PDQ-8 / PDQ-39 の実装方針|このページで決めること
結論:このページで先に決めるべきなのは、「外来や生活期で PDQ-8 を主軸に回す場面」と、「詳細確認のために PDQ-39 に切り替える場面」です。設問ごとの細かな採点知識を増やすより、測定条件・再評価間隔・客観指標との並べ方 を固定したほうが、 QOL の変化を介入へつなげやすくなります。
本記事は、「何点か」より「どう回すか」 に絞った実装記事です。対象は、外来フォロー、生活期、訪問、退院後フォローで短時間に変化を追いたい理学療法士です。いまの職場で評価の見本が少ない、相談相手が少ない、再評価の型がそろっていないと感じるなら、学び方と環境の整え方も先に整理しておくと動きやすくなります。
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外来フォローや生活期の再評価で、PDQ-8 → 介入目標 → 次回共有 までを 1 枚でそろえたいときに使える記録シートを用意しました。口頭で整理しにくい場面でも、流れに沿って書くだけで「何を確認し、何を次回へつなぐか」が残しやすくなります。
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PDQ-8 を主軸に回す 5 分フロー
運用の基本はシンプルです。① 同じ条件で測る、② PDQ-8 % を出す、③ 最も高い困りごとを 1 つ選ぶ、④ 客観指標を 1 つ並べる、⑤ 次の再評価日を先に決める。これだけで、「測っただけ」で終わりにくくなります。外来なら 4 〜 8 週、生活期なら 1 〜 3 か月単位で回すと、変化の解釈が安定しやすいです。
特に重要なのは、薬効の オン / オフ、測定時間帯、疲労の強さ、同席者の有無をそろえることです。同じ患者でも条件がぶれると、 QOL の変化なのか、その日の状態差なのかが判別しづらくなります。まずは「同条件・同間隔・同じ並べ方」で比較できる状態を作ることが、実装の第一歩です。
| 手順 | 固定すること | 見るポイント | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 測定条件 | 時間帯、オン / オフ、疲労、同席者 | 次回も同条件で取ると決める |
| 2 | PDQ-8 % | 合計点 ÷ 32 × 100 | 前回との差分を必ず残す |
| 3 | 主訴の焦点化 | 移動、 ADL 、気分、痛みなどの主因 | 今期の介入目標を 1 つに絞る |
| 4 | 客観指標の併用 | TUG 、 6 MWT 、歩数、転倒歴、 IADL | 主観と客観のズレを確認する |
| 5 | 再評価間隔 | 4 〜 8 週 or 1 〜 3 か月 | 変化量で介入継続 / 修正を判断する |
PDQ-8 と PDQ-39 の使い分け
基本線は「スクリーニングとフォローは PDQ-8 、介入設計と詳細確認は PDQ-39 」 です。短時間で全体の困りごとを把握したい場面では、 8 項目の PDQ-8 のほうが継続しやすく、実務上の取り回しも良好です。一方で、「なぜ悪いのか」をドメイン別に詰めたいときは、 8 ドメインを詳細に見られる PDQ-39 が向きます。
つまり、最初から毎回 PDQ-39 を回す必要はありません。まずは PDQ-8 でトレンドを追う → 変化が大きい / 解釈が難しいときだけ PDQ-39 で掘る という順番にすると、負担を増やさずに QOL 評価を継続できます。主観評価を継続可能な形にすること自体が、このページの一番大事なポイントです。
| 項目 | PDQ-8 が向く場面 | PDQ-39 が向く場面 |
|---|---|---|
| 目的 | 全体の困りごとを短時間で追う | どのドメインがボトルネックかを詳しく見る |
| 場面 | 外来、電話フォロー、生活期、訪問 | 初回詳細評価、介入前後比較、カンファレンス |
| 所要時間 | 短い時間で回しやすい | 時間を取って整理する場面向き |
| 判断の軸 | 前回差、主訴、客観指標とのズレ | ドメイン別の高値、介入優先順位、説明の具体性 |
| 切り替えの目安 | 変化あり / 解釈が難しい / 介入が迷うときは PDQ-39 へ | 詳細確認後、再度の定期フォローは PDQ-8 に戻す |
変化の読み方| MCID とドメイン確認
PDQ は絶対値より「変化量」を読む尺度 です。前回との差が小さいときは無理に意味づけしすぎず、MCID を越えたかどうかを 1 つの目安にします。臨床では、改善か悪化かの方向をまず確認し、そのうえで「何が変化したのか」を面接と観察で補う流れが実用的です。
また、 PDQ-8 で全体は改善しているのに患者の満足感が低い ときは、詳細評価へ切り替えるサインです。逆に、数字が横ばいでも転倒不安や外出回数など具体的な生活変化があれば、主観評価だけで介入を止めない判断も必要です。数字 → 背景 → 次の一手 の順で読むと、再評価がぶれにくくなります。
| 指標 | 改善の目安 | 悪化の目安 | 実務での読み方 |
|---|---|---|---|
| PDQ-39SI | − 4.72 前後 | + 4.22 前後 | ドメイン別に何が動いたかまで確認する |
| PDQ-8 % | − 5.94 前後 | + 4.91 前後 | 短期フォローの変化確認に使い、必要時に PDQ-39 で掘る |
現場の詰まりどころ
評価が崩れやすい場面は、だいたい共通しています。先に よくある失敗 と 再評価の回し方 を押さえておくと、担当者が変わっても運用がぶれにくくなります。採点と SI の基本式を確認したいときは PDQ-39 基本編 へ戻る流れにしておくと、この記事との役割分担も明確です。
特に、条件がそろっていないのに前回比較してしまう、数字だけ見て介入を決めてしまう、主観と客観のズレを放置する の 3 点は、 QOL 評価を形骸化させやすいポイントです。ここを潰すだけでも、 PDQ の使い勝手はかなり上がります。
よくある失敗
| 失敗 | なぜ困るか | 回避策 |
|---|---|---|
| オン / オフ をそろえない | 薬効差が混ざり、 QOL 変化か状態差か分からなくなる | 時間帯と服薬条件をテンプレ化する |
| PDQ-8 だけで介入を決め切る | どの領域が本当に詰まっているか見えにくい | 迷うときだけ PDQ-39 を追加する |
