Jendrassik 操作と反射誘発のコツ【出ない時の対処】

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Jendrassik 操作の位置づけ(ピラー連携)

Jendrassik(ジェンドラシック)操作は、深部腱反射(DTR)が出にくいときに反応を高める補助手段です。特に下肢の膝蓋腱( KJ )やアキレス腱( AJ )で有効で、検者の打鍵や被検者の緊張に左右される検査を“標準化”へ近づけます。

ただし、反射の有無・程度は 0〜4+ の判定だけでなく、左右差や誘発条件を含めて解釈します。本稿では標準手順→代替手段→判定・記録→トラブル対処の順で実装できる形に整理します。総論は 反射検査 完全ガイド を参照ください。

臨床と学習を最短化 → PTキャリアガイド

標準手順(下肢 DTR)

①体位:端座位で下腿をぶら下げ、脱力を確認。②説明:歯は食いしばらないことを伝える。③手順:両手の第 2~3 指をフック状に組み、合図に合わせて素早く水平に引き合う。持続はおよそ 2 秒。④検者は合図の直後に腱を軽快に打鍵します(強打しない)。

KJ は膝蓋腱中央、 AJ は軽い背屈位で腱を打鍵します。打鍵角度は腱に対し斜め 45° 前後、連打は避けます。上肢では注意分散課題(握り拳など)を優先し、必要時のみ同様の発揮課題を応用します。関連記事:実施環境・姿勢・打鍵

誘発手段の比較(使い分け)

Jendrassik 以外にも、注意分散・呼吸・軽ストレッチなどの手段で反応を引き出せます。患者の疼痛や不安、筋緊張の強さに応じて選択し、誘発条件を記録して再現性を担保します。

誘発手段の比較(成人・2025 年版)
手段 やり方 有効な場面 注意点
Jendrassik 両手を組み、合図で素早く引き合う KJ・AJ の反応増強に有効 食いしばり禁止、連続反復は避ける
注意分散 上肢:握り拳/足踏み 等 緊張が強いとき、上肢 DTR 課題が強すぎると代償が出る
呼吸誘導 呼気に合わせて打鍵 力みや疼痛があるとき 過換気にならないよう配慮
軽ストレッチ 腱のテンションを軽く整える 腱の位置が取りにくいとき 過度な牽引は禁物

判定と記録(0〜4+・略記の統一)

誘発の有無で所見が変わる場合は、通常条件 → 誘発条件の順に記録します。例:KJ 1+/4 → 2+/4( JM+ )/ AJ 0/4 → 1+/4( JM+ )。左右差は 1 段階以上で臨床的意味を持ちやすく、再現性の確認が必須です。

略記は院内で統一します(KJ=膝蓋腱、AJ=アキレス腱、JM= Jendrassik maneuver)。判定基準の詳細は 反射スコア 0〜4+ の判定 を参照し、SOAP では誘発条件( JM/注意分散/呼吸など)を必ず併記します。

出ない/出すぎる時の対処

出ない:脱力不足、腱テンション過多、打鍵面のズレ、不安・寒冷。→ 体位再調整、腱の触診でランドマーク再確認、声かけ、呼吸誘導、注意分散、 JM を順に試行。反応が出ても弱い場合は連打せず数十秒おいて再確認します。

出すぎる:痛み・恐怖・力みで反応が過大化。→ 誘発を中止し、打鍵を軽く、呼気タイミングへ変更。痙縮が強い場合は姿勢やタスクを調整し、関連:痙縮評価( MAS/MTS ) を参照します。

禁忌・注意(安全第一)

術後直後・深部静脈血栓が疑われる下肢・強い疼痛や皮膚損傷部位では JM を行いません。顎口腔の食いしばりや Valsalva を誘発しないよう、事前に歯を噛みしめないことを明示します。抗凝固療法中は皮下出血に配慮します。

動画記録は同意を得て最小限に。高齢者・骨粗鬆症では姿勢保持具を活用し、転落リスク評価を先に実施します。

参考文献

  • Ertuglu LA, Karacan I, Yilmaz G, Türker KS. Standardization of the Jendrassik maneuver in Achilles tendon tap reflex. Clin Neurophysiol Pract. 2017;3:1–5. DOI | PubMed
  • Passmore SR, Bruno PA. Anatomically remote muscle contraction facilitates patellar tendon reflex reinforcement while mental activity does not: a within-participants trial. Chiropr Man Therap. 2012;20:29. DOI | PubMed
  • Hayes KC, Sullivan J, Gandevia SC. Jendrassik maneuver facilitation and fractionated patellar reflex times. J Appl Physiol. 1972;32(3):290–295. DOI
  • Zimmerman B, Menon RS. Deep Tendon Reflexes. In: StatPearls [Internet]. 2025–. PubMed

略語凡例:DTR=深部腱反射、KJ=膝蓋腱、AJ=アキレス腱、JM= Jendrassik maneuver。

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