脊髄小脳変性症(SCD)の理学療法評価|項目・順番・PDF付き

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脊髄小脳変性症(SCD)の理学療法評価|項目・順番・PDF付き

運動失調の評価を体系的に確認する

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脊髄小脳変性症(SCD)の理学療法評価では、最初に転倒、移動能力、疲労、起立時症状などの安全性を確認し、その後に運動失調、バランス、歩行、ADLを評価します。すべての検査を一律に行うのではなく、主訴と観察所見から必要な項目を選ぶことが重要です。

この記事では、初回に全員へ確認したい項目、所見に応じて追加する評価、SARAなどの尺度の使い分け、再評価で固定する条件を整理します。点数だけでなく、どの条件で、どの方向に、どの動作で崩れたかを記録できるA4評価シートも利用できます。

初回評価は「安全確認→基本評価→追加評価」で進める

SCDの評価順は、すべての患者で完全に同じにする必要はありません。まず安全性と生活上の問題を確認し、基本的な運動失調・バランス・歩行を評価した後、所見に応じて眼球運動、嚥下、自律神経症状などを追加します。

SCDの理学療法評価を安全確認、基本評価、所見に応じた追加評価の3段階で示した図版
SCDの理学療法評価は、安全性を確認したうえで基本評価を行い、所見に応じて必要な評価を追加します。再評価では時間帯、補助具、介助量、疲労などの条件をそろえます。
SCDの初回評価を組み立てる3段階
段階 確認する内容 評価の目的
1.安全確認 転倒歴、移動方法、補助具、起立時症状、疲労、嚥下・呼吸状態 検査中の転倒や体調悪化を防ぐ
2.基本評価 運動失調、座位・立位、移乗、歩行、ADL 現在の能力と介助が必要な場面を把握する
3.追加評価 眼球運動、感覚、自律神経、構音・嚥下、詳細な尺度 観察された問題の原因と対応先を整理する

初回に確認したい最小セット

初回は、転倒・移動能力・運動失調・バランス・歩行・生活への影響を優先します。検査数を増やすより、患者が困っている動作と危険な場面を特定することが重要です。

  • 主訴と目標:歩行、外出、仕事、家事など、本人が改善・維持したい活動
  • 転倒状況:回数、場所、方向、きっかけ、時間帯、けがの有無
  • 移動方法:屋内外の歩行、車椅子、杖・歩行器、装具、介助量
  • 疲労と変動:日内変動、連続動作による悪化、休憩による回復
  • 運動失調:体幹、四肢、立位、歩行、構音での現れ方
  • 基本動作:起き上がり、座位、立ち上がり、方向転換、移乗
  • 生活機能:ADL、IADL、介助者の負担、生活環境
  • 安全上の変化:嚥下、呼吸、複視・めまい、失神前症状、急な能力低下

SCDの理学療法評価項目

評価項目は、運動失調の重症度だけでなく、姿勢・歩行・生活への影響まで組み合わせます。SARAなどの尺度だけでは、転倒した場面や必要な介助方法まで十分に説明できないため、動作観察と短い記録を併用します。

SCDで確認する主な評価領域
領域 主な評価 確認したいこと 記録するポイント
運動失調 SARA、ICARS、指鼻試験、踵膝試験、反復拮抗運動 体幹・四肢・歩行・構音に現れる運動失調 過大・過小、左右差、速度による変化、反復による悪化
姿勢保持 座位、立位、足位変更、閉眼条件 支持基底面と感覚条件による安定性の変化 足位、靴、床面、支持物、ふらつく方向
動的バランス リーチ、立ち上がり、方向転換、Mini-BESTestなど 重心移動、予測的姿勢調整、反応的姿勢制御 踏み直し、支持物、体幹代償、介助の内容
歩行 歩行観察、10m歩行、TUGなど 速度、安定性、方向転換、補助具の適合 歩隔、軌道、ふらつき方向、補助具、装具、介助量
筋力・可動域 徒手筋力検査、関節可動域、姿勢評価 運動失調以外に動作を制限する要因 疼痛、拘縮、廃用、代償動作
感覚 表在感覚、位置覚、振動覚 感覚障害が姿勢・歩行へ与える影響 左右差、遠位優位、閉眼での変化
眼球運動 注視、滑動性追従、サッケード、眼振の観察 視線移動や頭部運動で生じる症状 方向、誘発条件、複視・めまいの有無
構音・嚥下 発話の変化、食事状況、必要に応じたスクリーニング コミュニケーションと誤嚥・窒息リスク むせ、湿性嗄声、食事時間、体重変化、STへの相談内容
自律神経 起立時の血圧・心拍・症状、排尿・排便状況 起立性低血圧などが活動を制限していないか 測定姿勢、測定時刻、症状、内服・食事との関係
ADL・参加 FIMなどのADL評価、IADL、本人・家族への聴取 生活上の介助、役割、外出・社会参加への影響 できるADLと実際にしているADL、介助方法、環境条件

