PHQ-9・HADS・SRQ-Dの違い|目的別の選び方と注意点

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PHQ-9・HADS・SRQ-Dの違い|目的から選ぶ

PHQ-9・HADS・SRQ-D系は、「どれが優れているか」ではなく、何を評価したいか、身体疾患の影響をどう扱うか、どの版を使用するかで選びます。抑うつ症状を中心に経過まで追うならPHQ-9、不安と抑うつを分けて評価するならHADSが候補です。SRQ-D系を使う場合は、旧来のSRQ-Dと現行のSRQ-DⅡを混同せず、使用する版と運用条件を確認します。

このページでは、各尺度の質問文や詳細な採点手順ではなく、「この場面なら何を第一候補にするか」「どこで選択を切り替えるか」に絞って比較します。

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結論|PHQ-9・HADS・SRQ-D系の使い分け早見表

第一候補は、抑うつを中心に追うのか、不安と抑うつを分けたいのか、施設で採用しているSRQ-D系を使うのかで決めます。自己回答そのものが難しい状態では、無理に質問紙を選ばないことも重要です。

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PHQ-9・HADS・SRQ-D系の目的別使い分け
判断したいこと 第一候補 選ぶ理由 第一候補にしにくい条件
抑うつ症状を拾い、同じ尺度で経過も追いたい PHQ-9 抑うつ症状の重症度を数値化し、経時変化を追いやすい 不安と抑うつを分けること自体が主目的
身体疾患があり、不安と抑うつを分けて見たい HADS 不安と抑うつを別々の下位尺度で評価できる 抑うつだけを簡潔に追跡したい
施設で東邦大式の尺度を採用している SRQ-D系 採用している版と実施手引に沿って運用できる 使用している版や運用方法が不明
せん妄、重い失語、理解困難などで自己評価の信頼性を確保しにくい 無理に選ばない 質問紙の点数化より状態確認と必要な共有を優先する 代理回答を本人の標準得点として扱わない
PHQ-9・HADS・SRQ-DⅡの選び方を目的と場面から整理した比較図
PHQ-9は抑うつの評価と経過確認、HADSは身体疾患がある場面で不安と抑うつを分けたい場合、SRQ-DⅡは採用している版と運用条件を確認して使用します。

3尺度を分ける判断の境界

比較で重要なのは、各尺度の特徴を覚えることより、何を知りたいときに選択を切り替えるかです。特にPHQ-9とHADSは同じ患者で候補になることがありますが、評価したい対象が異なります。

PHQ-9|抑うつを中心に評価し、経過も追いたい

PHQ-9は9項目からなる尺度で、合計点は0〜27点です。原著では10点以上を閾値とした場合、大うつ病に対する感度・特異度はいずれも88%でした。ただし、合計点だけで診断を確定する尺度ではありません。

PHQ-9には睡眠、食欲、疲労など身体疾患でも変化しやすい領域が含まれるため、疼痛、不眠、息切れ、薬剤変更などがある場合は、点数だけでなく背景も合わせて解釈します。

抑うつ症状を同じ尺度で繰り返し確認したい場合は選択しやすい一方、主目的が「不安と抑うつを分けること」であればHADSを検討します。

PHQ-9を選んだ後の実施条件、記録、再評価については、PHQ-9運用プロトコルで詳しく整理しています。

HADS|身体疾患があり、不安と抑うつを分けたい

HADSは14項目で構成され、不安7項目(HADS-A)と抑うつ7項目(HADS-D)をそれぞれ0〜21点で評価します。一般病院の患者を想定して開発され、身体疾患による症状が心理評価へ影響しすぎないよう、身体症状への依存を抑えた設計が特徴です。

そのため、疼痛、息切れ、疲労などの身体症状があり、「抑うつが前景なのか、不安も強いのか」を分けて整理したい場合に候補になります。

原著者による解説では、各下位尺度について0〜7点、8〜10点、11点以上の区分が示されています。ただし、質問紙によるスクリーニング結果だけで確定診断は行わず、対象や使用目的と合わせて解釈します。

