- 手関節・手部の整形外科テスト一覧|症状から候補を絞る
- 症状別一覧|手関節・手部で確認する代表的なテスト
- 5分フロー|症状から最初の評価候補を決める
- A4記録シート・Excel|評価条件をそろえて残す
- 正中神経領域のしびれ|Phalen・Durkanは病歴と合わせてみる
- 母指側痛|Finkelsteinの前に痛みの場所を固定する
- 尺側手関節痛|圧痛・荷重痛・DRUJを分けて確認する
- 外傷+舟状骨周囲痛|誘発を増やすより見逃し回避を優先する
- 記録の型|「テスト名+陽性」だけで終わらせない
- よくある失敗|テストを増やす前に条件をそろえる
- 中止・共有|外傷や神経・循環異常では安全確認を優先する
- よくある質問
- 次の一手|全体像か代表テストの各論へ進む
- 参考文献
- 著者情報
手関節・手部の整形外科テスト一覧|症状から候補を絞る
手関節・手部の整形外科テストは、テスト名を片端から実施するより、まず①正中神経領域のしびれ、②母指側痛、③尺側手関節痛、④外傷後の舟状骨周囲痛に分けると候補を絞りやすくなります。ただし、いずれのテストも単独で診断を確定するものではありません。
本記事では、Phalen、Durkan、Finkelstein、Ulnar fovea sign、Ulnocarpal stress test、DRUJ ballottement testなどを症状別に整理し、「どれを候補にするか」「何を記録するか」「どこで追加評価・医師共有へ進むか」までまとめます。評価条件をそろえて記録できるA4 PDFと編集用Excelも利用できます。
このページで確認する4項目
症状別一覧|手関節・手部で確認する代表的なテスト
最初に確認するのはテスト名ではなく、症状の部位・しびれの分布・増悪条件・外傷歴です。そのうえで目的に合うテストや所見を選びます。陽性所見だけで疾患を確定せず、病歴、触診、神経学的所見、必要な画像評価と組み合わせて解釈します。
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| 症状の主役 | 主な候補 | 確認したいこと | 解釈の注意 |
|---|---|---|---|
| 正中神経領域のしびれ | Phalen test Durkan carpal compression test |
普段のしびれ・感覚異常が同じ分布に再現するか | 単独陽性でCTSを確定しない |
| 橈骨茎状突起周囲の痛み | Finkelstein test Eichhoff test |
橈骨茎状突起周囲の症状が再現するか | 2つの手技を混同せず、疼痛部位を確認する |
| 尺側手関節痛 | Ulnar fovea sign Ulnocarpal stress test DRUJ ballottement test |
圧痛、荷重時痛、左右差、不安定性を分けて確認する | TFCC以外の尺側痛も含めて考える |
| 外傷後の舟状骨周囲痛 | 解剖学的スナッフボックス圧痛 舟状骨結節圧痛 |
外傷機転と舟状骨周囲の圧痛・腫脹 | 骨折疑いでは誘発を増やさず共有・画像評価へつなぐ |

5分フロー|症状から最初の評価候補を決める
最初の分岐は、しびれ・母指側痛・尺側痛・外傷の4つです。すべてのテストを実施する必要はありません。主症状に合う候補を選び、結果だけでは判断しにくい場合に別の所見や評価を追加します。
| 分岐 | まず確認すること | 代表的な候補 | 次の判断 |
|---|---|---|---|
| しびれ | 正中神経領域か、夜間・起床時に増悪するか | Phalen/Durkan | 病歴・分布と誘発症状が一致するか確認 |
| 母指側痛 | 橈骨茎状突起周囲か、母指基部・舟状骨周囲か | Finkelstein | 疼痛部位が普段の症状と一致するか確認 |
| 尺側痛 | 圧痛部位、回内外、尺屈、荷重との関係 | Fovea sign/Ulnocarpal stress/DRUJ ballottement | 圧痛・荷重痛・不安定性を分けて整理 |
| 外傷 | 受傷機転、舟状骨周囲の圧痛・腫脹 | 舟状骨周囲の圧痛所見 | 骨折疑いなら誘発を増やさず共有 |
A4記録シート・Excel|評価条件をそろえて残す
手関節・手部の評価では、テスト名だけでなく、主症状の部位、しびれの分布、増悪動作、外傷歴、比較条件、何がどこに再現したかまで残すと再評価しやすくなります。v2記録シートは、症状から候補を絞り、結果・根拠・追加評価・医師共有まで1枚で整理するための記録補助です。
※本シートは記録補助用です。単独のテスト・所見のみで診断を確定するものではありません。詳細な実施方法や解釈は本文および施設手順をご確認ください。
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正中神経領域のしびれ|Phalen・Durkanは病歴と合わせてみる
母指・示指・中指を中心としたしびれや感覚異常、夜間から起床時に目立つ症状がある場合は、手根管症候群(CTS)を候補にします。Phalen testやDurkan carpal compression testは代表的な誘発テストですが、どちらか一方の陽性だけでCTSと確定するものではありません。
