医療機関外リハの上限単位数が見直しへ(令和 8 年 改定案)
令和 8 年 診療報酬改定の議論では、「医療機関外(院外)で行う疾患別リハビリテーション料」の扱いが整理されています。要点は、原則の 1 日 3 単位は維持しつつ、やむを得ず 3 単位を超える必要がある場合に、一連の入院で合計 3 単位(別に定める患者は 6 単位)を「別に疾患別リハとみなせる」方向で明確化された点です。
本記事は、制度の要点を現場で回る形に落とし込み、どの場面で使うか/どう記録するか/どこでブレるかを整理します。
今回の見直しで何が変わる?
改定案の骨子はシンプルです。医療機関外での疾患別リハは、従来どおり 1 日 3 単位までが基本です。一方で、 3 単位を超えて院外で実施せざるを得ない場合に、一連の入院で合計 3 単位(特定患者は 6 単位)の範囲で、「別に疾患別リハとみなす」扱いを可能にする、という整理です。
つまり、「毎日上限が増える」ではなく、“入院期間の中で使える追加枠”が付くイメージです。外出・屋外・社会参加の練習が必要な日を選んで、運用しやすくなります。
| 観点 | 現行 | 改定案 |
|---|---|---|
| 基本上限 | 医療機関外は 1 日 3 単位まで | 同じ( 1 日 3 単位まで) |
| 例外(追加枠) | 明確な「別扱い枠」はなし | 一連の入院で合計 3 単位(別に定める患者は 6 単位)に限り、別に疾患別リハとみなせる |
| 時間の扱い | 訓練場所との往復時間は実施時間に含めない | 同じ(往復時間は含めない) |
| 安全配慮 | 往復を含め常時従事者が付き添い、連絡・搬送体制を確保 | 同じ(安全性に十分配慮) |
図解|追加枠は「毎日」ではなく「入院中合計」で管理
どんな場面で効く?
医療機関外リハは、病棟や訓練室の練習だけでは再現しにくい「生活場面」を作るために使われます。たとえば、屋外歩行/段差・坂/公共交通の利用/買い物動作/退院後に使う環境での練習などです。
今回の見直しは、こうした場面で「その日だけ 1 単位上乗せしたい」「安全配慮のもとで一連の行程を完結させたい」といった現場の詰まりに対し、入院中の限られた回数で柔軟性を持たせる位置づけです。
運用の考え方: 3 単位/日 + 入院中の追加枠
基本は「院外は 3 単位/日まで」。ここを超える必要がある日は、超えた分が “入院中の追加枠” を消費すると整理すると、チーム内での判断が揃います。追加枠は一連の入院で合計 3 単位(対象患者は 6 単位)です。
実務では、「なぜその日に超える必要があったか」を説明できるように、目的と安全配慮、実施内容をセットで残します。
| ケース | 当日の院外単位 | 考え方 | 記録の芯 |
|---|---|---|---|
| 屋外歩行+公共交通の一連練習 | 4 単位 | 3 単位は通常枠、超過 1 単位は追加枠 | 目的(通院想定など)、安全配慮、行程、成果 |
| 退院前に環境で確認したい動作が多い | 5 単位 | 超過 2 単位を追加枠として扱う(残枠管理が重要) | 「確認が必要な理由」を具体化(転倒歴、介助量など) |
| 複数日に分けて短く上乗せ | 4 単位 × 3 日 | 各日で超過 1 単位を消費=合計 3 単位で使い切り | 日ごとの目的(段階づけ)と評価指標(歩行耐久など) |
現場の詰まりどころ:ここで算定がブレやすい
院外リハは、「目的は妥当か」「安全配慮は十分か」「時間の扱いは正しいか」で判断が割れやすい領域です。とくに、往復時間は実施時間に含めない点、往復を含めて従事者が付き添い連絡・搬送体制を確保する点は、監査で説明が必要になりやすいため、院内ルールを先に固定しておくと安全です。
関連:改定全体の位置づけは、令和 8 年 診療報酬改定|リハビリ領域まとめ(ハブ)で確認できます。
よくある失敗
| よくあるミス | 起きる理由 | 回避策(運用で固定) | 記録の一言テンプレ |
|---|---|---|---|
| 往復時間まで “実施時間” に入れてしまう | 行程が長く、記録区分が曖昧になりやすい | 「訓練開始・終了」を現地で区切る(往復は別枠で記録) | 「訓練時間:現地での実施のみ。往復は含めず」 |
| 安全配慮(付き添い・連絡搬送体制)が説明できない | 院内と違い “当たり前” が崩れる | 事前に「同行者」「連絡手順」「中止基準」をミニルール化 | 「同行:従事者常時。緊急時は病棟へ連絡し搬送」 |
| 追加枠(入院中合計)を使った根拠が弱い | “便利だから” で上乗せしがち | 追加枠は「その日しか完結できない目的」で限定運用(残枠を見える化) | 「 3 単位超過は入院中合計枠を使用。理由:退院後に必須の行程確認」 |
回避手順(ミニフロー)
- 手順 1:当日の目的を 1 文で明確化(退院後生活との直結)
- 手順 2: 3 単位超過の必要性を明示(代替不能性の確認)
- 手順 3:安全配慮(同行・連絡・中止基準)を事前固定
記録の最小セット:これだけ残す
院外リハは「やったこと」だけでなく、「なぜ必要か」と「どう安全に行ったか」をセットで残すと、チーム共有と監査耐性が上がります。最低限、次の 5 点を固定すると運用が安定します。
- 目的(退院後の生活場面に直結することを 1 文で)
- 場所・環境(段差、距離、混雑、天候など負荷情報)
- 安全配慮(同行者、連絡搬送体制、中止基準)
- 実施内容(練習内容、難渋点、介助内容)
- 結果(介助量/所要時間/耐久性/転倒リスク)
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 「追加枠(入院中合計 3 単位)」は毎日使える枠ですか?
A. 毎日ではありません。一連の入院で合計の枠です。日々の基本は 1 日 3 単位で、超過が必要な日に合計枠を使う整理です。
Q2. 追加枠が 6 単位になる「別に定める患者」は誰ですか?
A. 資料上は「別に厚生労働大臣が定める患者(施設基準等の別表)」として整理されています。最終通知・点数表の定義で院内運用を確定してください。
Q3. 往復時間は実施時間に含めますか?
A. 含めません。記録では「現地での訓練開始・終了」を明確に区切り、往復は別管理にします。
Q4. 安全配慮で最低限押さえることは?
A. 往復を含めて従事者が付き添い、必要時に速やかに医療機関へ連絡・搬送できる体制を確保することです。同行者・連絡手順・中止基準を固定してください。
次の一手
参考資料
- 厚生労働省. 令和 8 年 診療報酬改定(個別改定項目)資料. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001646857.pdf
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