HADS-AとHADS-Dを合わせた総得点が研究などで扱われる場合もありますが、不安と抑うつを切り分ける目的ではAとDを別々に確認することが重要です。

HADSは利用条件が定められている尺度です。質問文の転載や施設での使用を行う場合は、正規提供元で最新のライセンス条件を確認してください。

SRQ-D/SRQ-DⅡ|最初に「どの版か」を確認する

SRQ-D系は、PHQ-9やHADSとの比較より先に、手元の質問紙がどの版なのかを確認する必要があります。

現在、東邦大学医療センター大森病院と金子書房が案内しているSRQ-DⅡ(東邦大式抑うつ尺度 第2版)は15項目、主な対象は18歳以上です。4段階で回答する質問紙で、短時間でうつ病の可能性を評価し、専門医による診断評価の要否を判断する際に役立つ尺度として案内されています。

一方、自治体などの公開ページには、現在も18項目のSRQ-Dが掲載されている例があります。つまり、「SRQ-D」という名称だけを見て項目数や採点方法を決めると、旧来のSRQ-DとSRQ-DⅡを混同する可能性があります。

SRQ-D系で最初に確認すること
「18項目のSRQ-D」なのか、「15項目のSRQ-DⅡ」なのかを確認します。異なる版の項目数、採点方法、カットオフをそのまま転用しないでください。SRQ-DⅡの使用許諾について、東邦大学は金子書房への問い合わせを案内しています。

基本スペック比較|点数より設計の違いを見る

使い分けでは、数値だけを並べるより、何を測るために設計されているかを見るほうが選択しやすくなります。SRQ-D系は版による混同を避けるため、ここでは現行SRQ-DⅡの公式情報で確認できる範囲を示します。

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PHQ-9・HADS・SRQ-DⅡの基本スペック比較
比較軸 PHQ-9 HADS SRQ-DⅡ
主な評価対象 抑うつ症状 不安・抑うつ うつ病の可能性のスクリーニング
構成 9項目 14項目
HADS-A 7/HADS-D 7
15項目
得点 0〜27点 各下位尺度0〜21点 使用する実施手引で確認
選びやすい場面 抑うつを評価し、経時変化も追いたい 身体疾患があり、不安と抑うつを分けたい 施設でSRQ-DⅡを採用し、手引に沿って運用する
読み方の注意 身体症状と重なる回答を背景と合わせて読む 不安と抑うつを分ける目的ではA/D別に見る 旧来SRQ-Dとの版の混同を避ける
使用前の確認 使用する正式版・翻訳を確認 正規版・ライセンス条件を確認 版・検査用紙・実施手引・使用条件を確認

選択フロー|4つの質問で第一候補を決める

尺度を決める前に、次の4つを確認すると選択しやすくなります。複数尺度を同時に実施することを前提にせず、まず主目的に最も合う尺度を1つ決めることが基本です。

  1. 質問紙による自己評価が成立するか:せん妄、重い失語、理解困難などで信頼できる回答が難しい場合は、質問紙の点数化を優先しません。
  2. 何を評価したいか:抑うつを中心に追うならPHQ-9、不安と抑うつを分けるならHADSを候補にします。
  3. 施設標準があるか:SRQ-D系を採用している場合は、使用している版と実施手引を確認します。
  4. 再評価できるか:経過を見る場合は尺度を頻繁に変更せず、前回と比較できる条件を残します。
安全上の確認は尺度選択より優先します。
希死念慮・自傷リスクが疑われる、急性の意識・認知状態の変化があるなど、安全確認が必要な場合は「どの尺度を使うか」より先に、施設の手順に沿って必要な評価・共有につなげます。

記録と再評価|尺度名だけで終わらせない

比較可能な評価にするには、尺度名・版・得点・実施条件・背景をセットで記録します。この比較記事では、再評価に必要な最小限だけを押さえます。

  • 尺度名・版:PHQ-9、HADS、SRQ-DⅡなど
  • 得点:HADSは不安(A)と抑うつ(D)を分けて残す
  • 実施条件:自己記入か面接か、補助の有無、時間帯など
  • 背景:疼痛、睡眠、息切れ、疲労、薬剤変更、環境変化など

