Dix-Hallpikeは「BPPVか、次の検査へ進むか」を決める入口です
頭位めまいは、先に全体像を押さえると判断がぶれにくくなります
Dix-Hallpikeは後半規管型BPPVを疑うときの代表的な検査です。この記事では、実施方法、陽性・陰性の見方、赤旗、記録例までを現場向けに整理します。
頭位変換で短時間の回転性めまいが出る場合、最初に整理したいのは「後半規管型BPPVを疑う所見があるか」です。Dix-Hallpikeは、頭位変換で誘発されるめまいと眼振を確認し、耳石置換法へ進むか、別の検査や医師相談へ進むかを決める入口になります。
この記事では、Dix-Hallpikeのやり方だけでなく、陽性所見、陰性時の分岐、赤旗、カルテ記録までを一連の流れで整理します。手順だけ覚えるより、「頭位・眼振・次の一手」をセットで残せるようにすることが目的です。
Dix-Hallpikeで決めるのは「後半規管型BPPVを疑うか」です
Dix-Hallpikeの役割は、後半規管型BPPVを疑う所見がそろうかを確認することです。単に「めまいが出たか」ではなく、どちらの頭位で、どのような眼振が出たかを見ます。
典型的には、検査側耳を下にした頭位で、短い潜時のあとに回転性めまいと回旋成分を伴う上向き眼振がみられます。症状だけで判断すると、ふらつき、不安、血圧変動、頸部由来の不快感も混ざりやすいため、眼振所見まで確認することが重要です。
実施前に「適応・安全・赤旗」を確認します
Dix-Hallpikeを考えやすいのは、寝返り、起き上がり、上を向く、下を向くなどで、数秒から数十秒の回転性めまいが反復する場面です。一方で、持続性のめまい、強い神経症状、頭位と関係が薄いふらつきでは、BPPV以外も考えます。
| 確認項目 | 見るポイント | 判断 |
|---|---|---|
| 症状 | 頭位変換で短時間の回転性めまいが出る | BPPVを疑いやすい |
| 頸部 | 回旋・伸展が安全に可能か | 通常法か修正版を検討する |
| 体位変換 | 座位から臥位へ安全に移れるか | 介助量と中止条件を決める |
| 赤旗 | 強い頭痛、複視、構音障害、麻痺、意識変容 | PT単独で進めず医師評価を優先する |
やり方は「45度回旋して、素早く倒し、眼振を見る」が基本です
基本手順は、座位で頭部を検査側へ45度回旋し、そのまま素早く背臥位へ移行して頸部を軽く伸展させ、検査側耳が下になる位置を作ります。姿勢を作った直後から、めまいの訴えと眼振を観察します。
- ベッド端で座位をとる。
- 頭部を検査したい側へ45度回旋する。
- 頭部を支えたまま、素早く背臥位へ移行する。
- 頸部を軽く伸展し、検査側耳が下になる位置を作る。
- めまい、眼振の有無、眼振の向き、持続時間を観察する。
- 症状が落ち着いたら、ゆっくり座位へ戻す。
- 必要に応じて反対側も同条件で行う。
症状が強い場合ほど、患者さんへの声かけに意識が向き、眼振観察が抜けやすくなります。検査前に「短時間めまいが出る可能性があること」「終わったらゆっくり戻すこと」を説明しておくと、観察の質が安定します。

陽性は「めまい+眼振+頭位」のセットで判断します
陽性判断では、頭位変換で回転性めまいが誘発されることに加え、回旋成分を伴う上向き眼振がみられるかを確認します。めまいの訴えだけで陽性と書くと、再評価や申し送りで判断があいまいになります。
| 判定 | 所見 | 考え方 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 陽性 | 回転性めまいと回旋成分を伴う上向き眼振 | 後半規管型BPPVを疑う | 耳石置換法の適応を検討する |
| 陰性 | 症状も眼振もはっきりしない | 1回だけで否定しきれない場合がある | 反対側で再実施し、病歴と照合する |
| 非典型 | 水平眼振が目立つ、眼振が乏しい、症状が持続する | 水平半規管型や中枢性要素も考える | supine roll testや医師相談を検討する |
陰性でも「BPPVなし」で終わらず次の分岐へ進みます
Dix-Hallpikeが陰性でも、病歴がBPPVに合う場合は反対側で同条件にそろえて再実施します。それでも水平眼振が目立つ、または症状は典型的なのに所見が合わない場合は、水平半規管型を考えてsupine roll testへ進む流れを検討します。
大切なのは、陰性を「終了」ではなく「次の分岐を考える合図」として扱うことです。頭位めまいは訴えが似ているため、陰性時の分岐まで決めておくと、評価の取りこぼしを減らせます。
