下垂足の装具(AFO)の選び方|遊脚期・立脚期から必要機能を決める

臨床手技・プロトコル
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下垂足のAFOは「遊脚期だけか、立脚期まで問題があるか」で選ぶ

下垂足に対するAFOは、足先を持ち上げられるかだけで選びません。まず遊脚期の足尖クリアランスだけが問題なのか、初期接地・荷重応答・立脚中期まで足関節や膝の制御が必要なのかを分けます。

遊脚期だけの問題なら背屈保持や過度な底屈の抑制が中心になります。一方、内反、荷重時の不安定性、反張膝などを伴う場合は、底屈制動・足関節の可動性・前額面の支持まで含めて考える必要があります。この記事では、下垂足でAFOを検討するときに必要な機能を歩行相から整理します。

AFOを選ぶ前に、下垂足の原因と歩行上の問題を分ける

AFOは下垂足による歩行障害を補う手段であり、原因そのものを診断する道具ではありません。突然出現した下垂足、中枢神経徴候を伴う場合、腓骨神経障害やL5神経根障害が疑われる場合などは、装具選定より先に原因・局在と医学的評価の必要性を確認します。

原因を確認したうえでAFOを検討するときは、「背屈筋力が弱い」という静的所見だけでなく、歩行周期のどこで安全性や歩行効率が崩れているかを確認します。同じ下垂足でも、遊脚期だけに問題がある人と、立脚期まで制御が必要な人では求めるAFO機能が異なります。

最初の分岐は「遊脚期だけ」か「立脚期にも問題がある」か

下垂足のAFO選定で最初に確認したいのは、足尖クリアランスだけを補えばよいのか、それ以上の制御が必要なのかです。遊脚期だけでなく、初期接地・荷重応答・立脚中期まで順に見ると、必要なAFO機能を絞りやすくなります。

下垂足で必要なAFO機能を考える最初の分岐
歩行で確認する問題 考える機能 試用時に確認すること
遊脚期の足尖クリアランス不足が中心 背屈保持、過度な底屈の抑制 足尖接触が減るか、代償動作が変化するか
初期接地で足部が急速に底屈する 底屈制動・底屈制限 接地から荷重応答が滑らかになるか、膝屈曲が増えすぎないか
立脚中期に反張膝がみられる 足関節アライメント、底屈側の抵抗・制限の調整 脛骨の前方移動と膝過伸展がどう変化するか
内反・外側荷重を伴う 前額面の内外反制御 足底接地、外側荷重、足部の安定性が改善するか
荷重時に膝折れがみられる AFOだけで決めず、足関節設定と膝伸展機能を再評価 足関節設定の変更で膝屈曲や介助量がどう変化するか

足先が引っかかるから強いAFOが必要、とは限りません。反対に、遊脚期の背屈補助だけでは、立脚期の内反や膝の問題を十分に扱えないこともあります。どの歩行相まで問題が続いているかを確認してから、必要な機能へ進みます。

遊脚期だけが問題なら、まず足尖クリアランスを補う

立脚期の安定性が比較的保たれ、主な問題が遊脚期の足尖接触やつまずきであれば、必要な機能は比較的シンプルです。AFOによって足関節を中間位付近に保持したり、遊脚期の過度な底屈を抑えたりすることで、足尖クリアランスの確保を狙います。

このとき、AFO装着後に足先だけを見るのではなく、股関節の過剰な屈曲、骨盤挙上、外回し、体幹側屈などの代償がどう変化したかも確認します。足尖接触が減っても、別の代償が増えて歩行負荷が高くなれば、設定が適切とは言い切れません。

また、クリアランスは足関節だけで決まるものではありません。膝屈曲、股関節運動、歩行速度なども関係するため、「背屈を出せば解決する」と単純化せず、歩行全体の変化を確認します。

初期接地・荷重応答まで問題があるなら底屈制御を見る

初期接地後に前足部が急速に床へ落ちる、接地が不安定になる、荷重応答で膝の動きが崩れる場合は、遊脚期の背屈保持だけでは不十分なことがあります。

この場面では、AFOが底屈をどの程度許す・制動する・制限するのかを確認します。底屈抵抗は足関節だけでなく膝の運動にも影響するため、抵抗を強くすれば必ず安定するわけではありません。

脳卒中者を対象とした研究では、AFOの底屈抵抗を変化させることで初期立脚期の膝運動が変化することが報告されています。したがって、足部接地の改善と同時に、膝折れや過度な膝屈曲が生じていないかを確認することが重要です。

反張膝があるときは「硬いAFO」に決め打ちしない

立脚中期の反張膝を伴う場合、AFOの目的は単に足関節を固定することではありません。足関節と下腿の位置関係を調整し、歩行中に脛骨がどのように前方へ進むかを確認することが重要です。

脳卒中後の反張膝では、AFOの底屈抵抗を調整することで膝過伸展が変化することが報告されています。一方、その反応には個人差があり、底屈抵抗を強くした量と膝の変化が単純な比例関係にならない例もあります。

そのため、反張膝があるから「硬いAFO」、あるいは「底屈を強く止めればよい」と決めず、装着前後で初期接地、荷重応答、立脚中期の脛骨前傾、膝過伸展、歩行速度、本人の歩きやすさを比較します。

内反を伴う下垂足では前額面の制御も確認する

足尖クリアランス不足に内反が加わる場合は、矢状面の背屈・底屈だけでは判断できません。初期接地から立脚期に外側荷重となる、足底全体で接地できない、足部が不安定になる場合は、AFOによる内外反方向の支持も検討します。

