体圧分散マットレスの種類と選び方|褥瘡予防と離床

臨床手技・プロトコル
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体圧分散マットレスは「皮膚・体動・介助体制・離床目標」で選ぶ

褥瘡予防の全体像から確認する

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結論:体圧分散マットレスは、褥瘡リスクの高さだけで決めるのではなく、皮膚所見・自力体動・介助体制・離床目標を組み合わせて選びます。高機能なマットレスでも、沈み込みや揺れによって起き上がり・端座位・移乗が難しくなれば、活動性の低下につながることがあります。

この記事では、静止型、交互圧、自動体位変換付きの違いと、PTが確認したい選定・見直しのポイントを整理します。機種名から選ぶのではなく、患者に必要な圧再分配と、維持したい動作の両方から判断できるようになることが目標です。

※表は横にスクロールできます。

体圧分散マットレスを選ぶときの基本的な考え方
主な状況 検討する支持面 PTが確認すること
自力体位変換を保てており、離床を進めたい 圧再分配機能を持つ静止型を含めて検討する 沈み込みによって起き上がりや端座位が崩れていないか
自力体位変換が乏しく、同一部位への持続圧が懸念される 交互圧などのactive support surfaceを含めて検討する 作動時の揺れ、睡眠、疼痛、呼吸、離床への影響
夜間の体位変換が難しく、介助負担が大きい 自動体位変換機能を含む支持面を検討する 傾斜による疼痛、めまい、不安、覚醒の増加

体圧分散マットレスは局所への圧を減らす支持面です

体圧分散マットレスは、身体を沈み込ませたり包み込んだりして接触面積を広げ、骨突出部に集中する圧を再分配するために使用します。フォーム、ゲル、エアなどの素材があり、圧の分散方法や身体の安定性が異なります。

静止型の支持面は、身体から加わる力や熱に反応して圧を再分配するreactive support surfaceです。交互圧型は、エアセルなどを機械的に動かして支持部位を変化させるactive support surfaceに分類されます。

支持面を使用しても、体位変換、皮膚観察、失禁・発汗への対応、栄養管理が不要になるわけではありません。圧だけでなく、背上げや移乗で生じるずれ・せん断と、熱や湿気がこもる微気候も同時に管理します。

選定前にそろえる4つの判断軸

選定前には、①皮膚、②体動、③介助体制、④離床目標の4軸をそろえます。褥瘡リスク評価の点数だけで機種を決めず、現在起きている問題と、維持したい生活動作を確認することが重要です。

体圧分散マットレス選定の4軸
判断軸 確認項目 選定への反映
皮膚 消退しない発赤、硬結、水疱、既存褥瘡、骨突出、疼痛 守る部位と、持続圧を減らす必要性を整理する
体動 寝返り、殿部挙上、起き上がり、端座位、移乗 圧再分配と動作のしやすさを両立できる条件を探す
介助体制 夜間のスタッフ配置、体位変換の実施状況、家族介護力 人による除圧を補う機能が必要か判断する
離床目標 起き上がり自立、移乗、歩行再開、睡眠の安定 沈み込みや揺れが目標動作を妨げない条件を選ぶ

選定のポイント:「リスクが高いから高機能」と一方向に考えるのではなく、どの部位の圧を減らしたいのか、患者がどの程度動けるのか、離床をどこまで進めたいのかを具体化します。

静止型・交互圧・自動体位変換付きの違い

主要なタイプには、静止型、交互圧型、自動体位変換機能付きがあります。種類ごとの特徴はありますが、名称だけでは適否を判断できません。患者の状態と製品仕様を組み合わせて判断します。

体圧分散マットレスのタイプ別比較
タイプ 主な仕組み 検討しやすい状況 主な利点 注意点
静止型
フォーム・ゲルなど
身体を沈み込ませ、接触面積を広げて圧を再分配する 自力体動を生かしたい場合や、安定した支持を必要とする場合 静音で揺れが少なく、電源を必要としない製品が多い 同一体位が続けば持続圧は残るため、体位変換との併用が必要
交互圧型
エアマットレス
エアセルを膨張・収縮させ、支持する部位を時間的に変化させる 自力体位変換が乏しく、持続圧を減らす必要がある場合 同じ部位が支持され続ける時間を減らしやすい 沈み込み、揺れ、作動音が睡眠や離床へ影響することがある
自動体位変換機能付き 支持面を傾斜させるなどして、身体の荷重方向を変化させる 体位変換が難しく、夜間の介助負担が大きい場合 介助による体位変換を補完しやすい 疼痛、めまい、不安、覚醒が増えないか確認する必要がある
皮膚、体動、介助体制、離床目標の4つの判断軸から、静止型・交互圧・自動体位変換付きの体圧分散マットレスを選ぶ図
図:4つの判断軸から体圧分散マットレスを選ぶ考え方