SARA・ICARSなどの尺度は目的に応じて選ぶ

SARAとICARSのどちらを使うかは、評価目的、実施時間、既存記録との継続性で決めます。一律に「SARAは追跡、ICARSは精査」と決めるのではなく、同じ尺度を同じ条件で継続できるかを優先してください。

SCDで用いられる運動失調尺度の使い分け
尺度 特徴 向いている場面 注意点
SARA 歩行、立位、座位、構音、四肢協調など8項目で運動失調を評価する 運動失調の全体像と経時変化を共通指標で残したい場合 点数だけでなく、補助具、支持、崩れ方を別に記録する
ICARS 姿勢・歩行、四肢運動、構音、眼球運動を複数項目で評価する 複数領域の所見を細かく整理したい場合 実施時間と患者の疲労を考慮する
動作・歩行指標 TUG、10m歩行、バランス検査など 移動能力、介助量、歩行補助具の効果を確認したい場合 運動失調尺度の代替ではなく、活動評価として組み合わせる

尺度の詳しい違いは、ICARS・SARA・BARSの比較と使い分けで整理しています。

症状に応じて追加評価と多職種連携を行う

転倒だけでなく、嚥下、呼吸、自律神経、眼球運動などの変化がある場合は、理学療法評価だけで完結させません。安全性に影響する変化を認めた場合は、医師、看護師、STなどへ共有し、必要な評価につなげます。

追加評価・相談を検討する変化
変化 確認する内容 対応
転倒や歩行悪化 発生場面、方向、補助具、意識消失の有無 環境・補助具・介助方法を再評価し、急な悪化は医師へ共有する
起立時のめまい・失神前症状 血圧、心拍、症状、内服、食事・入浴との関係 無理に立位負荷を続けず、医師・看護師へ共有する
むせ・食事時間の延長 食形態、姿勢、湿性嗄声、体重変化 ST、看護師、医師、管理栄養士と共有する
呼吸状態の変化 息切れ、咳嗽、痰、睡眠時症状、SpO₂など 負荷を調整し、医師・看護師へ共有する
複視・強いめまい 誘発方向、持続時間、頭痛・悪心などの随伴症状 検査を中断し、急な発症や増悪は医師へ相談する

再評価では点数より先に条件をそろえる

経時変化を判断するには、評価条件と実施方法を可能な範囲でそろえます。同じ尺度を使っても、時間帯、疲労、補助具、介助量、説明方法が異なると、変化の意味を判断しにくくなります。

固定したい条件

  • 評価した時間帯
  • 靴、装具、杖、歩行器
  • 開始姿勢と足位
  • 床面と歩行経路
  • 介助量と介助方法
  • 説明・練習の方法
  • 休憩の入れ方
  • 疲労度と自覚症状
  • 内服、食事、睡眠との時間関係

再評価の時期

再評価の間隔は一律ではありません。介入計画の見直し時期、疾患の進行、生活環境の変化、転倒、補助具変更などに応じて決めます。

  • リハビリテーション計画を見直すとき
  • 歩行や移乗の介助量が変化したとき
  • 転倒やヒヤリハットが増えたとき
  • 杖・歩行器・車椅子・装具を変更するとき
  • 本人や家族から生活上の変化が報告されたとき
  • 嚥下、呼吸、起立時症状などが悪化したとき

