- 股関節の整形外科テスト一覧|FADIR/FABER/Trendelenburg/Thomas を“最小セット”で回す
- まずは 5 分フロー|安全 → 関節内 → 筋機能 → 短縮の順に絞る
- 主要テストの「陽性の定義」テンプレ( 3 行 )|痛み部位+可動域+代償で統一
- レッドフラッグ|骨折・脱臼を疑うときは「テストを重ねない」
- FADIR テスト|鼡径部痛(関節内)を最短で絞る
- FABER( Patrick )テスト|鼡径部痛か、殿部痛かで “別ルート” を切り分ける
- Trendelenburg テスト|中殿筋 “筋力” より、側方安定の “使い方” を見る
- Ober・Ely・Thomas|“骨盤固定” ができないと解釈がブレる
- 評価結果をリハに落とし込む|「所見→介入→再評価」を 1 行でつなぐ
- 現場の詰まりどころ|迷いを減らす「解決の三段」
- よくある失敗(ここを直すと回り始める)
- 回避の手順 / チェック(迷いが出たときの戻り先)
- よくある質問(FAQ)
- 次の一手|運用を整える → 共有の型 → 環境の詰まりも点検
- 参考文献
- 著者情報
股関節の整形外科テスト一覧|FADIR/FABER/Trendelenburg/Thomas を“最小セット”で回す
股関節の整形外科テストは、痛みの原因を確定する道具ではなく、外してはいけない病態を先に除外しつつ、関節内(鼡径部痛)/側方安定(立位・歩行の使い方)/短縮(骨盤固定)のどこに仮説を置くかを短時間で整理するためのツールです。テスト名を増やすより、痛みの場所+再現動作+ ROM( AROM / PROM )+歩容を 1 セットで揃えるほうが、介入と再評価に直結します。
本記事は、現場でブレないように① 5 分フロー→② 主要テスト( FADIR / FABER / Trendelenburg )→③ 短縮テスト( Thomas など)→④ 所見→介入→再評価→⑤ よくある失敗の回避までを 1 ページに固定します。再評価は毎回フルセットを繰り返さず、仮説に直結する 1〜 3 個に絞る運用が基本です。
全体像 → 標準手順 → 代表子記事の順にたどると、股関節評価がブレにくくなります。
- 標準手順:関節可動域( ROM )検査のやり方|記録と中止基準【運用】
- 代表的な子記事:FADIR テストのやり方(鼡径部痛を絞る)
まずは 5 分フロー|安全 → 関節内 → 筋機能 → 短縮の順に絞る
股関節痛で迷うときは、順番を固定するとブレません。最初に安全(レッドフラッグ)を除外し、次に鼡径部痛=関節内の可能性を FADIR / FABER で確認し、その後に Trendelenburg(側方安定)と短縮テスト(骨盤固定)で介入ターゲットを絞ります。
コツは、どのテストでも陽性の定義を「痛み部位+可動域+代償」の 3 行で残すことです。これだけで、申し送りと再評価の再現性が上がります。
| 手順 | まず見ること | 使うテスト(目安) | 次の一手(解釈の方向) |
|---|---|---|---|
| 1 | レッドフラッグ(外傷歴/荷重不能/安静時痛/夜間痛/明らかな変形など) | テストを増やさず、安全確保を優先 | 医師報告・画像・負荷設計の見直しへ |
| 2 | 関節内(鼡径部痛)+内旋制限の有無 | FADIR / FABER | 鼡径部痛+内旋制限 → 関節内負荷を下げる設計へ |
| 3 | 側方安定(片脚支持の“使い方”) | Trendelenburg | 骨盤下制+代償 → 立位課題で再学習へ |
| 4 | 短縮(骨盤固定が崩れると解釈がブレる) | Thomas( Modified 含む)/ Ely / Ober | 固定条件を揃えて、姿勢制御から介入へ |
主要テストの「陽性の定義」テンプレ( 3 行 )|痛み部位+可動域+代償で統一
テスト結果の解釈がブレる最大の原因は、「陽性」が人によって違うことです。ここでは、主要テストの陽性を① 痛み部位(どこ)、② 可動域(どの角度帯)、③ 代償(何が起きた)の 3 行で統一します。記録も申し送りも、この型で固定してください。
手順の細部(肢位・固定・よくある誤り)は、各テストの子記事で深掘りします。本記事は使いどころと運用の型に絞って整理します。
| テスト | ① 痛み部位(どこ) | ② 可動域(どの角度帯) | ③ 代償(何が起きた) |
|---|---|---|---|
| FADIR | 鼡径部(前方)痛の再現が中心 | 屈曲+内転+内旋で “詰まる” 角度帯 | 骨盤回旋/腰椎代償で見かけの ROM が増える |
| FABER | 鼡径部痛(関節内)/殿部痛( SIJ・腰椎ルート)を区別 | 膝の下がり(外転・外旋)と疼痛の出る位置 | 骨盤挙上・回旋で “下がったように見える” |
| Trendelenburg | 支持側の外側痛が誘発されるか(任意) | 片脚支持で骨盤下制が出るタイミング | 体幹側屈(デュシェンヌ)/支持脚の膝・足部で逃げる |
| Thomas( Modified ) | 前方の張り/鼡径部の詰まり感(参考) | 反対側下肢の挙上・伸展不足(見かけに注意) | 骨盤前傾/腰椎伸展で “伸びたように見える” |
