CNS の評価|やり方・採点・ NIHSS 換算

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CNS( Canadian Neurological Scale )とは?

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CNS の要点|60 秒で把握

  • CNS は、脳卒中の意識・見当識言語顔面/上肢/下肢の運動を短時間で評価し、経時変化を追いやすい重症度スケールです。
  • 現場では NIHSS が標準になりやすい一方、CNS は病棟・回復期・外来など反復評価の文脈で強みが出ます。
  • 運用の肝は、A1/A2 の分岐と、条件(体位・補助具・疼痛・眠気)の統一です。

CNS( Canadian Neurological Scale / カナディアン・ニューロロジカル・スケール )は、脳卒中患者の「意識・見当識」「言語(理解/表出)」「顔面/上肢/下肢の運動」を短時間で把握し、経時変化を追いやすく設計された重症度スケールです。看護師を含む多職種でも再現しやすい点が特徴で、病棟の反復モニタリングや回復期のトレンド把握と相性が良いです。

本記事では、逐語の項目を掲示せず、実施の流れと解釈の「考え方」、そして現場で止まりやすい点の回避策を中心に整理します。とくに A1(理解良好)A2(理解障害など調整が必要) の分岐を意識すると、失語や注意低下を伴う症例でも評価を継続しやすくなります。

CNS を使うと良い場面

CNS は、急性期〜回復期〜外来・訪問の幅広い文脈で「変化の検知」に強いスケールです。例として、病棟での悪化の早期検知、離床前後のオン/オフ評価、外来・訪問での経時モニタ、カンファレンス用の重症度トレンド化などが挙げられます。CNS で変化を素早く掴み、必要に応じて NIHSS で詳細化する二段構えが実務的です。

一方で、評価を誤りやすい代表は「疼痛・固定具・ ROM 制限・眠気・薬剤影響」の取り違えです。運動の低下に見えても、原因が“神経症候そのもの”とは限りません。体位や補助具、疼痛の有無など条件を揃え、再現性を高めましょう。

実施の流れ(概要)

基本は「条件を揃える → A1/A2 を決める → いつも同じ順で観察 → 前回比を残す」です。

  1. 体位・環境を統一(ベッド角度、座位の支持、装具・固定具、疼痛、補聴器や眼鏡)。
  2. A1/A2 を判定(理解や注意の影響が強い場合は A2 運用へ)。
  3. 意識・見当識 → 言語 → 顔面 → 上肢 → 下肢の順で観察し、左右差と再現性を確認。
  4. 混入因子を短くメモ(失行、注意障害、半側空間無視、疲労、疼痛)。
  5. 合計スコアを算出し、前回比( ↑/→/↓ )と評価条件を併記。

観察の質を上げるコツは、聴力・視力・母語、疼痛、抗重力保持の可否、模倣と随意の差、注意の持続を簡潔に残すことです。「点数」だけでなく、「点数が揺れた理由」を残すとチームで解釈が揃います。

現場の詰まりどころ(原因 → 対処 → 記録)

CNS で止まりやすい点と対処(病棟・回復期での実装向け)
詰まりどころ 起きやすい原因 対処(現場での打ち手) 記録ポイント
A1/A2 の判断がブレる 失語・注意低下・せん妄・眠気が混在 「同じ時間帯」「同じ声かけ量」「同じ体位」に寄せ、反応の一貫性で運用を決める 眠気、投薬、夜間帯、通訳の有無
運動低下に見えるが理由が違う 疼痛、固定具、 ROM 制限、整形外科疾患 疼痛と可動域を先に確認し、原因が違う場合は「条件」として明示する 疼痛部位、装具、固定具、可動域制限
模倣だと動く/口頭だと動かない 失行、注意散漫、聴覚情報の弱さ 模倣と口頭の差を“情報”として扱い、毎回同じ提示法で反復する 提示法(口頭/模倣)、反応の差
左右差がはっきりしない 疲労、努力性の低下、評価者差 「観察順」「支持の量」「カウントの仕方」を固定し、短い再試行で再現性を確認 支持の量、再試行回数、疲労の有無
点数は同じだが悪化している気がする 臨床像の変化が点数に乗りにくい 点数に加えて「前回比」「条件」「混入因子」をセットで残し、必要なら並行指標で補助 前回比( ↑/→/↓ )、条件、混入因子

CNS・ NIHSS・ JSS の違い(使い分け早見)

重症度スケールの比較(実務での使い分け)
指標 主目的 実施のしやすさ 強み 留意点
CNS 短時間の重症度把握と経時モニタ ◎(多職種で回しやすい) A2 運用で理解障害があっても継続しやすい/病棟実務と親和 詳細度は NIHSS に劣る場面がある
NIHSS 急性期標準・治療選定の共通言語 ○(手順遵守と訓練が必要) エビデンスと汎用性が高い 所要時間と評価者差の管理が要る
JSS 国内での重症度評価 日本の臨床現場で使われる機会がある 施設ルールや運用の差を確認する

スコアの目安(読み方のコツ)

CNS は一般に高いほど良好と解釈します。点数そのものよりも、同じ条件で反復したときの前回比( ↑/→/↓ )が臨床では重要です。

CNS の重症度区分(目安として用いられる例)
区分 合計スコアの目安 運用のヒント
軽症 8 以上 離床や訓練のオン/オフで小さな変化を追う
中等症 5–7 A2 運用になりやすい。必要に応じて並行指標で補助
重症 1–4 全身状態の変化と合わせて経時モニタ。条件を厳密に記録

