股関節の整形外科テスト一覧|図解と記録用紙 PDF

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股関節の整形外科テスト一覧|図解と記録用紙 PDF

このページは、股関節痛に対して最初に何をみるかを決めるための親記事です。答えるのは、どのテストを先に選ぶか陽性をどう記録するか所見を介入と再評価へどうつなぐかの 3 点です。あわせて、流れを一目で整理できる図版と、現場でそのまま使いやすいA4 記録シート PDFも掲載しています。

股関節の整形外科テストは、痛みの原因を確定する道具ではなく、外してはいけない病態を先に除外しつつ、関節内(鼡径部痛)/側方安定(立位・歩行の使い方)/短縮(骨盤固定)のどこに仮説を置くかを短時間で整理するためのツールです。テスト名を増やすより、痛みの場所+再現動作+ ROM( AROM / PROM )+歩容を 1 セットでそろえるほうが、介入と再評価に直結します。

同ジャンルで回遊して、判断を速くする( 3 段 )

全体像 → 標準手順 → 代表子記事の順にたどると、股関節評価がブレにくくなります。

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記録用紙ダウンロード|股関節テストの所見を 1 枚で残す

股関節の整形外科テストは、実施しただけでは次の介入につながりにくく、痛み部位・角度帯・代償までそろえて記録してはじめて再評価に活きます。まずは下の記録用紙を使って、評価前に固定した条件、主要テストの所見、再評価メモを 1 枚で残せる形にしておくと、申し送りもブレにくくなります。

股関節テスト記録シート PDF を開く

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まずは 5 分フロー|安全 → 関節内 → 筋機能 → 短縮の順に絞る

股関節痛で迷うときは、順番を固定するとブレません。最初に安全(レッドフラッグ)を除外し、次に鼡径部痛=関節内の可能性を FADIR / FABER で確認し、その後に Trendelenburg(側方安定)と短縮テスト(骨盤固定)で介入ターゲットを絞ります。

コツは、どのテストでも陽性の定義を「痛み部位+可動域+代償」の 3 行で残すことです。これだけで、申し送りと再評価の再現性が上がります。スマホでは表を横スクロールできます。

股関節テストの 5 分フローを整理した図版
図:股関節テストの 5 分フロー
股関節テストの最小セット(成人・一般): 5 分で回す順番
手順 まず見ること 使うテスト(目安) 次の一手(解釈の方向)
1 レッドフラッグ(外傷歴/荷重不能/安静時痛/夜間痛/明らかな変形など) テストを増やさず、安全確保を優先 医師報告・画像・負荷設計の見直しへ
2 関節内(鼡径部痛)+内旋制限の有無 FADIR / FABER 鼡径部痛+内旋制限 → 関節内負荷を下げる設計へ
3 側方安定(片脚支持の“使い方”) Trendelenburg 骨盤下制+代償 → 立位課題で再学習へ
4 短縮(骨盤固定が崩れると解釈がブレる) Thomas( Modified 含む)/ Ely / Ober 固定条件をそろえて、姿勢制御から介入へ

主要テストの「陽性の定義」テンプレ( 3 行 )|痛み部位+可動域+代償で統一

テスト結果の解釈がブレる最大の原因は、「陽性」が人によって違うことです。ここでは、主要テストの陽性を① 痛み部位(どこ)② 可動域(どの角度帯)③ 代償(何が起きた)の 3 行で統一します。記録も申し送りも、この型で固定してください。

本ページは使いどころと運用の型に絞ります。個別テストの細かな手順や固定の作法は、各子記事で確認する前提にすると、親記事と子記事の役割がブレません。

股関節の主要テスト:陽性の定義(成人・一般)
テスト ① 痛み部位(どこ) ② 可動域(どの角度帯) ③ 代償(何が起きた)
FADIR 鼡径部(前方)痛の再現が中心 屈曲+内転+内旋で “詰まる” 角度帯 骨盤回旋/腰椎代償で見かけの ROM が増える
FABER 鼡径部痛(関節内)/殿部痛( SIJ・腰椎ルート)を区別 膝の下がり(外転・外旋)と疼痛の出る位置 骨盤挙上・回旋で “下がったように見える”
Trendelenburg 支持側の外側痛が誘発されるか(任意) 片脚支持で骨盤下制が出るタイミング 体幹側屈(デュシェンヌ)/支持脚の膝・足部で逃げる
Thomas( Modified ) 前方の張り/鼡径部の詰まり感(参考) 反対側下肢の挙上・伸展不足(見かけに注意) 骨盤前傾/腰椎伸展で “伸びたように見える”

レッドフラッグ|骨折・脱臼を疑うときは「テストを重ねない」

外傷後で荷重不能、強い安静時痛、夜間痛、明らかな変形・脚長差などがある場合は、整形外科テストを増やしても判断は前に進みません。まずは安全確保と医師報告、画像検査の優先を徹底します。

