CDR 評価方法とは?(目的・所要時間・使いどころ)
CDR( Clinical Dementia Rating :臨床的認知症尺度)は、本人面接と情報提供者(家族・介護者)からの聴取、観察所見を突き合わせて、「生活の困り(機能低下)」を 0/ 0.5/ 1/ 2/ 3 の 5 段階でそろえる評価です。アウトプットは、①グローバル CDR(重症度カテゴリ)と、② CDR-SB ( 6 領域合計 0–18 :変化追跡)です。
所要時間は概ね 15–30 分です。点数を急がずに具体例(いつ・どこで・何が・どれくらい困るか)を 2〜3 個確保し、最後に採点規則でグローバル CDR を確定すると、担当者間でブレにくくなります。
現場の詰まりどころ(まず迷いを止める 3 点)
CDR は「面接 → 一次評定 → 採点規則で確定」を崩すと、カンファで点が揺れます。まずは次の 3 点だけ固定すると、記録と共有が一気に通りやすくなります。
- よくある失敗:平均点で決める/ 0 と 0.5 が曖昧
- 回避の手順:具体例 → 裏取り → 6 領域に割り付け
- 入口で拾う(スクリーニング)を先に作る: DASC-21 の評価方法
CDR の早見表( 6 領域 × 重症度の目安 )
正式判定は面接内容の総合判断に基づきます。下表はスマホ閲覧を想定した簡潔な目安です(教育・文化差を考慮)。
※表は横にスクロールできます。
| 領域 | 0 | 0.5 | 1 | 2 | 3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 記憶 | 障害なし | 軽い物忘れ(反復で想起) | 近時記憶低下(出来事保持困難) | 顕著な近時記憶低下(再学習困難) | ごく限られた記憶のみ |
| 見当識 | 時間・場所とも良好 | 時間で軽度の乱れ | 時間の見当識不良 | 場所も不良 | 人物も不確か |
| 判断/問題解決 | 適切に判断可 | 複雑課題で非効率 | 日常問題で援助を要す | 安全配慮が常時必要 | 判断不能に近い |
| 社会事象( Community Affairs ) | 社会活動を自立 | 複雑な役割で軽度困難 | 重要な用事は同伴が必要 | 外出活動はほぼ不可 | 社会的役割は喪失 |
| 家庭/趣味 | 家事・趣味とも自立 | 複雑な作業で質低下 | 家事・趣味の実行が困難 | 簡単な作業のみ可能 | ほぼ実行できない |
| 身の回り | 完全自立 | 段取りの乱れ・忘れ | 一部見守り/部分介助 | 広範な介助が必要 | 全面介助 |
CDR-SB ( Sum of Boxes ): 6 領域の素点合計( 0–18 )。最終のグローバル CDRは単純平均ではなく、記憶を重視した規則で決まります。
CDR 評価方法(半構造化面接)の実施手順
① 対象者面接:最近の出来事、日課、金銭・服薬・移動・趣味の実行などを具体例で確認します。② 介護者/同居者からの情報:実生活の変化、見守り量、失敗の頻度と一貫性を聞き取ります。③ 観察:時間・場所の回答、見当識の揺らぎ、遂行機能の破綻などを評価します。④ 6 領域に割り付け:各領域を 0/ 0.5/ 1/ 2/ 3 に一次評定します。⑤ 最終重症度を決定:下記アルゴリズムに従いグローバル CDR を確定します。
面接は教育歴・生活歴の影響を受けます。単発の失敗より一貫した機能低下を重視し、抑うつ・せん妄・感覚障害など別要因の影響を先に点検することが大切です。
重症度の決め方(アルゴリズム要点)
グローバル CDR は「記憶に重み付け+他領域の多数決」で決まります。臨床運用の目安を以下にまとめます(原著ルールの要約)。
- 記憶の評点を基準案にします。
- 同じレベルにある領域が 3 領域以上(記憶を含む)なら、そのレベルを採用します。
- 多数決が割れる場合は、記憶の評点に 1 段階寄せて最終レベルを決めます。
- 正常と軽度の境界で揺れるときは 0.5 を検討します。
例)記憶 1 、その他 4 領域が 0.5 、身の回り 0 のような境界例では、 1 または 0.5 を検討します。平均点では決めない点に注意してください。
CDR-SB の使い方( 0–18 点 )
CDR-SB は 6 領域の合計で、微小な変化の追跡に向きます。臨床研究で用いられる区分例:
※表は横にスクロールできます。
| グローバル CDR | CDR-SB の目安 | 臨床解釈のヒント |
|---|---|---|
| 0 | 0 | 症状なし |
| 0.5 | 0.5–4.0 | ごく軽度。境界域のフォローが重要 |
| 1 | 4.5–9.0 | 軽度。 IADL の支援設計 |
| 2 | 9.5–15.5 | 中等度。安全・介護負担対策が中心 |
| 3 | 16–18 | 重度。全介助レベルの調整 |
研究や集団により閾値は異なります。同一個人の経時比較で解釈することを基本にしてください。
