介護保険の住宅改修とは|20万円・対象6種類・申請手順

制度・実務
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介護保険の住宅改修は「20万円・6種類・事前申請」を先に確認します

介護保険の住宅改修費は、要支援・要介護認定を受けた方が自宅で安全に生活するための改修について、原則として同一住宅・被保険者につき20万円までを支給対象とする制度です。対象は手すりの取付けや段差の解消など6種類で、着工前の申請が基本です。この記事では、対象工事、自己負担、申請手順、再支給、対象外になりやすい工事、自治体へ確認する項目を実務の順番で整理します。

最終更新:2026-07-23

住宅改修を選ぶ前に、福祉用具との使い分けを確認する

住宅改修と福祉用具の判断軸を見る

最初に確認するのは、次の3点です。

  • 対象者:要支援または要介護認定を受け、改修する住宅に居住しているか
  • 対象工事:国が定める6種類の住宅改修または必要な付帯工事に該当するか
  • 申請時期:自治体の事前確認を受ける前に着工していないか
介護保険の住宅改修で申請前に確認する対象者・対象工事・申請の流れ
介護保険の住宅改修で申請前に確認する3つのポイント

住宅改修の必要性があっても、工事内容や申請順序が制度の要件と合わなければ支給対象にならないことがあります。まず対象動作と改修目的を決め、見積書・図面・施工前写真・住宅改修が必要な理由書をそろえて市区町村へ申請します。

介護保険の住宅改修費は原則20万円が支給限度です

介護保険の住宅改修費には、原則として同一住宅・被保険者につき20万円の支給限度基準額が設定されています。20万円がそのまま給付されるのではなく、対象工事費のうち所得に応じた7〜9割が保険給付となり、利用者は1〜3割を負担します。

介護保険による住宅改修費の基本
確認項目 基本的な取扱い
対象者 要支援または要介護認定を受けた被保険者
対象住宅 原則として被保険者証に記載された住所の住宅
支給限度基準額 原則20万円
保険給付 対象工事費の7〜9割
利用者負担 所得に応じて1〜3割
利用回数 20万円の範囲内であれば複数回に分けて利用可能
申請時期 原則として着工前に申請し、工事後にも必要書類を提出

例えば、対象工事費が20万円で自己負担割合が1割の場合、利用者負担は原則2万円、保険給付は18万円です。対象工事費が30万円でも、支給限度基準額を超えた10万円分は全額自己負担になります。

「生涯に一度だけ20万円」と理解されることがありますが、転居した場合や、一定の要介護状態区分の上昇が認められた場合には、例外的に再度支給限度基準額が設定されることがあります。

対象となる住宅改修は6種類です

介護保険の対象となる住宅改修は、次の6種類です。設備を新しくすること自体ではなく、被保険者の自立支援や介護負担の軽減に必要な改修であることが求められます。

介護保険の対象となる6種類の住宅改修
住宅改修の種類 代表例 申請前に確認すること
手すりの取付け 玄関、廊下、トイレ、浴室などへの手すり設置 対象動作、取付位置、高さ、方向、壁の下地
段差の解消 敷居の撤去、床のかさ上げ、スロープの設置など 段差の実測値、移動方法、福祉用具で代替できるか
床材・通路面材料の変更 滑りにくい床材への変更、畳から板材への変更など 滑りやすさ、移動方法、施工範囲の必要性
扉の取替え 開き戸から引き戸・折れ戸への変更、ドアノブの変更 有効開口幅、開閉時の姿勢、車椅子や歩行器の通過
便器の取替え 和式便器から洋式便器への変更など 立ち座り能力、便座高、移乗方法、手すりとの位置関係
各工事に付帯して必要な工事 手すり設置のための下地補強、扉取替えに伴う壁の改修など 主工事との関係、必要な範囲、見積書の内訳

