呼吸評価の実務ガイド:理学療法士

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呼吸器系
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リハビリくん
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サイト管理者のリハビリくんと申します。

この記事の内容
  1. この記事は「呼吸評価」をキーワードに内容を構成しています。
  2. 呼吸評価は「換気・ガス交換・ポンプ機能・症状/機能」を統合して、患者のいまを把握し介入へつなぐ意思決定のプロセスです。
  3. 本記事は理学療法士が病棟・外来・在宅のいずれでも“すぐ使える”ように、観察の着眼点、スパイロの解釈、呼吸筋機能(MIP/MEP・SNIP)、咳嗽力(PCF)、主観評価(mMRC/Borg/D-12)、運動耐容能(6MWT/ISWT/CPET)までを実務ベースで整理しました。
  4. 結果は運動処方・酸素調整・排痰戦略・体位/活動量設計へ直結させ、再評価で変化を追うことをめざします。
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理学療法士として以下の経験と実績を持つリハビリくんが解説します♪

リハビリくんの実績
  1. rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設
  2. 2025 年 9 月時点:190 記事公開(月間 3 万 PV)
  3. 実務経験(医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリ等)
  4. 講師活動(脳卒中、褥瘡等をテーマに複数回講演)
  5. 脳卒中 認定理学療法士
  6. 褥瘡 創傷ケア 認定理学療法士
  7. 3 学会合同呼吸療法認定士
  8. 福祉住環境コーディネーター 2 級
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呼吸評価の目的と全体像

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呼吸評価は「換気・ガス交換・ポンプ機能・症状/機能」の 4 側面を統合し、病態の現在地と介入目標を明確にする作業です。

理学療法士は観察でリスクを見抜き、スパイロで閉塞・拘束・混合を同定し、呼吸筋機能と咳嗽力でクリアランス能力を推定、主観的呼吸困難感と運動耐容能で活動性を定量化します。

所見は単独で判断せず、時間軸の変化と他指標との整合で解釈します。結果は運動処方・酸素チューニング・排痰戦略・体位/活動量設計へ直結させます。

観察とフィジカルアセスメント

呼吸数・リズム・吸気 / 呼気比・奇異呼吸、補助筋使用、口唇呼吸、チアノーゼ、起座位依存、胸郭左右差、咳嗽の質を観察します。聴診では連続性 / 断続性副雑音の分布を把握することが重要です。

SpO₂ は体位・会話・歩行での変化を拾い、安静低下や労作での著明低下は追加評価のトリガーになります。見た目の息切れと患者の訴えを同時記録し、後段の Borg / mMRC / D-12 との整合を見ると変化検出の感度が上がります。

スパイロメトリー:パターン同定と注意点

FEV₁・FVC・FEV₁/FVC で 閉塞 / 拘束 / 混合 を分類し、経時変化で病勢と治療反応性を確認します。

装置校正、反復性(≥ 3 回)・受け入れ基準、参照値の適用、努力不足や咳のアーチファクト排除を徹底します。

運動負荷前後や体位変更での変化も記録し、呼吸理学療法の即時効果を客観化します。解釈は FEV₁ に依存せず、症状・歩行試験・呼吸筋所見と統合して意思決定します。

現場Tips

  • 測定前の実演+ 1 回練習で努力不足を減らす
  • 体位(端座位↔立位)は一定にする
  • 追跡は同一機器・同一時間帯で行う

呼吸筋機能:MIP/MEPとSNIPの使い分け

MIP/MEP(口腔最大圧)と SNIP(鼻吸気スニッフ)を併用すると感度が向上します。

MIP は努力依存で過少評価に注意、SNIP は短く自然な努力で実施しやすく、MIP 低値の“真の弱さ”鑑別に有用です。

吸気筋弱化は労作時呼吸困難・咳嗽力低下・無気肺リスクと関連し、IMT や体位、スプリント負荷などの介入適応検討につながります。

手順と判定

  • MIP / MEP:標準化手順・漏れ防止・鼓膜痛に配慮します。
  • SNIP:一側鼻栓、鋭いスニッフ、10 ~ 20 回で最良値を採用します。

咳嗽・排痰能力:ピークカフフロー(PCF)

PCF は排痰の実行可能性を判断するキー指標です。概ね 160 – 200 L/分 未満は無効咳嗽、250 ~ 270 L/分 以上で自力排痰が概ね可能とされます。160 ~ 270 L/分 の“グレーゾーン”では補助的排痰法の検討余地があります。

