- DASH 評価方法まとめ|採点(欠損 27/30 ルール)と解釈(MCID 目安)まで“迷わない運用”に固定
- まず結論:DASH は「上肢の生活障害」を精度高く追跡したいときに強い
- DASH はいつ使う?評価セット内の位置づけ
- 実施手順|説明・想起期間・実施方法を固定して“比較できる”形にする
- 採点方法|欠損( 27/30 ルール)→換算→記録を 1 本化
- スコア解釈|MCID の目安と“読み違え防止”
- QuickDASH との違い|使い分けを “時間 × 精度” で決める
- 記録とチーム共有のコツ|「スコア+ 1 行」で介入に落とす
- 現場の詰まりどころ|解決の三段(アンカー 2 本+内部リンク 1 本)
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手(このあと何を読む?)
- 参考文献
- 著者情報
DASH 評価方法まとめ|採点(欠損 27/30 ルール)と解釈(MCID 目安)まで“迷わない運用”に固定
DASH( Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand )は、肩・肘・前腕・手までを含む上肢全体の生活障害を 0〜100 点で見える化する PROM です。所見( ROM / 筋力 / 疼痛)だけでは拾いにくい「家事・仕事・趣味の困りごと」を、同じ条件で追跡できるのが強みです。
本記事は、①実施条件の固定 → ②欠損(未回答)ルール → ③ 0〜100 点への換算 → ④解釈( MCID の目安)→ ⑤ QuickDASH との使い分け、の順で現場で詰まるポイントを先回りして整理します。
関連:評価ハブ(全体像) / 続けて読む:QuickDASH(短縮版の運用)
まず結論:DASH は「上肢の生活障害」を精度高く追跡したいときに強い
DASH は 30 項目の自己記入で、上肢の困りごと(活動・参加の制限)を 0〜100 点に換算します。点数が高いほど障害が強いため、術前後・経時変化・介入の焦点修正に使いやすいのが特徴です。
一方で、総スコアだけだと介入に落ちにくいので、臨床では「高得点だった困りごと( 1 行)」を添えて記録すると、チーム共有が通りやすくなります(後述のテンプレ参照)。
| 観点 | 拾いやすい | 注意点 |
|---|---|---|
| 対象 | 肩〜手までの上肢(複数関節をまとめて) | 局所の疼痛や ROM の“原因”は別評価が必要 |
| 用途 | 生活動作・家事・仕事・趣味の困りごとの追跡 | 総点だけで結論を急がず、困りごとの中身を併記 |
| 運用 | 同条件で繰り返し取りやすい(再評価向き) | 説明・想起期間・介助の有無を固定しないとブレる |
DASH はいつ使う?評価セット内の位置づけ
DASH は上肢の筋骨格系障害を中心に、機能と症状を自己申告で把握し、変化を追うための尺度です。特に「短縮版よりも精度を優先したい」ケースでは、 full DASH が選択肢になります。
時間が限られる場面では QuickDASH も有効ですが、DASH と QuickDASH は別物として記録し、混同を避けます(比較表は後述)。
実施手順|説明・想起期間・実施方法を固定して“比較できる”形にする
再評価で一番崩れるのは「前回と条件が違う」ことです。初回に、①想起期間(例:直近 1 週間)②自記か読み上げか ③同席者の有無(家族同席など)を決め、次回も同条件で回します。
読み上げで実施した場合は「読み上げで実施」と記録し、同じ方法で再評価します。条件がそろうと、点数の変化を“運用のブレ”ではなく“状態変化”として扱えます。
採点方法|欠損( 27/30 ルール)→換算→記録を 1 本化
DASH の採点は、①欠損(未回答)数の確認 → ②合計点と有効回答数( n )の確認 → ③ 0〜100 点へ換算、の順にするとミスが減ります。欠損ルールは「少なくとも 27 / 30 の回答が必要」です。
換算は、回答( 1〜5 )を平均してから 0〜100 点に変換します(平均 − 1 )× 25。高いほど障害が強い解釈です。
| 手順 | やること | 記録ポイント(例) |
|---|---|---|
| ① 欠損確認 | 未回答が 3 項目以内か確認( 27 / 30 以上が必要) | 欠損ありなら「欠損 2」など明記 |
| ② 合計と n | 回答済みの合計点と、有効回答数( n )を出す | 合計点 / n を残すと再計算できる |
| ③ 換算 | 平均を出して(平均 − 1 )× 25 で 0〜100 点へ | DASH 52 / 100 のように残す |
DASH ミニ計算(欠損チェック付き)