付帯工事は単独で認められるものではなく、対象となる主工事を行うために必要な範囲で判断されます。見積書では、対象となる主工事、付帯工事、制度対象外の工事を分けて記載してもらうと確認しやすくなります。

申請は「相談・事前申請・施工・事後申請」の順に進めます

住宅改修費の申請では、工事を始める前に市区町村の確認を受けることが基本です。工事内容だけでなく、提出する写真や図面の条件も自治体によって異なるため、見積りを確定する前に様式を確認します。

  1. 生活上の困難を確認する
    どこで、どの動作に、どのような介助や危険が生じているかを整理します。
  2. ケアマネジャー等へ相談する
    住宅改修と福祉用具のどちらが適するか、他の支援で代替できないかを検討します。
  3. 施工事業者から見積りを取る
    工事内容、数量、単価、対象工事と対象外工事の内訳を確認します。
  4. 着工前に申請する
    申請書、住宅改修が必要な理由書、見積書、図面、施工前写真などを提出します。
  5. 自治体の確認後に着工する
    申請内容から変更が生じる場合は、施工前に自治体へ相談します。
  6. 工事後の書類を提出する
    領収書、工事費内訳書、施工後写真などを提出します。
  7. 住宅改修費の支給を受ける
    償還払いまたは自治体が認める受領委任払いで支給されます。

やむを得ない事情がある場合には工事後の申請が認められることもありますが、例外的な取扱いです。「急いでいた」「制度を知らなかった」だけで認められるとは限らないため、着工前に市区町村へ相談してください。

償還払いと受領委任払いでは一時的な支払額が異なります

住宅改修費の支給方法には、利用者が工事費をいったん全額支払う償還払いと、自己負担分だけを施工事業者へ支払う受領委任払いがあります。

償還払いと受領委任払いの違い
項目 償還払い 受領委任払い
工事時の支払い 利用者が工事費をいったん全額支払う 利用者は原則として自己負担分を支払う
保険給付分 後日、自治体から利用者へ支給 自治体から施工事業者へ支給
利用条件 介護保険の基本的な支給方法 自治体が制度を実施し、登録事業者などの条件を満たす必要がある
確認先 市区町村の介護保険担当窓口 市区町村の要綱・登録事業者一覧

受領委任払いの実施状況、登録事業者の条件、委任状や同意書の様式は自治体によって異なります。利用者の一時的な負担を抑えたい場合は、見積りを依頼する前に利用できる支給方法を確認します。

20万円が再設定されるのは転居時または一定の区分上昇時です

支給限度基準額が再度設定される代表的な場面は、転居した場合と、初回の住宅改修時から要介護等状態区分が一定以上上がった場合です。

転居した場合

別の住宅へ転居した場合は、転居先の住宅について新たに20万円までの支給限度基準額が設定されます。同じ住宅内での部屋の移動や一時的な滞在が、必ず転居として扱われるわけではありません。

要介護等状態区分が3段階以上上がった場合

初回の住宅改修に着工した日の要介護等状態区分を基準として、厚生労働省が定める区分が3段階以上上がった場合には、例外的に再度20万円まで利用できることがあります。単純に認定区分の名称を3つ数えるのではなく、制度上の段階表で判定されます。

  • この例外は、原則として同一住宅につき1回です。
  • 前回の残額を新しい20万円へ上乗せすることはできません。
  • 過去の着工日と認定区分を確認してから申請します。

再支給に該当するか判断しにくい場合は、過去の住宅改修履歴と被保険者証を用意し、市区町村へ照会してください。

理由書では「動作・原因・改修・効果」をつなげます

住宅改修が必要な理由書では、身体機能の数値を並べるだけでなく、生活上の困難と工事内容の関係が分かるように記載します。

住宅改修が必要な理由を整理する4要素
要素 記載する内容 記載例
対象動作 生活のどの場面で困っているか トイレから立ち上がる際に介助が必要
困難の原因 姿勢、動線、段差、扉、支持物などの問題 前方に支持物がなく、立位へ移る際に後方へふらつく
改修内容 位置、高さ、長さ、方向、施工範囲 便器横の壁面に立ち座り用のL型手すりを設置する
期待する効果 安全性、自立度、介助量がどう変わるか 両上肢で支持でき、見守りで立ち上がれることを目指す

