Thomasテストのやり方|陽性所見とModifiedとの違い

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Thomasテストは骨盤を固定して股関節伸展制限を読む

ThomasテストとModified Thomas testは混同されやすいですが、同じ手技ではありません。Thomasテストは、非検査側股関節を屈曲して骨盤・腰椎の代償を抑えた状態で、検査側股関節に屈曲位が残るかを確認します。Modified Thomas testではベッド端から検査側下肢を下ろし、大腿の位置に加えて膝角度や外転・回旋も観察します。

どちらも重要なのは、骨盤前傾や腰椎伸展を混ぜたまま「股関節伸展が出ている」と判断しないことです。本記事では、ThomasとModifiedの違い、実施方法、陽性所見、骨盤固定、記録・再評価までを理学療法士向けに整理します。

ThomasテストとModified Thomas testの違い

Thomasテストは股関節屈曲拘縮・伸展制限を確認し、Modified Thomas testはベッド端を利用して股関節屈筋の柔軟性をより詳しく観察します。まず、どちらを実施したのかを明確に分けることが重要です。

ThomasテストとModified Thomas testの違い
項目 Thomasテスト Modified Thomas test
主な目的 股関節屈曲拘縮・股関節伸展制限の確認 股関節屈筋の柔軟性と関連所見の確認
基本体位 ベッド上の背臥位 ベッド端付近での背臥位
主な観察 検査側大腿がベッドから浮くか 大腿の位置、膝角度、外転・回旋
共通条件 骨盤前傾・腰椎伸展を抑えた状態で所見を読む
ThomasテストとModified Thomas testの体位・観察点・所見の違いを比較した図
図:ThomasテストとModified Thomas testは体位と観察点が異なる。共通して骨盤前傾・腰椎伸展を混ぜないことが重要。

「Thomas=腸腰筋テスト」とだけ覚えると、検査側大腿の位置だけから責任筋を決めてしまいやすくなります。実際には、手技名、骨盤条件、大腿・膝の所見を分けて記録し、他のROMや筋長所見と統合して解釈することが大切です。

Thomasテストのやり方|非検査側股関節を屈曲して大腿を見る

Thomasテストでは、非検査側股関節を十分に屈曲して骨盤前傾・腰椎伸展を抑え、その状態で検査側股関節が伸展方向へ保たれるかを確認します。

Thomasテストの基本手順
手順 確認すること
① 背臥位になる 開始時の腰椎・骨盤・両下肢の位置を確認する
② 非検査側股関節を屈曲する 膝を胸へ近づけ、腰椎前弯や骨盤前傾が増えない位置を作る
③ 検査側大腿を見る 大腿がベッド上に保たれるか、屈曲方向へ浮くかを確認する
④ 骨盤条件を再確認する 判定前に骨盤前傾・腰椎伸展が混ざっていないか確認する

骨盤条件を保った状態でも検査側股関節に屈曲位が残り、大腿がベッドから浮く場合は、股関節屈曲拘縮または股関節伸展制限を示す所見として捉えます。

ただし、大腿が浮いたことだけで「腸腰筋短縮」と断定することは避けます。Thomasテストは股関節伸展方向の制限を確認する材料であり、単独で責任組織を確定する検査ではありません。

Modified Thomas testのやり方|ベッド端で大腿と膝を観察する

Modified Thomas testでは、骨盤位置を一定にしたまま検査側下肢をベッド端から下ろし、大腿の位置と膝関節肢位を観察します。Thomasテストより観察項目が増えるため、どの所見を見ているのかを分けて記録します。

  1. ベッド端付近に座り、下肢を抱えながら背臥位へ移る
  2. 非検査側股関節を屈曲位で保持する
  3. 骨盤前傾や腰椎伸展が増えていないことを確認する
  4. 検査側下肢をベッド端からゆっくり下ろす
  5. 大腿の高さ、膝角度、外転・回旋、疼痛や代償を観察する

Modified Thomas testでは、大腿が水平位まで下がるかどうかだけでなく、膝関節肢位や大腿の方向も補足所見として確認します。ただし、大腿の外転・回旋や膝角度だけから特定筋の短縮を確定せず、他の筋長検査やROM所見と合わせて判断します。

陽性所見|骨盤固定後も股関節屈曲位が残るかを見る

Thomas系テストの判定では、「陽性・陰性」だけでなく、骨盤条件をそろえた後に何が残ったかを記録することが重要です。

Thomas・Modified Thomas testの所見と読み方
所見 読み方 注意点
骨盤を固定しても大腿が屈曲位に残る 股関節伸展制限・股関節屈筋の柔軟性低下を疑う 責任筋は単独で確定しない
大腿位置に加えて膝角度が変化する 二関節筋を含む影響を検討する 他の筋長所見と照合する
大腿が外転・回旋方向へ移動する 補足所見として方向を記録する 特定筋の短縮と即断しない
骨盤前傾・腰椎伸展が増える 測定条件が崩れている可能性がある 判定より先に体位を修正する
疼痛で保持できない 柔軟性評価としての解釈を保留する 疼痛部位・誘発条件を別に記録する

