介護保険の住宅改修を中心に、障害者総合支援法の住宅改修、バリアフリー改修の減税までを横断整理しました。理学療法士が臨床から申請まで伴走するために、対象工事・上限額・申請手順・非対象例を一気通貫で確認できます。
支援制度の全体像(介護保険・障害制度・減税)
在宅生活の自立度を高め転倒・転落を防ぐ住宅改修は、主に ① 介護保険の住宅改修費(生涯 20 万円枠・自己負担 1〜3 割)、② 障害者総合支援法の日常生活用具(居宅生活動作補助用具)における住宅改修費、③ 国のバリアフリー改修の税額控除の 3 つで支援されます。まずは介護保険の適用可否を検討し、対象外や枠超過・ 40 歳未満などは障害制度や自治体助成・減税を組み合わせます。
介護保険の対象工事は全国共通ですが、障害制度と自治体助成は市町村要綱に依存します。必要性の根拠づけは動作評価・生活動線・福祉用具との併用計画まで記述し、申請書類一式(見積・図面・写真・理由書)に反映します。
介護保険の住宅改修:対象 6 類型・上限と再支給
介護保険の住宅改修は、① 手すり取付け、② 段差解消、③ 滑り防止・移動円滑化の床材変更、④ 扉の取替(引き戸化等)、⑤ 便器の取替(洋式化等)、⑥ 付帯する必要工事の 6 類型が保険給付の対象です。支給限度基準額は生涯 20 万円(自己負担は所得に応じて 1〜3 割)で、原則は事前確認・事後の償還払いです。
例外として要介護状態区分が 3 段階上昇した場合や転居時は上限枠が再設定され、再度 20 万円まで支給可能です(残額の持越しは不可)。屋外でも玄関から道路までの通路等は目的に照らし対象になり得ます。
支給方法と申請フロー(償還払い/受領委任)
標準フローは、事前にケアマネ等と内容合意 → 見積・図面・施工前写真・理由書作成 → 市区町村へ申請 → 承認後に施工 → 施工後に領収書・完了写真等を提出 → 給付(償還払い)です。着工前の事前確認が原則で、事後は不支給リスクが高いため厳守します。
自治体により受領委任払い(代理受領)を採用している場合があり、利用者は自己負担分のみ支払い、給付分は市から事業者へ直接支払われます。多くは登録事業者が条件となるため、各市町村の要綱・事業者名簿を確認してください。
障害者総合支援法の住宅改修(日常生活用具)
介護保険の対象外となる年齢層・疾病でも、地域生活支援事業「日常生活用具給付等事業」における居宅生活動作補助用具(住宅改修費)として、市町村実施で給付・貸与の支援が受けられる場合があります。対象品目・上限額・自己負担は自治体裁量がある点に留意します。
介護保険との重複給付は不可のため、優先適用の整理と根拠づけが必要です。申請は市町村長への手続きで、給付決定後に実施します。制度根拠は厚生労働省告示(第 529 号 別紙等)を確認しましょう。
バリアフリー改修の減税(所得税ほか)
一定のバリアフリー改修に対し、住宅特定改修特別税額控除などの減税制度が利用できます。要件を満たし、令和 7 年( 2025 年 ) 12 月 31 日までに居住の事実がある改修が対象です。確定申告では補助金等の交付額を明記し、工事証明書など必要書類を添付します。
PT の視点では、控除ありきでの過大設計を避け、最小限で最大効果の改修を提案することが重要です。税制は改正があり得るため、国交省・国税庁の最新情報で確認してください。
PT の評価と設計:根拠づけのコア
改修の可否は動作のボトルネックをどう除去するかで判断します。屋内動線(玄関→居室→トイレ・浴室)の連続性、起居・移乗・歩行能力(例: TUG )、福祉用具との併用、介助量とケア体制、将来変化(進行・再発)を見立てて、高さ・位置・幅・向きを実測し理由書に落とし込みます。
浴室は「段差解消+ノンスリップ床+縦横手すり+シャワーチェア導線」、トイレは「便器更新+ L 字手すり+回転半径確保」、玄関は「式台 or スロープ+手すり+転落防止柵」など、機能の連鎖で設計するのがコツです。実務のチェックは 住宅改修の PT チェックリスト へ。
よくある非対象・注意点(審査でつまずかない)
和式→洋式の便器交換は対象ですが、既存洋式に温水洗浄便座を追加する等の機能追加のみは対象外です。非水洗→水洗化など設備本体の更新は対象外で、付帯工事は 6 類型に付随して必要な範囲のみ対象になります。
見積は対象工事と対象外工事を分離し、図面・前後写真で根拠を明確化してください。屋外は玄関〜道路の通路等が対象になり得ますが、範囲と目的の説明が重要です。
まとめ
住宅改修は、対象 6 類型・生涯 20 万円(給付 7〜9 割)・事前申請・理由書が要点です。 3 段階リセットと転居リセットを理解し、償還/受領委任を自治体要綱に沿って選択します。障害制度・自治体助成・減税も併用しながら、患者さんの自立度と介助量の最適化を目指しましょう。
PT は「評価→連鎖設計→根拠文書化」を一貫して担い、工事後は同じタスクで再評価( TUG ・転倒件数・介助時間等)。写真・動画で変化を可視化し、必要に応じて手すりの再フィットや用具見直しを行います。
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参考資料(一次情報)
- 厚生労働省. 介護保険における住宅改修(対象 6 類型・上限・ 3 段階リセット・申請フロー).
PDF - 厚生労働省. 福祉用具・住宅改修に関する法令(居宅介護住宅改修費の根拠規定).
PDF - 厚生労働省. 日常生活用具給付等事業の概要(居宅生活動作補助用具:住宅改修費).
Web - 国土交通省. リフォーム促進税制(バリアフリー改修・住宅特定改修特別税額控除:令和 7 年 12 月 31 日まで).
Web - 自治体例:さいたま市(受領委任払いの概要・登録事業者)/横浜市(受領委任取扱の案内).
さいたま市 /
横浜市 - 国税庁. タックスアンサー No.1220(住宅特定改修特別税額控除の適用要件).
Web
コメント
[…] 例えば、玄関や廊下、トイレ、浴室などに手すりを設置することで、立ち上がりや移動を安全に行うことができます。段差を解消したり、スロープを設置することで、車椅子での移動もスムーズになります。また、床の滑り止め対策や、引き戸への変更なども、転倒予防に効果的です。以下に、住宅改修の具体的な例と、期待できる効果を示します。 住宅改修には、介護保険や障害者総合支援法による補助金制度が利用できる場合があります。[2] 詳細はお住まいの自治体や地域包括支援センターにお問い合わせください。 […]