実施前に症状分布を確認し、テストでは単に「手関節が痛い」ではなく、普段感じているしびれ・感覚異常が同じ分布に再現または増悪したかを記録します。病歴と結果が一致しない場合は、別の誘発所見や神経学的評価を追加して考えます。
| 項目 | 確認する内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 症状分布 | どの指・部位にしびれがあるか | 母指〜中指を中心にしびれ |
| 誘発症状 | 普段の症状が再現したか | 正中神経領域のしびれ再現(+) |
| 条件 | テスト名、肢位、時間 | Phalen、保持__秒で症状再現 |
母指側痛|Finkelsteinの前に痛みの場所を固定する
母指使用や把持で橈骨茎状突起周囲の疼痛が増悪する場合は、ドケルバン病を候補にFinkelstein testを検討します。ただし、「母指側が痛い」という情報だけでは十分ではありません。母指CM関節周囲、解剖学的スナッフボックス、橈骨茎状突起周囲では想定する病態が異なるため、まず疼痛部位を一点化します。
また、Finkelstein testとEichhoff testは同一の手技ではありません。どちらを実施したのかを区別し、疼痛を強く誘発すること自体を目的にせず、普段の症状と同じ部位の痛みが再現したかを確認します。
尺側手関節痛|圧痛・荷重痛・DRUJを分けて確認する
尺側手関節痛では、最初からTFCC損傷だけに絞らないことが重要です。尺側痛には複数の病態が含まれるため、圧痛部位、荷重による症状再現、回内外との関係、左右差、不安定性を分けて整理します。
| テスト・所見 | 主に確認すること | 記録のポイント |
|---|---|---|
| Ulnar fovea sign | 尺骨小窩部の圧痛と症状再現 | 圧痛部位、普段の痛みとの一致、左右差 |
| Ulnocarpal stress test | 尺側への荷重で疼痛が再現するか | 負荷条件と再現した疼痛部位 |
| DRUJ ballottement test | 遠位橈尺関節の不安定性 | 左右差、不安定性、疼痛の有無を分けて記録 |
Ulnar fovea signやUlnocarpal stress testは、陽性であっても病態を1つに確定できる所見ではありません。「TFCCテスト陽性」と一括りにせず、何を確認したテストなのか、どの症状が再現したのかを記録します。
外傷+舟状骨周囲痛|誘発を増やすより見逃し回避を優先する
転倒して手をついた、手関節を強く反らした、強い衝撃を受けたなどの外傷後に橈側手関節痛がある場合は、舟状骨骨折を見逃さないことが優先されます。
確認するのは、受傷機転に加えて、解剖学的スナッフボックスや舟状骨結節など舟状骨周囲の圧痛、腫脹、疼痛です。骨折が疑われる状況では、疼痛誘発を繰り返して疾患を確定しようとせず、施設の手順に従って医師へ共有し、必要な画像評価につなげます。
| 確認項目 | 記録する内容 | 次の判断 |
|---|---|---|
| 受傷機転 | 転倒、手をついた、過伸展、強い衝撃など | 骨折が疑われる場合は誘発を増やさず、医師共有・画像評価へつなぐ |
| 圧痛 | スナッフボックス・舟状骨周囲の限局した圧痛 | |
| 局所所見 | 腫脹、疼痛、機能低下 |
記録の型|「テスト名+陽性」だけで終わらせない
初回評価と再評価を比較できる記録にするには、①主症状、②実施条件、③再現した症状・所見、④次の判断をそろえます。「Phalen(+)」だけでは、何がどこに再現したのか、前回と同じ条件だったのかが分かりません。
| 項目 | 残す内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 主症状 | 部位・分布・増悪動作 | 母指〜中指のしびれ、夜間増悪 |
| 条件 | テスト名、肢位、時間、負荷 | Phalen、保持30秒 |
| 結果 | 何が、どこに、いつ再現したか | 18秒で普段と同じしびれを再現 |
| 次の判断 | 追加評価、医師共有、再評価 | 症状分布と整合を確認し追加評価へ |
よくある失敗|テストを増やす前に条件をそろえる
手関節・手部で評価がまとまらなくなる原因は、テスト数の不足よりも、症状の主語と実施条件がそろっていないことにあります。
| よくある失敗 | 問題 | 修正すること |
|---|---|---|
| テストを次々追加する | どの症状・所見を確認しているか分からなくなる | 主症状から候補を絞る |
| 局所痛だけで陽性扱いする | 目的と異なる症状が混ざる | 普段の症状の部位・分布との一致を確認する |
| 条件を記録しない | 再評価で比較できない | 肢位、時間、負荷、左右差を残す |
中止・共有|外傷や神経・循環異常では安全確認を優先する
急性外傷後の著明な腫脹・変形、強い圧痛、急激な神経症状や循環異常などがある場合は、整形外科テストを網羅することより安全確認を優先します。特に骨傷が疑われる状況では、無理に疼痛を再現せず、施設手順に従って医師へ共有してください。
また、誘発テストの結果と症状分布が一致しない場合も、陽性テストを増やして特定の疾患名へ合わせるのではなく、評価範囲を戻して別の候補を確認します。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。
PhalenとDurkanはどちらから行うべきですか?
