JSS とは?(何のために、どう使うか)
JSS(Japan Stroke Scale)は、脳卒中の重症度を定量化し、経時変化や介入効果を標準化して追うためのスケール群です。診断名を付ける検査ではなく、病態の「いま」を共通の物差しで可視化します。
最終更新:2025-10-10
JSSクイックスタート(5分で準備)
- 公式フォームを用意:印刷 or タブで開く(下の「公式フォーム」参照)。
- 安全・環境:転倒リスクを確認。立位/歩行観察は補助者を配置。
- 説明テンプレ(30秒):「いまの状態を共有するために、いくつかの動作や反応を見ます。難しければ途中で止めます。」
- 実施順を固定:(例)意識・注意 → 言語まわり → 上下肢運動 → 嚥下 → 立位・歩行。
- 記録の型:合計点 + クラスター要約(意識/言語・注意/運動/嚥下/歩行)を2–3行で。
公式フォーム(日本脳卒中学会 配布PDF)
当サイトでは原文の複製配布は行わず、学会の公式PDFにリンクします。
- JSS(急性期) 調査票[PDF]
- JSS-M:運動機能障害重症度スケール[PDF]
- JSS-H:高次脳機能スケール[PDF]
- JSS-D:うつスケール[PDF] / JSS-E:情動障害スケール[PDF]
標準フロー(15分の実施プロトコル)
- 前準備(1分):フォーム/筆記具/ストップウォッチ。用具(眼鏡・補助具など)は通常どおり。
- 説明と同意(30秒):目的、安全、中断合図を共有。
- 実施(10–12分):下の「観察ポイント」と「台本」を用いつつ、フォームの順序で進行。
- 記録(1–2分):合計点 + クラスター所見を要約。
- フィードバック(1分):「現状」と「次回計画」を短く共有。
評価の台本(原文を使わない安全な声かけ)
以下は観察を引き出すための一般的な声かけ例です(公式票の文言や閾値は引用しません)。
- 反応/注意:「お名前を教えてください」「この後の動作の指示を聞いてください」「これから私の指を目で追ってください」
- 言語:「この絵(物品)を見て、名前を教えてください」「短いフレーズを繰り返してください」
- 上肢:「この高さまで腕を上げてみましょう」「指先でこの目標に触れてください」
- 下肢:「膝を立ててみましょう」「つま先を上に向けてみましょう」
- 嚥下:(必要時)唾液嚥下や少量水での反応を観察。むせ・湿性嗄声の有無を確認。
- 立位/歩行:「立ち上がりましょう」「数歩進んで、方向転換しましょう」※補助者配置。
観察ポイント(クラスター別)
- 意識・注意:呼名への反応の速さ/持続、集中の保ちやすさ、注意の逸れ。二重課題で破綻がないか。
- 言語:理解(指示が通る)、表出(呼称・復唱)、流暢性。努力性や言い直しの増減。
- 運動:左右差、巧緻性、動作の分解/過大・過小運動、代償(体幹側屈・把持強化)。
- 嚥下:むせの有無、反復での変化、湿性嗄声、見守りレベル。
- 歩行:歩隔、接地安定、速度変化やターンでのふらつき、補助具の要否。
判断に迷ったときの運用ルール
- 条件を固定:装具・補助具・場所・説明・順序・休憩を再評価でも同一に。
- 未施行時:「未実施」理由(疼痛/失語/疲労/拒否など)を備考に記載し、次回条件を決める。
- 所見の言い切り:合計点だけでなく、クラスター要約を2–3行で必ず併記。
レポート雛形(コピペ用)
項目 | 記入例 |
---|---|
実施条件 | 病棟ベッドサイド、補助者1名、装具なし。説明統一、練習後に本番。 |
JSS要約 | 意識安定。言語は軽度遅延あり。右上肢巧緻性低下。嚥下は見守り下で可能。歩行は広い歩隔でターン時に不安定。 |
合計/比較 | 初回→3日後で改善傾向。 |
次回計画 | 嚥下再評価、歩行距離の段階的拡大、階段評価の準備。 |
再評価の目安
- 急性期:1–3日おきに再評価。
- 回復期/外来:2–4週おき。できるだけ同時間帯・同条件で。
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参考
- 日本脳卒中学会 公式サイト(Stroke Scale の配布ページ)。
- JSS(急性期)PDF / JSS-M PDF / JSS-H PDF / JSS-D PDF / JSS-E PDF