この場合も「内反がある=強く固定する」ではなく、内反の程度、随意性、筋緊張、可動域、足部変形、靴の中での収まり方を確認します。装具で足部を整えても、靴との適合が悪ければ疼痛や皮膚トラブルにつながるため、AFO単体ではなく靴を含めて評価します。

AFOは名称より「どの機能を持たせるか」で整理する

AFOにはプラスチック製、継手付き、後方支柱型、カーボン製など多くの名称があります。ただし、材質・構造・継手の有無は同じ分類軸ではありません。下垂足で選ぶときは、名称を先に決めるより歩行に必要な機能を先に決める方が整理しやすくなります。

下垂足で確認したいAFOの主な機能
必要な機能 主に確認する場面 狙い 注意する変化
背屈保持・底屈の抑制 遊脚期 足尖クリアランスを確保する 膝・股関節・体幹の代償
底屈制動 初期接地〜荷重応答 急速な底屈を抑えながら荷重へ移行する 膝屈曲の増加、歩行速度の変化
底屈制限 初期接地〜立脚期 過度な底屈位への移行を制限する 膝運動が過度に変化しないか
背屈を許容する 立脚中期 脛骨の前方移動を妨げすぎない 膝折れ、下腿前傾の過不足
背屈側の制御 立脚中期〜終期 必要に応じて過度な下腿前傾を制御する 膝・股関節への影響
内外反制御 初期接地〜立脚期 足底接地と前額面の安定性を確保する 外果・内果・足部への圧迫

特に継手付きAFOでは、「動く/動かない」だけでなく、どの方向の運動を許し、どの方向へ抵抗を持たせるのかが重要です。カーボン製AFOについても、材質だけで機能を判断せず、剛性、構造、反発特性と実際の歩行反応を確認します。

下垂足のAFO選定。主な歩行問題から必要な制御、AFOの候補、試用・再評価までを整理した図版
図:下垂足のAFOは装具名から決めず、まず歩行上の問題を確認し、必要な制御を考えてから候補を絞ります。装着後は歩行・皮膚・靴・生活場面を再評価します。

試用では「AFOあり・なし」で何が変わったかを比較する

AFOを試したときは、「歩きやすそう」という印象だけで判断せず、装具なしと装着時で同じ項目を比較します。目的としていた問題が改善したかに加えて、別の歩行相へ新しい問題が生じていないかを見ることが重要です。

下垂足でAFOを試用するときの比較項目
歩行相・項目 確認する変化
遊脚期 足尖接触、足関節角度、股関節・骨盤による代償
初期接地 足部の接地位置、急速な底屈、接地の安定性
荷重応答 膝屈曲、膝折れ、下腿の動き、介助量
立脚中期 脛骨前傾、反張膝、足部の内反、外側荷重
歩行全体 歩行速度、安定性、疲労、本人の歩きやすさ

AFOは足関節の位置を変えるだけでなく、膝・股関節・骨盤・体幹の動きにも影響します。設定を変更したときは、目的としていた所見の改善と、他部位への影響をセットで確認します。

歩容が改善しても、皮膚と靴が合わなければ使用を続けにくい

AFOの機能が歩行に合っていても、皮膚トラブルや靴の不適合があれば生活場面で継続して使えません。試用・導入時は歩行と同時に適合状態を確認します。

  • 内果・外果、踵、足背、足部外側などに局所的な圧迫や擦れがないか
  • 装着後の発赤が持続していないか、疼痛や水疱がないか
  • AFOを入れた状態で踵が浮かないか、足背が圧迫されないか
  • 靴の幅・深さ・踵部がAFOと合っているか
  • 本人または介助者が現実的に着脱できるか

皮膚障害、疼痛、著しい圧迫、装具の破損や変形、急な歩行能力の変化がある場合は、そのまま使用を継続せず、医師・義肢装具士など関係職種と再確認します。

再評価では「足尖が上がったか」だけで終わらせない

下垂足に対するAFOの効果は、足尖クリアランスだけで判断しません。病態や機能が変化すれば、以前適していたAFOの設定が合わなくなることもあります。

再評価では、少なくとも遊脚期の足尖、初期接地、荷重応答の膝、立脚中期の反張膝・内反、皮膚、靴、生活場面での使用状況を確認します。必要に応じて歩行速度やTUGなど、同じ条件で比較できる指標を併用します。

装具の詳細な調整方法、試用から生活実装までの共通した臨床推論は、記事末の装具選定総論で整理しています。本記事では「下垂足にどの機能が必要か」を決めることを優先します。

下垂足のAFOでよくある質問

Q1. 下垂足があれば必ずAFOを使いますか?

必ず使用するわけではありません。原因、回復可能性、足関節可動域、随意運動、転倒リスク、歩行場面などを確認したうえで判断します。AFOを使う場合も、「下垂足」という診断名だけではなく、歩行のどの問題を補うのかを明確にします。

Q2. 反張膝がある場合は硬いAFOの方がよいですか?

硬さだけでは決められません。足関節の初期角度、底屈抵抗・制限、背屈の許容、靴との組み合わせによって膝の動きは変わります。装着前後で脛骨前傾と膝過伸展を比較し、個別に調整する必要があります。

Q3. 腓骨神経麻痺の下垂足でも同じ考え方ですか?

「歩行のどこを補う必要があるか」という考え方は共通しますが、原因や随伴症状によって必要な機能は異なります。腓骨神経麻痺で立脚期の膝制御が保たれている場合と、脳卒中後で筋緊張・内反・反張膝などを伴う場合を同じAFO選択に当てはめることはできません。

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参考文献

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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