合計スコアは研究などで 1.5–11.5 の範囲として扱われることがあります。区分の閾値は運用や目的で変わるため、院内の共通ルールがある場合はそちらを優先してください。

解釈と “他指標への橋渡し”

解釈の基本は「点数+前回比+条件」です。CNS が低下したとき、神経症候そのものの悪化か、疼痛・疲労・眠気など条件の変化かを切り分けるために、毎回同じ形式で条件を残しましょう。

研究では NIHSS = 23 − 2 × CNS という換算モデルが提案されており、院内の共通言語づくりや研究間比較の補助に使われます。臨床での活用は、適用対象や誤差を踏まえたうえで「参考」として扱うのが無難です。

ダウンロード(記録・運用のためのテンプレ)

記事内ではリンクを 1 本に絞るため、ファイル名と保存先パスのみ記載します。必要に応じてコピーして参照してください。

  • CNS クイックリファレンス(評価の流れ・注意点| A4 )
    /wp-content/uploads/2025/10/cns_quickref_a4_v1_20251027.html
  • CNS 記録シート(記録用| A4 )
    /wp-content/uploads/2025/10/cns_recordsheet_a4_v1_20251027.html

項目別の解説(趣旨・観察ポイント)

意識・見当識( Mentation )

  • ねらい: 覚醒水準と見当識を素早く把握し、以降の指示理解の前提を確認します。
  • 見方: 反応の速さと一貫性(遅延、保続、途中で崩れる)を総合して評価します。
  • 観察ポイント: 眠気・鎮静、夜間帯の影響、補聴器・眼鏡、母語、せん妄兆候。

言語( Language :理解/表出 )

  • ねらい: 指示理解と表出の可否を確認し、A1/A2 の分岐を決めます。
  • 見方: 単純指示への追従、反応の一貫性、構音の明瞭性を臨床的に評価します。
  • 観察ポイント: 失語と構音障害の識別、保続、疲労で変動するか、模倣で改善するか。

顔面運動( Facial motor )

  • ねらい: 片側性の低下や非対称を簡便に把握します。
  • 見方: 自動と模倣の差、随意運動に伴う非対称の明確さを段階的に捉えます。
  • 観察ポイント: 鼻唇溝・口角・瞬目、装具や疼痛の影響、左右差の持続性。

上肢運動( Upper limb )

  • ねらい: 片麻痺の重さ(抗重力保持と随意運動)を短時間で評価します。
  • 見方: 抗重力保持の可否、疼痛や可動域制限を除外しながら段階化します。
  • 観察ポイント: 共同運動、失行、模倣での改善、利き手差、肩痛の影響。

下肢運動( Lower limb )

  • ねらい: 立位準備や移乗能力に関わる抗重力要素を把握します。
  • 見方: 体位での保持と随意、筋緊張や装具の影響を勘案して段階化します。
  • 観察ポイント: つま先下がり・膝折れ傾向、疼痛・浮腫、注意散漫での変動。

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

なぜ CNS が選択肢になるの? NIHSS だけではだめ?

急性期の共通言語としては NIHSS が強い一方、CNS は反復モニタリングで回しやすく「変化の検知」に向きます。目的が違うため、CNS を“変化検知”、NIHSS を“詳細共有”として併用すると相互補完になります。

評価は何分単位で回すと良い?

時間の厳密さより、条件を揃えた反復が重要です。看護ラウンドやバイタル測定など“毎日同じタイミング”に寄せ、体位・補助具・疼痛・眠気・投薬の状況を毎回メモしてください。

A1/A2 の使い分けのコツは?

「理解の問題」か「覚醒や注意の問題」かが混在しやすいので、まずは眠気や投薬、せん妄兆候を確認します。そのうえで反応の一貫性が保てる運用( A1 か A2 )に決め、以後は同じ条件で反復します。

おわりに

CNS は「目的の確認 → 条件の統一 → A1/A2 の選択 → スコア+前回比の記録 → 再評価」というリズムで回すほど、病棟や回復期で“変化”を拾いやすくなります。臨床の振り返りや転職面談の準備で使えるチェックと職場評価シートは マイナビコメディカルまとめ に置いてあるので、必要なタイミングで活用してください。

参考文献

  1. Côté R, Battista RN, Wolfson C, et al. The Canadian Neurological Scale: a preliminary study in acute stroke. Stroke. 1986;17(4):731–737. doi:10.1161/01.STR.17.4.731
  2. Côté R, Battista RN, Wolfson C, et al. The Canadian Neurological Scale: validation and reliability assessment. Neurology. 1989;39(5):638–643. doi:10.1212/WNL.39.5.638
  3. Nilanont Y, Komoltri C, Saposnik G, et al. The Canadian Neurological Scale and the NIHSS: development and validation of a simple conversion model. Cerebrovasc Dis. 2010;30(2):120–126. doi:10.1159/000262454
  4. Rehabilitation Measures Database: Canadian Neurological Scale. sralab.org
  5. StrokEngine: Canadian Neurological Scale(概説). strokengine.ca

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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