相対的喉頭位置とGSグレードの評価方法|測定手順・計算式・記録例
相対的喉頭位置は、オトガイ・甲状軟骨上端・胸骨上端の距離から、喉頭の相対的な位置を数値化する評価です。GSグレードは、頭部屈曲位を保持したときの頭部の落下程度から、舌骨上筋群の機能を4段階で評価する指標です。
どちらも単独で嚥下障害や誤嚥の有無を判定する検査ではありません。測定肢位とランドマークをそろえ、頸部・体幹機能やほかの嚥下評価と組み合わせて解釈することが重要です。本記事では、原法に基づく測定の概要、計算式、記録方法、再評価時の注意点を整理します。
相対的喉頭位置とGSグレードで評価すること
相対的喉頭位置とGSグレードでは、評価する対象が異なります。相対的喉頭位置は喉頭の位置関係、GSグレードは頭部屈曲位の保持能力を利用した舌骨上筋群機能の臨床指標です。
| 評価 | 主に見るもの | 結果 | 解釈上の注意 |
|---|---|---|---|
| 相対的喉頭位置 | オトガイ、甲状軟骨上端、胸骨上端に対する喉頭の位置関係 | GT÷(GT+TS)で算出する数値 | 年齢、頸部形態、姿勢、測定方法の影響を受ける |
| GSグレード | 頭部最大屈曲位を保持する能力 | 頭部の落下程度による4段階評価 | 頸部可動域、疼痛、理解力、全身状態の影響も考慮する |
相対的喉頭位置の値が高い、または低いという理由だけで、嚥下障害の重症度を決めることはできません。GSグレードも舌骨上筋群の機能を簡便に捉える臨床指標であり、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査の代わりになるものではありません。
相対的喉頭位置の測定方法
相対的喉頭位置は、頸部最大伸展位でGTとTSを測定し、両者から計算します。再評価では、測定肢位、ランドマーク、測定単位をそろえることが重要です。

GTとTSの測定部位
| 略称 | 測定する距離 | ランドマーク |
|---|---|---|
| GT | オトガイから甲状軟骨上端まで | オトガイと甲状軟骨上端 |
| TS | 甲状軟骨上端から胸骨上端まで | 甲状軟骨上端と胸骨上端 |
測定手順
- 測定の目的と方法を説明します。
- 頸部の疼痛、可動域制限、手術歴、呼吸状態などを確認します。
- 原法に沿って、頸部を無理のない範囲で最大伸展位にします。
- オトガイ、甲状軟骨上端、胸骨上端を触診で確認します。
- オトガイから甲状軟骨上端までの距離を測定し、GTとして記録します。
- 甲状軟骨上端から胸骨上端までの距離を測定し、TSとして記録します。
- GTとTSを計算式へ代入し、相対的喉頭位置を算出します。
相対的喉頭位置の計算式
GT÷(GT+TS)
たとえばGTが6.0cm、TSが10.0cmの場合は、6.0÷16.0=0.375です。記録時には、計算結果だけでなくGTとTSの実測値も残しておくと、変化した部位を確認しやすくなります。
数値の見方
指標開発時の報告では、健常若年者群の相対的喉頭位置は平均0.34、高齢者群は平均0.41でした。ただし、これらは研究対象群の平均値であり、正常・異常を分ける一律のカットオフ値ではありません。
値が大きいほど、計算上はGTが全体に占める割合が大きくなります。原著では、加齢に伴うTSの短縮によって相対的喉頭位置の値が大きくなる傾向が報告されています。個別症例では年齢や身体特性を考慮し、前回値やほかの嚥下所見と組み合わせて解釈します。
GSグレードの評価方法
GSグレードの原法は、背臥位で頭部を挙上し、顎を引いた頭部屈曲位を保持したときの頭部の落下程度を4段階で評価する方法です。
評価の流れ
- 背臥位を基本として、頭頸部の開始位置をそろえます。
- 頸部の疼痛、可動域制限、手術歴、循環・呼吸状態を確認します。
- 検査者が頭部を支持しながら、評価肢位へ誘導します。
- 顎を引いた頭部最大屈曲位を保持するように説明します。
- 安全を確認しながら検査者の支持を減らします。
- 頭部を保持できるか、どの程度落下するかを観察します。
- 使用している原法または施設基準に従って4段階で判定します。
GSグレードには、抵抗を加えない原法の4段階評価と、後に検討された5段階の修正版があります。記録には「原法4段階」など、使用した方法を明記し、異なる判定法の結果をそのまま比較しないようにします。
安全上の注意:頸部痛、著明な可動域制限、頸椎疾患、頭頸部術後、呼吸・循環状態の不安定、指示理解が困難な場合は、原法どおりの実施が適さないことがあります。無理に実施せず、病態と施設手順に沿って中止・変更してください。
再評価でそろえる測定条件
再評価では、原法の測定肢位に加えて、時間帯や全身状態も記録します。条件が異なる測定値を単純に比較すると、介入効果と日内変動を区別できません。
| 項目 | 記録する内容 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 測定方法 | 原法・修正版、使用した判定基準 | 異なる方法の結果を混在させないため |
| 測定肢位 | 背臥位、頭頸部の開始位置、支持物 | 頸部アライメントによる差を減らすため |
| ランドマーク | GT・TSで触診した位置 | 測定者間のずれを減らすため |
| 全身状態 | 疲労、疼痛、呼吸状態、覚醒 | 実施能力に影響する要因を区別するため |
| 測定時刻 | 午前・午後、食前・食後 | 日内変動を確認するため |
RLP・GSグレード記録シート(A4)
RLP・GSグレード記録シートでは、患者情報、測定条件、GT・TS、計算結果、GSグレード、再評価メモを1枚にまとめられます。数値だけでなく、比較に必要な条件も一緒に記録してください。
記録の書き方
記録は「測定条件→実測値→解釈→次回条件」の順に残します。相対的喉頭位置は計算結果だけでなくGTとTS、GSグレードは使用した評価法を記載することがポイントです。
| 記録項目 | 記載内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 測定条件 | 肢位、頭頸部位置、時刻、全身状態 | 午前、背臥位、枕なし、頸部痛なし |
