Thomas テスト( Modified Thomas )は “ 骨盤固定 ” で短縮を読む
Thomas テストは、股関節屈筋群の短縮を疑うときに使う評価です。臨床で詰まりやすいのは、骨盤前傾が混ざって “ 股関節伸展が出ているように見える ” 点です。つまり、結果の信頼性は、どれだけ骨盤を固定して股関節前面の反応を読めるかで変わります。
本記事では、Thomas テストを 30 秒で実施する手順、陽性の考え方、よくある失敗、記録例までを整理します。股関節前面の短縮を「何となく硬い」で終わらせず、再評価しやすい所見として残したい PT 向けの記事です。
関連:標準フロー( 5 分運用 ) / 続けて読む:FADIR / FABER
30 秒手順|骨盤固定を先に作ってから大腿の浮きを見る
Thomas テストは、対側股関節を胸に引き寄せて骨盤前傾を抑え、反対側の大腿がベッドから浮くかを確認します。最初に腰椎前弯を潰せたかを確認すると、測定条件が揃いやすくなります。
| 手順 | 狙い | 記録(最小) |
|---|---|---|
| ① ベッド端に座り、仰臥位へ | 骨盤位置を作る | 腰椎前弯:潰せた / 潰せない |
| ② 片膝を抱えて胸へ引く | 骨盤前傾を抑える | 骨盤:前傾なし / 前傾あり |
| ③ 対側大腿の位置を見る | 股関節伸展の制限を読む | 大腿:接地 / 浮く / 何横指 |
Thomas テスト記録シート PDF
評価中に確認したいポイントは、骨盤固定・大腿の浮き・代償・左右差の 4 つです。下の A4 記録シートを使うと、Thomas テストの結果を再評価しやすい形で残せます。
PDF は A4 1 枚で印刷できます。評価日、骨盤固定、対側大腿の浮き、代償、再評価メモを同じ形式で残したい場合に使ってください。
陽性の定義|骨盤前傾を抑えても大腿が浮くなら陽性寄りに読む
判定で大切なのは、骨盤前傾が混ざっていない状態で股関節伸展を読むことです。骨盤前傾が残ると、見かけ上は股関節伸展が出ているように見えるため、陽性・陰性の判断がぶれます。
臨床運用では、腰椎前弯を潰して骨盤を固定できた状態でも対側大腿がベッドから浮く場合を、股関節屈筋群短縮の可能性として記録します。角度だけでなく「 2 横指浮く」などの表現を併記すると、再評価で比較しやすくなります。
| 項目 | 書き方(例) | 読み取りの方向性 |
|---|---|---|
| 骨盤 | 腰椎前弯を潰して固定可能 | 測定条件が揃っている |
| 股関節 | 対側大腿が 2 横指浮く | 屈筋群短縮の可能性 |
| 代償 | 対側下肢が外旋して逃げる | 再配置して再評価が必要 |
現場の詰まりどころ|腰椎前弯・外旋・ベッド端を先にそろえる
Thomas テストは、体位とランドマークで結果が変わりやすい評価です。まずは「腰椎前弯が残る」「対側下肢が外旋する」「ベッド端の位置がずれる」の 3 つを潰すと、左右差や再評価の信頼性が上がります。
関連:姿勢や固定の揃え方は、ROM テストの標準化も合わせて読むとチーム共有がスムーズです。
よくある失敗
| 失敗 | 起きること | 直し方( 1 つだけ ) |
|---|---|---|
| 腰椎前弯が残る | 股関節伸展が出ているように見える | 抱える膝をもう 1 段胸へ引く |
| 対側が外旋して逃げる | 股関節前面以外の要素が混ざる | 膝蓋骨を天井へ向ける |
| ベッド端が合わない | 大腿位置が読みにくい | 臀部位置を端に合わせ直す |
回避の手順(再現性チェック)
- 骨盤固定:腰椎前弯を潰せたかを最初に記録する
- 対側の向き:膝蓋骨が天井を向くように外旋を減らす
- 左右差:同じ抱え方、同じベッド位置で比較する
ここまで整えても毎回同じところで詰まる場合は、手順だけでなく教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無も影響している可能性があります。
PT キャリアガイドを見る解釈の早見|短縮・代償・疼痛誘発を分けて次へつなぐ
Thomas テストは「短い / 短くない」で終わらせず、どの要素が混ざっているかを分けると介入につなげやすくなります。骨盤固定後も大腿が浮くのか、固定そのものが難しいのか、痛みで保持できないのかを分けて記録します。
| 所見 | よくある状況 | 次に見る 1 個 |
|---|---|---|
| 骨盤固定後も大腿が浮く | 股関節前面が張る / 伸展が出にくい | 立位・歩行時の骨盤前傾を観察 |
| 骨盤固定が難しい | 腰が反る / 代償が強い | 抱え方とベッド位置を再設定 |
| 痛みで保持できない | 鼠径部痛や前方部痛が出る | FADIRで疼痛誘発の有無を確認 |
よくある質問(FAQ)
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Modified Thomas は骨盤前傾の影響を受けますか?
受けます。骨盤前傾が混ざると、見かけ上は股関節伸展が出ているように見えます。臨床では、腰椎前弯を潰せたかを先に記録し、前提条件を揃えてから大腿の浮きを判定します。
どこまでを陽性と考えますか?
実務上は、骨盤固定ができた状態でも対側大腿がベッドから浮く場合を陽性寄りに考えます。角度で測る場合も、何横指浮くか、外旋代償があるかを併記すると再評価しやすくなります。
左右差があるときは何を優先して見ますか?
まず骨盤固定の成否を確認します。左右で抱え方やベッド端の位置が違うと、結果の差が短縮ではなく測定条件の差になるためです。条件を揃えてから左右差を比較します。
再現性を上げる 1 手はありますか?
抱える膝をもう 1 段胸へ引き、腰椎前弯を潰してから判定することです。骨盤が固定されると、Thomas テストが股関節前面の評価として機能しやすくなります。
次の一手
- 全体像を押さえる:股関節テストの 5 分フロー(標準手順)
- すぐ実装する:ROM テストの標準化(固定と記録のコツ)
参考文献
- Vigotsky AD, Harper EN, Ryan DR, Contreras B, Beardsley C. Interrater reliability and range of motion of the modified Thomas test. PeerJ. 2016;4:e2325. DOI: 10.7717/peerj.2325 / PubMed: 27602291
- Kim GM, Ha SM. Reliability of the modified Thomas test using a lumbo-pelvic stabilization. J Phys Ther Sci. 2015;27(2):447-449. DOI: 10.1589/jpts.27.447 / PubMed: 25729187
- Peeler J, Anderson JE. Reliability limits of the modified Thomas test for assessing rectus femoris muscle flexibility about the knee joint. J Athl Train. 2008;43(5):470-476. DOI: 10.4085/1062-6050-43.5.470 / PMC: PMC2547866
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