理学療法士が関与する場合は、対象動作を実際の環境で確認し、手すりや段差だけを個別に見るのではなく、玄関から居室、トイレ、浴室までの移動が連続して成立するかを評価します。

採寸、写真、図面、理由書作成までの確認項目は、住宅改修の家屋調査チェックリストで整理しています。

対象外または事前確認が必要になりやすい工事

6種類に似た工事であっても、老朽化への対応、設備の機能向上、必要以上に広い施工などは対象外になることがあります。工事名だけで判断せず、対象動作に必要な範囲かを確認します。

介護保険の住宅改修で確認が必要になりやすい工事
工事・費用 基本的な考え方 対応
老朽化した設備の交換 修繕や設備更新が主目的の場合は対象外になりやすい 自立支援に必要な対象工事部分と修繕部分を分ける
温水洗浄便座の追加 機能追加だけでは対象になりにくい 便器の取替えに該当する必要性があるか自治体へ確認する
取り外し可能な手すりやスロープ 工事を伴わない場合は福祉用具の対象となる可能性がある 住宅改修と福祉用具のどちらが適切か比較する
付帯工事 主工事に付随して必要な範囲だけが対象 主工事との関係を図面と見積書で示す
屋外通路の改修 住宅への出入りに必要な範囲で対象となる場合がある 移動経路、施工範囲、必要性を事前に相談する
見積書の「一式」表記 対象工事と対象外費用を確認できない 材料費、施工費、数量、単価、付帯工事を分ける
申請前に着工した工事 原則として支給対象外となる可能性が高い 着工せず、先に自治体へ相談する

自治体によって判断が分かれる可能性がある工事は、施工事業者の説明だけで進めず、図面や見積書を持って介護保険担当窓口へ事前相談します。

自治体によって支給方法や提出様式が異なります

対象となる6種類と支給限度基準額は全国共通ですが、申請様式、写真の条件、受領委任払い、施工事業者の登録制度などは自治体によって異なります。

  • 事前申請:提出方法、審査期間、着工可能となる時点
  • 理由書:自治体指定様式の有無、作成できる職種
  • 写真:撮影日、撮影方向、改修箇所の表示方法
  • 図面:寸法、手すり位置、施工範囲の記載条件
  • 見積書:内訳、単価、対象外費用の分離
  • 受領委任払い:実施の有無、登録事業者、委任状
  • 自治体独自助成:介護保険とは別の住宅改修助成の有無

自治体のページを探すときは、「自治体名 介護保険 住宅改修」に加えて、「事前申請」「理由書」「受領委任」「登録事業者」などの語を組み合わせます。

障害福祉制度の住宅改修は市町村の要件を確認します

障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業では、日常生活用具給付等事業の種目として、居宅生活動作補助用具が位置づけられています。設置に小規模な住宅改修を伴い、障害者等の居宅生活動作を円滑にするものが対象です。

ただし、対象となる障害、年齢、身体状況、工事内容、上限額、自己負担は市町村の要綱によって異なります。障害者手帳があれば一律に利用できる制度ではありません。

介護保険の対象者については、同じ目的・内容の給付に介護保険が優先されることがあります。同一工事について介護保険と障害福祉制度から重複して給付を受けることはできないため、次の順に確認します。

  1. 介護保険の住宅改修に該当するか
  2. 介護保険の対象外となる理由は何か
  3. 市町村の日常生活用具給付等事業の対象者要件を満たすか
  4. 自治体独自の住宅改修助成を利用できるか

