高い 座面差調整、方法変更検討
ブレーキ・障害物 ブレーキ ON、フットレスト処理済 ロック未確認、足部引っかかり 開始前に再確認
立位保持 支持下で 3–5 秒安定 膝折れ・強いふらつき SP / 2 人介助へ切替
理解・注意 「止まる/待つ」が可能 急な動き・手順逸脱 短文コール化、必要なら中止
疼痛・体調 NRS 0–3 程度、症状安定 強い疼痛、めまい、気分不良 中止し再評価

実施中チェック(4 相で観察を固定)

実施中は「全部見る」ほど判断が遅れます。各相で 3 項目に絞ると、崩れた相を即時に特定しやすくなります。

立位回旋移乗の実施中チェックリスト(4 相)
確認ポイント( 3 つ ) 赤旗サイン その場の修正
相 1 準備 ①足の引き込み ②前傾量 ③臀部前方移動 前傾浅い、離殿できない 足後方・臀部前方を再設定
相 2 立ち上がり ①前方荷重 ②膝折れ有無 ③3 秒安定 膝折れ、後方重心固定 続行中止、SP へ切替
相 3 回旋 ①小刻みステップ ②麻痺側足追従 ③回旋量 足部引っかかり、急旋回 回旋量を減らし距離調整
相 4 着座 ①座面接触 ②膝抜けなし ③制動 ドスン着座、後方不安定 「触れたら止まる」を徹底

声かけチェック(短文コール)

声かけは説明よりタイミング同期が目的です。毎回同じ短文で統一すると、職員間で再現しやすくなります。

立位回旋移乗の短文コール(統一用)
場面 短文コール 意図 避けたい言い方
準備 「足後ろ。おしり前。」 前方荷重の条件作り 長い事前説明
立ち上がり 「鼻をひざ。せーの。」 前傾と離殿の同期 「腕で引いて立って」
立位安定 「止まる。 3 秒。」 回旋前の安定確認 すぐ回旋指示
回旋 「小さく 2 歩。」 足の置き換え優先 「一気に回る」
着座 「触れたら止まる。ゆっくり。」 制動と安全着座 「はい座って」

実施後チェック(再現性と申し送り)

終了後に「できた」で終えると再現性が残りません。実施条件と崩れた相を短く記録し、次シフトへ引き継ぐことが重要です。

実施後チェックリスト(記録・申し送り)
チェック項目 記録例 次回への反映
方法・介助量 立位回旋 1 人軽介助 同条件継続可否を判定
崩れた相 相 3 で麻痺側足遅れ 角度・距離を先に調整
赤旗サイン 膝折れなし、めまいなし 中止基準の更新有無確認
有効だったコール 「小さく 2 歩」で改善 チームで文言統一
次回方針 回旋角度を 35° 固定 条件固定で再実施

現場の詰まりどころ(チェック漏れを防ぐ)

詰まりどころの多くは「相 2 の安定確認を飛ばす」「相 3 で引っ張って回す」の 2 点です。チェックは順番が重要で、崩れた相に戻って修正すると介助量が下がります。

よくあるチェック漏れと修正
チェック漏れ 起こる問題 原因 修正
ブレーキ確認漏れ 支持面が動いて転倒リスク上昇 開始前手順の省略 実施前チェックを声出しで確認
立位安定 3 秒を省略 回旋で崩れる 急いで次相へ進む 相 2 終了条件を固定
回旋を引っ張る 足の遅れ・引っかかり 介助者主導で急旋回 小刻みステップを優先
記録が抽象的 次シフトで再現不可 相別記録がない 相ごとに 1 行で記録

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. チェック項目が多くて現場で回せません。

A. まずは「実施前 6 項目」と「実施中 4 相の各 3 項目」に絞って運用してください。全項目を一度に完璧にするより、同じ順番で毎回確認するほうが安全性と再現性が上がります。

Q2. 立位回旋とスクワットピボットの境目が曖昧です。

A. 膝折れ、後方重心、指示追従不良が出るなら、立位回旋を続けずスクワットピボットへ切り替えるのが安全側です。判断を迷う場合は中止基準の表を先に共有してください。

Q3. 申し送りで最小限何を書けばいいですか?

A. 「方法・介助量」「崩れた相」「次回条件」の 3 点を固定で残してください。これだけでもチームでの再現性が大きく改善します。

Q4. 新人指導ではどこを最優先しますか?

A. 相 2 の「3 秒安定確認」と相 4 の「制動」を最優先にしてください。この 2 点を固定するだけで、重大な崩れの多くを予防できます。

次の一手

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  1. Schenkman M, Berger RA, Riley PO, Mann RW, Hodge WA. Whole-body movements during rising to standing from sitting. Phys Ther. 1990;70(10):638-648. doi: 10.1093/ptj/70.10.638PubMed
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  3. Tsai CY, Boninger ML, Hastings J, Cooper RA, Rice LA, Koontz AM. Immediate Biomechanical Implications of Transfer Component Skills Training on Independent Wheelchair Transfers. Arch Phys Med Rehabil. 2016;97(10):1785-1792. doi: 10.1016/j.apmr.2016.03.009PubMed
  4. Tsai CY, Boninger ML, Bass SR, Koontz AM. Upper-limb biomechanical analysis of wheelchair transfer techniques in two toilet configurations. Clin Biomech (Bristol). 2018;55:79-85. doi: 10.1016/j.clinbiomech.2018.04.008PubMed
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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