統一多系統萎縮症評価尺度( UMSARS )とは?評価方法と使い方

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UMSARS は「MSA の進行」を多面的に追うための標準スケール

UMSARS( Unified Multiple System Atrophy Rating Scale )は、多系統萎縮症( MSA )の症状を「日常生活」「運動所見」「自律神経」「全体障害」の 4 つに分けて、経時変化を追うための評価尺度です。臨床試験の主要評価項目としても使われ、外来〜入院まで同じ物差しで重症度と進行を整理できます。

リハ場面では、介入の成果を 1 回のテストで断定しにくい MSA に対して、「どこが落ちているか」「何が先に崩れたか」を構造化して記録できるのが強みです。本記事では、現場で迷いやすい“取り方と残し方”を、使う順番がわかる形でまとめます。

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UMSARS とは?4 部構成と “何が分かるか”

UMSARS は 4 部構成です。Part I は病歴・ ADL(インタビュー中心)、Part II は運動所見(診察・動作観察)、Part III は自律神経の評価、Part IV は全体障害( Global Disability )を扱います。特に Part I と Part II は総合点として扱われやすく、進行のモニタリングに使われます。

現場での使いどころは、「転倒」「すくみ」「構音・嚥下」「起立性低血圧」など、 MSA で同時多発しやすい問題を 1 つの枠組みに整理できる点です。評価の全体設計(何を先に見て、どこを再評価するか)は親記事でまとめています:多系統萎縮症( MSA )の理学療法評価まとめ

UMSARS の構成と、リハ現場での読み替え(成人・臨床運用向け)
パート 主な領域 評価の主役 臨床での使い道
Part I 病歴・ ADL(症状の影響) 問診+日常での困りごと 「生活で何が先に詰まったか」を言語化して記録
Part II 運動所見(運動失調・パーキンソニズムなど) 診察+動作観察 介入の狙い(歩行/移乗/上肢巧緻)と再評価軸を固定
Part III 自律神経(例:起立性低血圧) バイタル・症状 安全管理(中止基準・転倒予防)を “点数と所見” で残す
Part IV 全体障害( Global Disability ) 総合判断 在宅/施設/病棟など場面移行時の説明資料に使う

評価の手順:初回→フォローで “同じ条件” を守る

UMSARS をリハで使うコツは、初回で「点数化」と同じくらい「次回も同じ条件で取れる形」に整えることです。たとえば Part II は、疲労・時間帯・服薬(オン/オフ)・補装具・介助量で見え方が変わります。まず条件を固定し、評価メモに “変えた条件” を必ず残します。

フォローでは、総合点の増減だけで一喜一憂せず、「どの領域が崩れたか」を先に見ます。 MSA は自律神経・嚥下・歩行が別々の速度で落ちることがあり、合計点だけだと “介入の当たり所” を見失いやすいからです。

UMSARS 運用で詰まりやすいポイント( OK / NG 早見)
場面 NG OK 記録の型
初回 合計点だけ記録 パート別+重要項目をメモ Part I / II / III / IV + “変化した項目”
再評価 条件が毎回バラバラ 時間帯・服薬・補装具・介助量を固定 「オン/オフ」「杖」「介助量」「疲労」
解釈 点数が上がった=悪化と即断 安全要因(起立性低血圧等)を同時確認 Part III 所見+転倒・失神の有無
説明 専門用語で伝える 「生活」「動作」「安全管理」に翻訳 家族説明:生活で増えた介助/危険動作

リハ視点の “読み方”:合計点より「崩れたドメイン」を先に見る

UMSARS は進行のモニタリングに向きますが、リハの意思決定は「どのドメインが先に崩れたか」で変わります。たとえば歩行が落ちて見えても、背景が自律神経(起立性低血圧)なのか、運動失調なのか、パーキンソニズムなのかで、介入の優先順位と安全管理が変わります。

そのため、点数の増減を追うだけでなく、①安全(失神・転倒リスク)→②段階刺激(立位・歩行・移乗)→③記録(パート別の変化)→④再評価、の順に“臨床のリズム”で回すと、 UMSARS が実務に落ちます。

よくある質問(FAQ)

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UMSARS は誰が評価するのが現実的ですか?

原著では多施設・複数評価者での信頼性検討が行われていますが、臨床では「主担当が中心に取り、条件のメモを標準化する」運用が現実的です。特に Part II は観察条件の差が点数差に直結しやすいので、評価前提(時間帯、服薬、補装具、介助量)をテンプレ化すると安定します。

Part I(問診中心)は電話でも使えますか?

近年、 Part I の電話調査の信頼性を検討した報告があります。実務的には「電話で確認できる範囲」と「対面で所見が必要な範囲」を分け、フォローでの抜けを作らない設計が重要です。

UMSARS の弱点(限界)はありますか?

UMSARS は広く使われる一方、項目構成や感度などの改善点が議論されています。点数化は便利ですが、合計点だけに依存せず、ドメイン別の臨床像(安全・動作・嚥下・自律神経)を併記する運用が安全です。

臨床試験で使う尺度と、日々のリハ評価はどう繋げますか?

臨床試験尺度は “進行を追う物差し” として強い一方、日々のリハでは具体的な動作課題が必要です。 UMSARS を上位の枠組みとして、歩行・移乗・上肢巧緻・嚥下・起立耐性などの実測評価を “同じ条件” で紐づけると、説明と再現性が上がります。

参考文献

  1. Wenning GK, et al. Development and validation of the Unified Multiple System Atrophy Rating Scale ( UMSARS ). Movement Disorders. 2004. DOI: 10.1002/mds.20255 / PubMed: PMID: 15452868
  2. Krismer F, et al. The Unified Multiple System Atrophy Rating Scale: intrarater reliability. Movement Disorders. 2012. DOI: 10.1002/mds.25181 / PubMed: PMID: 23114993
  3. Palma JA, et al. Limitations of the Unified Multiple System Atrophy Rating Scale ( UMSARS ) as a clinical outcome assessment. Clinical Autonomic Research. 2021. PubMed: PMID: 33554315
  4. Foubert-Samier A, et al. An Item Response Theory analysis of the Unified Multiple System Atrophy Rating Scale ( UMSARS ). Movement Disorders. 2022. PubMed: PMID: 34875563
  5. Wenning GK, et al. The Movement Disorder Society Criteria for the Diagnosis of Multiple System Atrophy. Movement Disorders. 2022. PubMed: PMID: 35445419

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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おわりに

MSA の評価は「安全の確保→段階刺激→スケール記録→再評価」のリズムで回すと、 UMSARS が “点数” ではなく “臨床の地図” になります。合計点だけに頼らず、崩れたドメイン(生活・動作・自律神経)を先に捉えるほど、介入の優先順位がぶれにくくなります。

面談や見学の場で「評価が回る体制か」を確認したいときは、チェック項目を手元に置くと話が早いです。準備に使えるシートは こちら(面談準備チェック&職場評価シート) から使えます。

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