| 相対的喉頭位置 | GT、TS、計算結果 | GT 6.0cm、TS 10.0cm、RLP 0.375 |
| GSグレード | 使用した評価法と判定 | 原法4段階、施設基準で判定 |
| 関連所見 | 頸部ROM、疼痛、体幹機能、嚥下所見 | 頸部伸展制限あり、RSSTは別記 |
| 再評価計画 | 時期と同一にする条件 | 1週後、同時刻・同肢位で再測定 |
記録例
午前、背臥位、枕なし。頸部痛なし。GT 6.0cm、TS 10.0cm、相対的喉頭位置0.375。GSグレードは原法4段階を使用し、施設基準で判定。頸部伸展可動域に制限あり。単独で嚥下機能を判断せず、RSST、咳嗽、食事場面の所見と合わせて共有する。1週後に同条件で再評価予定。
結果の解釈
結果は、相対的喉頭位置やGSグレードの値だけでなく、頸部・体幹機能、ほかの嚥下評価、食事場面の所見と組み合わせて解釈します。
| 所見 | 追加で確認すること | 対応 |
|---|---|---|
| 前回からRLPが変化した | GTとTSのどちらが変化したか、測定条件が同じか | 条件差を除外してから再測定する |
| GSグレードが低下した | 頸部痛、可動域、疲労、覚醒、理解力 | 舌骨上筋群の機能低下だけに限定せず確認する |
| ほかの嚥下所見も悪化した | 湿性嗄声、咳嗽、呼吸状態、食事摂取状況 | ST・医師・看護師などと共有し、追加評価を検討する |
原著では、相対的喉頭位置とGSグレードについて測定信頼性と臨床的有用性が検討されています。一方で、これらは嚥下障害の原因や誤嚥の有無を単独で確定する指標ではありません。スクリーニング検査、食事観察、必要に応じた嚥下内視鏡検査・嚥下造影検査へつなげます。
よくある失敗と回避策
最も避けたいのは、測定方法や条件が異なる値を前回値と比較することです。評価名だけでなく、原法・修正版、肢位、実測値を記録してください。
| 失敗 | 問題点 | 回避策 |
|---|---|---|
| 計算結果だけを記録する | GTとTSのどちらが変化したか分からない | GT、TS、計算結果をセットで残す |
| ランドマークが毎回異なる | 測定誤差を変化と判断する可能性がある | 触診位置と測定方法を統一する |
| 4段階法と修正版を混在させる | 同じグレード番号でも評価内容が一致しない | 使用した評価法を明記する |
| 単独で誤嚥リスクを判断する | 嚥下機能の一部しか評価していない | ほかの嚥下評価や食事所見と組み合わせる |
| 疼痛や頸椎リスクを確認しない | 最大伸展・屈曲によって症状を悪化させる可能性がある | 実施前に禁忌・中止条件を確認する |
よくある質問
相対的喉頭位置の計算式は何ですか?
GT÷(GT+TS)です。GTはオトガイから甲状軟骨上端まで、TSは甲状軟骨上端から胸骨上端までの距離です。計算結果だけでなく、GTとTSの実測値も記録します。
0.34や0.41を正常値として使えますか?
一律の正常・異常を分けるカットオフ値としては扱えません。0.34は指標開発研究の健常若年者群、0.41は高齢者群の平均値です。年齢や身体特性、測定条件を考慮し、個人内の変化やほかの嚥下所見と合わせて解釈します。
GSグレードは舌骨上筋群の筋力そのものですか?
舌骨上筋群機能を簡便に捉える臨床指標ですが、純粋な筋力だけで結果が決まるわけではありません。頸部可動域、疼痛、頭頸部の運動制御、疲労、指示理解などの影響も考慮します。
RLPとGSグレードだけで嚥下障害を判定できますか?
判定できません。頸部周囲の運動要因を評価する補助指標として使用し、RSSTなどのスクリーニング、口腔・咽頭所見、食事観察、必要に応じた嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査と組み合わせます。
再評価はどのように行いますか?
同じ評価法、肢位、ランドマーク、時間帯を基本として再測定します。相対的喉頭位置はGTとTSを個別に残し、GSグレードは原法か修正版かを明記してください。
次の一手
相対的喉頭位置とGSグレードは、摂食嚥下評価の一部です。結果を単独で判断せず、問診、姿勢、呼吸、口腔・咽頭所見、スクリーニング検査を含む評価全体の中に位置づけてください。
参考文献
- 吉田剛, 内山靖, 熊谷真由子. 喉頭位置と舌骨上筋群の筋力に関する臨床的評価指標の開発およびその信頼性と有用性. 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌. 2003;7(2):143-150. doi:10.32136/jsdr.7.2_143. DOI
- Yoshida T, Uchiyama Y. Clinical characteristics of swallowing disorders caused by cerebrovascular disease: A study using newly-developed indices for the basic elements of swallowing movement and neck range of motion. J Jpn Phys Ther Assoc. 2007;10(1):11-15. doi:10.1298/jjpta.10.11. PubMed / DOI
- Tashiro M, Honda Y, Ohkubo M, Sugiyama T, Ishida R. Influence of cervical, thoracic and lumbar spines, and shoulder girdle range of motion on swallowing function of dependent older adults. Geriatr Gerontol Int. 2017;17(12):2565-2572. doi:10.1111/ggi.13097. PubMed / DOI
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

