令和 8 年改定:リハ書類の簡素化と「総合計画評価料」見直し
令和 8 年度の診療報酬改定に向けた議論(案)では、リハビリテーションに係る書類の簡素化が論点に入り、リハビリテーション総合計画評価料の評価等を見直す方向性が示されています。現場目線では「様式・記載項目・説明/交付の運用」が変わり得るため、早めに“詰まりどころ”を潰しておくと安全です。
本記事では、現時点で公表されている議論の整理(案)の範囲で、何が変わりそうか/なぜ論点化したのか/現場が今から整えるべきポイントを、過不足なくまとめます(最終決定の点数・要件・様式は今後の中医協で変わり得ます)。
結論:何が変わりそう?(今わかっている範囲)
議論の整理(案)では、「リハに係る書類の簡素化」の観点から、リハビリテーション総合計画評価料の評価等を見直すとされています。つまり、現場の負担が大きい“計画書まわり”を、より実態に合わせて整理する方向性です。
ただし現時点では点数・算定要件・様式番号などの具体は未公表です。よって本記事では、運用に影響が出やすいポイント(記載項目、説明・交付、更新頻度、電子化/押印)に絞って、準備の優先順位を提示します。
なぜ「書類の簡素化」がリハの論点に入ったのか
リハの計画書は、患者・家族への説明、チーム内共有、退院/移行先との連携に必須です。一方で、記載負担が大きい/同じ内容を複数文書に重複記載しがちという課題もあります。ここが改善されると、“書く時間”を減らして“診る時間”に戻すことができます。
改定議論の全体像でも、医療 DX や業務の簡素化(様式の簡素化、署名・押印の見直し等)が横断テーマとして挙げられており、リハ領域でも同様の流れが来るのは自然です。
現行の「リハ総合計画評価料」をざっくり整理
現行のリハ総合計画評価料は、多職種で計画を策定し、計画に基づくリハの効果・実施方法等を共同して評価する枠組みです。臨床的には「チームで目標と手段を揃え、経時で見直す」ための“土台”になります。
ただ現場では、①記載量 ②更新のタイミング ③説明・交付の運用 ④他書類との重複がボトルネックになりやすいのも事実です。今回の見直しは、ここを制度側から整理する可能性があります。
見直しで起こり得る変更パターン(仮説)
以下は「議論の整理(案)=方向性」から逆算した想定です(確定情報ではありません)。ただし、準備の打ち手としては有効なので、施設内での検討材料にしてください。
| 想定される方向性 | 今やること(最短) | よくある失敗 | 現場のコツ |
|---|---|---|---|
| 重複項目の削減/統合 | 計画書・サマリ・指導文書の重複欄を棚卸し | 部署ごとに“独自欄”を増やしてしまう | 最初に「必須項目」と「任意」を線引き |
| 説明・交付の運用の明確化 | 誰が、いつ、何を説明するかを 1 枚に整理 | 説明はしたが、記録が散らばる | 説明記録の定型文を 2〜3 本だけ用意 |
| 電子化/署名・押印の見直し | 電子署名・同意の運用(院内ルール)を確認 | 紙運用に戻って“二重管理”になる | 紙は「例外のみ」にして原則を固定 |
| アウトカム・訓練内容との整合 | 評価(指標)と目標、介入内容の対応を点検 | 目標が抽象的で、介入とつながらない | 「評価→課題→介入→再評価」を 1 行で書く |
現場の詰まりどころ(ここで止まる)
詰まりどころ 1:書類が“作ること”が目的化する
忙しいほど「埋める」ことが目的になり、患者の目標・生活背景が薄くなりがちです。まずは目標(生活で何ができるようになるか)を 1 行で固定し、介入と評価をそこに寄せると迷いが減ります。
詰まりどころ 2:説明の質が人依存になる
説明内容が人でバラつくと、クレームや再説明の増加につながります。新人でも回るように、説明の型(要点 3 つ+次回までの宿題)を決めておくのが安全です。現場の型づくりに不安がある方は、面談準備のチェック類も使いつつ整理すると早いです(院内の進め方の棚卸しに役立ちます)。マイナビコメディカルの資料を見て整理する
関連論点:訓練内容に応じた評価(同じ方向を向く話)
今回の「書類の簡素化」は単独で起きるというより、“質の評価”をどう設計するかとセットで進む可能性があります。すでに同じ章で、疾患別リハを訓練内容に応じた評価に見直す論点も挙がっています。関連として、先にこちらを押さえておくと全体像がつながります。令和 8 年改定:訓練内容に応じた評価の見直し
今からできる準備チェックリスト
制度の確定を待つ間に、やれることは「棚卸し」と「統一」です。ここを先に整えると、改定が出た瞬間の実装が速くなります。
- 計画書・退院指導・サマリの重複項目を洗い出した
- 説明・交付の担当とタイミングが決まっている
- 評価指標(例:ADL、歩行、嚥下など)と目標が1 対 1 で紐づく
- 電子化する場合の院内ルール(同意、署名、保存)が確認できている
- 監査・算定で問われやすい観点(整合性、更新、説明記録)の記録の置き場が決まっている
よくある質問(FAQ)
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Q1. いつから変わりますか?
A. 現時点は「議論の整理(案)」段階で、点数・要件・様式などの詳細は未確定です。通常は改定の告示・通知が出た後、施行日から運用が始まります。まずは「変わる可能性が高い論点」として、施設内準備を進めるのが現実的です。
Q2. 書類が減ると、質が下がりませんか?
A. “書く量”が減っても、目的(目標共有・経時評価・連携)が保たれていれば質は下がりません。むしろ重複記載が減るほど、要点が明確になりやすいです。ポイントは「評価→課題→介入→再評価」の整合性です。
Q3. いまの運用で一番リスクが高いのは?
A. 多いのは「説明したが、どこに記録したか不明」「計画と実施内容がずれている」「更新のタイミングが曖昧」です。まずは説明・更新のルールを固定し、記録の置き場を 1 つに寄せるのが安全です。
次の一手(やる順番)
次にやることは 3 つです。①重複項目の棚卸し ②説明・交付の運用統一 ③評価と介入の対応づけ。あわせて、改定の他論点も並行で押さえると全体の設計がラクになります。
参考文献
- 厚生労働省.令和 8 年度 診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理(案).中医協 総-7(2026-01-14).PDF
- 厚生労働省.令和 6 年度診療報酬改定について(告示・通知・様式).掲載ページ
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


