【SOAPとは?理学療法士のカルテの書き方】医療に必要な診療記録

理学療法士とは
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「カルテの書き方:SOAP」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

医師や看護師、リハビリテーション専門職の日常業務の1つに、カルテ記載があります。このカルテについてですが、何年も働いていれば慣れたものだと思いますが、新人や実習生にとっては悩みのタネの1つになると思います。

   

筆者も養成校でカルテ記載については学習していなかったため、若手の頃、カルテをどう書くのが正解なのか分からず、四苦八苦した記憶があります。カルテを書く目的は詳しく後述しますが、このカルテというものは後になって自分が見直すためだけに書いているものではありませんので、ある程度カルテ記載のルールに沿って書くことが望ましいと考えられます。

   

「カルテの正しい書き方なんて良くわからないし、1日の業務が忙しい中、いろいろ考えながらカルテなんて書いてられないよ!」このような悩みを抱えている方がたくさんいらっしゃると思います。そんな方のために、こちらの記事をまとめました。今までにカルテを一度も書いたことがない人でも、この記事を読むことで明日からの臨床で自信を持ってカルテを書くことができるようになることを目標にします。

   

  • カルテを書く目的
  • SOAPによるカルテ記載のコツ

   

こちらの記事がカルテ記載の業務に少しでもお力添えになれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
リハビリくん

【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

カルテを書く目的

診療業務にもれなくセットでついてくるカルテ記載についてですが、カルテを書く目的は大きく3つに分類することができます。

①法律上の義務

医師法第24条1項に「医師は診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と定められております。

こちらの法律は医師法ではありますが、医師以外の医療従事者においても診療した場合には、診療における記録をカルテという形で残す必要があります。

また、厚生労働省が作成した「診療情報の提供等に関する指針」によると患者本人や家族に希望された場合、医療従事者等は原則としてカルテ開示に応じる必要があります。こういったものに、きちんと応えるためにも日々の診療記録はカルテ記載していく必要があります。

②臨床で必要になる

カルテには、現在に至るまでの患者の状態とそれに対して提供されてきた医療行為、及びその根拠たる分析や考察の経緯が時系列で記録されています。そのためカルテには「何か必要な情報があればカルテを確認すればすぐにわかる」このような機能が求められています。

例えば、リハビリテーション専門職の働き方として、100人いる入院患者を5人の理学療法士で20名ずつ担当制にして日々の診療に臨むような方法があります。そして時には、そのうちの1名の理学療法士が家庭の都合で急に退職してしまい、急な話であったため申し送りの時間も作れないようなこともあるかもしれません。

こんなことも時にはあるかもしれませんが、そんな時でもカルテを見れば今までのリハビリテーションの記録や患者が入院に至るまでの記録がわかります。むしろ、カルテ記載にはそういった記録が求められています。引き継いだ理学療法士が今までの経過がろくにわからない、なんてことになるカルテは診療録として不十分になります。

③診療報酬請求の根拠になる

介護保険制度によるリハビリテーションのカルテも同様かもしれませんが、医療における保険診療においては、診療報酬明細書(レセプト)に記載されていることの根拠はすべて診療録等に求められることになっています。

診療報酬の請求及び支払が行われた後であっても診療録等に不備があると、時に行政指導等で多額の返還を求められることがあります。

日々忙しい診療業務の合間にカルテを記載するのは、なかなか大変な作業ではありますが、以上のようにカルテ記載は目的が明確にありますので、目的に沿った記載方法で記録を残していく必要があります。

SOAPとは(カルテ記録)

カルテを書く目的がわかったところで、続いてはカルテの記載方法について解説させていただきます。

カルテはSOAPという考え方に従って記載するのが最もわかりやすいと筆者は考えています。SOAPの考え方とは「対象者の問題点を見つけ、医療従事者としてどう対応するべきかを考えるためのカルテ記載方法」になります。

SOAPは本来、情報共有に用いられるツールであるため、誰が読んでもわかるように記載してある必要があります。そのため、わかりやすく情報共有できるように「型」を決めておくことで、書かれているものが何を表しているのかを瞬時に判断することができます。

