月額賃金総額は「区分計算で使う数字」として先に範囲を固定すると迷いません
このページは、ベースアップ評価料における月額賃金総額について、制度の総論ではなく区分計算でどこまで含めるかに絞って整理した記事です。検索で知りたいのは「月額賃金総額とは何か」よりも、何を含めるのか / 何を含めないのか / 賞与はどう扱うのか / 夜勤手当は入るのか / どの期間の実績を見るのかであることが多く、そこを先に言語化すると担当者間の確認がかなり進めやすくなります。
公開済みの関連記事が「区分計算の全体像」を扱うのに対して、本ページは月額賃金総額そのものの範囲だけに絞った補助記事を担当します。まずは定義を押さえ、その後に含める範囲、含めない範囲、夜勤手当の扱い、確認期間、提出前チェックへ進む流れで読むとズレません。
関連:ベースアップ評価料(Ⅱ)の区分計算 2026|賃金改善算定基礎額・区分決定・注意点
月額賃金総額とは何か
結論からいうと、月額賃金総額は、区分計算の土台になる月ごとの賃金の合計です。ベースアップ評価料の区分計算では、この月額賃金総額に定められた率を掛けることで、賃金改善算定基礎額の一部を求めます。
2026 年改定資料では、月額賃金総額は基本給等と、時間外手当等の月ごとに変動して支払われる手当の合計とされています。したがって、「給与に関する数字を全部まとめて入れる」のではなく、月ごとに支払われるものを中心に整理する数字と考えると分かりやすくなります。
月額賃金総額に含めるもの
まず含めるものの中心は、基本給等です。これに加えて、2026 年改定資料では、時間外手当等の月ごとに変動して支払われる手当を含めると整理されています。つまり、「毎月の給与として動くもの」は基本的に検討対象になります。
ここで大事なのは、固定給だけでなく、月によって変わる手当も含める点です。時間外手当などを除いてしまうと、区分計算の前提となる月額賃金総額が実態より小さくなり、届出区分の判断もぶれやすくなります。
スマホでは表を横スクロールできます。
| 項目 | 含めるか | 実務の考え方 |
|---|---|---|
| 基本給等 | 含める | 区分計算の土台になる |
| 時間外手当等の月ごとに変動する手当 | 含める | 毎月の支払いとして整理する |
| 恒常的な交代制勤務の夜勤手当 | 含めてよい | 毎月支払われる手当に準じて扱う |
月額賃金総額に含めないもの
一方で、月額賃金総額にそのまま入れない代表例が、賞与、期末・勤勉手当など特定の時期にのみ支払われる手当です。厚労省の訪問看護ステーション向け資料や報告様式の記載上の注意でも、基本給等総額はこれらを含まない考え方が示されています。
ここはかなり混ざりやすいところです。評価料による賃上げの使途としては、賞与や法定福利費の増加分も対象になりますが、区分計算のための月額賃金総額と、評価料を充ててよい費用の範囲は同じではありません。区分計算の記事では、まず月額賃金総額の範囲だけを切り分ける方が安全です。
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| 項目 | 含めるか | 実務の考え方 |
|---|---|---|
| 賞与 | 含めない | 特定の時期にのみ支払われるため |
| 期末手当・勤勉手当等 | 含めない | 毎月支払いではないため |
| 法定福利費そのもの | 月額賃金総額には直接入れない | 区分計算の月額賃金総額と使途範囲を分けて考える |
夜勤手当はどこまで含めるか
夜勤手当は、現場でかなり迷いやすい論点です。2026 年改定資料では、恒常的に夜間を含む交代制勤務を取っている職員に支払う夜勤手当は、毎月支払われる手当に準じて、基本給等に含めてよいと明記されています。
つまり、夜勤手当なら何でも自動的に入るわけではなく、恒常的な交代制勤務であることと、毎月支払われる手当に準じるかがポイントになります。夜勤の入り方が不規則な職員まで一律に同じ扱いにすると、院内整理がぶれやすくなるため、勤務実態とあわせて確認する方が安全です。
どの期間の給与実績を見るか
月額賃金総額を計算するときは、何を含めるかだけでなく、どの期間の支払い実績を使うかも大事です。地方厚生局の Q&A では、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)や訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)は、届出前の最低 1 月における給与支払い実績が必要とされています。
一方で、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)、入院ベースアップ評価料、訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)では、届出様式上の前年 3 月〜2 月などの期間表示を、前年 12 月〜2 月、3 月〜5 月、6 月〜8 月、9 月〜11 月と読み替えて、当該期間の給与支払い実績が必要と案内されています。つまり、評価料(Ⅱ)の区分計算では、月額賃金総額の定義だけでなく、実績期間の読み替えまで確認しておく方が実務で止まりにくくなります。
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| 評価料 | 必要な支払い実績 | 実務のポイント |
|---|---|---|
| 外来・在宅 BU 評価料(Ⅰ)等 | 届出前の最低 1 月 | まず 1 月分の実績確認が必要 |
| 外来・在宅 BU 評価料(Ⅱ)等 | 厚生局が示す読み替え期間の実績 | 前年 3 月〜2 月等の表示をそのまま読まない |
月額賃金総額と「評価料を充ててよい範囲」の違い