| 客観指標を並べない | 主観の背景が読めず、再評価で説明しづらい | TUG 、歩数、転倒歴、 IADL などを 1 つ添える |
再評価の回し方
再評価では、「今回は何を変えたか」 を 1 つに絞ってから数字を読みます。歩行戦略を変えたのか、外出頻度を増やしたのか、疼痛対策を加えたのかが曖昧だと、変化の意味づけも曖昧になります。介入内容と再評価指標を 1 対 1 に近づけるのがコツです。
また、 PDQ-8 が横ばいでも介入失敗とは限りません。短期では生活の実感より先に客観所見が動くこともあります。反対に、客観所見が改善していても、外出不安や情緒面が残れば満足度は上がりにくいです。横ばい / 改善 / 悪化 の 3 択で終わらせず、背景まで残しておくと次回の仮説修正がしやすくなります。
客観指標とどう並べるか
PDQ は主観、 UPDRS や歩行・活動量の指標は客観 です。両者がそろうと、単に「よくなった / 悪くなった」ではなく、なぜそう見えるのか を言語化しやすくなります。理学療法では、このズレこそが介入仮説の出発点になります。
おすすめは、主観 1 指標 + 客観 1 指標 + 生活場面 1 つ の 3 点セットです。例えば「 PDQ-8 % + TUG + 外出回数」「 PDQ-8 % + 6 MWT + 家事参加」のように並べると、カンファレンスでも共有しやすく、再評価の軸もぶれにくくなります。
| 組み合わせ | 読み方 | 次の一手 |
|---|---|---|
| PDQ 改善 / 客観改善 | 介入が生活実感にもつながっている | 同方針を継続し、負荷量を微調整する |
| PDQ 不変 / 客観改善 | 動けても不安、痛み、参加制限が残っている可能性 | 情緒面、外出、疼痛、家族支援を追加する |
| PDQ 悪化 / 客観不変 | 疲労、オフ、生活負担、説明不足の影響を疑う | 条件確認と詳細評価を行い、 PDQ-39 を検討する |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
PDQ-8 だけで十分ですか?
定期フォローの入口としては十分な場面が多いです。外来や生活期で「全体の変化を短時間で追う」目的なら、まずは PDQ-8 で回し、解釈が難しいときだけ PDQ-39 を追加する運用が現実的です。
いつ PDQ-39 に切り替えるべきですか?
変化量が大きい、主観と客観がずれる、介入優先順位が決めにくい ときが切り替えどきです。特に「どのドメインが高いのか」を説明したい場面では、 PDQ-39 のほうが役立ちます。
オン / オフ は必ずそろえるべきですか?
原則はそろえたほうが安全です。同じ患者でも、薬効や疲労の違いで回答の印象は変わります。前回比較をするなら、時間帯と服薬条件を毎回できるだけ一致させる運用が重要です。
UPDRS と両方取るときは何を残せばいいですか?
PDQ の変化量、客観指標 1 つ、生活場面の変化 1 つ を残すと十分です。たとえば「 PDQ-8 % は改善、 TUG は改善、ただし外出不安は残存」のように 1 行で並べると、次回の介入方針が決めやすくなります。
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参考文献
- Jenkinson C, Fitzpatrick R, Peto V, et al. The Parkinson’s Disease Questionnaire ( PDQ-39 ): development and validation of a Parkinson’s disease summary index score. Age Ageing. 1997;26(5):353-357. DOI: 10.1093/ageing/26.5.353 / PubMed
- Peto V, Jenkinson C, Fitzpatrick R. PDQ-39: a review of the development, validation and application of a Parkinson’s disease quality of life questionnaire and its associated measures. J Neurol. 1998;245 Suppl 1:S10-S14. DOI: 10.1007/pl00007730 / PubMed
- Tan LCS, Lau PN, Au WL, Luo N. Validation of PDQ-8 as an independent instrument in English and Chinese. J Neurol Sci. 2007;255(1-2):77-80. DOI: 10.1016/j.jns.2007.01.072 / PubMed
- Luo N, Tan LCS, Zhao Y, et al. Determination of the longitudinal validity and minimally important difference of the 8-item Parkinson’s Disease Questionnaire ( PDQ-8 ). Mov Disord. 2009;24(2):183-187. DOI: 10.1002/mds.22240 / PubMed
- Horváth K, Aschermann Z, Kovács M, et al. Changes in Quality of Life in Parkinson’s Disease: How Large Must They Be to Be Relevant? Neuroepidemiology. 2017;48(1-2):1-8. DOI: 10.1159/000455863 / PubMed
- Jenkinson C, Fitzpatrick R, Peto V, et al. The Parkinson’s Disease Questionnaires User Manual ( PDQ-39, PDQ-8, PDQ Summary Index & PDQ-Carer ). 3rd ed. Oxford: Health Services Research Unit, University of Oxford; 2012. Official manual
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


