OHスコアからマットレス候補をどう決めるか
褥瘡予防の基本フローへ
結論からいうと、OHスコアは体圧分散マットレスの候補を絞る入口として使えます。目安は、1〜3点が軽度、4〜6点が中等度、7〜10点が高度リスクです。ただし、同じ点数でも自力体位変換、骨突出、浮腫、関節拘縮の内訳や皮膚所見によって、必要な支持面は変わります。
このページでは、OHスコアからマットレス候補をどう考えるかと、「点数だけでは決めない場面」を整理します。採点方法そのものではなく、評価結果を支持面選定へつなげたい医療・介護従事者向けの実装記事です。
この記事で詳しく答えないこと:OHの採点手順、製品ごとの詳細比較、導入後72時間の細かな再評価方法。
OHスコア別|マットレス選定の目安
OHスコアは、0点、1〜3点、4〜6点、7〜10点のリスク帯に分けると、支持面候補を整理しやすくなります。ただし、点数とマットレスを機械的に1対1で結び付けるのではなく、最初の候補を絞るために使うのがポイントです。

| OH合計 | リスク区分 | 支持面選定の考え方 | 追加で確認すること |
|---|---|---|---|
| 0点 | 危険要因なし | 現在の寝具・支持面の適合を確認 | 皮膚変化、活動性、新たな危険因子 |
| 1〜3点 | 軽度 | 体圧分散性能を持つ支持面を候補にする | 自力体位変換、骨突出、皮膚所見 |
| 4〜6点 | 中等度 | より高い圧再分配性能が必要か検討する | 危険因子の内訳、現在の支持面での反応、介助体制 |
| 7〜10点 | 高度 | 交互圧型など高機能な支持面を含めて検討する | 自力体位変換、持続圧、動作性、睡眠、安全性 |
重要:OHスコアはマットレスを自動的に決定する指標ではありません。同じ4〜6点でも、どの危険因子で得点しているか、自力体位変換ができるか、現在の支持面で皮膚を守れているかによって選択は変わります。
同じOHスコアでもマットレスが変わる条件
最終的な支持面は、OH合計点だけでなく、危険因子の内訳と現在の皮膚・動作・介助状況を合わせて決めます。特に「皮膚」「自力体位変換」「湿潤」「ずれ・摩擦」「介助体制」「動作・離床」を確認すると、同点でも介入を変える理由が明確になります。
| 確認項目 | 確認すること | 判断へのつなげ方 |
|---|---|---|
| 皮膚 | 持続する発赤、色調変化、水疱、疼痛など | 現在の除圧方法と支持面が十分か再確認する |
| 自力体位変換 | 寝返りや姿勢修正ができるか、同一姿勢が続いていないか | 本人の体動と支持面による圧再分配を組み合わせて考える |
| 湿潤 | 失禁、発汗、浸軟、寝床内の蒸れ | 支持面だけでなく微気候とスキンケアも見直す |
| ずれ・摩擦 | 背上げ後の前滑り、引きずり、拘縮による偏った荷重 | 支持面とポジショニングを同時に見直す |
| 介助体制 | 夜間の体位変換、人員、疼痛や拒否による実施困難 | 実際に継続できるケアと支持面機能を組み合わせる |
| 動作・離床 | 寝返り、起き上がり、端座位、移乗への影響 | 圧再分配だけでなく身体の安定性と動作性も確認する |
支持面の種類や機能、静止型・圧切替型を含めた全体的な選び方を確認したい場合は、体圧分散マットレスの種類と選び方で整理しています。
体位変換と踵免荷はOH合計点だけで決めない
OHスコアから「2時間」「4時間」と体位変換間隔を固定するのではなく、皮膚所見、自力体動、使用している支持面、全身状態、疼痛、睡眠、介助体制を含めて個別に考えます。体圧分散マットレスを使用していても、体位変換や皮膚観察が不要になるわけではありません。
踵についても、「OH○点以上」という合計点だけで開始を決めるのではありません。褥瘡発生リスクがあり、臥床によって踵への持続圧が生じる場合は、踵を支持面から浮かせるなどの免荷を検討します。下腿を広く支持し、皮膚状態、浮腫、循環、感覚、活動性も合わせて確認します。
OHスコアでマットレスを選ぶときのよくある失敗
OHスケールを使っていても、合計点だけで支持面を決めると選定理由が曖昧になります。次の失敗を避け、OHの内訳と「現在何が問題になっているか」を一緒に記録すると、再評価につなげやすくなります。
| よくある失敗 | 問題 | 修正の1手 |
|---|---|---|
| 合計点だけで製品を決める | 同点でも危険因子の内訳や状態が異なる | OH内訳と皮膚所見を一緒に確認する |
| 高機能マットレスなら安心と考える | 設定、姿勢、ずれ、皮膚観察が抜けやすい | 導入後も皮膚と使用状況を再評価する |
| 体位変換を一律の時間で固定する | 支持面、体動、皮膚反応の違いを反映できない | 対象者ごとに体位と間隔を検討する |
| 皮膚だけを確認する | 寝返り、離床、睡眠などへの影響を見逃す | 皮膚と動作・生活の両方を再評価する |
