介護保険の住宅改修支援制度| 20 万円・ 6 類型・受領委任・減税

制度・実務
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介護保険の住宅改修「支援制度」完全ガイド

介護保険の住宅改修を中心に、障害者総合支援法(日常生活用具)とバリアフリー改修の減税までを横断整理しました。理学療法士が臨床から申請まで伴走するために、対象工事・上限額・申請手順・非対象例を一気通貫で確認できます。

最終更新:2026-03-02

在宅生活の自立度を高め、転倒・転落を防ぐ住宅改修は、主に ① 介護保険の住宅改修費(生涯 20 万円枠・自己負担 1〜3 割)、② 障害者総合支援法の日常生活用具(居宅生活動作補助用具)における住宅改修費、③ 国のバリアフリー改修の税額控除の 3 本柱で支援されます。

実務では、まず介護保険の適用可否を検討し、対象外(例: 40 歳未満など)や枠超過は、障害制度や自治体助成、減税を組み合わせます。介護保険の対象工事( 6 類型)と 20 万円枠は全国共通ですが、障害制度や自治体助成、受領委任の運用は市町村要綱で差が出ます。

現場の詰まりどころ:制度は「順番」と「線引き」で詰まります

住宅改修は制度が多く、知識を増やすほど迷いが増えます。詰まりやすいのは「どの制度で出すか」ではなく、① 事前申請の順番② 対象/非対象の線引きです。まずは下の 3 本だけで迷いを減らしてください。

ページ内は、①申請フロー(受領委任/償還)→② OK/NG 早見 の順に押さえると、書類の手戻りが減ります。臨床側の“根拠づけ”は、チェックリストで型を固定するとブレにくくなります。

横断比較:制度×上限×自己負担×提出物×窓口

住宅改修の支援制度:横断比較(2026-03-02 時点)
制度 対象の考え方 上限・自己負担 提出物(代表) 窓口/注意点
介護保険(住宅改修) 要介護・要支援者の自立支援。
対象6 類型+付帯工事のみ
生涯 20 万円枠(給付 7〜9 割) 見積/図面/施工前後写真/理由書/申請書 市区町村介護保険課。
原則事前申請、自治体により受領委任あり
障害者総合支援法(日常生活用具) 年齢・疾病等で介護保険対象外でも可。
自治体裁量で品目・限度が変動
上限額・自己負担は要綱次第 申請書/見積・図面/理由書 等 市区町村障害福祉窓口。
介護保険との重複給付不可
税制(バリアフリー改修の税額控除 等) 一定の要件を満たす改修。
所得税の特別控除 等
控除額は要件による 確定申告書/工事証明書/補助金等の明細 所轄税務署。
期限・要件は更新され得るため最新情報で確認

介護保険の住宅改修:対象 6 類型と実務の勘所

支給限度基準額は生涯 20 万円(自己負担は所得に応じ 1〜3 割)。限度額の範囲内であれば複数回の申請も可能です。屋外でも玄関〜道路の通路等は目的に照らし対象になり得ますが、範囲が過大だと否認されやすいため「必要最小限」を意識します。

原則は事前確認→承認→施工→(工事後に申請)の流れです。やむを得ない事情がある場合には、工事完成後に申請も可能なため、自治体運用も合わせて確認します。

6 類型の代表例と設計・根拠づけ
類型 代表例 設計の要点 根拠づけ(評価・写真)
① 手すり取付け 玄関・廊下・トイレ・浴室の縦横手すり 握り径/壁下地/立ち座り動線に沿った連続配置 起居・移乗の阻害因子、介助量、介護者身長差
② 段差解消 式台・スロープ・敷台・踏み台 段差高×傾斜/滑り抵抗/縁の視認性 屋内外移動のボトルネック、歩行能力(例: TUG )
③ 滑り防止/移動円滑化 ノンスリップ床材・カーペット張替 濡れ面摩擦/継ぎ目段差の最小化 転倒歴・足底感覚・履物との相性
④ 扉の取替 開き戸→引き戸・折れ戸化/ハンドル交換 有効開口幅/戸車抵抗/把持しやすさ 回転半径・杖/歩行器の通過性
⑤ 便器の取替 和式→洋式/座面高最適化 座面高・奥行・手すり連携 立ち座り筋力・便座移乗の安定性
⑥ 付帯する必要工事 下地補強・段差部見切り・電源移設 等 主工事に付随して必要な範囲に限定 図面・施工前後写真で必然性を提示