再評価では、点数の変化だけでなく、前回と実施条件が変わっていないかも確認します。尺度選択から共有・再評価までの全体設計は、記事末の総論で確認できます。

よくある失敗|比較で迷いやすい5つ

特に避けたいのは、カットオフだけで判断すること、HADSの二軸を活かさないこと、SRQ-Dの異なる版を混同することです。

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PHQ-9・HADS・SRQ-D系で起こりやすい判断ミス
場面 避けたい判断 確認すること
尺度選択 迷ったら全員PHQ-9にする 抑うつを追うのか、不安も分けるのかを先に決める
HADS AとDの違いを見ず、総得点だけで判断する 不安と抑うつを分ける目的ならA/D別に確認する
SRQ-D 項目数や版を確認せず、同じ採点法を使う SRQ-DかSRQ-DⅡか、使用中の実施手引を確認する
カットオフ 一定点以上なら「うつ病」と断定する スクリーニング結果と臨床評価を分けて考える
自己回答が難しい 代理回答を本人の標準得点として扱う 質問紙の適用可否を再検討し、必要な状態評価を優先する

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

PHQ-9とHADSで迷ったら、どちらを選びますか?

抑うつ症状を中心に評価し、その後も同じ尺度で経過を追いたいならPHQ-9が候補です。身体疾患があり、不安と抑うつを分けることが主目的ならHADSを検討します。

HADSは合計点で見てはいけませんか?

総得点が研究などで扱われる場合もあります。ただし、不安と抑うつを切り分ける目的では、HADS-AとHADS-Dを分けて確認することが重要です。

SRQ-Dの18項目とSRQ-DⅡの15項目は同じですか?

同じ版として扱わないでください。現在、東邦大学と金子書房が案内しているSRQ-DⅡは15項目の第2版です。一方、Web上には18項目のSRQ-Dが公開されている例もあるため、使用する質問紙の版と実施手引を確認します。

SRQ-DⅡは自由にコピーして配布できますか?

自由配布を前提にしないでください。東邦大学はSRQ-DⅡの使用許諾について金子書房への問い合わせを案内しています。施設で使用・複製する場合は、正規提供元の最新条件を確認してください。

点数が低ければ安全上の問題はないと考えてよいですか?

いいえ。質問紙の合計点だけで安全性を判断しません。希死念慮・自傷リスクを疑う情報や急な状態変化がある場合は、点数にかかわらず施設の手順に沿って必要な評価・共有につなげます。

次の一手|選んだ尺度を再評価までつなげる

尺度を選んだ後は、毎回違う尺度へ変更するより、実施条件・記録・共有方法をそろえて再評価できる状態を作ることが重要です。

抑うつ評価の流れ|選択・共有・再評価の組み立てを見る


参考文献

  • Kroenke K, Spitzer RL, Williams JBW. The PHQ-9: validity of a brief depression severity measure. J Gen Intern Med. 2001;16(9):606-613. DOI: 10.1046/j.1525-1497.2001.016009606.x
  • Zigmond AS, Snaith RP. The hospital anxiety and depression scale. Acta Psychiatr Scand. 1983;67(6):361-370. DOI: 10.1111/j.1600-0447.1983.tb09716.x
  • Snaith RP. The Hospital Anxiety And Depression Scale. Health Qual Life Outcomes. 2003;1:29. DOI: 10.1186/1477-7525-1-29
  • Brennan C, Worrall-Davies A, McMillan D, Gilbody S, House A. The Hospital Anxiety and Depression Scale: a diagnostic meta-analysis of case-finding ability. J Psychosom Res. 2010;69(4):371-378. DOI: 10.1016/j.jpsychores.2010.04.006
  • Mapi Research Trust. Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS). ePROVIDE公式ページ
  • 東邦大学医療センター大森病院 心療内科. 当科作成の東邦大式抑うつ尺度(SRQ-DⅡ). 公式ページ
  • 金子書房. SRQ-D®Ⅱ 東邦大式抑うつ尺度 第2版. 公式ページ
  • 丸亀市. あなたの心は大丈夫? 自己診断チェックシート(Srq-D東邦大式). 18項目SRQ-Dの公開例

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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