【創傷の治癒過程】一次治癒と二次治癒、急性・慢性創傷を含めて解説

褥瘡対策
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「創傷治癒の過程」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

   

創傷はいくつかの種類に分類されますが、開放創の1つに褥瘡が挙げられます。褥瘡は創傷の中でも慢性創傷に分類され、治療が難渋しやすい創傷の1つとなります。

    

この褥瘡を治療していくうえで、まずは創傷治癒過程を理解することが重要になります。出血凝固期、炎症期、増殖期、成熟期に分類されるわけですが、この過程について正確に理解しておかないと治療が上手くいっているのかどうかが判断できないためです。

   

そして、出血凝固期、炎症期、増殖期、成熟期とフェーズによって異なりますが、褥瘡治癒過程には多くの栄養素が関与しています。創部に薬剤を塗布したり、除圧管理を図ることも重要ですが、栄養管理も褥瘡治療方法の1つになります。

  

創傷治癒過程やフェーズごとの必要となる栄養素については、専門的な分野であるうえに苦手としている方もいらっしゃると思います。

そんな人のために、こちらの記事をまとめました!この記事を読むことで、創傷治癒過程および褥瘡治癒に必要となる栄養素の理解を深めることを目標にします。特に、下記のポイントを理解できるようにします。

      

  • 創傷とは
  • 一次治癒と二次治癒
  • 急性創傷と慢性創傷
  • 創傷の治癒過程
  • 褥瘡治癒に必要となる栄養素

   

こちらの記事で創傷治癒過程における理解を深め、臨床における褥瘡対策の一助になると幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

創傷とは

こちらの記事を書く中で、褥瘡治癒過程と創傷治癒過程という表現のどちらが適切なのか疑問を感じたため、まずは創傷という言葉から説明します。

創傷とは、皮膚・皮下組織などの開放性もしくは表在性の損傷などを含めた全ての損傷のことを示します。受傷の原因や受傷時の創部状態によって以下のように分類されます。

  1. 切創(切りきず)
  2. 擦過傷(すりきず)
  3. 裂挫創(皮膚が裂けたきず)
  4. 刺創(刺しきず)
  5. 咬傷(咬みきず)

狭義によると「創」は開放性損傷(皮膚の連続性が断たれた状態)を意味し、「傷」は非開放性損傷(皮膚の連続性が維持された状態)を意味します。

創傷治癒の基本理論

損傷を受けた組織では、解剖学的な不連続性や破壊された細胞などに対し、再構築するための組織反応が起こります。

この過程を創傷治癒と称し、治癒過程の中で再生と修復という2つの反応を繰り返しながら創傷の治癒は進んでいきます。

また治癒形態からみると一次治癒、二次治癒に区分され、治癒過程が順調であるか、そうでないかによって急性創傷と慢性創傷に分類されます。これらの分類によって、創傷治癒のメカニズムはそれぞれ異なることになります。

一次治癒と二次治癒

メスやハサミによる創は、切り口が鋭利で血行に富み、直接縫合することができます。このような創面の治癒形態を一次治癒と呼びます。一次治癒は、異物や細菌を含まないため、すみやかに創が治癒します。

これに対し、皮膚の真皮層などが欠損し面状に創面が残存する場合の治療形態を二次治癒と呼びます。傷が感染していたり異物が入っていたりすると、縫合ができないため、感染を抑えながら自然に治るのを待つことになります。そのため、治癒に時間を要し、一次治癒に比べて皮膚が綺麗に修復しない可能性があります。

一次治癒は閉鎖創であり、主に切創になります。二次治癒は開放創で、熱傷、採皮創、下腿潰瘍、褥瘡が挙げられます。

急性創傷と慢性創傷

急性創傷のメカニズムは組織の傷害とともに始まり、出血凝固期、炎症期、増殖期、成熟期へと移行します。

その過程では血管新生、コラーゲン代謝の六進、細胞外マトリックスの再構築、創拘縮などの現象が多少オーバーラップしながら進行し、良質の肉芽組織を形成していきます。

このように、急性創傷では基本的に上皮形成へと秩序正しく進んでいきますが、なんらかの要因でこの過程が阻害された場合には慢性創傷となります。

慢性創傷の代表は褥瘡や下腿潰瘍となります。褥瘡や下腿潰瘍は、血流が減少しており、感染を惹起し、滲出液のコントロールが難しくなります。そのため、急性創傷と比較して治療に難渋するケースも多くなります。

要するに褥瘡の治療は難しい

創傷治癒について解説させて頂きました。一次治癒と二次治癒、急性創傷と慢性創傷というキーワードが出てきましたが、褥瘡についてはいずれも治癒に苦戦すると考えられる二次治癒であり、慢性創傷ということになります。

そのため、一般的な創傷治癒過程の通りにいかないこともあると予想されます。創傷における基本情報については理解できたと思いますので、次項にて創傷の治癒過程について解説していきます。

創傷の治癒過程

一般的な創傷の治癒過程は以下の4段階に分類されます。

  1. 出血凝固期
  2. 炎症期
  3. 増殖期
  4. 成熟期

この4段階の治癒過程が順調に進行するものを急性創傷、過程のいずれかが障害されて治癒が遅延したものを慢性創傷といいます。慢性創傷の場合、特に炎症期と増殖期における治癒の停滞が問題となっております。