その「型」は S・O・A・P それぞれの項目ごとの役割があるだけでなく、4つが一連の流れとして機能していることが特徴となります。イメージとしては、物語の構成に用いられる「起承転結」のような型と同じになります。つまり、SOAPは患者様に提供した医療の効果を示すストーリーの型であるともいえます。

SOAPを項目ごとに解説

前項でSOAPの型について解説しましたが、こちらでは型の中身について深掘りして、項目ごとに考察していきます。

SOAPの特徴は、対象者の問題点を抽出し「S(subjective):主観的情報」「O(objective):客観的情報」「A(assessment):評価」「P(plan):計画・治療」の4つの項目に沿って記載していく点になります。

「S:主観的情報」1つに対し、情報を整理して書くことが大切なポイントになります。複数の「S:主観的情報」が混在し、選択する「O:客観的情報」が増加してしまうと、「A:評価」が曖昧になり、効果的な「P(plan):計画・治療」の実践が難しくなります。

記録を端的に記載することは最初は難しく、上手くいかないことがあるかもしれません。しかし、対象者の状態・経過を記録するだけでなく、自らの治療・援助における思考過程をまとめ、矛盾点はないか妥当性があるかを振り返る機会にもなります。

この一連の思考は、理学療法士にとって重要な「臨床推論(クリニカルリーズニング)」という思考過程と共通した部分になります。つまり、「P:計画・治療」の立案のための自らの意思決定に及ぶ過程であり、医療・援助者側からの思考のみならず、対象者自身が症状その他をどのように捉えているのかを考慮しながらリハビリテーションを展開していくことが重要となります。

S(subjective):主観的情報

主に対象者が訴えていることになります。対象者の生活に関係することであれば対象者家族の訴えも含まれます。決して1つに絞る必要はなく、複数の主観的情報を記載しても構いません。ここには、私たち医療従事者の言葉や考えは一切必要ありません。対象者および対象者家族から発信された訴えだけを記録します。

例えば、人工膝関節置換術術後の患者様のお部屋に訪室した際に、訴えで「膝が痛くて辛いんです」と膝を指して話したとします。その際の「S:主観的情報」は、「膝が痛くて辛いんです」になります。

対象者が良く話す人だったと仮定して、対象者が話していることをそのまますべて記載する必要はありません。対象者の日常生活や病態を捉えるうえで優先順位の高い事象、関係性の高い出来事について記載します。

対象者にとって重要となる「S:主観的情報」を引き出し、それを客観的情報やアセスメントに繋げていくためには、高い問診能力が必要になると考えられます。重要性が高い「S:主観的情報」を引き出し、「O:客観的情報」や「A:評価」に繋げていくためには、聞き取り側のスキルが必要になります。

注意点として「S:主観的情報」は、患者が話した言葉以外にも、筆談や手話などの非言語コミュニケーションも含まれます。そのため、失語症や気管切開術後により話すことができない場合でも、非言語コミューケーションができるのであれば、患者からの訴えをそのまま記録します。

O(objective):客観的情報

「S:主観的情報」に挙げた訴えに関し、見たもの(視診)、触れたもの(触診)、検査・測定項目など、客観的な指標を記録していきます。医療従事者の主観的な考えは含めず、結果をそのまま記載することが重要になります。

「O:客観的情報」を挙げるこの過程は、客観的情報を整理しながら、問題点を抽出するための「A:評価」を行う前段階の手続きになります。

「O:客観的情報」を挙げるうえでのコツとしては、「S:主観的情報」にかかわる情報から、重要性が高いと判断した項目から選択して記載す
ることになります。

「O:客観的情報」は「A:評価」のための根拠となるものであるため、常に仮説を立てることを意識しながら記録していくと良いと思います。

A(assessment):評価

ここでの評価とは、「O:客観的情報」に挙げられる「測定・検査」内容ではなく、それらをもとに「判断」した内容になります。つまり、「O:客観的情報」で記載した内容を統合・解釈し、導かれた解釈を述べる段階になります。

