手関節・手部の整形外科テスト一覧|症状別フロー・記録PDF

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手関節・手部の整形外科テスト一覧|症状から候補を絞る

手関節・手部の整形外科テストは、テスト名を片端から実施するより、まず①正中神経領域のしびれ、②母指側痛、③尺側手関節痛、④外傷後の舟状骨周囲痛に分けると候補を絞りやすくなります。ただし、いずれのテストも単独で診断を確定するものではありません。

本記事では、Phalen、Durkan、Finkelstein、Ulnar fovea sign、Ulnocarpal stress test、DRUJ ballottement testなどを症状別に整理し、「どれを候補にするか」「何を記録するか」「どこで追加評価・医師共有へ進むか」までまとめます。評価条件をそろえて記録できるA4 PDFと編集用Excelも利用できます。

症状別一覧|手関節・手部で確認する代表的なテスト

最初に確認するのはテスト名ではなく、症状の部位・しびれの分布・増悪条件・外傷歴です。そのうえで目的に合うテストや所見を選びます。陽性所見だけで疾患を確定せず、病歴、触診、神経学的所見、必要な画像評価と組み合わせて解釈します。

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手関節・手部の整形外科テスト・所見:症状別の代表例
症状の主役 主な候補 確認したいこと 解釈の注意
正中神経領域のしびれ Phalen test
Durkan carpal compression test
普段のしびれ・感覚異常が同じ分布に再現するか 単独陽性でCTSを確定しない
橈骨茎状突起周囲の痛み Finkelstein test
Eichhoff test
橈骨茎状突起周囲の症状が再現するか 2つの手技を混同せず、疼痛部位を確認する
尺側手関節痛 Ulnar fovea sign
Ulnocarpal stress test
DRUJ ballottement test
圧痛、荷重時痛、左右差、不安定性を分けて確認する TFCC以外の尺側痛も含めて考える
外傷後の舟状骨周囲痛 解剖学的スナッフボックス圧痛
舟状骨結節圧痛
外傷機転と舟状骨周囲の圧痛・腫脹 骨折疑いでは誘発を増やさず共有・画像評価へつなぐ
手関節・手部の整形外科テストを正中神経領域のしびれ、母指側痛、尺側手関節痛、外傷後の舟状骨周囲痛の4つに分けた症状別早見図
図:手関節・手部の整形外科テストを症状別4分岐で整理

5分フロー|症状から最初の評価候補を決める

最初の分岐は、しびれ・母指側痛・尺側痛・外傷の4つです。すべてのテストを実施する必要はありません。主症状に合う候補を選び、結果だけでは判断しにくい場合に別の所見や評価を追加します。

手関節・手部:症状から評価候補を決める5分フロー
分岐 まず確認すること 代表的な候補 次の判断
しびれ 正中神経領域か、夜間・起床時に増悪するか Phalen/Durkan 病歴・分布と誘発症状が一致するか確認
母指側痛 橈骨茎状突起周囲か、母指基部・舟状骨周囲か Finkelstein 疼痛部位が普段の症状と一致するか確認
尺側痛 圧痛部位、回内外、尺屈、荷重との関係 Fovea sign/Ulnocarpal stress/DRUJ ballottement 圧痛・荷重痛・不安定性を分けて整理
外傷 受傷機転、舟状骨周囲の圧痛・腫脹 舟状骨周囲の圧痛所見 骨折疑いなら誘発を増やさず共有

A4記録シート・Excel|評価条件をそろえて残す

手関節・手部の評価では、テスト名だけでなく、主症状の部位、しびれの分布、増悪動作、外傷歴、比較条件、何がどこに再現したかまで残すと再評価しやすくなります。v2記録シートは、症状から候補を絞り、結果・根拠・追加評価・医師共有まで1枚で整理するための記録補助です。

PDF|そのまま印刷・記録したい場合

A4縦1ページです。印刷して手書きで使用する場合はこちらをご利用ください。

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Excel|施設用に編集したい場合

Excel原本です。施設内の運用や記載欄に合わせて編集したい場合はこちらをご利用ください。

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※本シートは記録補助用です。単独のテスト・所見のみで診断を確定するものではありません。詳細な実施方法や解釈は本文および施設手順をご確認ください。