記録は「数値・条件・崩れ方」をセットにする

SCDの記録では、点数や所要時間だけでなく、評価条件と動作の崩れ方を1行で残します。これにより、点数が同じでも介助量や安定性が改善した変化を共有できます。

SCD評価の記録例
評価 数値・結果 条件 崩れ方・介助
立位保持 保持時間 開眼、足位、靴、床面 右後方へ動揺し、接触介助を要した
10m歩行 所要時間・歩行速度 歩行器、装具、介助量、採用した測定方法 方向転換時に歩隔が拡大し、左側へ偏位した
TUG 所要時間 椅子、補助具、介助量 着座前の方向転換で後方へふらついた
SARA 合計点と項目別点数 補助具、支持、休憩の有無 歩行項目の変化に対し、上肢協調は前回と同程度だった
起立時評価 血圧、心拍、症状 測定姿勢、測定時刻、内服・食事との関係 立位後にめまいが出現し、座位へ戻ると軽快した

SCD評価でよくある失敗

SCD評価のよくある失敗と修正方法
失敗 問題点 修正方法
初日に検査を詰め込む 疲労による悪化と本来の能力を区別できない 安全性と基本動作を優先し、詳細評価を分ける
尺度の合計点だけを残す どの動作が変化したか分からない 項目別結果と動作の崩れ方を併記する
補助具や介助条件が毎回異なる 前回との比較が難しくなる 使用条件を記録し、同条件での評価と実生活条件での評価を区別する
運動失調だけを評価する 感覚障害、筋力低下、自律神経症状などを見落とす 観察所見に応じて関連領域を追加する
検査値と生活上の問題がつながっていない 介入目標や環境調整を決めにくい 転倒場面、ADL、本人の目標と評価所見を対応させる

SCD評価記録シートPDF

SCDの評価で確認したい項目、実施条件、スコア、動作の崩れ方をA4用紙1枚に記録できるシートです。初回評価と再評価で同じ書式を使うことで、数値だけでなく、補助具、介助量、疲労などの条件差も確認できます。

SCD評価記録シート PDF

A4・1枚完結。初回評価、カンファレンス前の整理、定期的な再評価に使用できます。

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SCDの理学療法評価に関するよくある質問

質問をタップすると回答が開きます。

SARAだけでSCDの理学療法評価はできますか?

SARAは運動失調の全体像を共通の尺度で追うために有用ですが、転倒場面、介助量、歩行補助具、ADLへの影響までは十分に表せません。SARAの結果に、歩行・基本動作・生活状況の評価を組み合わせてください。

SARAとICARSはどちらを使えばよいですか?

評価目的、実施時間、患者の疲労、施設で継続している尺度に応じて選びます。経時変化を追う場合は、途中で尺度を頻繁に変更せず、同じ方法で継続することが重要です。

疲労や日内変動が強い場合は何を固定しますか?

時間帯、補助具、介助量、床面、靴、休憩方法を可能な範囲でそろえます。疲労度、休憩回数、睡眠、内服・食事との時間関係も併記すると、能力変化と条件差を判断しやすくなります。

SCDはどのくらいの間隔で再評価しますか?

一律の間隔ではなく、リハビリテーション計画の見直し時期や症状変化に合わせます。転倒増加、介助量の変化、補助具の変更、嚥下・呼吸・起立時症状の悪化がある場合は、予定された時期を待たずに必要な項目を再評価します。

PDFには何を記録すればよいですか?

尺度の点数だけでなく、靴、補助具、装具、介助量、疲労度、休憩、ふらつく方向などを記録します。再評価時に同じ条件を再現できる情報を残すことが重要です。

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参考文献

  1. Schmitz-Hübsch T, du Montcel ST, Baliko L, et al. Scale for the assessment and rating of ataxia: development of a new clinical scale. Neurology. 2006;66(11):1717-1720. doi:10.1212/01.wnl.0000219042.60538.92
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  3. Franchignoni F, Horak F, Godi M, et al. Using psychometric techniques to improve the Balance Evaluation Systems Test: the Mini-BESTest. J Rehabil Med. 2010;42(4):323-331. PMID:20461334
  4. Duncan PW, Weiner DK, Chandler J, Studenski S. Functional reach: a new clinical measure of balance. J Gerontol. 1990;45(6):M192-M197. doi:10.1093/geronj/45.6.M192
  5. Podsiadlo D, Richardson S. The Timed “Up & Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. doi:10.1111/j.1532-5415.1991.tb01616.x
  6. 日本神経学会監修. 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018.
  7. 宮井一郎. 脊髄小脳変性症のリハビリテーションの実際. 臨床神経学. 2013;53:931-933. 本文

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設しました。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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