バリアフリー改修は税制優遇の対象になる場合があります

一定の要件を満たすバリアフリー改修は、所得税の住宅特定改修特別税額控除や、固定資産税の減額措置の対象となる場合があります。

介護保険の住宅改修費を利用していても、補助金等を差し引いた工事費やその他の要件を満たせば、税制優遇を利用できる可能性があります。ただし、対象者、住宅の床面積、工事内容、工事費、居住開始日、他の控除との併用など複数の条件があります。

所得税控除を受ける場合は、確定申告書に加えて、増改築等工事証明書などの提出が必要です。制度の期限や要件は改正されるため、工事契約時ではなく、入居・申告する時点の国税庁および国土交通省の案内を確認してください。

介護保険の住宅改修でよくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

Q1. 住宅改修は必ず工事前に申請しますか?

原則として工事前の申請が必要です。市区町村が、住宅改修の必要性や対象工事への該当性を事前に確認してから着工します。やむを得ない事情による事後申請が認められる場合もありますが、例外的な取扱いであるため、自己判断で着工しないでください。

Q2. 20万円は一度に使い切る必要がありますか?

一度に使い切る必要はありません。支給限度基準額の20万円に達するまで、複数回に分けて住宅改修費を申請できます。ただし、過去の利用額や残額を自治体へ確認してから工事内容を決めます。

Q3. 要介護度が上がれば、必ず20万円を再利用できますか?

必ず再利用できるわけではありません。初回の住宅改修時を基準とした要介護等状態区分が、制度上3段階以上上がった場合に対象となります。単純な認定区分の名称だけでは判断できないため、自治体へ確認してください。

Q4. 賃貸住宅でも住宅改修費を利用できますか?

賃貸住宅でも対象となる可能性がありますが、住宅所有者の承諾が必要です。工事後の原状回復費用は介護保険の給付対象にならないため、退去時の取扱いも事前に確認します。

Q5. 家族が自分で工事した場合も申請できますか?

自治体の確認を前提として、材料費が支給対象となる場合があります。一方、家族本人の人件費は通常対象となりません。購入前に、領収書の名義、材料の内訳、施工前後写真などの条件を自治体へ確認してください。

まとめ:着工前に対象工事と申請書類をそろえます

介護保険の住宅改修費は、原則として同一住宅・被保険者につき20万円まで、手すりの取付けや段差の解消など6種類の工事に利用できます。

  • 対象動作と住宅改修の目的を先に決める
  • 6種類の住宅改修に該当するか確認する
  • 見積書、図面、施工前写真、理由書をそろえる
  • 自治体の確認を受ける前に着工しない
  • 受領委任払い、提出様式、写真要件は自治体へ確認する
  • 転居や区分上昇による再支給は過去の利用履歴を確認する

工事内容を先に決めるのではなく、「どの生活動作を、どのように安全にするか」から逆算すると、住宅改修の必要性と工事内容を説明しやすくなります。


参考資料

  1. 厚生労働省. 介護保険における住宅改修.
    PDF
  2. 厚生労働省. 日常生活用具給付等事業の概要.
    Web
  3. 国税庁. No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除).
    Web
  4. 国土交通省. 住宅をリフォームした場合に使える減税制度について.
    Web

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの経験をもとに、臨床で活用できる評価・制度・実務情報を発信しています。

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハビリテーション、リハビリテーション栄養、シーティング、摂食・嚥下

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コメント

  1. […] 例えば、玄関や廊下、トイレ、浴室などに手すりを設置することで、立ち上がりや移動を安全に行うことができます。段差を解消したり、スロープを設置することで、車椅子での移動もスムーズになります。また、床の滑り止め対策や、引き戸への変更なども、転倒予防に効果的です。以下に、住宅改修の具体的な例と、期待できる効果を示します。 住宅改修には、介護保険や障害者総合支援法による補助金制度が利用できる場合があります。[2] 詳細はお住まいの自治体や地域包括支援センターにお問い合わせください。 […]