PEP(陽圧呼気)とは?やり方・適応・禁忌と“やりすぎ”対策

臨床手技・プロトコル
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PEP(陽圧呼気)とは?(結論)

呼吸リハの手技を「目的→手順→記録」まで一直線で整理する。 PT キャリアガイド|臨床の組み立て方を見る

PEP( Positive Expiratory Pressure:陽圧呼気)は、呼気に抵抗をかけて気道内に軽い陽圧を作り、分泌物の移送(末梢→中枢)や換気の保ちやすさを狙う気道クリアランス手技です。咳やハフィングだけで疲れてしまうケースでも、呼吸仕事量を増やしすぎずに“痰が動く条件”を作るのが強みになります。

現場では「何 cmH₂O にするか」より、①目的(痰/無気肺予防/息切れ)、②姿勢、③回数と休息、④中止基準の設計が大切です。呼吸介助の全体像(他手技との使い分け)は、関連:用手的呼吸介助( 7 手技 )の使い分けと安全管理もあわせて確認すると迷いが減ります。

PEP の種類(現場で迷わない分類)

PEP は大きく「デバイス PEP(マスク/マウスピース)」と「バブル PEP(ボトル)」に分けて考えると、準備と指導が整理しやすいです。

PEP の種類と使い分け(成人・一般的な目安)
種類 特徴 向いている場面 注意点
デバイス PEP 一定の抵抗で陽圧を作りやすい 病棟・外来で手順を標準化したい フィット不良(リーク)で効果が落ちる
バブル PEP 水ボトルで実施しやすく、可視化(泡)が強い 在宅・自己練習、理解を促したい 水位・チューブ位置で負荷がぶれやすい
(補足) OPEP 呼気抵抗+振動(オシレーション) 分泌物が粘い/喀出困難が強い 機器依存・清潔管理が必須

適応の目安(どんなときに選ぶ?)

PEP は「痰を動かす条件」を作りたい場面で力を発揮します。典型は、分泌物があり咳だけでは疲れるケース、無気肺リスクがあり深呼吸だけでは安定しないケース、呼吸困難が強く呼気のコントロールが必要なケースです。反対に、分泌物が少なく自己喀出が十分な場合は、長時間の実施が不要なこともあります。

まずは“今日は何を改善したいか”を 1 つに絞り、短時間で効果が出る設計(回数を増やしすぎない)にするのが現場向きです。

禁忌・注意(安全管理の前提)

PEP は非侵襲ですが、呼気抵抗により胸腔内圧が上がるため、状態によっては悪化の可能性があります。ポイントは「圧を上げすぎない」「苦しくなる前に止める」です。

PEP の禁忌・注意(成人・一般例の目安)
区分 現場の対応
中止・回避 循環不安定(ショック、重篤な不整脈など)、治療抵抗性の気胸、重篤な低酸素血症、意識障害で指示理解が困難 全身管理を優先。導入は医師・上位者と合意してから。
要注意 喀血/血痰、強い胸部痛、術後早期、骨粗鬆症・肋骨痛、頭蓋内圧亢進が疑われる状態 圧と回数を最小化。短時間で評価して継続可否を決める。
破綻しやすい 過換気、不安が強い、息を止めがち 呼吸を整える説明から。休息を増やし、苦しくなる前に終了。

中止基準(ベッドサイドの実用ライン)

PEP は「続けるほど効く」ではなく、悪化サインが出たら即停止が基本です。SpO₂ と呼吸困難感の変化を軸に、続けてよい条件を明確にします。

PEP のモニタリングと中止・減量の目安(ベッドサイド)
項目 観察ポイント 中止・減量の目安
SpO₂ 安静比からの低下、回復の遅れ 90% 未満、または安静比 −4% 以上の低下が持続する
HR/血圧 過剰な上昇、不整脈、めまい HR 安静比 +20% 超、不整脈新規出現、SBP < 90 mmHg など
呼吸困難感 会話困難、補助呼吸筋の過活動 増悪したら即停止し休息(再開は短時間で)
疼痛/咳 胸部痛、咳嗽の連発 疼痛増悪・咳の制御不能は中止(圧・回数を下げて再設計)

やり方( 5〜10 分の “現場版 PEP” )

PEP のコツは「圧を上げる」より、呼気の長さと休息で“気道が保たれる時間”を作ることです。最初は短時間で OK、効果が出たら少しずつ整えます。

0)準備( 30〜60 秒 )

  • 体位:セミファウラー〜端座位(息切れが強い場合は前傾位)。
  • 確認:SpO₂、HR、呼吸数、呼吸困難感( 0–10 )、疼痛。
  • ゴール:今日は「痰を動かす」「呼吸を楽にする」など 1 つに絞る。

1)呼吸の作り方(基本)