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正中神経領域のしびれ|Phalen・Durkanは病歴と合わせてみる

母指・示指・中指を中心としたしびれや感覚異常、夜間から起床時に目立つ症状がある場合は、手根管症候群(CTS)を候補にします。Phalen testやDurkan carpal compression testは代表的な誘発テストですが、どちらか一方の陽性だけでCTSと確定するものではありません。

実施前に症状分布を確認し、テストでは単に「手関節が痛い」ではなく、普段感じているしびれ・感覚異常が同じ分布に再現または増悪したかを記録します。病歴と結果が一致しない場合は、別の誘発所見や神経学的評価を追加して考えます。

CTSを疑うときに記録するポイント
項目 確認する内容 記録例
症状分布 どの指・部位にしびれがあるか 母指〜中指を中心にしびれ
誘発症状 普段の症状が再現したか 正中神経領域のしびれ再現(+)
条件 テスト名、肢位、時間 Phalen、保持__秒で症状再現

母指側痛|Finkelsteinの前に痛みの場所を固定する

母指使用や把持で橈骨茎状突起周囲の疼痛が増悪する場合は、ドケルバン病を候補にFinkelstein testを検討します。ただし、「母指側が痛い」という情報だけでは十分ではありません。母指CM関節周囲、解剖学的スナッフボックス、橈骨茎状突起周囲では想定する病態が異なるため、まず疼痛部位を一点化します。

また、Finkelstein testとEichhoff testは同一の手技ではありません。どちらを実施したのかを区別し、疼痛を強く誘発すること自体を目的にせず、普段の症状と同じ部位の痛みが再現したかを確認します。

尺側手関節痛|圧痛・荷重痛・DRUJを分けて確認する

尺側手関節痛では、最初からTFCC損傷だけに絞らないことが重要です。尺側痛には複数の病態が含まれるため、圧痛部位、荷重による症状再現、回内外との関係、左右差、不安定性を分けて整理します。

尺側手関節痛で使い分ける代表的なテスト・所見
テスト・所見 主に確認すること 記録のポイント
Ulnar fovea sign 尺骨小窩部の圧痛と症状再現 圧痛部位、普段の痛みとの一致、左右差
Ulnocarpal stress test 尺側への荷重で疼痛が再現するか 負荷条件と再現した疼痛部位
DRUJ ballottement test 遠位橈尺関節の不安定性 左右差、不安定性、疼痛の有無を分けて記録

Ulnar fovea signやUlnocarpal stress testは、陽性であっても病態を1つに確定できる所見ではありません。「TFCCテスト陽性」と一括りにせず、何を確認したテストなのか、どの症状が再現したのかを記録します。

外傷+舟状骨周囲痛|誘発を増やすより見逃し回避を優先する

転倒して手をついた、手関節を強く反らした、強い衝撃を受けたなどの外傷後に橈側手関節痛がある場合は、舟状骨骨折を見逃さないことが優先されます。

確認するのは、受傷機転に加えて、解剖学的スナッフボックスや舟状骨結節など舟状骨周囲の圧痛、腫脹、疼痛です。骨折が疑われる状況では、疼痛誘発を繰り返して疾患を確定しようとせず、施設の手順に従って医師へ共有し、必要な画像評価につなげます。

外傷後の舟状骨周囲痛:見逃し回避の確認事項
確認項目 記録する内容 次の判断
受傷機転 転倒、手をついた、過伸展、強い衝撃など 骨折が疑われる場合は誘発を増やさず、医師共有・画像評価へつなぐ
圧痛 スナッフボックス・舟状骨周囲の限局した圧痛
局所所見 腫脹、疼痛、機能低下

記録の型|「テスト名+陽性」だけで終わらせない

初回評価と再評価を比較できる記録にするには、①主症状、②実施条件、③再現した症状・所見、④次の判断をそろえます。「Phalen(+)」だけでは、何がどこに再現したのか、前回と同じ条件だったのかが分かりません。

