HADS とは?(目的と使いどころ)
HADS( Hospital Anxiety and Depression Scale )は、身体疾患を有する外来・入院患者における 不安( A ) と 抑うつ( D ) を同時に短時間でスクリーニングする 14 項目尺度です。身体症状の影響を受けにくい設計で、所要時間は約 5–10 分。診断を下す検査ではなく、スクリーニング → 面接・再評価へつなぐ入口として活用します。
本記事は、採点手順・カットオフ( 0–7 正常/ 8–10 境界/ 11–21 異常 ) の早見表と、臨床での注意点を 1 ページに集約しました。最終更新:2025-10-09。
要点早見表(スコア範囲・判定)
下位尺度 | 項目数 | スコア範囲 | 判定の目安 |
---|---|---|---|
A:不安 | 7 | 0–21 | 0–7 正常 / 8–10 境界域 / 11–21 異常 |
D:抑うつ | 7 | 0–21 | 0–7 正常 / 8–10 境界域 / 11–21 異常 |
※ HADS はスクリーニングです。境界域( 8–10 ) は経時再評価・臨床面接、必要に応じて他尺度の併用を推奨します。
評価用シートのダウンロード
以下から直接ダウンロードできます(設問本文は含みません=著作権保護に配慮した「スコア記録シート」)。
- HADS スコア記録シート(印刷用HTML)(開いて「印刷 → PDF に保存」でも利用可)
採点の手順( 1 分で確認 )
- 全 14 項目を確認( A=奇数/ D=偶数が基本 )。各項目を 0–3 点で採点します。
- 逆転項目は得点表に従い換算(用紙に換算表を併記して運用)。
- A と D をそれぞれ合計( 0–21 )。判定:0–7 正常 / 8–10 境界 / 11–21 異常。
採点例(ケース 1 )
60 代・内科病棟。A= 12 点、D= 6 点。A は「異常」、D は「正常」。
対応:看護・主治医へ共有、面接(不安症状の内容・持続)と環境調整、必要に応じて GDS-15 や SRQ-D を併用。
評価の導線設計は 臨床導線の作り方( #flow ) も参考にしてください。
使い方のコツ(対象・実施・再評価)
- 対象:身体疾患患者の情動症状スクリーニング(外来・病棟)。
- 所要時間:約 5–10 分(原則は自記式、困難なら口頭で代替)。
- 再評価:境界域や介入前後で 1–2 週〜 1 か月間隔を目安に。
- 注意:診断目的には用いない。高齢者・認知機能低下では GDS-15 の併用を検討。
よくある質問( FAQ )
Q1. HADS は診断に使えますか?
A. いいえ。HADS はスクリーニング用です。高得点=診断確定ではありません。臨床面接・経過観察・他尺度と併用してください。
Q2. カットオフは固定ですか?
A. 一般的な目安は 8/11 ですが、対象や文脈により感度・特異度のバランスを考えます。境界域( 8–10 ) は再評価が基本です。
Q3. PHQ-9 や GAD-7 との違いは?
A. PHQ-9(抑うつ)や GAD-7(不安)は単一領域に特化。一方 HADS は 不安・抑うつを同時に短時間で把握でき、内科病棟の一次スクリーニングに向きます。
Q4. 欠測(未回答)があるときは?
A. 原則は 全 14 項目完答です。欠測時は再実施を推奨します。
参考文献
- Zigmond AS, Snaith RP. The Hospital Anxiety and Depression Scale. Acta Psychiatr Scand. 1983;67(6):361–370. https://doi.org/10.1111/j.1600-0447.1983.tb09716.x
- Bjelland I, Dahl AA, Haug TT, Neckelmann D. The HADS: A systematic review of the scale’s properties. J Psychosom Res. 2002;52(2):69–77. https://doi.org/10.1016/S0022-3999(01)00296-3