レッドフラッグ|骨折・脱臼を疑うときは「テストを重ねない」
外傷後で荷重不能、強い安静時痛、夜間痛、明らかな変形・脚長差などがある場合は、整形外科テストを増やしても判断は前に進みません。まずは安全確保と医師報告、画像検査の優先を徹底します。
「痛いからテストを足す」ではなく、「危ないから止める」を先に固定すると、見落としが減ります。
FADIR テスト|鼡径部痛(関節内)を最短で絞る
FADIR は、屈曲・内転・内旋で股関節前方の組織にストレスをかけ、鼡径部痛の再現を狙います。親記事では “使いどころ” を押さえ、肢位・固定・よくある誤りは子記事で確認できるようにします。
使いどころ:鼡径部痛+内旋制限が目立つときに、「関節内負荷を下げる」仮説を立てる起点になります。詳しいやり方は FADIR テストの個別記事で確認してください。
FABER( Patrick )テスト|鼡径部痛か、殿部痛かで “別ルート” を切り分ける
FABER は、股関節の外転・外旋位で疼痛を誘発し、痛む場所で解釈を分けるのがポイントです。鼡径部痛が強い場合は関節内の関与を、殿部痛が中心なら仙腸関節や腰椎由来のルートも疑います。
最小の読み方:まず「鼡径部が痛い」か「殿部側が痛い」かを言語化し、ROM(とくに内旋)や荷重での増悪とセットで揃えます。詳しい見方は FABER テストの個別記事で深掘りできます。
Trendelenburg テスト|中殿筋 “筋力” より、側方安定の “使い方” を見る
Trendelenburg は「中殿筋が弱いかどうか」だけを決めるテストではありません。片脚支持で、骨盤が下がる/体幹が側屈する/支持脚の膝・足部で逃げる、といった側方安定の戦略を観察して、立位・歩行課題の組み立てに落とし込みます。
観察の最小セット:骨盤下制(反対側)+体幹側屈(支持側)+支持脚アライメント(膝・足部)を 1 つの “所見” として残します。判定のコツは Trendelenburg テストの個別記事にまとめています。
Ober・Ely・Thomas|“骨盤固定” ができないと解釈がブレる
筋短縮テストは、骨盤が動くと結果が簡単に変わります。Ober / Ely / Thomas は、まず骨盤前後傾・回旋を抑える条件を揃え、次に「止まり方( end feel )」「代償」を見る順番にすると再現性が上がります。
Thomas( Modified 含む)の手順と “見かけの伸展” の注意点は Thomas テストの個別記事で確認してください。再評価では角度そのものより、「同じ固定で、同じ角度帯で、同じ代償が出たか」を追うと変化がはっきりします。
| テスト | 主な操作 | 狙う筋・構造 | 観察のコツ |
|---|---|---|---|
| Ober | 側臥位で股関節外転・伸展位から下肢下垂を観察 | 大腿筋膜張筋・腸脛靱帯 | 骨盤の前後傾 / 回旋を抑え、下垂の “止まり方” を見る |
| Ely | 腹臥位で膝屈曲し、骨盤前傾や腰椎伸展を観察 | 大腿直筋 | 腰椎伸展で代償していないか(骨盤固定を先に) |
| Thomas( Modified ) | 一側股関節最大屈曲で反対側下肢の挙上や代償を観察 | 腸腰筋・大腿直筋など | 骨盤前傾を抑え、反対側の股関節伸展 “見かけ” に注意 |
評価結果をリハに落とし込む|「所見→介入→再評価」を 1 行でつなぐ
股関節テストの価値は、所見を介入ターゲットに翻訳できることです。たとえば、FADIR で鼡径部痛+内旋制限が強いなら「股関節内の負荷を下げる荷重ライン探索」「骨盤・体幹の安定化」「痛みが少ない範囲での協調運動」へつなげます。
再評価は毎回フルセットを繰り返さないことが重要です。仮説に直結する 1〜 3 個に絞り、同じ条件(肢位・固定・声かけ)で追うと、変化がはっきりします。
| 主要所見 | まずやる介入の方向 | 次回の再評価( 1〜 3 個に絞る) |
|---|---|---|
| FADIR で鼡径部痛+内旋制限 | 関節内負荷を下げる(荷重ライン/骨盤・体幹の安定化) | FADIR(角度帯)+内旋 ROM(条件統一) |
| FABER で鼡径部痛(前方) | 関節内ルートを優先し、痛みの少ない可動域で協調運動 | FABER(疼痛部位)+内旋 ROM |
| Trendelenburg 所見(骨盤下制+代償) | 立位課題で側方安定を再学習(体幹・骨盤・支持脚をセット) | Trendelenburg(代償の変化)+歩容の観察 |
| Thomas で骨盤前傾が崩れる | 骨盤固定を含む姿勢制御から負荷設計を作る | Thomas(固定条件統一)+立位で前傾代償 |
現場の詰まりどころ|迷いを減らす「解決の三段」
股関節は、所見が「腰椎・骨盤・膝・足部」と絡みやすく、評価が散りやすいのが詰まりポイントです。まずはページ内の 2 箇所(失敗→回避手順)に戻れるようにして、同じ落とし穴を踏まない設計にします。
このゾーンは “読ませる” パートなので、原則ボタン無しで、短いリンクだけにします。必要なら関連総論も 1 本だけに絞って、学びが分岐しすぎないようにします。
- ページ内:よくある失敗(先に潰す)