手関節・手部テストの記録に残す4項目
項目 残す内容 記録例
主症状 部位・分布・増悪動作 母指〜中指のしびれ、夜間増悪
条件 テスト名、肢位、時間、負荷 Phalen、保持30秒
結果 何が、どこに、いつ再現したか 18秒で普段と同じしびれを再現
次の判断 追加評価、医師共有、再評価 症状分布と整合を確認し追加評価へ

よくある失敗|テストを増やす前に条件をそろえる

手関節・手部で評価がまとまらなくなる原因は、テスト数の不足よりも、症状の主語と実施条件がそろっていないことにあります。

手関節・手部テストで避けたい3つの失敗
よくある失敗 問題 修正すること
テストを次々追加する どの症状・所見を確認しているか分からなくなる 主症状から候補を絞る
局所痛だけで陽性扱いする 目的と異なる症状が混ざる 普段の症状の部位・分布との一致を確認する
条件を記録しない 再評価で比較できない 肢位、時間、負荷、左右差を残す

中止・共有|外傷や神経・循環異常では安全確認を優先する

急性外傷後の著明な腫脹・変形、強い圧痛、急激な神経症状や循環異常などがある場合は、整形外科テストを網羅することより安全確認を優先します。特に骨傷が疑われる状況では、無理に疼痛を再現せず、施設手順に従って医師へ共有してください。

また、誘発テストの結果と症状分布が一致しない場合も、陽性テストを増やして特定の疾患名へ合わせるのではなく、評価範囲を戻して別の候補を確認します。

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。

PhalenとDurkanはどちらから行うべきですか?

「必ずPhalenから」という固定順序で考える必要はありません。まず症状分布と病歴を確認し、代表的な誘発テストを選びます。結果だけでは判断しにくい場合に別の所見を追加し、普段の症状がどの条件で再現したかを記録することが重要です。

FinkelsteinとEichhoffは同じテストですか?

同一ではありません。両者は手技が異なるため、どちらを実施したのかを区別します。強い痛みを出すことではなく、橈骨茎状突起周囲の普段の症状が再現したかを確認します。

Ulnar fovea signが陽性ならTFCC損傷ですか?

それだけでは確定できません。尺側手関節痛には複数の原因があり、Ulnar fovea signの診断性能も対象や研究によって異なります。圧痛部位、荷重時痛、DRUJの安定性、外傷歴などと合わせて解釈します。

外傷後に舟状骨周囲が痛い場合、テストを続けてもよいですか?

骨折を疑う外傷機転と舟状骨周囲の圧痛などがある場合は、疼痛誘発を繰り返すより見逃し回避を優先します。施設の手順に従って医師へ共有し、必要な画像評価につなげてください。

次の一手|全体像か代表テストの各論へ進む

このページで症状別の候補を整理できたら、次は目的に応じて1つだけ深掘りします。


参考文献

  1. American Academy of Orthopaedic Surgeons. Management of Carpal Tunnel Syndrome: Evidence-Based Clinical Practice Guideline. Rosemont, IL: AAOS; 2024. AAOS
  2. Wu F, Rajpura A, Sandher D. Finkelstein’s Test Is Superior to Eichhoff’s Test in the Investigation of de Quervain’s Disease. J Hand Microsurg. 2018;10(2):116-118. doi:10.1055/s-0038-1626690. PubMed
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  5. Nakamura R, Horii E, Imaeda T, Nakao E, Kato H, Watanabe K. The ulnocarpal stress test in the diagnosis of ulnar-sided wrist pain. J Hand Surg Br. 1997;22(6):719-723. doi:10.1016/S0266-7681(97)80432-9. PubMed
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  7. British Society for Surgery of the Hand. Scaphoid fractures: BSSH Trauma Standards. BSSH
  8. Mallee WH, Henny EP, van Dijk CN, Kamminga SP, van Enst WA, Kloen P. Clinical diagnostic evaluation for scaphoid fractures: a systematic review and meta-analysis. J Hand Surg Am. 2014;39(9):1683-1691.e2. doi:10.1016/j.jhsa.2014.06.004. PubMed

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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