ここは検索読者がかなり混同しやすいところです。2026 年改定資料では、ベースアップ評価料を充ててよい給与の範囲として、基本給等の引上げと、それに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)等の増加分が示されています。
しかし、これはあくまで評価料収入の使途の考え方です。区分計算で使う月額賃金総額と同じではありません。つまり、賞与や法定福利費は「評価料を使ってよい範囲」には入る一方、区分計算のための月額賃金総額にはそのまま入れない、という整理が必要です。
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| 項目 | 月額賃金総額 | 評価料を充ててよい範囲 |
|---|---|---|
| 基本給等 | 入る | 入る |
| 時間外手当等 | 月ごとに変動して支払われる手当として入る | 増加分に使える |
| 賞与 | 入れない | 増加分に使える |
| 法定福利費 | 直接は入れない | 増加分に使える |
現場の詰まりどころ|ここで止まりやすい 4 点
現場で多いのは、賞与をそのまま入れる、夜勤手当を一律に全部入れる、時間外手当を除いてしまう、月額賃金総額と使途範囲を混同するの 4 つです。制度の理解不足というより、定義の切り分けが曖昧なことが原因になりやすいです。
月額賃金総額は、区分計算の起点になる数字です。だからこそ、結果だけでなく、「どの手当を入れたか」「どの手当を除いたか」を院内で説明できるようにしておく方が、届出後の確認でも戻りにくくなります。
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| 詰まりどころ | なぜ危ないか | 先に決めること |
|---|---|---|
| 賞与を入れる | 月額賃金総額の定義とずれる | 特定時期支給の手当は分けて管理する |
| 夜勤手当を一律に全部入れる | 恒常的交代制勤務かの確認が抜ける | 勤務実態と毎月支払いかを確認する |
| 時間外手当を除く | 月額賃金総額が実態より小さくなる | 月ごとに変動して支払われる手当を確認する |
| 使途範囲と混同する | 区分計算の数字がぶれる | 「計算」と「使い道」を分けて考える |
提出前チェックリスト
提出前は、細かい文章よりも順番が大事です。まずは対象評価料の確認、実績期間の確認、含める手当の整理、含めない手当の切り分け、院内説明用の根拠整理の順で見ると、チェック漏れを減らしやすいです。
とくに、月額賃金総額は後から説明を求められやすい数字です。給与台帳、勤務実態、手当の定義まで一緒に残しておく方が安全です。
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| 順番 | 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 1 | 対象評価料を確認 | (Ⅰ)か(Ⅱ)かを固定したか |
| 2 | 実績期間を確認 | 厚生局 Q&A の期間で見ているか |
| 3 | 含める手当を整理 | 基本給等と月ごとに変動する手当が入っているか |
| 4 | 含めない手当を切り分ける | 賞与等をそのまま入れていないか |
| 5 | 根拠を残す | なぜ入れたか・除いたかを説明できるか |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
月額賃金総額には何を含めますか?
基本給等と、時間外手当等の月ごとに変動して支払われる手当を含めます。区分計算では、まずこの範囲を先に固定すると整理しやすくなります。
賞与は月額賃金総額に入りますか?
入りません。賞与、期末・勤勉手当等の特定の時期にのみ支払われる手当は、月額賃金総額にはそのまま入れない考え方です。
夜勤手当は入りますか?
恒常的に夜間を含む交代制勤務を取っている職員に支払う夜勤手当は、毎月支払われる手当に準じて基本給等に含めてよいと整理されています。
法定福利費はどう考えますか?
法定福利費は、評価料を充ててよい増加分には含まれますが、区分計算の月額賃金総額とは同じではありません。ここは分けて考える方が安全です。
どの記事から読めば整理しやすいですか?
まずはこのページで月額賃金総額の範囲をつかみ、そのうえで区分計算の記事を見ると、数字の集め方と区分決定の関係が整理しやすくなります。
次の一手
まずは、何を月額賃金総額に入れるかと何を入れないかを院内で 1 枚に整理してください。そのうえで、給与台帳と勤務実態を照らし合わせると、区分計算の土台がかなり安定します。
続けて読むなら、ベースアップ評価料(Ⅱ)の区分計算 2026|賃金改善算定基礎額・区分決定・注意点で、月額賃金総額がどのように区分決定につながるかを確認すると整理しやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定 1.賃上げ対応. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001669200.pdf
- 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
- 東海北陸厚生局. ベースアップ評価料の届出について. https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/shinsei/shido_kansa/shitei_kijun/r06baseup.html
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