合計点(回答済みの合計)と回答数( n )を入れると、DASH スコア( 0–100 )を計算します。 n が 27 未満の場合は計算不可として表示します。
欠損(未回答)があるとき|「埋める」より“ルール固定”を優先
欠損対応でよく起きる失敗は、その場しのぎで回答を作ってしまい、次回と比較できなくなることです。基本は、①再説明して再実施 → ②難しければ欠損として扱う → ③次回も同じ扱いで回す、の順でブレを減らします。未回答が 3 項目を超えるとスコア計算ができません。
スコア解釈|MCID の目安と“読み違え防止”
DASH は 0〜100 点で、高いほど障害が強い指標です。臨床で扱いやすい目安として、上肢領域では「 10 点前後の差」を最小重要変化として扱える可能性が示されています。
ただし、同じ 10 点でも、仕事内容・趣味の負荷・ベースラインで意味合いが変わります。点数だけで結論を急がず、疼痛( NRS など)・ ROM ・筋力・就労状況と合わせて“生活像”に翻訳して説明するのが安全です。
| 見るもの | 見る理由 | 記録例( 1 行 ) |
|---|---|---|
| 総スコア | 上肢全体の困りごとの量 | 入院時 DASH 52 / 100 → 退院時 30 / 100 |
| 困りごとの中身 | 介入の焦点(痛み / 仕事負荷 / 環境)を決める | 高得点:持ち上げ・押す動作が困難 |
| 客観所見 | 原因仮説と整合させる | 肩屈曲 ROM 90 → 135 度、 NRS 6 → 2 |
QuickDASH との違い|使い分けを “時間 × 精度” で決める
DASH と QuickDASH は、同じ系統でも「項目数」と「運用の目的」が異なります。 full DASH は精度を優先して追跡したい場面に向き、 QuickDASH は短時間で回したい場面で強い、という整理がしやすいです。
| 比較 | DASH | QuickDASH |
|---|---|---|
| 項目数 | 30 項目 | 11 項目 |
| 強み | 精度(個別患者の追跡に向く) | 短時間(忙しい現場で回しやすい) |
| 欠損 | 未回答 3 まで( 27 / 30 ) | 別ルールで運用されるため混同しない |
| おすすめ場面 | 術前後・外来フォロー・経時変化の精密追跡 | 初期スクリーニング・短期の頻回フォロー |
短縮版を使う場合は、QuickDASH の採点・欠損・解釈を先に院内で固定しておくと、混乱が減ります。
記録とチーム共有のコツ|「スコア+ 1 行」で介入に落とす
カルテや申し送りでは、スケール名( DASH か QuickDASH か)、実施条件、スコアをセットで残すと比較が崩れません。配点だけでなく「何が困りごとか」を 1 行で残すと、次の介入が決めやすくなります。
最小テンプレ(コピペ用):
実施条件:想起期間( )/自記 or 読み上げ( )
DASH:合計( )点、 n=( )、スコア( )/ 100
困りごと:(例:押す・持ち上げで痛み/家事が困難)
症例イメージ(肩/肘/手):DASH を “記録→介入” につなぐ
症例 1(肩):挙上動作と家事が詰まる
挙上が怖く、家事の負荷が一気に下がったケース。
- DASH:合計 110、 n=30、スコア 66.7 / 100
- 困りごと:棚への出し入れ、洗髪、洗濯物干しで痛み
- 介入の焦点:疼痛コントロール+挙上の段階付け(負荷量の再設計)
カルテ記載例(コピペ):
実施条件:想起期間 1 週間/自記
DASH:合計 110、 n=30、66.7 / 100
困りごと:挙上と家事(洗髪・干す)で疼痛、負荷量を段階付けして再開
症例 2(肘):押す・引く・回すが仕事に直結
工具操作や持ち上げが多く、疼痛が就労の継続に影響するケース。
- DASH:合計 82、 n=29、スコア 45.7 / 100
- 困りごと:ドアノブ、工具の回旋、荷物の持ち上げ
- 介入の焦点:回旋・把持の負荷調整+仕事動作の代償戦略
カルテ記載例(コピペ):
実施条件:想起期間 1 週間/自記
DASH:合計 82、 n=29、45.7 / 100(欠損 1)
困りごと:回旋と把持で仕事負荷が上がる。作業動作を分解し負荷調整
症例 3(手):細かな操作と持続作業が落ちる
手指の痛み・こわばりで細かな操作が落ち、生活の質が下がるケース。
- DASH:合計 70、 n=27、スコア 39.8 / 100
- 困りごと:ボタン、箸、スマホ、書字で疲労・痛み
- 介入の焦点:持続作業の分割、環境調整、セルフマネジメント
カルテ記載例(コピペ):
実施条件:想起期間 1 週間/自記