「痛いからテストを足す」ではなく、「危ないから止める」を先に固定すると、見落としが減ります。

FADIR テスト|鼡径部痛(関節内)を最短で絞る

FADIR は、屈曲・内転・内旋で股関節前方の組織にストレスをかけ、鼡径部痛の再現を狙います。親記事では “使いどころ” を押さえ、個別記事では肢位・固定・よくある誤りを深掘りする、という役割分担にすると回遊の軸が明確です。

使いどころは、鼡径部痛+内旋制限が目立つときです。ここで「関節内負荷を下げる」仮説を立て、次の介入と再評価に絞り込んでいきます。

FABER( Patrick )テスト|鼡径部痛か、殿部痛かで “別ルート” を切り分ける

FABER は、股関節の外転・外旋位で疼痛を誘発し、痛む場所で解釈を分けるのがポイントです。鼡径部痛が強い場合は関節内の関与を、殿部痛が中心なら仙腸関節や腰椎由来のルートも疑います。

最小の読み方は、まず「鼡径部が痛い」か「殿部側が痛い」かを言語化し、ROM(とくに内旋)や荷重での増悪とセットでそろえることです。

Trendelenburg テスト|中殿筋 “筋力” より、側方安定の “使い方” を見る

Trendelenburg は「中殿筋が弱いかどうか」だけを決めるテストではありません。片脚支持で、骨盤が下がる/体幹が側屈する/支持脚の膝・足部で逃げる、といった側方安定の戦略を観察して、立位・歩行課題の組み立てに落とし込みます。

観察の最小セットは、骨盤下制(反対側)+体幹側屈(支持側)+支持脚アライメント(膝・足部)です。これを 1 つの所見として残すと、再評価の再現性が上がります。

Ober・Ely・Thomas|“骨盤固定” ができないと解釈がブレる

筋短縮テストは、骨盤が動くと結果が簡単に変わります。Ober / Ely / Thomas は、まず骨盤前後傾・回旋を抑える条件をそろえ、次に「止まり方( end feel )」「代償」を見る順番にすると再現性が上がります。

再評価では角度そのものより、「同じ固定で、同じ角度帯で、同じ代償が出たか」を追うと変化がはっきりします。

股関節周囲の筋短縮テスト:狙いと観察ポイント(成人・一般)
テスト 主な操作 狙う筋・構造 観察のコツ
Ober 側臥位で股関節外転・伸展位から下肢下垂を観察 大腿筋膜張筋・腸脛靱帯 骨盤の前後傾 / 回旋を抑え、下垂の “止まり方” を見る
Ely 腹臥位で膝屈曲し、骨盤前傾や腰椎伸展を観察 大腿直筋 腰椎伸展で代償していないか(骨盤固定を先に)
Thomas( Modified ) 一側股関節最大屈曲で反対側下肢の挙上や代償を観察 腸腰筋・大腿直筋など 骨盤前傾を抑え、反対側の股関節伸展 “見かけ” に注意

記録シートの使い方|所見を「次の一手」までつなげる

配布している記録シートは、テスト名だけを並べるためではなく、評価前に固定した条件点数や所見の根拠再評価時に見直したい項目まで 1 枚で残すためのものです。とくに股関節は、痛みの部位と骨盤・体幹の代償が絡みやすいため、同じ言い方で記録できるかどうかが再現性に直結します。

おすすめは、初回でフルセットを埋めるより、最初の 1〜 3 テストに絞って使い始めることです。使いながら「何を毎回固定して残すか」がそろうと、申し送りと再評価が一気に楽になります。

評価結果をリハに落とし込む|「所見→介入→再評価」を 1 行でつなぐ

股関節テストの価値は、所見を介入ターゲットに翻訳できることです。たとえば、FADIR で鼡径部痛+内旋制限が強いなら「股関節内の負荷を下げる荷重ライン探索」「骨盤・体幹の安定化」「痛みが少ない範囲での協調運動」へつなげます。

再評価は毎回フルセットを繰り返さないことが重要です。仮説に直結する 1〜 3 個に絞り、同じ条件(肢位・固定・声かけ)で追うと、変化がはっきりします。

所見→介入→再評価: 1 行でつなぐ例(成人・一般)
主要所見 まずやる介入の方向 次回の再評価( 1〜 3 個に絞る)
FADIR で鼡径部痛+内旋制限 関節内負荷を下げる(荷重ライン/骨盤・体幹の安定化) FADIR(角度帯)+内旋 ROM(条件統一)
FABER で鼡径部痛(前方) 関節内ルートを優先し、痛みの少ない可動域で協調運動 FABER(疼痛部位)+内旋 ROM
Trendelenburg 所見(骨盤下制+代償) 立位課題で側方安定を再学習(体幹・骨盤・支持脚をセット) Trendelenburg(代償の変化)+歩容の観察
Thomas で骨盤前傾が崩れる 骨盤固定を含む姿勢制御から負荷設計を作る Thomas(固定条件統一)+立位で前傾代償