角度を測定する場合は、股関節中間位を0°として扱う方法があります。ただし、角度そのものよりも、骨盤をどの位置で保ったか、同じ条件で再評価できるかが重要です。

骨盤固定が重要|前傾すると股関節伸展が大きく見える

Modified Thomas testでは、骨盤傾斜を制御しないと股関節伸展角度を正しく評価しにくくなります。骨盤前傾や腰椎伸展が生じると、大腿がより下がって見え、股関節伸展が実際より大きく見える可能性があります。

Vigotskyらは、骨盤傾斜を制御しないModified Thomas testでは股関節伸展評価の基準関連妥当性が低く、骨盤傾斜を制御することで測定値との関係が大きく改善することを報告しています。

また、骨盤中間位を触診で管理した2024年の研究では、Modified Thomas testによる股関節伸展角度の測定について、良好な検者内・検者間信頼性が報告されています。2026年のシステマティックレビューでも、股関節屈筋柔軟性テストは全体として一定の信頼性を示す一方、Thomas testとModified Thomas testでは手技の違いによるばらつきが大きく、標準化の必要性が指摘されています。

そのため、再評価でそろえたいのは「テスト名」だけではありません。

  • Thomas testかModified Thomas testか
  • 骨盤をどの位置で保持したか
  • 非検査側股関節をどの程度屈曲したか
  • ベッド端との位置関係
  • 角度測定か、接地・浮きなどの記述か
  • 疼痛・外転・回旋などの代償があったか

記録方法|手技名・骨盤条件・大腿・膝を分ける

「Thomas陽性」だけでは、次回に同じ条件で再評価できません。実施した手技、骨盤固定の成否、大腿・膝の位置、疼痛や代償を分けて残します。

Thomas系テストの記録例
項目 記録例
実施法 Modified Thomas test
骨盤条件 骨盤中間位を保持、明らかな腰椎伸展代償なし
大腿 右大腿は水平位まで下降せず、股関節屈曲位が残存
膝・大腿方向 膝角度変化なし、明らかな外転・回旋なし
疼痛 疼痛誘発なし

簡便な経時比較として「ベッドから1横指浮く」などと記載することはできますが、横指幅を絶対的な陽性基準として扱うものではありません。再評価では、同じ検査者・同じ体位・同じ骨盤条件で比較できるようにします。

関節可動域を角度で追う場合の固定・軸・記録方法は、ROMテストの標準化で詳しく整理しています。

よくある失敗|所見より先に測定条件を確認する

左右差や前回との差が大きいときは、筋の変化だけでなく測定条件の違いを疑います。特にThomasとModifiedの混同、骨盤前傾、大腿だけを見た判定は避けたいポイントです。

Thomas系テストで起こりやすい失敗と修正
失敗 起こること 修正
ThomasとModifiedを区別しない 前回との比較条件が分からなくなる 最初に手技名を記録する
骨盤前傾・腰椎伸展が残る 股関節伸展が大きく見える 骨盤位置を整えてから再判定する
大腿の高さだけを見る 膝や回旋の所見を見落とす 大腿・膝・骨盤を分けて観察する
大腿が浮いたら腸腰筋短縮と決める 責任組織を過剰に限定する ROM・筋長・疼痛・動作所見と統合する
疼痛が出ても柔軟性低下として判定する 疼痛による防御や中止要因が混ざる 柔軟性の判定を保留し疼痛条件を記録する

再評価|同じテストではなく同じ条件で比較する

Thomas系テストの再評価では、同じ名称のテストを行うだけでは不十分です。骨盤位置、非検査側の股関節屈曲、ベッド位置、測定方法まで可能な範囲でそろえます。

介入前後では、大腿位置や角度だけでなく、骨盤固定が容易になったか、代償が減ったか、同じ肢位を疼痛なく保持できるようになったかも確認します。測定値の変化と測定条件の変化を分けて記録すると、再評価の解釈がしやすくなります。

Thomas系テストだけで判断せず、股関節の症状や評価目的に応じて次のテストを選びたい場合は、股関節の整形外科テスト一覧へ戻ってください。

よくある質問

ThomasテストとModified Thomas testは同じですか?

同じではありません。Thomasテストはベッド上の背臥位で股関節屈曲拘縮・伸展制限を確認します。Modified Thomas testはベッド端から検査側下肢を下ろし、大腿の位置に加えて膝角度や外転・回旋も観察します。記録では、どちらを実施したかを明記してください。

Thomasテストが陽性なら腸腰筋短縮と判断できますか?

単独所見だけで腸腰筋短縮と確定することはできません。骨盤条件をそろえても股関節屈曲位が残る場合は、股関節伸展制限や股関節屈筋の柔軟性低下を疑う材料になります。責任組織はROM、他の筋長検査、疼痛、姿勢・動作所見と合わせて判断します。

大腿の浮きを「何横指」で記録してもよいですか?

同じ条件での経時比較を目的とする簡便な記録としては使用できます。ただし、「何横指以上なら陽性」という絶対的な基準として扱わず、実施法と骨盤条件を併記してください。定量的に追う場合は、条件を標準化したうえで角度測定を検討します。

参考文献

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  2. Vigotsky AD, Lehman GJ, Beardsley C, Contreras B, Chung B, Feser EH. The modified Thomas test is not a valid measure of hip extension unless pelvic tilt is controlled. PeerJ. 2016;4:e2325. DOI: 10.7717/peerj.2325 / PubMed: 27602291
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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