厚さや機能は底づき・ずれ・微気候から確認する

厚さや機能の多さだけでは、患者に適したマットレスか判断できません。製品仕様を確認するときは、底づき・ずれ・微気候の3点から考えます。

  • 底づき:骨突出部がベッド基底面の硬さを感じるほど沈み、十分な圧再分配が得られていない状態
  • ずれ:背上げや身体の滑りによって、皮膚と深部組織に異なる方向の力が加わる状態
  • 微気候:皮膚と支持面の間に生じる温度・湿度の環境

厚い支持面でも、沈み込みによって起き上がりや移乗が難しくなる場合があります。一方、動きやすさだけを優先して局所圧が残れば、褥瘡予防として不十分です。

厚さ、セル構造、カバー、通気機能などを詳しく確認するときは、体圧分散マットレスの厚さ・構造・機能の見方を参照してください。

体圧分散マットレスを選ぶ臨床フロー

実務では、支持面の種類を先に決めるのではなく、現在の問題を特定してから必要な機能を選びます。

  1. 皮膚を確認する:発赤、硬結、水疱、既存褥瘡、疼痛の部位を確認する
  2. 体動を確認する:寝返り、起き上がり、殿部挙上、端座位、移乗を確認する
  3. 介助体制を確認する:夜間の体位変換が実施できているか確認する
  4. 困っている現象を特定する:持続圧、底づき、ずれ、湿気、睡眠障害、離床困難に分ける
  5. 必要な機能を選ぶ:圧再分配、圧の時間的変化、自動体位変換の必要性を判断する
  6. 導入後に再評価する:皮膚と離床の両方が改善しているか確認する

静止型で必要な圧再分配を得られない場合や、自力体位変換が乏しい場合は、交互圧型などへのステップアップを検討します。ただし、リスク評価の区分だけで自動的に切り替えるのではなく、皮膚所見、体動、体格、疼痛、睡眠、ケア環境を含めて判断します。

PTは皮膚だけでなく起き上がり・端座位・移乗を確認する

PTが確認したいのは、マットレス上の体圧だけではありません。支持面の変更によって、寝返り、起き上がり、端座位、移乗がどのように変わったかを評価します。

PTが確認したい支持面変更後の動作
確認場面 見るポイント 記録例
寝返り 身体が沈み込み、体幹回旋や下肢の踏ん張りが妨げられていないか 寝返りの可否、介助量、使用したベッド柵
起き上がり 骨盤や肩甲帯が沈み、支持面から身体を離せなくなっていないか 所要時間、介助量、動作手順の変化
端座位 骨盤後傾、滑り座り、体幹の揺れが増えていないか 保持時間、上肢支持、ふらつき、恐怖感
移乗 足底接地や殿部離床が難しくなっていないか 介助量、移乗方法、使用用具
呼吸・睡眠 沈み込み、作動音、揺れによって呼吸努力や覚醒が増えていないか 呼吸状態、夜間覚醒、疼痛、不快感

導入前後で同じ動作を比較し、「皮膚は改善したが起き上がりが全介助になった」などの変化を具体的に共有すると、支持面や設定の見直しにつながります。

ステップアップとステップダウンの判断

支持面は、一度導入したら固定するものではありません。皮膚所見が悪化した場合は機能を強め、皮膚が安定して離床を進める段階では、動きやすい条件へ見直します。

支持面のステップアップ・ステップダウンを検討する状況
状況 考えられる問題 検討する対応
発赤や局所圧が残る 現在の圧再分配が不足している可能性 ポジショニングと体位変換を見直し、必要に応じて支持面を強化する
夜間の体位変換が実施できない 介助体制だけでは除圧を継続できない可能性 交互圧や自動体位変換機能を含めて検討する
皮膚は安定したが離床が難しくなった 沈み込みや揺れが動作を妨げている可能性 設定変更または安定性の高い支持面へのステップダウンを検討する
睡眠や不穏が悪化した 作動音、振動、傾斜変化が負担になっている可能性 夜間設定や支持面の種類を見直す

ステップダウンは褥瘡予防を弱めることではありません。皮膚所見が安定していることを確認したうえで、患者の体動を生かせる必要十分な支持面へ調整する考え方です。

よくある失敗は支持面だけで問題を解決しようとすることです

体圧分散マットレスを変更しても、体位変換、ずれ対策、失禁管理、栄養、活動性が整っていなければ、褥瘡リスクは残ります。問題が起きたときは、機種だけでなく、患者・用具・ケアの3方向から原因を整理します。