上限の再設定(リセット)

  • 要介護状態区分が 3 段階上昇した場合
  • 転居で住環境が変わった場合
  • 再設定後は再び20 万円まで給付可(残額の持越し不可)

支給方法と申請フロー(償還払い/受領委任)

  1. ケアマネ等と改修目的・対象動作・期待効果を合意(“どの動作を安全にするか” を先に固定)
  2. 書類作成:見積・図面・施工前写真・理由書(自治体様式の有無を確認)
  3. 市区町村へ事前申請(承認後に着工)
  4. 施工 → 完了後に領収書・完了写真・内訳書 等を提出
  5. 給付(償還払い)
住宅改修の償還払いと受領委任:お金と書類の流れ

受領委任払い(代理受領)を採用している自治体では、利用者は自己負担分のみを支払い、給付分は市から事業者へ直接支払われます。多くは登録事業者が条件のため、要綱や登録事業者名簿の確認が必要です。

※受領委任は自治体差が大きく、同意書・委任状・登録要件・追加添付(口座届等)が求められる場合があるため、必ず自治体の要綱/様式一覧で事前確認します。

自治体ごとの差分を確認するポイント(最短チェック)

介護保険の対象工事( 6 類型)や 20 万円枠は全国共通ですが、運用の細部は自治体ごとに差が出ます。読者が迷いがちな “運用語” で確認すると、必要ページに辿り着きやすくなります。

  • 受領委任:対応可否、登録事業者の条件、追加書類の有無
  • 申請様式:理由書の様式、図面要件(寸法の指定)、写真の撮り方(角度・枚数)
  • 事前確認:現地調査の要否、着工前の承認プロセス、窓口相談の予約ルール
  • 障害制度(日常生活用具):品目名、上限額、自己負担、介護保険との優先関係

検索するときは「自治体名+住宅改修+受領委任」「自治体名+住宅改修+理由書」「自治体名+日常生活用具+住宅改修」など、制度名より“運用語”を足すと見つけやすいです。

障害者総合支援法の住宅改修(日常生活用具)

介護保険の対象外となる年齢層・疾病でも、地域生活支援事業「日常生活用具給付等事業」における居宅生活動作補助用具(住宅改修費)として、市町村実施で支援が受けられる場合があります。対象品目・上限額・自己負担は自治体裁量により異なります。

介護保険との重複給付は不可のため、まず介護保険の適用可否を整理し、そのうえで “対象外/枠超過/年齢条件” などの理由を明確にして申請の筋を作ると通りやすくなります。

バリアフリー改修の減税(所得税ほか)

一定の要件を満たすバリアフリー改修では、住宅特定改修特別税額控除などの減税が利用できます。確定申告では工事証明書などの添付が必要です。

期限と要件は更新され得るため、必ず最新情報で確認してください。国税庁のタックスアンサーでは「居住開始日」の期間要件が示され、国交省の令和 8 年度税制改正概要では所得税の特例措置を 3 年延長(令和 8 年 1 月 1 日〜令和 10 年 12 月 31 日)と整理されています(法令成立・反映後の要件を確認)。

PT の評価と設計:根拠づけのコア

  • 動作のボトルネックを特定:屋内動線(玄関→居室→トイレ・浴室)を連続で評価
  • 起居・移乗・歩行能力(例: TUG )、介助量、介護体制、進行性疾患の見立て
  • 高さ・位置・幅・向きを実測し、理由書・図面・写真で可視化

理由書テンプレ(コピペ調整用)

理由書テンプレ:評価 → 設計 → 期待効果
要素 記入例
対象動作・困難 トイレ立ち上がりに介助を要し、転倒歴あり。廊下〜トイレの段差 8 mm で躓きやすい。
評価所見 TUG 22 秒、握力 16 kg、片脚立位 2 秒、浴室床は濡れで滑りやすい。
改修内容 トイレ: L 字手すり(横 700 mm・縦 800 mm )、便座高 420 mm に調整。廊下:段差処理+ノンスリップ。
付帯工事の必要性 手すり固定の下地補強を要す(主工事に付随して必要)。
期待効果・代替検討 自立立位への移行・介助量軽減。歩行器使用との併用で転倒リスク低減。代替案は玄関側手すり延長。
写真・図面 施工前後の同一角度写真、寸法入り平面図を添付。