判定・記録のコツ(臨床メモ)
※表は横にスクロールできます。
| ポイント | なぜ重要か | 実務での言い換え |
|---|---|---|
| 0.5 の判断 | 境界例で再現性が落ちやすい | 「単発」ではなく「日常に軽い実害が出始めた一貫した低下」を探す |
| 併存症の影響 | 過小評価/過大評価の原因になりやすい | 抑うつ・せん妄・睡眠不足・難聴/視力低下などの影響を先に整理する |
| 文化・教育 | 役割や生活歴で “普通” の基準が変わる | 本人の語りだけで決めず、家族・介護者の具体例で裏取りする |
よくあるミス(回避ポイント)
※表は横にスクロールできます。
| よくあるミス | 何が問題か | 対策 |
|---|---|---|
| 6 領域の平均点で重症度を決める | CDR は平均ではなく採点規則で判定するスケール | 記憶重視+多数決のルールに従う |
| 0 と 0.5 の付け分けが曖昧 | 境界判定の再現性が下がる | 「実害の一貫性」を具体例で確認する |
| 併存症(うつ・せん妄等)を加味しない | 過小評価/過大評価のリスク | 状態変化イベント後は再評価し、経時で補正する |
記録テンプレ(例)
※表は横にスクロールできます。
| 領域 | 0 | 0.5 | 1 | 2 | 3 | 根拠メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 記憶 | ||||||
| 見当識 | ||||||
| 判断/問題解決 | ||||||
| 社会事象 | ||||||
| 家庭/趣味 | ||||||
| 身の回り |
最終重症度: CDR ( ) / CDR-SB :( ) / 要点:(例: IADL の見守り増加、金銭管理で反復ミス 等)
ダウンロード( A4 )と自動計算ツール
院内共有しやすいように、 A4 記録シート( PDF )と、 CDR-SB/グローバル CDR の自動計算ツールを用意しました。
PDF プレビューを開く
自動計算ツール( CDR-SB /グローバル CDR )
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
CDR の評価方法は?
CDR の評価方法は、①本人面接、②介護者/同居者からの情報、③観察所見を突き合わせ、④ 6 領域を 0/ 0.5/ 1/ 2/ 3 に一次評定し、⑤記憶の重み付けを含む採点規則に従ってグローバル CDR を確定する流れです。平均点では決めず、境界例では「一貫した実害の有無」を具体例で確認します。
CDR と CDR-SB の違いは?
グローバル CDR は 0/ 0.5/ 1/ 2/ 3 の重症度カテゴリ、 CDR-SB は 6 領域の合計 0–18 の連続値です。重症度ラベルが必要なら CDR 、微小変化の追跡には CDR-SB が向きます。
0.5 の付け方で迷います
「軽い物忘れ」自体は加齢でも起こります。CDR で 0.5 を検討するのは、日常生活で軽微だが一貫した機能低下が観察される場合です。単発よりも頻度と持続を重視します。
所要時間と訓練は?
半構造化面接で概ね 15–30 分です。採点の一貫性確保のため、標準化マニュアルの共有と事前トレーニングを推奨します。
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続けて読む: DASC-21 と CDR の違い【比較・使い分け】
参考文献
- Hughes CP, Berg L, Danziger WL, Coben LA, Martin RL. A new clinical scale for the staging of dementia. Br J Psychiatry. 1982;140:566-572. https://doi.org/10.1192/bjp.140.6.566
- Morris JC. The Clinical Dementia Rating (CDR): current version and scoring rules. Neurology. 1993;43(11):2412-2414. https://doi.org/10.1212/WNL.43.11.2412
- O’Bryant SE, Waring SC, Cullum CM, et al. Staging dementia using Clinical Dementia Rating Scale Sum of Boxes scores. Arch Neurol. 2008;65(8):1091-1095. https://doi.org/10.1001/archneur.65.8.1091
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