日内変動も踏まえて複数回測定し、体位・補助呼吸・気道クリアランス介入の前後で再評価します。肺合併症予防の観点でも重要です。

呼吸困難感の主観評価:mMRC/Borg/D-12

mMRC は ADL 層別化に有用、Borg CR10 は運動中の強度調整に適し、D-12 は「身体的+情動的成分」を同時に定量化できるのが強みです。

急性変化の追跡には Borg、長期フォローには mMRC や D-12 併用が実用的となります。評価は同じタイミング・同じ説明で反復し、歩行試験や SpO₂と合わせて解釈します。

関連:呼吸筋サルコペニア

運動耐容能評価:6MWT/ISWT/CPET

6MWT は 30 m コース・標準化励まし・休止可で、SpO₂は連続監視が推奨。SpO₂ が 80 % 未満に低下した場合は中止し、85 % 以上に回復後再開を検討します。

ISWT は負荷漸増、CPET は換気効率・酸素パルス等で限界因子を特定し処方と予後評価に有用です。前後 Borg、歩行距離、最低 SpO₂を常に記録し、MCID や日内差に配慮しながら運動処方・酸素流量の調整(医師連携)に橋渡しします。

記録テンプレ(例)

  • 6MWD ○○m/最低SpO₂ ○○%/Borg 事前x→事後y/途中休止●回/所見メモ

関連:運動強度(METS)

結果の活用:処方・体位・連携・記録

所見は SOAP で構造化し、短期指標(Borg・SpO₂・PCF)と中期指標(6MWD・D-12・スパイロ)をセットで追跡します。

PCF 低値はクリアランス優先、D-12 高値は情動成分への説明・ペーシング訓練を併設、MIP/SNIP 低値は吸気筋トレーニング適応のカンファ材料にします。

再評価は同一条件で実施し、多職種と共有、退院・在宅移行では 6MWD・最低 SpO₂・PCF・D-12 等の数値を引き継ぎます。

クイックリファレンス(現場用)

項目 目安・中止基準 運用ポイント
PCF(ピークカフフロー) <160–200 L/分:無効咳嗽の可能性/≥250–270 L/分:概ね自力排痰可 日内変動あり。体位・補助呼吸・排痰介入の前後で再測。訪問でも簡便測定可。
6MWT 中止目安:SpO₂ < 80%(回復後に再開可) 30 mコース、標準化励まし。連続SpO₂監視、最低SpO₂と6MWDを必ず記録。
主観的呼吸困難感 mMRC:ADL層別/Borg CR10:運動中強度調整/D-12:身体+情動成分 同じタイミング・同じ説明で反復し、歩行試験やSpO₂と統合解釈。
 

まとめ

呼吸評価は単発の数値ではなく、所見同士の「整合」と「時間変化」で読むことが要点です。観察でリスクを素早く拾い、スパイロでフェノタイプを同定し、MIP / MEP と SNIP で呼吸筋弱化を補足、PCF で排痰の実行可能性を確認します。

主観的呼吸困難感(mMRC / Borg / D-12)と運動耐容能(6MWT / ISWT / 必要時 CPET)を併せて、目標設定と運動処方・酸素流量・排痰戦略・体位 / 活動量設計へ反映しましょう。再評価は同一条件で行い、SOAP に構造化して多職種と共有することで、介入の質と患者アウトカムの両方を高められます。

 

mMRCとBorgの使い分け

日常・運動時の息切れ評価を整理。臨床での組み合わせと記録例。

 

 

コンディショニングと呼吸リハ

体位・呼吸パターン・排痰の基礎。病棟〜在宅で使える実践ポイント。

 

参考文献

  1. Graham BL, et al. Standardization of Spirometry 2019 Update. Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(8):e70–e88. DOIPubMed
  2. Laveneziana P, et al. ERS statement on respiratory muscle testing. Eur Respir J. 2019;53(6):1801214. DOIPubMed
  3. Holland AE, et al. ERS/ATS Technical Standard: Field Walking Tests. Eur Respir J. 2014;44(6):1428–46. DOIPDF
  4. Bestall JC, et al. Validity of the mMRC dyspnoea scale. Thorax. 1999;54(7):581–6. DOIPubMed
  5. Yorke J, et al. Dyspnoea-12. Thorax. 2010;65(1):21–26. DOIPubMed
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