体圧分散マットレス運用のよくある失敗と対策
起きている問題 確認する原因 最初の対応 記録項目
起き上がりが難しくなった 沈み込み、骨盤位置、マットレス設定 設定とポジショニングを確認し、支持面の安定性を見直す 所要時間、介助量、導入前後の変化
交互圧作動時に身体が揺れる エア圧、サイクル、体幹支持、体格との不一致 設定を確認し、必要に応じて体幹支持を追加する 揺れ、恐怖感、離床への影響
背上げ後に仙骨部が赤くなる 身体の滑り、骨盤後傾、背上げ角度、踵の固定 背上げ前後の骨盤位置を整え、ずれを減らす 発赤部位、持続時間、背上げ角度
支持面を変えても発赤が続く 体位変換、ポジショニング、失禁、栄養、医療機器 褥瘡予防計画全体を再評価する 体位変換状況、皮膚所見、関連要因
夜間覚醒が増えた 作動音、振動、傾斜、疼痛、不安 夜間設定と使用機能を見直す 覚醒回数、疼痛、日中の傾眠

導入後は皮膚・離床・睡眠を同じ条件で再評価する

選定後は、導入前と同じ条件で皮膚、離床、睡眠を比較します。皮膚所見だけが改善しても、起き上がりや移乗が大きく低下している場合は、支持面や設定が患者の活動性に合っていない可能性があります。

  • 皮膚:発赤、硬結、水疱、疼痛、局所への圧
  • 離床:寝返り、起き上がり、端座位、移乗の介助量
  • 睡眠:覚醒回数、作動音への反応、不安、不穏
  • 快適性:疼痛、暑さ、湿気、圧迫感、揺れ
  • ケア:体位変換の実施状況、介助負担、設定の統一

導入当日の条件固定と、0~24時間、24~48時間、48~72時間の具体的な確認方法は、体圧分散マットレス導入後72時間の調整プロトコルで整理しています。

体圧分散マットレス選定記録シート

選定と再評価では、皮膚所見、体動、介助体制、離床への影響を同じ項目で記録すると、支持面を変更した理由と結果を共有しやすくなります。A4記録シートは、選定時の確認と多職種での申し送りに使用できます。

体圧分散マットレス選定記録シートを開く

PDFを本文でプレビューする

PDFを表示できない場合は、体圧分散マットレス選定記録シートを開いてください。

体圧分散マットレスのよくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

自力で寝返りができる人にも交互圧型を使用できますか?

使用できます。ただし、自力体位変換ができることだけで適否は決まりません。皮膚所見、骨突出、感覚障害、全身状態、夜間の体動、離床目標を確認します。交互圧による揺れや沈み込みが動作を妨げる場合は、設定変更や別の支持面も検討します。

自動体位変換機能があれば、人による体位変換は不要ですか?

不要にはなりません。自動体位変換機能は圧のかかる方向を変える手段ですが、皮膚観察、ずれの修正、失禁への対応、疼痛や不快感の調整は別に必要です。自動機能は体位変換計画の一部として使用します。

マットレスは何cm以上の厚さが必要ですか?

厚さだけで安全性は判断できません。患者の体格、骨突出、素材、内部構造、設定によって沈み込み方が異なります。底づきがなく、必要な圧再分配が得られ、起き上がりや移乗を妨げていないかを実際の使用条件で確認します。

交互圧型で揺れや不眠が生じたら何を確認しますか?

エア圧、作動サイクル、患者の体格、疼痛、体幹支持、夜間覚醒を確認します。設定を変更しても改善せず、皮膚所見から高い機能を必要としない場合は、より安定した支持面への変更も検討します。

静止型を使用するときに抜けやすい対策は何ですか?

体位変換とずれ対策です。静止型は圧を再分配しますが、同じ姿勢が長時間続いた場合の持続圧を完全になくすものではありません。背上げ時の滑り、骨盤後傾、踵の圧、体位変換の実施状況をあわせて確認します。

次は褥瘡予防計画または導入後調整へ進む

体圧分散マットレスの選定は、褥瘡予防計画の一部です。皮膚、体動、介助体制、離床目標から支持面を選んだら、導入後は同じ項目で変化を確認します。

  • 全体像を確認する:褥瘡予防の基本フロー
  • 導入後の調整へ進む:72時間の調整プロトコル

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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参考文献

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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

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