選定時に記録する4項目
マットレス選定時は、少なくともOHスコアと内訳・皮膚所見・選定した支持面と理由・再評価する条件を残します。合計点だけではなく、「なぜこの支持面を選んだか」が後から追える記録にすることが重要です。
- OH:合計点と4項目の内訳
- 皮膚・状態:仙骨・踵などの皮膚所見、疼痛、湿潤、ずれ
- 介入:選択した支持面、体位変換、ポジショニング、踵免荷など
- 再評価:どの変化を確認し、何が起きたら支持面を見直すか
A4記録シート(PDF)
OHスコアから支持面を選び、導入理由と再評価を同じ用紙で共有したい場合は、A4記録シートを使用できます。OHの内訳、支持面、踵免荷、再評価、共有事項まで1枚で整理できる構成です。
記事内でPDFをプレビューする
コピペ用:OHスコアとマットレス選定の記録例
S)疼痛・睡眠・拒否・介助上の問題____。
O)OH__点(自力体位変換__・病的骨突出__・浮腫__・関節拘縮__)。仙骨__/踵__。湿潤__。ずれ__。
A)OH__リスク。支持面選定上の主な問題____。
P)支持面____。体位変換____。踵免荷____。次回は____を確認し、必要時に支持面を再検討する。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. OH 4〜6点なら必ずエアマットレスですか?
A. 必ずではありません。4〜6点は中等度リスクとして支持面を検討する目安になりますが、自力体位変換、危険因子の内訳、皮膚所見、現在の支持面での反応、動作性などを合わせて選びます。
Q2. OH 7〜10点なら圧切替型を選べばよいですか?
A. 点数だけでは決めません。高度リスクでは交互圧型など高機能な支持面も候補になりますが、体格、自力体位変換、皮膚所見、動作、睡眠、安全性、介助体制などを合わせて検討します。
Q3. OHスコアから体位変換の時間も決められますか?
A. OH合計点だけでは決めません。皮膚状態、自力体動、支持面の圧再分配性能、全身状態、疼痛、睡眠、介助体制などを踏まえて個別に設定します。
Q4. 踵免荷はOH何点から必要ですか?
A. 特定のOH合計点だけで開始を決めるものではありません。褥瘡発生リスクがあり、臥床によって踵への持続圧が生じる場合は、下腿を支持して踵を支持面から浮かせる方法などを検討します。
まとめ
OHスコアは、体圧分散マットレスの候補を絞る入口として使えます。1〜3点、4〜6点、7〜10点というリスク帯を確認すると、支持面選定の方向を整理しやすくなります。
ただし、OH合計点だけでマットレス、体位変換時間、踵免荷、再評価時刻まで決めるものではありません。OHの内訳、皮膚、自力体動、ずれ・湿潤、介助体制、動作への影響を確認し、「なぜこの支持面を選んだか」を記録できる形で運用してください。
次の一手
OH以外も含めて褥瘡予防全体を整理する場合は基本フローへ、マットレス導入後の皮膚・動作・使用状況の見直しまで進む場合は72時間プロトコルへ進んでください。
参考文献
- 日本褥瘡学会. 褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版. 東京: 照林社; 2022.
- 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン策定委員会(褥瘡グループ). 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)―2 褥瘡診療ガイドライン(第3版). 日皮会誌. 2023;133(12):2735-2797. DOI
- Gillespie BM, Walker RM, Latimer SL, Thalib L, Whitty JA, McInnes E, et al. Repositioning for pressure injury prevention in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2020;6(6):CD009958. PubMed
- Shi C, Dumville JC, Cullum N, Rhodes S, McInnes E. Reactive air surfaces for preventing pressure ulcers. Cochrane Database Syst Rev. 2021;5(5):CD013622. PubMed
- European Pressure Ulcer Advisory Panel, National Pressure Injury Advisory Panel, Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 4th ed. 2026. International Guideline