また、「A:評価」の結果によって「P:計画・治療」をどうするべきなのかが変わってくるため、まさに各専門職による知識や経験が最も求められる項目になります。

基本的には「A:評価」で記載する項目は、「O:客観的情報」に基づいたエビデンスに由来するものであるべきと考えます。この過程は難しいと思いますが、「P:計画・治療」を実行するための理由づけとなる部分であるため、医療従事者として適切な「A:評価」を記録できるようにする必要があります。

P(plan):計画・治療

「A:評価」に基づいて作成された計画・治療内容を記載します。適宜、今までの計画を修正・変更するのかを自らに問う意識が必要になります。

医師のカルテであれば、各種検査等の「O:客観的情報」から「A:評価」を行いエビデンスに基づいた「P:計画・治療」を実行するという流れになりますので、カルテ記載のイメージもしやすいと思います。

一方、リハビリテーション専門職などのカルテ記載では、既に「P:計画・治療」を実行していますので、少し混乱することが想像されます。しかし、ここでは「P:計画・治療」を実行してはいるものの、その結果から次回以降の「P:計画・治療」を継続するのか、修正・変更を加えるのかについて検討して記載すると綺麗に整理できるはずです。

SOAPによるカルテの書き方:リハビリ

それでは、SOAPによるカルテ記載を実践してみます。


カルテ記載日:令和5年4月1日

診断名:廃用症候群(令和5年3月27日)

算定区分:廃用症候群リハビリテーション料 I

実施時間:10:00 〜 10:40

理学療法プログラム

  1. 歩行動作練習
  2. 立位バランス練習
  3. 筋力増強練習
  4. 階段昇降練習

「S(subjective):主観的情報」

「病院の中を1人で歩いてもいいですか?」

「O(objective):客観的情報」

血圧:124/68mmHg、脈拍:68回/分、血中酸素飽和度:97%

身長:162cm、体重:38kg、BMI:14.48、適性体重:57.74kg、上腕周囲長:17cm、下腿周囲長:24cm、食事摂取量:1400kcal/日

血清アルブミン値:3.3 g/dl、総リンパ球数:1400 mm3、総コレステロール:120 mg/dL、CONUT値:5(中等度異常)

寝返り動作:自立、起き上がり動作:自立、座位保持:自立、起立動作:見守り、歩行動作:軽介助、階段昇降:中等度介助

握力(Rt/Lt):13kg/8kg、筋力(MMT):上肢4/4 体幹4 下肢4/3、10m歩行テスト:15秒、TUG:18秒、BBS:42/56点

「A(assessment):評価」

現在病棟内での移動方法は軽介助での歩行となっている。介助方法としては左側方からの介助であり、対象者の左手に軽く手を添える程度の軽介助である。身体計測の結果より、体重:38kg、BMI:14.48と痩せの傾向が強く、手足の筋肉も萎縮している。血液・生化学検査から判定するCONUT値でも中等度異常という判定結果になっており、身体計測と血液・生化学検査の結果より低栄養状態といえる。歩行能力の低下には栄養状態も深く関わっていることが予想され、リハビリテーションだけではなく栄養管理も併用して行なっていく必要がある。また、握力やMMTの結果より筋力低下も認めている。10m歩行、TUG、BBSの結果からも歩行能力およびバランス能力の低下を認めており、歩行を自立させた場合の転倒する危険性は高いと判断できる。そのため、歩行の介助量は今までと変化させずに軽介助が適切であると考える。

「P(plan):計画・治療」

運動プログラムとして #1 歩行動作練習 #2 立位バランス練習 #3 筋力増強練習 #4 階段昇降練習を継続して実施する。今後は、栄養管理を強化する必要があるため、 #5 栄養アセスメント を加えて理学療法を実施する必要がある。


客観的評価の項目で情報に挙げたCONUTについては、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【CONUT:検査値による栄養評価法についての記事はこちらから

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「SOAP」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事がカルテ記載の業務に少しでもお力添えになれば幸いです!

参考文献

  1. 杉元 雅晴.リハビリテーション医療におけるPOS.理学療法ジャーナル.2000年10月,34巻,10号,p724.
  2. 嶋田 誠一郎.理学療法記録記入のコツ.理学療法ジャーナル.2013年4月,47巻,4号,p356-358.
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