- ページ内:回避の手順 / チェック(迷いが出たときの戻り先)
- 同ジャンル:MMT(徒手筋力テスト)のやり方・評価・書き方| 0–5 基準と運用
よくある失敗(ここを直すと回り始める)
- テストを増やして情報が散る:最初は 5 分フローの 1〜 3 個に絞り、再評価で追加します。
- 陽性の定義が曖昧:痛み部位+角度帯+代償の 3 行で固定します。
- 骨盤固定が崩れて “見かけの可動域” を拾う:短縮テストは固定条件を先に揃えます。
- Trendelenburg を筋力だけで決め打ち:骨盤・体幹・支持脚の “使い方” をセットで観察します。
回避の手順 / チェック(迷いが出たときの戻り先)
- 安全確認:外傷歴/荷重不能/安静時痛/夜間痛/明らかな変形があれば “止める”。
- 関節内ルート:鼡径部痛+内旋制限 → FADIR / FABER を 1 セットで確認。
- 側方安定:片脚支持で骨盤下制・体幹側屈・支持脚アライメントを観察。
- 短縮:Thomas などは骨盤固定を揃え、代償込みで記録。
- 再評価:仮説に直結する 1〜 3 個だけを “同条件” で追う。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. テストは何個やれば十分ですか?
A. 初期評価は “安全 → 関節内 → 側方安定” までの 1〜 3 個で十分です。情報が揃わないときだけ短縮テストを追加し、再評価は毎回フルセットにしないのがコツです。
Q2. FADIR と FABER はどちらを先にやりますか?
A. 鼡径部痛+内旋制限が強いなら FADIR を起点にし、痛みの場所が曖昧なら FABER で「鼡径部か殿部か」を先に分けると迷いが減ります。手順の細部は FADIR/FABER の子記事で揃えてください。
Q3. Trendelenburg 陽性は “中殿筋が弱い” で良いですか?
A. 筋力低下だけでなく、体幹側屈や支持脚のアライメントで逃げる戦略が混ざります。骨盤下制・体幹・支持脚をセットで観察し、立位課題に落とし込むのが実務的です(詳しくは Trendelenburg の子記事)。
Q4. Thomas テストは “見かけの伸展” になりやすいですか?
A. 骨盤前傾や腰椎伸展で “伸びたように見える” ことがあります。固定条件(骨盤)を揃え、代償込みで記録するのがポイントです(詳しくは Thomas の子記事)。
次の一手|運用を整える → 共有の型 → 環境の詰まりも点検
評価が回り始めると、次に必要なのは「条件を揃えて、チームで再現する運用」です。股関節のテストも、測る → 記録 → 介入 → 再評価までを 1 セットにすると、同じ時間でもアウトプットが増えます。
最後に、同ジャンルの導線を 3 本に絞って置きます。必要なところだけ拾って、明日からの臨床に戻してください。
- 運用を整える:関節可動域( ROM )検査のやり方|記録と中止基準【運用】
- 共有の型を作る:評価ハブ(全体像と指標の整理)
教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。
チェック後に『続ける/変える』の選択肢も整理したい方は、PT キャリアナビで進め方を確認しておくと迷いが減ります。
参考文献
- Dhillon J, et al. Sensitivity and Specificity for Physical Examination Tests in Diagnosing Prearthritic Intra-Articular Hip Pathology Are Highly Variable: A Systematic Review. Arthrosc Sports Med Rehabil. 2025;7(3):101117. PubMed: 40692936
- Caliesch R, et al. Diagnostic accuracy of clinical tests for cam or pincer morphology: a systematic review. BMJ Open Sport Exerc Med. 2020;6(1):e000772. Full text
- McCarney L, et al. Determining Trendelenburg test validity and reliability: a review. 2020. PMC
- Vigotsky AD, et al. The modified Thomas test is not a valid measure of hip extension unless pelvic tilt is controlled. PeerJ. 2016;4:e2325. Full text
- Peeler J, et al. Reliability of the Thomas test for assessing range of motion about the hip. Man Ther. 2007. Abstract
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