出血凝固期

血液の止血は一次止血と二次止血という2段階機能により行われます。はじめに、出血時には血管が収縮して血液が流れ出るのを防止しようとします。

次に一次止血として、血液中の血小板が集まり、血小板血栓が形成されます。それらが出血部位に集まり止血をしようとします。

一次止血後、より強固な止血とするため、二次止血として血液凝固因子が活性化し、フィブリン(たんぱく質)をつくります。フィブリンが網をはって強固な止血栓をつくり、血管の破れた部分を覆い止血が完了します。

炎症期

創内に多形角白血球(好中球)、大食細胞(マクロファージ)、リンパ球、タンパク分解酵素などを含んだ浸出液が貯留します。

浸出液というと褥瘡治癒において有害なイメージがあるかもしれませんが、創傷治癒におけるこのタイミングでの浸出液は必要な反応になります。

最初に好中球が創内に出現します。好中球には遊走能があり、血管内皮細胞の隙間から細胞質の一部を挿入し、周辺組織へと滑り出ます。また異物を細胞内に取り込む貪食作用を有し、顆粒を放出して殺菌機能を果たします。

単球は24時間以内に創内に遊走し、マクロファージとなり組織の分解物などを貪食します。マクロファージは外傷、異物、内毒素、血管内皮細胞などにより活性化され、FGF、INF-α、IL-1など、多くのサイトカインを分泌し線維芽細胞を創内に呼び寄せる重要な働きをします。

リンパ球はマクロファージと相前後して出現し、活性化リンパ球はリンフォカインを遊離します。リンパ球はおもに炎症反応の後期に働き、移植片拒絶反応、移植片対宿主反応に携っています。

炎症期においては十分なエネルギーと蛋白質の補給が必要になります。エネルギーの欠乏は白血球機能を低下させ、蛋白質の欠乏は炎症反応を遷延化させる可能性があります。

好中球やマクロファージに貪食、殺菌機能を正常に果たしてもらうためにも、低栄養や栄養障害を来さない、あるいは進行させないためにも十分なエネルギーと蛋白質を補給できるように支援することが炎症期のポイントになります。

増殖期

増強期では線維芽細胞やケラチノサイトなどの遊走や増殖が起こるフェーズとなります。

線維芽細胞は受傷後48〜72時間ほどかけて創面に出現します。おもな働きは細胞外マトリックスの生成と各種細胞増殖因子の分泌になります。線維芽細胞が働くことにより創傷治癒過程は進み、各種の細胞もさらに活性化されます。

上皮が形成されれば線維芽細胞の役目は果たされ、線維芽細胞は速やかに減少します。しかし、なんらかの障害がありいつまでも上皮が形成されない場合は活性化が持続し、大量のコラーゲンなどの細胞外マトリックスを分泌し、肥厚性瘢痕を形成する可能性があります。

増殖期では炎症が抑制されてきて、浸出液も減りはじめ、肉芽が形成されるフェーズになります。

この時期には治癒を促進させるためにも様々な栄養素がバランスよく必要になりますが、特に重要な栄養素としては、エネルギー、蛋白質、鉄・銅、ビタミンA・ビタミンC、亜鉛、アルギニンが挙げられます。

蛋白質や亜鉛の欠乏は白血球機能を低下させますし、銅やビタミンの欠乏によりコラーゲン合成機能が低下します。細胞の再生と修復を円滑に進めるためにも増殖期での栄養素の補給は重要になります。

創傷治癒に必要な栄養素については、他の記事で詳しくまとめています!《【褥瘡治療に必要な栄養素とは】創傷治癒効果を高める褥瘡の栄養管理》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

成熟期

見かけ上として創傷部は塞がっているため、治癒として扱われるフェーズになります。

しかし、細胞内としては肉芽組織のコラーゲンは細く、毛細血管も無秩序で脆い状態にあります。これらが成熟期において再構築され、太いコラーゲンと系統的な血管網が形成され、外部に対する物理的強度が増加していく時期になります。

成熟期においても適切な栄養素の摂取が重要となります。成熟期のカルシウム不足は、コラーゲン架橋結合不全、ビタミンA不足はコラーゲン再構築不全、亜鉛やビタミンAの不足は上皮形成不全を引き起こします。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「創傷治癒の過程」をキーワードに考えを述べさせていただきました。

こちらの記事で創傷治癒過程における理解を深め、臨床における褥瘡対策の一助になると幸いです。

褥瘡が発生する要因については、他の記事で詳しくまとめています!《【褥瘡の発生要因】褥瘡とは?じょくそうの原因となる7つの危険因子》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️

参考文献

  1. 森口隆彦.分かりやすい創傷治癒理論と治療の実際.日本創傷・オストミー・失禁ケア研究会誌.J.Jpn.WOCN,Vol11,No.2,2007,p1-10.
  2. 鈴木文.褥瘡と栄養.昭和学士会誌.第74巻,第2号,2014,p120-127.
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