「必ずPhalenから」という固定順序で考える必要はありません。まず症状分布と病歴を確認し、代表的な誘発テストを選びます。結果だけでは判断しにくい場合に別の所見を追加し、普段の症状がどの条件で再現したかを記録することが重要です。
FinkelsteinとEichhoffは同じテストですか?
同一ではありません。両者は手技が異なるため、どちらを実施したのかを区別します。強い痛みを出すことではなく、橈骨茎状突起周囲の普段の症状が再現したかを確認します。
Ulnar fovea signが陽性ならTFCC損傷ですか?
それだけでは確定できません。尺側手関節痛には複数の原因があり、Ulnar fovea signの診断性能も対象や研究によって異なります。圧痛部位、荷重時痛、DRUJの安定性、外傷歴などと合わせて解釈します。
外傷後に舟状骨周囲が痛い場合、テストを続けてもよいですか?
骨折を疑う外傷機転と舟状骨周囲の圧痛などがある場合は、疼痛誘発を繰り返すより見逃し回避を優先します。施設の手順に従って医師へ共有し、必要な画像評価につなげてください。
次の一手|全体像か代表テストの各論へ進む
このページで症状別の候補を整理できたら、次は目的に応じて1つだけ深掘りします。
- 整形外科テスト全体を確認する:整形外科的テスト一覧(部位別)
- CTSの実施・判定・記録を確認する:Phalenテストのやり方と陽性基準
参考文献
- American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Carpal Tunnel Syndrome: Evidence-Based Clinical Practice Guideline. Rosemont, IL: AAOS; 2024. AAOS
- Wu F, Rajpura A, Sandher D. Finkelstein’s Test Is Superior to Eichhoff’s Test in the Investigation of de Quervain’s Disease. J Hand Microsurg. 2018;10(2):116-118. doi:10.1055/s-0038-1626690. PubMed
- Tay SC, Tomita K, Berger RA. The “ulnar fovea sign” for defining ulnar wrist pain: an analysis of sensitivity and specificity. J Hand Surg Am. 2007;32(4):438-444. doi:10.1016/j.jhsa.2007.01.022. PubMed
- Ou Yang O, McCombe DB, Keating C, et al. Ulnar-sided wrist pain: a prospective analysis of diagnostic clinical tests. ANZ J Surg. 2021;91(10):2159-2162. doi:10.1111/ans.17169. PubMed
- Nakamura R, Horii E, Imaeda T, Nakao E, Kato H, Watanabe K. The ulnocarpal stress test in the diagnosis of ulnar-sided wrist pain. J Hand Surg Br. 1997;22(6):719-723. doi:10.1016/S0266-7681(97)80432-9. PubMed
- Nagashima M, et al. Reliability and Validity Analysis of the Distal Radioulnar Joint Ballottement Test. J Hand Surg Am. 2024. PubMed
- British Society for Surgery of the Hand. Scaphoid fractures: BSSH Trauma Standards. BSSH
- Mallee WH, Henny EP, van Dijk CN, Kamminga SP, van Enst WA, Kloen P. Clinical diagnostic evaluation for scaphoid fractures: a systematic review and meta-analysis. J Hand Surg Am. 2014;39(9):1683-1691.e2. doi:10.1016/j.jhsa.2014.06.004. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