  • 吸気:静かに鼻から(頑張りすぎない)。
  • 呼気:口すぼめ気味に、抵抗に逆らいながらゆっくり長く(息を止めない)。
  • 回数: 6〜10 呼吸 → 休息( 20〜40 秒 )を 1 セットとして考える。

2)回数の目安(最小で効かせる)

まずは 2〜4 セット(合計 5〜10 分)で十分です。苦しくなる前に止める方が継続しやすく、結果的に効果が出ます。

3)痰が動いたら(ハフィング/最小の咳)

PEP で「ゼロゼロ音が上がる」「胸の奥が動く」などのサインが出たら、ハフィングを 1〜2 回(必要最小限)入れてまとめます。咳を連発すると疲労で破綻しやすいので、まずは “少ない回数で出す” を目標にします。

うまくいかない原因(詰まりどころ)

PEP が効かないときは、圧設定よりもリークやりすぎが原因になりがちです。次の 3 点を優先して調整します。

  • 口/マスクの密閉が甘い(リーク):陽圧が作れず、ただの呼気になっている。
  • 回数が多すぎる:過換気や疲労で、むしろ痰が動かなくなる。
  • 呼気が短い:抵抗をかけても“保つ時間”が足りない。

よくあるミスと修正(早見表)

PEP の「失敗→修正」早見(ベッドサイド)
よくあるミス 起きやすい状況 修正ポイント
回数を増やしすぎる 痰を急いで出したい 6〜10 呼吸で 1 セット、休息を必ず入れる。まず 5〜10 分で終了。
息を止めてしまう 頑張りすぎ/不安が強い 吸気も呼気も “止めない”。説明→デモ→一緒に 3 呼吸から。
リークがある マスクが合わない/口が開く 密閉を優先。マウスピースは唇の保持、バブル PEP はチューブ位置を確認。
呼気が短い 息切れが強い 姿勢を前傾に戻し、呼気を “少し長く” だけ狙う。圧は上げない。
SpO₂ が下がる 長すぎる/強すぎる 即停止→休息。次回はセット数を減らして短時間で終了。

記録の取り方(最低限のテンプレ)

再現性を上げるには、設定値よりも「目的・反応・次回の調整点」を残すのが効果的です。最低限、以下をセットで記録します。

  • 目的:排痰/無気肺予防/呼吸困難の軽減 など( 1 つ )
  • 実施:体位、 1 セットの呼吸回数、セット数、休息の取り方
  • 反応:SpO₂、HR、呼吸困難感( 0–10 )、咳・ハフィング回数
  • 分泌物:量(少/中/多)、性状(粘稠度・色調)
  • 次回:回数を減らす/休息を増やす/体位を変更 など 1 行

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. PEP は「圧を高く」した方が効きますか?

圧を上げるほど苦しくなりやすく、過換気や疲労で破綻しやすくなります。まずは呼気をゆっくり長くし、休息を入れて短時間で終える設計が優先です。

Q2. バブル PEP は水位で負荷が変わりますか?

変わります。水位やチューブの深さで抵抗が変動するため、同じ条件にそろえることが大切です。最初は “泡が安定して出る” 程度の負荷で十分です。

Q3. いつ咳(ハフィング)を入れればいいですか?

PEP の後に「痰が動く感触」「ゼロゼロ音が上がる」などのサインが出たら、ハフィングを 1〜2 回入れてまとめます。咳の連発は避け、最小回数を狙います。

Q4. 何分くらいやればいいですか?

目安は 5〜10 分です。苦しくなる前に切り上げて次回につなぐ方が、結果的に継続できて効果が出やすくなります。

おわりに

PEP は「安全の確認 → 呼気を整える → 短いセットで反応を見る → 痰が動いたら最小のハフィング → 再評価」というリズムを守るほど、少ない回数でも効果が出やすくなります。明日の介入につなげるために、目的と反応を 1 行で残し、次回は “やりすぎない” 設計から始めてみてください。

参考文献

  1. Strickland SL, Rubin BK, Drescher GS, et al. AARC clinical practice guideline: effectiveness of nonpharmacologic airway clearance therapies in hospitalized patients. Respir Care. 2013;58(12):2187-2193. DOI: 10.4187/respcare.02925. PubMed: PMID:24222709
  2. McCool FD, Rosen MJ. Nonpharmacologic airway clearance therapies: ACCP evidence-based clinical practice guidelines. Chest. 2006;129(1 Suppl):250S-259S. DOI: 10.1378/chest.129.1_suppl.250S. PubMed: PMID:16428718
  3. Hill AT, Sullivan AL, Chalmers JD, et al. British Thoracic Society guideline for bronchiectasis in adults. BMJ Open Respir Res. 2018;5(1):e000348. DOI: 10.1136/bmjresp-2018-000348
  4. Herrero-Cortina B, Lee AL, Oliveira A, et al. European Respiratory Society statement on airway clearance techniques in adults with bronchiectasis. Eur Respir J. 2023. DOI: 10.1183/13993003.02053-2022

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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