よくある非対象・条件付き(OK/NG 早見)

住宅改修でつまずきやすい項目:介護保険の OK/NG と対策(2026-03-02 時点)
工事項目(例) 扱い 落とされやすい理由 対策・代替
温水洗浄便座の追加(機能追加のみ) 原則 NG 「住宅改修( 6 類型)」ではなく、設備の機能向上に該当しやすい 便器取替(⑤)としての必然性があるか整理。必要なら自費/他制度も検討
設備本体の更新(老朽化による交換等) 原則 NG 自立支援のための改修ではなく、更新・修繕の性格が強い 対象動作の困難を明確化し、 6 類型に該当する工事に分解できるか検討
付帯工事(下地補強・電源移設 等) 条件付き OK 主工事に付随する必要性が示せないと「対象外」と見なされやすい 図面・前後写真で「主工事に付随して必要」を明示。見積は対象/対象外を分離
屋外(玄関〜道路の通路 等) 条件付き OK 範囲が過大、目的が曖昧だと否認されやすい 「屋内移動の継続性」を根拠に、必要最小限の範囲・寸法で提案
段差解消での大規模工事(構造変更に近い) 要調整 住宅改修の趣旨(簡易な改修)を超えると判断されやすい 代替(式台・スロープ等)で目的を達成できるか検討し、最小介入で設計
見積が一式(内訳が不明) 審査で詰まりやすい 対象工事と対象外工事の線引きができない 内訳明細化(対象工事/対象外工事の分離)+図面・写真で必然性を補強

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 住宅改修は「事前申請」がなぜ重要ですか?

介護保険の住宅改修は、保険給付として適当かを自治体が事前に確認し、その結果を踏まえて着工する流れが基本です。工事後に「対象外」と判断されると自己負担が増えるため、目的・対象動作・改修内容を先に揃えて申請するほど手戻りが減ります。

Q2. 受領委任(代理受領)と償還払いは、どちらが多いですか?

自治体により運用が異なります。受領委任を採用している自治体では、利用者は自己負担分のみを支払い、給付分は自治体から事業者へ支払われます。一方、償還払いは利用者がいったん全額を支払い、後から給付を受ける形です。

Q3. 6 類型に入らない工事は、すべて NG ですか?

原則は 6 類型+付帯工事に限定されますが、付帯工事は「主工事に付随して必要」であれば対象になり得ます。見積を “対象/対象外” に分け、図面・前後写真で必然性を示すことが重要です。

Q4. 3 段階上昇や転居で「 20 万円がリセット」されるのは本当ですか?

はい。要介護状態区分が重くなったとき( 3 段階上昇時)や転居した場合は、再度 20 万円までの支給限度基準額が設定されます。残額の持越しはできないため、タイミング判断も含めて合意して進めます。

Q5. 障害者総合支援法(日常生活用具)の住宅改修は、誰でも使えますか?

日常生活用具給付等事業は市町村実施で、対象者・品目・上限額・自己負担が自治体要綱により異なります。介護保険との重複給付はできないため、介護保険の適用可否を整理したうえで自治体窓口に確認します。

次の一手

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チェック後の進め方を見る(PT キャリアガイド)


参考資料(一次情報)

  1. 厚生労働省. 介護保険における住宅改修(対象 6 類型・上限・再支給・申請フロー). PDF
  2. 厚生労働省. 日常生活用具給付等事業の概要(居宅生活動作補助用具:住宅改修費). Web
  3. 国税庁. タックスアンサー No.1220(バリアフリー改修工事をした場合:住宅特定改修特別税額控除). Web
  4. 国土交通省. 住宅をリフォームした場合に使える減税制度について(リフォーム促進税制). Web
  5. 国土交通省. 令和 8 年度税制改正概要(住宅・不動産関連). PDF

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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コメント

  1. […] 例えば、玄関や廊下、トイレ、浴室などに手すりを設置することで、立ち上がりや移動を安全に行うことができます。段差を解消したり、スロープを設置することで、車椅子での移動もスムーズになります。また、床の滑り止め対策や、引き戸への変更なども、転倒予防に効果的です。以下に、住宅改修の具体的な例と、期待できる効果を示します。 住宅改修には、介護保険や障害者総合支援法による補助金制度が利用できる場合があります。[2] 詳細はお住まいの自治体や地域包括支援センターにお問い合わせください。 […]

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