DASH:合計 70、 n=27、39.8 / 100(欠損 3)
困りごと:細かな操作と持続作業で症状増悪。分割+環境調整で再設計
現場の詰まりどころ|解決の三段(アンカー 2 本+内部リンク 1 本)
ここは “読ませるゾーン” なので、まずはページ内で戻せるようにします。
よくある失敗:点数は出たのに、次の一手が決まらない
詰まりやすいのは、①総スコアだけを見て介入が具体化しない、②前回と条件が違って比較できない、③欠損の扱いが毎回バラバラ、の 3 つです。特に欠損は“埋める”ほど解釈が崩れやすいので、院内ルールを 1 つに固定して回します。
回避の手順: 5 分で戻すチェック
| チェック | OK | NG(起きやすい) | 戻し方 |
|---|---|---|---|
| 条件 | 想起期間・自記/読み上げが同じ | 前回と説明が違う | 実施条件を記録し、次回から固定 |
| 欠損 | 欠損 3 項目以内( 27 / 30 ) | 欠損が多いのに点数を出す | 再説明→再実施。難しければ欠損として扱う |
| 記録 | DASH / 100 +困りごと 1 行 | 点数だけ | 高得点だった困りごとを 1 行追加 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
DASH は何項目まで未回答でも計算できますか?
DASH は、少なくとも 27 / 30 の回答が必要です。未回答が 3 項目を超えると、スコアを計算できません。
DASH の採点はどうやって 0〜100 点に換算しますか?
回答( 1〜5 )を合計し、回答数( n )で平均します。その平均から 1 を引き、 25 を掛けて 0〜100 点に変換します。高いほど障害が強い解釈です。
DASH の点数は高いほど良い?悪い?
DASH は高いほど障害(困りごと)が強い指標です。再評価では、同じ条件(想起期間や実施方法)で測れているかもセットで確認します。
何点くらい変化したら “変わった” と考えてよいですか?
研究によって幅はありますが、臨床では「 10 点前後の差」を目安に扱える場面があります。点数だけで断定せず、困りごとの中身と客観所見も合わせて解釈します。
DASH と QuickDASH は混ぜて比較してよいですか?
混同は避けます。どちらで測ったかを明確にし、同じ指標を同じ条件で繰り返すのが基本です。
次の一手(このあと何を読む?)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Hudak PL, Amadio PC, Bombardier C; Upper Extremity Collaborative Group (UECG). Development of an upper extremity outcome measure: the DASH (Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand). Am J Ind Med. 1996;29(6):602–608. doi:10.1002/(SICI)1097-0274(199606)29:6<602::AID-AJIM4>3.0.CO;2-L.
- Franchignoni F, Vercelli S, Giordano A, Sartorio F, Bravini E, Ferriero G. Minimal clinically important difference of the disabilities of the arm, shoulder and hand outcome measure (DASH) and its shortened version (QuickDASH). J Orthop Sports Phys Ther. 2014;44(1):30–39. doi:10.2519/jospt.2014.4893.
- Gummesson C, Atroshi I, Ekdahl C. The Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand (DASH) questionnaire: longitudinal construct validity and measuring self-rated health change after surgery. BMC Musculoskelet Disord. 2003;4:11. doi:10.1186/1471-2474-4-11.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