現場の詰まりどころ|迷いを減らす「解決の三段」

股関節は、所見が「腰椎・骨盤・膝・足部」と絡みやすく、評価が散りやすいのが詰まりポイントです。まずはページ内の 2 箇所(失敗→回避手順)に戻れるようにして、同じ落とし穴を踏まない設計にします。

このゾーンは “読ませる” パートなので、原則ボタン無しで、短いリンクだけにします。必要なら関連総論も 1 本だけに絞って、学びが分岐しすぎないようにします。

よくある失敗(ここを直すと回り始める)

  • テストを増やして情報が散る:最初は 5 分フローの 1〜 3 個に絞り、再評価で追加します。
  • 陽性の定義が曖昧:痛み部位+角度帯+代償の 3 行で固定します。
  • 骨盤固定が崩れて “見かけの可動域” を拾う:短縮テストは固定条件を先にそろえます。
  • Trendelenburg を筋力だけで決め打ちする:骨盤・体幹・支持脚の “使い方” をセットで観察します。

回避の手順 / チェック(迷いが出たときの戻り先)

  1. 安全確認:外傷歴/荷重不能/安静時痛/夜間痛/明らかな変形があれば “止める”。
  2. 関節内ルート:鼡径部痛+内旋制限 → FADIR / FABER を 1 セットで確認。
  3. 側方安定:片脚支持で骨盤下制・体幹側屈・支持脚アライメントを観察。
  4. 短縮:Thomas などは骨盤固定をそろえ、代償込みで記録。
  5. 再評価:仮説に直結する 1〜 3 個だけを “同条件” で追う。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. テストは何個やれば十分ですか?

A. 初期評価は “安全 → 関節内 → 側方安定” までの 1〜 3 個で十分です。情報がそろわないときだけ短縮テストを追加し、再評価は毎回フルセットにしないのがコツです。

Q2. FADIR と FABER はどちらを先にやりますか?

A. 鼡径部痛+内旋制限が強いなら FADIR を起点にし、痛みの場所が曖昧なら FABER で「鼡径部か殿部か」を先に分けると迷いが減ります。細かな手順は FADIR テストFABER テスト の子記事で確認してください。

Q3. Trendelenburg 陽性は “中殿筋が弱い” で良いですか?

A. 筋力低下だけでなく、体幹側屈や支持脚のアライメントで逃げる戦略が混ざります。骨盤下制・体幹・支持脚をセットで観察し、立位課題に落とし込むのが実務的です。詳しい見方は Trendelenburg テスト で整理しています。

Q4. Thomas テストは “見かけの伸展” になりやすいですか?

A. 骨盤前傾や腰椎伸展で “伸びたように見える” ことがあります。固定条件(骨盤)をそろえ、代償込みで記録するのがポイントです。細かな固定の考え方は Thomas テスト の個別ページで確認できます。

Q5. 記録シートはどの場面で使うと便利ですか?

A. 初回評価、介入前後の比較、申し送り前の整理に向いています。とくに「痛み部位」「角度帯」「代償」を同じ言い方で残せると、別日に見返したときも解釈がズレにくくなります。

次の一手|全体像に戻る → 記録の型をそろえる

股関節の整形外科テストは、単発で増やすより「最初の 1〜 3 本を決める → 条件をそろえて記録する → 同じ条件で再評価する」の流れで回すほうが臨床に残ります。

続けて読むなら、次の 2 本で全体像と運用の型をそろえておくと、股関節以外の部位でも迷いにくくなります。


参考文献

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  • Reiman MP, Goode AP, Hegedus EJ, Cook CE, Wright AA. Diagnostic accuracy of clinical tests of the hip: a systematic review with meta-analysis. Br J Sports Med. 2013;47(14):893-902. DOI: 10.1136/bjsports-2012-091035
  • Caliesch R, Sattelmayer M, Reichenbach S, Zwahlen M, Hilfiker R. Diagnostic accuracy of clinical tests for cam or pincer morphology in individuals with suspected FAI syndrome: a systematic review. BMJ Open Sport Exerc Med. 2020;6(1):e000772. DOI: 10.1136/bmjsem-2020-000772
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  • Vigotsky AD, Lehman GJ, Beardsley C, Contreras B, Chung B, Feser EH. The modified Thomas test is not a valid measure of hip extension unless pelvic tilt is controlled. PeerJ. 2016;4:e2325. DOI: 10.7717/peerj.2325
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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