赤旗があるときは検査より医師評価を優先します
めまい対応では、BPPVを見つけることと同じくらい、BPPVでは説明しにくい所見を見逃さないことが重要です。強い頭痛、複視、構音障害、麻痺、急な意識変容、持続する強いめまいなどがある場合は、PT単独で頭位変換を進めず、医師評価を優先します。
頸部の強い痛み、不安定性、急性外傷後、体位変換そのものが危険な場面でも、通常手順をそのまま行わない判断が必要です。安全に検査できない場合は、無理に実施せず、代替方法や診療側への相談を選びます。
カルテは「頭位・反応・判断・次の一手」で残します
記録の目的は、検査した事実だけでなく、次回も同じ条件で再評価できるようにすることです。左右どちらで実施したか、めまいの有無、眼振の有無と向き、症状の持続、検査後の安全性、次に何をするかを残します。
記録の型
【頭位】右Dix-Hallpike実施。
【反応】短時間の回転性めまいあり。回旋成分を伴う上向き眼振を認める。
【安全】嘔気軽度、座位復帰後に速やかに軽快。
【判断】右後半規管型BPPVを疑う。
【次の一手】病態説明のうえ、耳石置換法の適応を検討する。
現場の詰まりどころは「めまいだけで陽性にすること」です
よくある失敗は、患者さんの「回る」という訴えだけで陽性と決めることです。Dix-Hallpikeでは、症状に加えて眼振の有無と向き、左右差、持続時間まで見て判断します。
もう1つの失敗は、陰性で止まることです。反対側の再実施、supine roll testへの分岐、赤旗時の医師相談まで決めておくと、評価の流れが安定します。
評価の型が職場で共有されていないと、めまい対応は属人化しやすくなります
検査・記録・相談の流れを学び直したい場合は、評価力の伸ばし方や環境の整え方も確認しておくと安心です。
よくある質問
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Q1. Dix-Hallpikeが陰性ならBPPVではありませんか?
陰性1回だけでは否定しきれないことがあります。反対側で再実施し、病歴がBPPVに合うのに水平眼振や非典型所見がある場合は、supine roll testや医師相談も検討します。
Q2. 陽性は「めまいが出た」だけで判断してよいですか?
めまいだけでは不十分です。頭位変換でのめまいに加えて、眼振の有無と向き、どちら側で誘発されたかをセットで判断します。
Q3. Dix-Hallpikeのあとに何をしますか?
後半規管型BPPVを疑う所見がそろえば、病態説明を行い、耳石置換法の適応を検討します。非典型なら水平半規管型や中枢性要素も見直します。
Q4. 頸部伸展が難しい人にも行えますか?
通常手順が難しい場合は無理に行わず、頸部・体位変換の安全性を優先します。修正版や他職種相談を検討し、危険がある場合は医師評価を優先します。
Q5. 記録はどこまで書けばよいですか?
最低限、検査側、めまいの有無、眼振の有無と向き、検査後の安全性、次の一手を残します。「陽性」だけより、次回評価につながる記録になります。
次の一手
Dix-HallpikeでBPPVを疑う流れを押さえたら、次は病態ごとの対応と、残存するふらつきへの評価を整理すると臨床で使いやすくなります。
関連:BPPVと前庭リハの違い
続けて読む:前庭リハビリテーションのやり方
評価を広げる:mCTSIBのやり方と判定
参考文献
- Bhattacharyya N, Gubbels SP, Schwartz SR, et al. Clinical Practice Guideline: Benign Paroxysmal Positional Vertigo (Update). Otolaryngol Head Neck Surg. 2017;156(3 Suppl):S1-S47. doi:10.1177/0194599816689667
- Dix MR, Hallpike CS. The pathology, symptomatology and diagnosis of certain common disorders of the vestibular system. Ann Otol Rhinol Laryngol. 1952;61(4):987-1016. doi:10.1177/000348945206100403
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


